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TRADITIONAL CRAFTS

高岡漆器Takaoka Lacquer Ware

高岡漆器は、江戸時代の初めに、加賀藩の藩主前田利長が、現在の富山県高岡市に高岡城を築いたとき、武具や箪笥、膳等日常生活品を作らせたのが始まりです。
その後、中国から堆朱(ついしゅ)、堆黒(ついこく)等の技法が伝えられ、多彩な色漆を使って立体感を出していく彫刻塗、錆絵(さびえ)、螺鈿(らでん)、存星(ぞんせい)等多彩な技術が生み出されました。高岡漆器が、町人文化の中にしっかりと根づき栄えてきたことは、高岡の祭で使われる絢爛豪華な御車山(みくるまやま)にこれら漆器の技が集められていたことからもうかがえます。

This lacquer craft started at the beginning of the Edo Period (1600-1868), when the lord of the Kaga clan wielding power over the Hokuriku region built Takaoka castle in what is now Takaoka City. It was then that lacquerers began making all manners of household goods as well as chests and lacquered items of armor and weaponry.
Later the Chinese lacquering techniques of tsuishu and tsuikoku were introduced and techniques appeared using a number of colored lacquers and deep relief carving to produce a three-dimensional effect, and such wares as sabi-e using a grinding power mixed with the natural lacquer, raden using iridescent shell, and zonsei which is a colorful style with linear decorations, were all produced. Gradually with the ascendancy of the merchant classes, Takaoka Shikki became thoroughly established and flourished, and it was almost inevitable that an encyclopedic range of local lacquering techniques were used to produce the flamboyant decorations for the floats drawn in procession during Takaoka's own festival.

Cultivated by its long history, the most representative of Takaoka Shikki skills have all been kept alive. There is yuusuke-nuri done in the sabi-e technique with beautiful stones set in a ground of black lacquer, which has hints of red and green coloring. Then there is chokoku-nuri, the deep relief and multicolored ware that looks so three-dimensional. And then there is the glittering aogai-nuri using the rainbow effects of the inside of abalone and turban shells to produce flower and bird motifs or scenes of nature set into the lacquer ground. All are masterpieces of technique and design, and are part of the rich repertoire of styles used in the making of trays, boxes and other interior items.

  • 告示

    技術・技法


    彫刻塗にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    彫刻は、「肉付け」、「間すき」及び「地肌すき」によること。

     
    (2)
    下地は、彫刻部分にあっては生漆に松煙等を混ぜ合わせたものを繰り返し塗付することにより「すり込み地」をし、その他の部分にあっては生漆の砥の粉を混ぜ合わせたものを繰り返し塗付することにより「さび地付け」をすること。

     
    (3)
    上塗は、中塗及び中塗研ぎした後、赤色又は三色以上の精製彩ろいろ漆を塗付すること。

     
    (4)
    仕上げは、「古味付け・古味落とし」をした後、油砥の粉等でみがくこと。


    勇助塗にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    下地は、「布着せ」又は「紙はり」をした後、「地付け」、「きり粉地付け」及び「さび地付け」をすること。

     
    (2)
    上塗は、中塗及び中塗研ぎをした後、精製漆を塗付すること。

     
    (3)
    加飾は、「玉石付け」、「さび絵描き」及び「箔絵描き」のうち少なくとも二つの組み合わせによること。

     
    (4)
    仕上げは、「ろいろ塗」によること。


    青貝塗にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    下地は、「布着せ」又は「紙はり」をした後、「地付け」、「きり粉地付け」及び「さび地付け」をすること。

     
    (2)
    貝付けは、「胡粉はき・胡粉落とし」又は「さび巻き」によること。

     
    (3)
    仕上げは、「ろいろ塗」によること。

    原材料


    漆は、天然漆とすること。


    木地は、カツラ、トチ、ホオ若しくはヒバ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

     

  • 作業風景

    現在の高岡漆器には「青貝塗」「彫刻塗」「勇助塗」の3つの技法がありますが、ここでは「青貝塗」の工程を紹介します。工程は大きく分けると「木地工程」「下地工程」「青貝工程」「上塗り工程」に分けられます。

    工程1: 木地工程

    箱や棚などを作ります。特に文箱などは表面が微妙な曲線を描くようにカンナ一つで削りだします。

    工程2: 下地工程1地付け

    木地に貼り付けた布の目がきれいに埋まるように、目止めの粉を均一に塗ります。

    工程3: 下地工程2中塗り

    目止め処理が均一に行われた所に漆を塗ります。漆が乾いたら表面を研いで下地工程は終了です。

    工程4: 青貝工程1図案作成

    青貝工程とその効果を考えて図案を作成します。この工程は大変重要かつ創造的で、卓越した観察力と表現力が必要とされるのです。

    工程5: 青貝工程2貝裁ち

    図案を貝に写して貝を切り抜きます。直線的なところはまっすぐな刃物で「裁ち切り」、小さなものはノミや彫刻刀などで「突き切り」、動物や鳥など自由な曲線のものは針を使って切り抜く「針抜き」などをします。特に針抜きは熟練の技術が必要です。

    工程6: 青貝工程3青貝付け

    図案を木地に写してから、青貝を貼り付ける場所に薄く漆を塗ります。その漆の上に青貝を載せていきます。漆が接着剤となり貝が木地に貼り付きます。

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    工程7: 青貝工程4毛彫り

    青貝の下の漆がしっかりと乾いてから、人物の顔、花の芯等を極細の針で描いていきます。伝来の技術を駆使して表現の限界に挑みます。毛彫りが終われば青貝工程は終了です。

    工程8: 上塗工程1小中塗(こなかぬり)

    青貝の上も含めた木地全体に漆を塗ります。漆が乾いた後にノミなどを使って青貝の部分だけ漆をはぎ取ります。

    工程9: 上塗工程2上塗

    全体に上塗りを施します。漆が乾いてから全体を静岡炭で磨きます。次に呂色炭で磨き、最後は砥の粉を菜種油で練ったもので全体を磨き上げます。

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    工程10: 上塗工程3摺漆(すりうるし)

    生漆(きうるし)を薄くすり込むように塗ります。漆が乾いたら菜種油に角粉を混ぜたものを使って手のひらで磨きます。この作業を3~4回繰り返すと完成です。

     

  • クローズアップ

    貝の美しさを極限まで引き出す 高岡漆器

    高岡漆器には彫刻された木地に色漆を塗る「彫刻塗」、玉石象嵌(ぞうがん)や錆絵など多彩な技法をこらした「勇助塗」、華やかな色の貝で絵を描く「青貝塗」の3種があるが、今回は青貝塗の職人に話を聞いた。

     

    守ることと変えること

    青貝塗の作業は分業化されており、木地師・青貝師・塗師がそれぞれ連携を取りながら製品を作っている。木地師が木で箱や器などを作り、青貝師が貝を貼り付け、塗師が下塗りと上塗りを行う。今回取材した武蔵川義則さんはその中では青貝師にあたる。図柄を考え、薄く削られた貝を鳥や花の形に切り抜き、木地に貼り付けるのが主な仕事だ。「一目見て高岡の漆器だとわかる伝統的な図柄を大切にしたいです。」と語る一方で「現代の生活に溶け込むようなデザインを考えています。」とも言う。守るべきことな何なのか、新たに変えるべき所はないか、といつも意識している。手がけている製品はお盆や文箱、コンパクトな箱など実用品が多い。

    武蔵川義則さん。昭和24年生まれ。最近よく飲むお酒は「勝駒」

    「貝がきれいに見えるように作りなさい」

    貝は夜行貝、白蝶貝、黒蝶貝、メキシコアワビ貝(耀貝)、アワビ貝を使う。貝を研ぎ出す(薄くする)職人は大阪にいて、そこで厚み約0.1ミリに仕上げてもらう。磨き上げられた貝をよく見ると一枚一枚色や模様が異なる。その違いをうまく活かすのが武蔵川さんの仕事である。「今でも昔教わった師匠に『貝がきれいに見えるように作りなさい』と言われます。表現の仕方についてはいつも悩んでいます。」貝の目(木目のように筋がある)を縦にするのか横にするのか、どの貝をどこにどのように使うのか。花の時は?鳥の場合は?と考えなければならないことは多い。「素材の良さをいかに引き出すかは一生の課題です。」と武蔵川さんは語る。

    熟練の手は手際よく貝の上になめらかな曲線を彫る

    「使う味」が出てくるもの

    漆器は使えば使うほど味が出てくる。「子どもがいつまでも古いぬいぐるみを手放さないのは、いつも遊んで愛着があるからです。同じように漆器も使っているうちに傷が付き、『使う味』が出てくるものなのです。」漆は非常に丈夫な塗料で基本的に修復可能だ。その意味でいつまでも使い続けることができる。時と共に深い愛着がわいてくるのだ。高岡市の小学校は給食のトレーに一部高岡漆器を使っている。小さい頃から漆器に親しんでもらいたいという作り手達の思いが叶ったものだ。「今の人は漆器にあまり接していないから知らないだけで、実際に手にとって使っていけば、その価値がわかると思います」と武蔵川さん。“本物”を作っているという自負があるのでその言葉には説得力がある。

    後継者となる若い女性スタッフが働いている

    暮らしの中に漆器を

    いわゆる伝統的な青貝塗の卓(しょく)を前にして「職人は概してやりすぎる傾向がありますね」と武蔵川さんは目を細めて言った。買った人は気にもしないちょっとした違いを生むために手を抜かないということだろう。ところが、そのちょっとした違いを生むためには相当の努力と技術が必要になるのである。今後は買い手もそのことがわかるぐらいの知識と目を養った方がいいかもしれない。また「一人でも多くの人に漆の良さ、貝の良さ、素材の良さを知ってもらいたいですね。まずは直接見て触ってもらうことが必要です。そしてとにかく普段の暮らしの中で漆器を使ってもらいたいです。」と武蔵川さんは言う。「そのために値段の安いものから高いものまで色々な漆器を提供していきたいですね。」と漆器制作に新たな意欲を見せていた。

    自然の石に青貝塗をした新作は遊び心があり好評

    こぼれ話

    高岡漆器の貝

    一般に貝を貼り付けた漆器のことを螺鈿(らでん)と言いますが、高岡漆器では青貝塗と呼ぶのはなぜでしょうか。それは青貝塗の特徴の薄い貝に由来します。
    青貝塗に用いる貝は一般的な螺鈿と同じ約0.3ミリ厚のものと、青貝塗特有の約0.1ミリ厚のものと2種類です。この薄い貝を貼り付けたときに、下地の黒い漆が透けて貝が青く見えることから「青貝塗」と呼ぶようになったのです。
    ところでこの貝には色々な種類があります。最もよく使われるのがアワビ貝。特殊な青色とピンクが交互に輝くのが特徴です。夜行貝はヤク貝とも言われ、屋久島近海で採れるものを使います。光沢に落ち着きがあり、優雅な味わいの輝きをしています。その他フィリピンやニューギニア沖で採れる蝶貝や、メキシコ産のメキシコアワビ(耀貝)なども使われます。
    それぞれ特徴を持っており、比べてみると面白いものです。青貝塗を見るときには是非、じっくりと貝を見て自分好みの品を見つけてみてはいかがでしょうか。

    • 磨き上げられた貝は神秘的な色をしている

    • 様々な種類の貝がその美しさを競い合う

     

概要

工芸品名 高岡漆器
よみがな たかおかしっき
工芸品の分類 漆器
主な製品 盆、箱物、室内調度品
主要製造地域 富山県/高岡市
指定年月日 昭和50年9月4日

連絡先

■産地組合

伝統工芸高岡漆器協同組合
〒933-0909
富山県高岡市開発本町1-1
高岡地域地場産業センター3階
TEL:0766-22-2097
FAX:0766-26-9080

■関連展示場・施設

特徴

長い伝統に培われ、伝えられた技の代表的なものとして、うるみ色の地に玉石を貼り、錆絵(さびえ)を描く「勇助塗(ゆうすけぬり)」、多彩な色漆を使って立体感を出していく「彫刻塗」、あわびや夜光貝等、虹のような輝きをもった貝殻を使って、山水や花鳥等を表現する「青貝塗」があります。

A representative technique of this lacquerware tradition is "yusuke-nuri" which features a deep red base decorated with gems and stones, and "sabie" illustrated decorations. Other techniques include "chokoku-nuri" which uses a variety of colored lacquers to create three-dimensional designs, and "aogai-nuri" which uses abalone, great green turban shells, and other shells that have a multicolored shimmering quality to depict landscapes, flowers, and birds. How it is made

作り方

高岡漆器には「勇助塗」、「彫刻塗」、「青貝塗」の代表的な技法があります。板を組み合わせて作る指物、薄い板を曲げて作る曲物、ろくろを使った挽物に大きく分けられる漆器木地に、各技法を使った加飾が施されます。下地塗り、中塗りの堅牢な作業と、精巧な仕上げ塗りで、高岡漆器は作られます。

Takaoka shikki has three major styles: "yusuke-nuri", "chokoku-nuri", and "aogai-nuri". The wood that forms the core of the pieces is formed through joinery, bending, and lathe work, then finished with one of the lacquer techniques mentioned. The solid base coats and middle coats are first applied, followed by highly skilled topcoat application to create Takaoka shikki.

産地からの声

漆器は使い込んでいく程に味わいが出て、自分の宝になっていきます。