石州和紙

島根県

平安時代に書かれた「延喜式(えんぎしき)」には、石州の名が登場しています。
江戸時代後期に発刊された「紙漉重宝記(かみすきちょうほうき)」によると「奈良時代、柿本人麻呂が石見の国で守護の仕事に就いていた時、民に紙漉(す)きを教えた」と記されています。約1300年もの間、石州和紙は漉き続けられてきました。初めは副業として行われていたものが今ではほとんど専業となり、昔も今も変わらぬ技術・技法を引き続いて和紙作りが行われています。

  • 告示

    技術・技法


    抄紙は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「流し漉き」又は「溜め漉き」によること。

     
    (2)
    簀は、竹製又はかや製のものを用いること。

     
    (3)
    「ねり」は、トロロアオイを用いること。


    乾燥は、「板干し」又は「鉄板乾燥」によること。

    原材料

    主原料は、コウゾ、ミツマタ又はガンピとすること。

     

  • 作業風景

    工程1: 原料蒸し(げんりょうむし)

    原料は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)。それらの原木を1メートルくらいに揃え刈り取り、少人数でも作業しやすいように「せいろ蒸し」の方法で蒸気によって蒸します。これにより、木芯と表皮が剥がれやすくなるのです。

    工程2: 黒皮そぞり(くろかわそぞり)

    黒皮を剥ぎ取り、自然乾燥させた後、半日ほど水に浸し、柔らかくした後、そぞり台の上に載せ、包丁で一本一本ていねいに表皮を削ります。

    工程3: 煮熟(しゃじゅく)

    水で洗い、不純物を落とした後、煮釜に水を入れ、水量に対し12%のソーダ灰を入れ、沸騰後原料をほぐしながら入れます。そして30分ごとに上下にむらができないように、ひっくり返し、2時間ほど煮ます。そして蒸らします。

    工程4: 叩解(だかい)

    煮終えた原料を清水で一本一本ていねいに洗い、その後、硬い木盤の上に原料を載せ、樫の棒で入念に叩き、繊維を砕くのです。ここ石州では「六通し六返し」の方法で左右六往復し、上下六回返すのが基本です。

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    工程5: 数子(かずし)

    漉き舟に水と紙料、トロロアオイを入れ、均等に混ぜます。素早く漉き舟の紙料をすくい上げ、”簀(す)”全体に和紙の表面を形づけます。

    工程6: 調子(ちょうし)

    紙料を比較的深くすくい上げ、前後に調子をとりながら、繊維をからみ合わせ、和紙の層をつくります。回数によって厚さが異なります。

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    工程7: 捨水(すてみず)

    目的の厚さになれば、”簀”の上に残った余分な水や、紙料を一気にふるい捨てます。

    工程8: 紙床移し(かみとこうつし)

    漉き上げられた”簀”の上の和紙は水を切った後、紙床台へ移動する。紙床台へは一枚一枚重ねていくのです。

    工程9: 乾燥(かんそう)

    その後一枚一枚剥がし、その湿紙を刷毛を使って、銀杏の干し板に貼り付け、その干し板を天日によって乾燥させます。

    工程10: 選別(せんべつ)

    乾燥された和紙を一枚一枚手にとって入念に選別をします。厚さ、むら、破れ、傷跡、塵などを取り除きます。

     

概要

工芸品名 石州和紙
よみがな せきしゅうわし
工芸品の分類 和紙
主な製品 障子紙、石州半紙、封筒、便箋(びんせん)、はがき、名刺
主要製造地域 江津市、浜田市
指定年月日 平成1年4月11日

連絡先

■産地組合

石州和紙協同組合
〒699-3225
島根県浜田市三隅町古市場683-3
工房かわひら内
TEL:0855-32-1166
FAX:0855-32-1166

http://www.sekishu.jp/

実店舗青山スクエアでご覧になれます。

特徴

コウゾ紙は繊維が長く最も強靱です。ミツマタ紙は繊細で弾力があり、柔らかな艶があります。ガンピ紙は最も繊細で光沢があり虫の害に強い紙です。生産の多いコウゾ紙はかつて商人が帳簿に用い、火災のとき井戸に投げ込んで保存を図ることができたほどしっかりしています。

作り方

原料にコウゾ、ミツマタ、ガンピ等の植物の靭皮(じんぴ)という部分を繊維に使用し、ソーダ灰等を入れて煮ます。そうして出来た繊維を溶かした水に、トロロアオイの根の粘液を使って粘り気を与えます。 出来上がった紙の材料の液に、竹簀(たけす)や萱簀(かやす)等の簀(す)を桁(けた)に挟んだ道具を入れ、「流し漉き」という技法で紙漉きを行います。漉き上がったものを天日乾燥や鉄板乾燥させて完成です。

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