2017.04.10

【企画展】和布春風「伝統の織り染めに新風が香る」のトークショー

青山スクエアでは、4月7日から【企画展】和布春風「伝統の織り染めに新風が香る」が始まり、

たくさんの織物の産地が集まりました。

 

そして、初日の14時からは匠によるトークショーも行われ、

スクエア内も賑わっていました。

 

トークショーで初めにお話しいただいたのは、首里織の方です。

 

首里織の作り手、吉浜博子さん

首里織は、14、15世紀頃、琉球王国の一族が着ていた服を継承して、

現在にまで続いています。

 

お城の中で着られていた服で、

家族のために作られていました。

 

織物は分業制になっていることがほとんどですが、

首里織は初めから最後まですべて一人で行います。

 

方眼紙にデザインを書いたり、

糸を染めるための材料を山野に取りに行ったり、

実際に織ったり、

そして仕上げの洗いまで一貫して行うので、

作り手によっての個性が出やすいと言えます。

 

染料一つでも、

材料は同じだったとしても、

材料の煮込み方によって出てくる色が違うので、

作り手によって様々な色に変化します。

 

たとえば、

ここにある反物は、

緑、オレンジ、黄色、ベージュの四色がありますが、

緑、オレンジ、黄色はすべて同じ材料から出来ている色です。

ただ煮込み方や扱い方が違うため、

こんなに様々な色を出すことができます。

 

また、吉浜さんの着ている着物は、

渋みのある桃色ですが、

これもご自身で作られたもので、

染料は桜だそうです。

 

この桜も、

一度煮出しただけだと、

吉浜さんが着ているような色になりますが、

何度も煮出しをすると、鮮やかなピンクになります。

 

普段から染料にもこだわりを持つ吉浜さんに、

色についても、お話をしていただきました。

 

<着物アドバイザー小林さんのアドバイス>

 

昔、着物が織りであれば、帯は染めもの。

着物が染めであれば、帯は織りのものというのが主流でした。

 

ですが最近は、

吉浜さんが着ているように、

織りの着物に、織りの帯というのが流行っています。

 

実際に、織物と染物ではかかる日数が違うんです。

例えば帯の場合、織りの帯を一本作るのに、染の帯は十本できてしまいます。

 

そのため、織りの着物に織りの帯を合わせる方が、

上級者の着こなしとして人気が出てきているのです。

 

次に本場大島紬の方にお話をしていただきました。

 

本場大島紬の中川亮二さん

本場大島紬と言えば、

泥染めがルーツで白大島や泥・藍大島と言われるのが一般的。

 

ですが最近は、色大島というものも出てきて、

本場大島紬も幅が出てきました。

 

一反の着物を作るのにも分業制で行っており、

他産地と違うのは、

絣糸は締機(しめばた)で作るところです。

 

また亀甲柄や十字、絣なども特徴の一つ。

 

ただ、価格帯としては、

どうしても色大島が細かい作業工程を組んでいるということもあり、

高くなってしまっていると話していました。

 

続いて、近江上布の方にお話しいただきました。

 

近江上布の南和美さん

近江上布は、糸に特徴があります。

 

他産地では、絹や綿を使ったりしますが、

近江上布は麻を使います。

 

大麻を取ってきて、

自分で細く裂いていき、

それを繫げて糸を作るのです。

 

裂いた糸は桶に入れていくのですが、

一反作るのに、だいたい苧桶に八杯(600~700g)位必要とおっしゃっていました。

糸作りだけでも大変なのが伝わってきます。

 

また、他の着物では感じないのですが、

しゃり感のある麻糸で作られているため、

近江上布は袖を通した時にひんやりとした感覚を覚えます。

これは麻特有のものです。

 

さらに日本は、もともと麻文化でした。

絹や木綿が大陸から伝わってくるまでは、

麻を中心に芭蕉布や葛布も用いられていました。

 

続いて名古屋友禅の方にお話をしていただきました。

 

名古屋友禅の赤塚順一さん

名古屋友禅の特徴は、

濃淡調子で色数が少ないことだとおっしゃっていました。

 

友禅は他にも京都や東京、加賀にもありますが、

その中でも渋いのが名古屋友禅だそうです。

 

また、名古屋友禅の柄は、

伊勢型紙を使用しており、型友禅とも言われています。

 

赤塚さん自身は、

染めることに情熱を傾けているため、

近年では反物だけではなく、

洋服や提灯、扇子などにも挑戦をしており、

今回青山スクエアにも持ってきてくれています。

 

続いて、上田紬の方にお話をしていただきました。

 

上田紬(信州紬)の小岩井カリナさん

小岩井さんはこの業界に入ってから12年が過ぎ、

ようやく伝統工芸士の称号を得ることができたと報告してくださいました。

 

そして、自身の12年を記念して、

青山スクエアに6本限定で破格の12万円で販売するとおっしゃっておりました。

気になる方は是非、小岩井さんの商品が置かれている場所をチェックしてみてください。

 

最近の小岩井さんの作品は、

格子柄を活かした反物を作り、

それをアレンジして洋服に仕立てて貰うことが増えたそうです。

 

また洋服に合わせてコサージュを作り、

上田紬をカジュアルに着こなせるような試みをしています。

 

小岩井さんの性格のように、

明るい色の物が多いのも特徴で、

身につけると気持ちも前向きになるような反物を作っています。

 

続いて、塩沢紬(本塩沢)の方にお話をうかがいました。

 

塩沢紬(本塩沢)の中島律子(左・姉)さんと中島伸子(右・妹)さん

姉の律子さんは、地機織(じばたおり)をしていて、

重要無形文化財にもなっている越後上布の織手でもあります。

 

妹の伸子さんは、糸作りや律子さんがすぐに作業に取り掛かれるようにと、

下準備をしているそうです。

 

お二人の父親が伝統工芸士で、

その跡を継ぐため姉妹でこの世界に入りました。

 

また「お召し」という言葉がありますが、

塩沢お召しと言われるほど、

お召しイコール塩沢という認識が強いとおっしゃっていました。

 

その他、新潟の風物詩の一つでもあるのが、

雪晒し(ゆきざらし)です。

 

雪の上に塩沢紬を晒しておくと、

どんなに汚れた着物であっても、綺麗になるという現象が起きます。

 

汚れを落として、

新しい着物として作り上げることができるのが、

この土地の特徴の一つでもあります。

 

続いて、東京染め小紋の方にお話をしていただきました。

 

東京染小紋の中條隆一さん

東京染小紋は江戸小紋とも呼ばれており、

墨田区を中心に作り手がいます。

 

東京染小紋は合わせる帯によって、

様々な場所で着ることができます。

 

例えば、名古屋帯と東京染小紋なら、観劇やお食事に行くのに適しており、

袋帯と東京染小紋なら、結婚式に行くのに適しており、

黒帯と東京染小紋なら、法事に行くのに適しているなど、

様々な場所に着てくことができる反物です。

 

また東京染小紋の柄も、

伊勢型紙を使用しており、

切り彫り、突き彫りなど他にも数種類ある小刀を使っていて、

それぞれ味の違う反物になるとおっしゃっていました。

 

最後に着物アドバイザーの方に話をしていただきました。

 

着物アドバイザーの小林さん

着物は個人の感性がそのまま反映されるものです。

 

地味な物が好きな人は、地味なコーディネートを楽しみますし、

派手な物が好きな人は、派手なコーディネートを楽しみます。

 

ですが、

地味な物が好きな人が、派手なコーディネートのものを身につけても、

似合わないということはなく、

アッと驚くような大変身ができます。

 

変わりたいと思っている人は、

色々と挑戦するのがいいのではないでしょうか。

 

また、上手な着物の着こなし方を覚えたいのであれば、

着物を着ている人を見たり、

gt;先輩の言っていることを素直に聞くことが、

早く身に付くコツです。

 

着物は箪笥の中に長い間仕舞い込んでいると、

カビが生えてしまう代物。

 

長く愛用したいのであれば、

沢山着物を着てあげてください。

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今回のトークショーに出られていた方の作品は、

【企画展】和布春風「伝統の織り染めに新風が香る」にて見ることができます。

 

企画展は4月19日まで行っていますので、

ぜひ青山スクエアまでお越しください!

 

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