匠を訪ねて
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空間と自由な発想で描く久留米絣の世界

久留米絣 : 田中稔大

2016年11月1日 青山スクエアで制作実演中の田中稔大さんを訪ねました。

久留米絣:田中稔大

久留米絣は重要無形文化財でもあり伝統的工芸品にも指定されています。200年以上の歴史があり、「手で括る」「本藍染」「手織り」が特徴。また、一人の少女により考案されたと言われている伝統的工芸品で、着物の他に洋服やインテリアなどにも愛用されるようになりました。

この世界に入ったきっかけ

幼少のころから絵を描くのが好きだった

田中さんのお父様は、久留米絣の作り手で、田中さんが幼いころから近くにあった存在でした。

そんな田中さんは幼少のころから絵を描くのが好きで、両親の人物画などを描いていたそうです。

そして、短大では美術を専攻し写生を習うようになり、人物がだけではなく花なども描くようになっていきました。

短大卒業後に思うこと

短大を卒業した後も、しばらくは自由に生活をしようと思っていた田中さんですが、実家の久留米絣を継ぐなら早い方がいいと思い直し、卒業後すぐに家業を継ぐ決意をします。

その中で、田中さんが描くデザインも変わってきます。元々久留米絣のデザインは、抽象的なデザインだったため、田中さん自身も自分の感覚で抽象画を描くようになりました。短大のときに描いていたものとは違う描き方ではあったものの、田中さんは抽象画の中で自己流を見出していったそうです。

久留米絣の世界の中で

窮屈な世界観

久留米絣の伝統的なデザインは、同じ模様をパターン化していくものです。モチーフに用いられる数は、作り手によって違っていますが、布地いっぱいに描くのが一般的。

実際、田中さんのお父様の作品も伝統的な様式を取り入れています。

でも、このデザインは田中さんにとっては窮屈さを覚えたそうです。

久留米絣は、もっと空間にゆとりのあるデザインを起こしていってもいいんじゃないか、と田中さんは強く思い続け、新しいデザインを生み出すことにしました。

自分の感覚を研ぎ澄まして

昔ながらの久留米絣のデザインが決して悪いわけではないのですが、このままじゃいけないという思いが田中さんの中にありました。

久留米絣の制作工程は崩すことのできない伝統的な様式。でも、デザインなら進化させることができるのではないか・・・そう考えたそうです。

田中さんが感じる世界

立体的な風の世界

もっと空間を広く取り、さらに昔ながらの久留米絣の伝統を損なわないもの。そう考えて創られたのが、この着物です。

この着物は、風がモチーフになっています。
目には見えない存在を、自分の感覚だけで描き、更には遠目では見えないようにしている花の図柄にもこだわりが。

風は明るい色にしているため前面に出てるように見え、花は濃い色にしているため奥まっているように見る・・・こうすることによって一つの着物の中での立体感を表現しているのです。

この作品は、2016年に沖縄タイムズ賞(西武伝統工芸展)も受賞しました。田中さんの作品は風だけではなく、水をモチーフにしたものもたくさん存在しています。

これから先も作り続ける久留米絣

空間を大切にした作品

空間を大切にした作品作りをしていた当初は、周りから批判の声もありました。その中でも、田中さんのお父様だけは「好きにしたらいい」と言ってくれたそうです。

だからこそ、田中さんは自分を信じてこれまで作品を作り続けてきました。そして、空間を意識して作った作品が受賞し、ようやく世間からも評価されるようになったそうです。

伝統を守るのも大事ですが、守りだけでは廃れてしまうのが世の常。田中さんはそれを感覚的に知っているからこそ、新しい久留米絣の道を切り開こうとしているのかもしれません。

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そんな田中さんは現在青山スクエアの匠コーナー「久留米がすり 田中絣工房展」にて、11月2日まで出展中です。
是非この機会に、田中さんの作品を見に来てみてください!