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TRADITIONAL CRAFTS

喜如嘉の芭蕉布Kijoka Banana Fiber Cloth

芭蕉布は、13世紀頃にはすでに作られていたと考えられますが、人々の間に広まったのは近世になってからのことです。
家の庭や畑に芭蕉の木を植え、主婦や娘たちが自家用の布を織っていました。19世紀に入ると絹や綿が出回るようになりましたが、あいかわらず芭蕉布は人々に親しまれていました。この伝統を受けついでいる喜如嘉の芭蕉布は、昭和49年に国指定の重要無形文化財の総合指定を受けています。

It seems that banana fiber cloth was already being made around the 13th century but it was much later that it became popular. In the old days banana trees were planted in gardens and fields, and the womenfolk of a family wove it into fabric for home use. Silk and cotton became much more readily available during the 19th century but people still enjoyed wearing banana fiber cloth. Kijoka no Bashofu, which carries on these traditions, was designated as a cultural property by the Prefecture in 1972 and two years later in 1974 it was made an important intangible cultural property by the nation.

Woven from fibers taken from the banana tree, banana fiber cloth is highly representative of the weaving of Okinawa. It was very popular for making a piece of summer-weight formal dress called kamishimo in the Edo period (1600-1868) and being light and comfortable to wear, it is still a great favorite with many people today for kimono in the height of summer. But kimono are not its only use. Some is made into obi, while other pieces make fine cushion covers. Ties, bags and table centers are also made of this engaging cloth, which also makes fine split curtains or noren.

  • 告示

    技術・技法


    次の技術または技法により製織された織物とすること。

     
    (1)
    たて糸及びよこ糸に使用する糸はイトバショウより「苧引き」し、「手うみ」した芭蕉糸とすること。

     
    (2)
    織り組織は、平織り又は紋織りとすること。

     
    (3)
    染色をする場合には、先染めによること。


    かすり糸を使用する場合には、かすり糸の染色法は、「手くくり」によること。

    原材料

    使用する糸は、芭蕉糸とすること。

  • 作業風景

    芭蕉布は製作工程が長く、困難な作業の積み重ねによって作られています。糸の原料になる糸芭蕉を育て、幹を切り倒して繊維を取り、糸を績んで、染めて、織り、仕上げます。織るまでの道のりがとても長いのです。

    工程1: 糸芭蕉の栽培と苧(うー)はぎ

    糸芭蕉は、繊維をやわらかくするため、年に2~3回、葉落としや芯止めを行ないます。苧(うー)とは糸芭蕉の繊維のことです。成熟した糸芭蕉の幹を切り倒し、皮をはぎます。外側は繊維が粗いのでテーブルクロスなどに、その内側は帯やネクタイに、さらに内側のナハグーと呼ばれる部分を着尺に使います。

    工程2: 苧炊き

    大鍋に灰汁を沸騰させ、底に縄を敷きます。はいだ皮を束ねて入れ、ふたをして数時間煮ます。灰汁のアルカリ度の加減がむずかしい作業です。煮上がったら水洗いして灰汁を落とします。

    工程3: 苧引き

    皮から繊維を取り出します。皮を2、3枚に裂き、エービという竹ばさみでしごきます。柔らかい繊維は緯糸に、硬い繊維や色のついているものは経糸用にします。陰干ししてから、丸くまとめます。

    工程4: 苧績み

    丸めた繊維から糸を績みます。水にひたして軽くしぼり、爪や指先で、根のほうから筋に沿って繊維を裂いていきます。太さは糸の用途に応じて決められます。着尺用にはごく細く裂きます。裂いた繊維と繊維は、機結びでつないで糸にします。糸がぬけないように強く引っ張ります。結び目に出た糸は短く切ります。最も時間がかかり根気のいる作業です。

    工程5: 撚りかけ、整経

    経糸と緯糸の絣糸は、毛羽立ちを防いで丈夫にするため、糸車で撚りをかけます。霧吹きで湿らせながら行ないます。撚りが甘いと毛羽立って織りにくくなります。逆に撚りが強すぎると打ち込みにくく、絣あわせがしずらくなります。糸の長さをそろえる整経をします。

    工程6: 絣結び

    糸を横に張り、尺串を当てて、染めない部分に芭蕉の皮を巻きます。その上からひもを巻きつけて結びます。きつすぎると糸が切れ、ゆるいと染料が入ってしまうので、経験が必要な作業です。この芭蕉の皮は「ウバサガラ」と呼ばれます。

    工程7: 染色

    染料にはおもに車輪梅(テーチ)と琉球藍を使います。車輪梅は、細かく切った幹や枝を水と一緒に大鍋に入れ、煮出します。染液に絣糸を浸し、7分乾きします。ときどき蒸しを加えながら、気に入った色になるまで何度も染めを繰り返します。最低でも30回ほど繰り返します。

    工程8: 織りの準備

    染色が終ったら、結んであった絣を解いて、図案通りに並べて仮筬に通します。ずれたり、たるんだりしないように気をつけながら巻き取ります。綜絖通し、筬通しをします。

    工程9: 織り

    乾燥すると糸が切れてしまうので、霧吹きで湿気を与えながら織ります。5月、6月の梅雨の季節が最も織りに適しています。

    工程10: 洗濯

    織りあがった反物を水洗いします。そのあと大鍋に入れて灰汁で煮ます。水洗いして干します。米粥と米粉を発酵させた米酢(ユナジ)に浸して中和させます。2時間ほどしたら水で洗い、7分干しにします。手で布幅を整えます。最後にアイロンをかけて完成です。

     

     

  • クローズアップ

    土に触れる喜びから始まる芭蕉布作り

    生成りの地に茶色の絣が入った芭蕉布は、女性ならだれでも一枚は手に入れたいと思うのではないだろうか。カリッと軽く風通しのいいこの布は、芭蕉を育てるところから、手間と時間をたっぷりかけて作られている。

     

    「今時こんな美しい布はめったにないのです」

    那覇から車で2時間、左手にコバルトブルーの海を見ながら、名護からさらに北上すると、右側に点々と芭蕉の畑が見えてくる。芭蕉布の糸の原料になる糸芭蕉だ。バナナによく似た木で、幹を切り倒して繊維を取る。
    喜如嘉の芭蕉布会館を訪ねると、人間国宝の平良敏子さんが糸枠を手に、他の人にまじって黙々と仕事をしていた。広い部屋を歩き回る小柄な姿は若々しく、とても81歳にはみえない。
    芭蕉布は出来上るまでの工程が長く、信じられないほどの手間と熟練を要する布である。芭蕉を育て、繊維を取り、糸を績んで、染めて、織る。経験による勘が必要なので、単調な作業を何年も繰り返さないと技を身につけることができない。苦労の末に完成した布は軽くしなやかで、ためいきが出るような美しさだ。
    芭蕉布の魅力を広く世に伝えたのは柳宗悦だった。「今時こんな美しい布はめったにないのです。」という一文で『芭蕉布物語』を始めている。現代では、敏子さんの作品を見てとりこになる人が多い。天然の色も、乾いた布の風合いも、素朴な絣の柄も、より自然なものを求める今の人の感覚にしっくりくるのかもしれない。

    芭蕉の皮で手早く絣を結ぶ平良京子さん

    糸に触れているだけで楽しい

    敏子さんのもとで芭蕉布を作って14年になる平良京子さんにお話をきかせてもらった。京子さんは、母やおばが織物をしていたので昔から道具にはなじみがあった、という。手仕事が好きで、保母として働きながら手芸や土いじりをしていたが、もっと深くやってみたくて芭蕉布の道に入った。
    小声で控えめに語る京子さんは、芭蕉にすっかり心を奪われている様子だった。
    「入って1週間は糸繰りをしました。糸に触れているだけで楽しくて、いい気分になりました。芭蕉の繊維に魅力があるのでしょうか。そのせいか、これまで苦しかった記憶はありません」
    織り始めて2年たったころ、初めてツバメの柄の絣ができたときは、とてもうれしかったという。

    織りは全体の100分の1、それまでが長い

    「畑から始められるところにもひかれます。土から布になるまでを、通して見ることができますから。土地の自然の恵にいつも触れていられる喜びがあります。」
    1反分の糸を取るには200本もの芭蕉の木が必要になる。いい糸はいい畑からと言われるだけに、糸芭蕉の栽培は大切な最初の段階。肥料を入れたり、葉や芯を切り落とすといった作業が欠かせない。ときには工房の人たち全員が畑に出て一日中農作業をする。
    刈り取って糸にするまではさらにたいへんだ。皮をはいだり、大鍋で煮込んだりと、手間のかかる作業が何工程もある。織りより、その準備のほうがずっと長い。京子さんは敏子さんに「織りは全体の100分の1」と教えられたという。
    「ひとつひとつの段階が次に響いてくるので手が抜けません。次の仕事のことを考えてやるといい製品になります」
    高温多湿を好む芭蕉は、南国にしかない植物。糸を触らせてもらうと、乾いているのになめらかな感触が心地よかった。風土にあった素材を使った沖縄独特の織りを、これからもずっと大切にしていきたいと京子さんは思っている。
    「今日中に仕上げてしまいたいんです」
    とつぶやきながら、足早に絣結びの作業に戻っていった。

    職人プロフィール

    平良京子 (たいらきょうこ)

    1952年生まれ。後継者育成事業に応募し、平良敏子さんのもとで14年の経験を積む。

    こぼれ話

    素朴でユニークな絣の柄

    芭蕉布の絣の柄は、暮らしや自然の中からモチーフが選ばれています。ひとつひとつ見ていくのは楽しいものです。喜如嘉芭蕉布事業協同組合理事長の平良美恵子さんに、呼び名の由来などを教えてもらいました。
    「麦の穂」は帯地に使い、お太鼓に柄がくるように結びます。「ゴーマーイ」は、回りを囲むもののことで、がに股で歩く人のことをこう呼ぶことから名付けられたのでは、ということでした。「クワ(小さいワ)ンカキー」は「環掛」と書き、鎖のような連なっていく模様です。「ハチジョー」は八丈島の絣の柄からきたものではないかといわれています。
    ほかにも、トゥイグワー(小鳥)、ジンダマー(銭玉)など、たくさんの種類があります。どれもシンプルなものですが、いくつか組み合せて、より複雑な模様にすることもあります。

    • クワ(小さいワ)ンカキー

    • 麦の穂

     

概要

工芸品名 喜如嘉の芭蕉布
よみがな きじょかのばしょうふ
工芸品の分類 織物
主な製品 着物地、帯、座布団、ネクタイ、袋物、のれん、テーブルセンター
主要製造地域 沖縄県/国頭郡大宣味村
指定年月日 昭和63年6月9日

連絡先

■産地組合

喜如嘉芭蕉布事業協同組合
〒905-1303
沖縄県国頭郡大宜味村字喜如嘉454
TEL:0980-44-3202
FAX:0980-44-3251

http://c8.x316v.smilestart.ne.jp/okinawa-wind/kijoka/

■関連展示場・施設

特徴

糸芭蕉からとれる繊維を利用して織り上げる芭蕉布は、沖縄の代表的な織物です。江戸時代には夏裃(なつかみしも)として人気がありました。軽くてさらりとした肌触りが独特で、盛夏の着物として現在も広く愛用されています。

Bashofu is a typical clothings of Okinawa made from fibers stripped from Itobasho (musa liukiuensis). It was popular as summer clothings during Edo period. It is still popular as summertime kimono as they are light and smooth touched.

作り方

3年間育てた糸芭蕉の茎を4種類に分け、木灰(もくはい)で炊き、竹ばさみでしごいて不純物を取り、繊維にします。1m足らずの繊維を細かく裂いて機(はた)結びにし、一本一本つないでいきます。撚(よ)りをかけ、絣結びをして天然染料で染めます。手織りの後、また木灰で精錬し、米酢に浸してから洗い、手のばしで仕上げます。芭蕉布は畑での原木の栽培から始まり長い工程を経て布になります。

Stems of three year old Itobasho are split into four parts, boiled and removed any impurities before fibers are taken out. The fibers are tied with a weaver’s knot to make them longer as each fiber is less than 1 meter long. The threads are twisted and ikat dyed with natural dyes. After it is hand woven, they are refined by wood ash, washed by rice vinegar and finished by stretching using hand. It takes a long time from the cultivation of Itobasho to completion of fabrics.

産地からの声

柳宗悦の「芭蕉布物語」に次のような一節があります。「今時こんな美しい布はめったにないのです。いつ見てもこの布ばかりは本物です」。喜如嘉の芭蕉布は、本物であり続けたいと願っています。洗うと縮みますので内上げくりこしをたっぷりととり、長目にお仕立て下さるようお願いします。