匠を訪ねて
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昔と変わらぬ伝統を引き継いで

江戸簾 : 田中耕太朗

2015年9月14日 青山スクエアにて制作実演中の田中耕太朗さんを訪ねました。

江戸簾の匠:田中耕太朗さん

江戸簾とは江戸時代から始まった簾。京都や奈良で作られている簾とは違い、当時高貴な身分であった江戸城、武家、神社仏閣などで使われるものと、一般庶民が使うものの両方を作っていました。それがいつしか融合しあい現在の江戸簾になったと言われています。

明治初期からの家業として

田中さんは5代目の江戸簾の作り手

田中さんが江戸簾を作るようになったのは、家がもともと江戸簾を作っていたからだそうです。
簾と一言にいってもその種類は様々。
「内掛すだれ」「外掛すだれ」「応用すだれ」「小物すだれ」
などが代表的な簾の種類。職人によっては得意なもの不得意なものがある場合もありますが、田中さんはどれでも手作業で作ることができます。

材料は自分で刈り取りに行く

契約している農家の方と話をして自ら使う材料を刈に行きます。残念ながら東京では簾に使える材料がないため、他の都道府県にまで行かなければなりません。ですが、自分のものは自分で調達するという教えから、今でもその手法を守っているそうです。調達しに行く材料の産地も一か所だけというわけではないので、その時に必要な材料が生えている場所に行くアクティブさも必要だそう。

簾も機械で作るような時代の中で

中国産の簾が日本に入ってくるようになってから、日本でも簾を機械で作るようになりました。中国産の安い簾に打ち勝つにはそれしかなかったのでしょう。

ですが、中には田中さんのように値段勝負ではなく、あくまで品質の良さを追求し続けた手づくりの簾を作っているところもあります。

田中さんいわく、手づくりで作っているように見せかけた機械作りの簾と、本当に手づくりで作っている簾では質にかなりの違いがあるとのことです。簾にはそれだけ職人の心が詰まっています。

手づくりの江戸簾を作るための桁(けた)

現代のスタイルに合った様々な簾を

コースターとしての簾

今回制作体験で実際に作ることができるコースター。
色の違いは材料の種類が違うためです。

間仕切りとしての簾

四枚折屏風の簾は和室にピッタリの間仕切り。
応用すだれの部類に入ります。

日よけや目隠し用の簾

外掛すだれと呼ばれるもので、「タケ」「ヨシ」「ゴギョウ」「ハギ」「ガマ」など種類も豊富で、色味もそれぞれ違います。

日本が誇れる文化としての江戸簾を

手づくりで作り続けるのも職人の誇り

手づくりは時間や手間がかかるだけではなく、技術も必要。素人がふらっと入ってきて、一年やそこらで出来るものではありません。
商売という概念でものを見るのであれば、手づくりは非効率的なものですが、手づくりをしている職人は商売をしているのではなく生業としてこの業界を選んでいます。

生業・・・生活をするための仕事。儲けるためにするものではない。

だからこそ田中さんは昔から続く江戸簾の「手づくり」にこだわっています。
時間や手間がかかるために中国産の簾より多少値段が高くても、それでもお客さんはついてくる。生業だと決めたものへの鍛錬を怠らない田中さんだからこそ、そういった自信が生まれてくるのでしょう。

受け継がれていく
       江戸簾

後継者について聞くと、今はまだいないそうです。ただ志願者はたまに訪れるそう。ただそのほとんどが、「会社勤めが合わないから」「一人で黙々と仕事をしたいから」「モノ作りが好きだから」などで、それではやっていけないと田中さんは言います。

今の職人は、材料調達から制作、そして営業、消費者とダイレクトに話をしたりなど、幅広い能力が求められているのが常。そういったことを理解したうえで、自分の能力を上げていける人ではないと、未来の後継者にはなれないそうです。



「こんなことを志願者にもすぐに言っちゃうから、なかなか後継者が現れないのかもしれませんね」と、田中さんは笑って言っていました。

普段田中さんがいらっしゃるのは株式会社田中製簾所。江戸簾が気になった方はこちらものぞいてみてください。