匠を訪ねて~益子焼 飽きない益子焼を作り続ける行動力
2018年5月18日 青山スクエアで匠コーナーに出展中の大塚雅淑さんを訪ねました。
益子焼:大塚雅淑
19世紀半ば、茨城県の笠間から窯業の技術が伝えられ、益子で発展しました。
栃木県の伝統的工芸品で、壺や家庭用の素朴な日用品が多く作られているものの、昭和初期に後の人間国宝になる作り手によって、日用雑器から芸術品へと地位を高めていった背景があります。
益子焼は伝統的な技法と釉薬によって、力強さと温かさを兼ねそろえた陶器です。
登り窯の魅力
窯出しの楽しさ
益子焼の中で楽しいことは何ですか?と聞くと、大塚さんは窯出しで良いものが焼けている時は楽しいとおっしゃっていました。
大塚さんの家には登り窯はないのですが、他の窯元で登り窯を焚く時には大塚さんに声がかかるそうです。
すると大塚さんは自分の作ったものを持って、窯を焚く手伝いをします。そうやってお互いに助け合いながら、益子焼を作っているのです。
体力仕事の窯
登り窯は、ガス窯や電気窯とは違い時間と労力を使います。
1日で焚き終えることはなく、大体1~2日間焚いて登り窯の湿気を飛ばし、3日目で全体の温度を一定にさせてから、4日目で焚き終えます。
3~4日の間は、夜通し火を焚いている状態なので休む暇もありません。だから登り窯を焚く時に、大塚さんのように手伝ってくれる人の存在は重要なのです。
ちなみに登り窯を持っている人は年に1、2回焚くのが平均なのですが、大塚さんは色々な人から声をかけられて去年は3回も窯焚きをしたそうです。
いくつものことを点々とこなしていく
色々なことをするのは飽きるから?
「職人」という言葉を聞くと、何時間もじっとしたまま動かずに集中して物事に取り組んでいるイメージがありますが、大塚さんはろくろだけで何時間も通して行うということをしません。
基本的には1時間集中して行ったら立ち上がり、釉薬を作ったり、土を作ったり、すす払いをしたり、その時にできることを順番にこなしていきます。どの作業も、一定の時間が来たら別の作業に移るというように、時間で測って行動しているそうです。
同じことばかりをしていると飽きてしまうから、とおっしゃっていましたが、どの仕事もまんべんなく進めることができるので、効率的にもよさそうでした。
伝統的なものと革新的なもの
伝統的なもの
大塚さんの作る作品は、伝統的な益子焼が多くあります。
益子焼は最近、新しいものを取り入れようという動きがあるため、伝統的な益子焼の技術を使ったものを作っている人が減っています。
ですが伝統的な益子焼が好きなお客さんもいるため、その人たちが求めるものがない状態にはしたくないというのが大塚さんの考えです。
また、新しいものを求めるあまりに、益子焼の伝統的な技術を扱えなくなってしまうと、これからの人たちに伝統的な益子焼を伝えることができなくなってしまうので、自分が語り手となって繫げていきたいとおっしゃっていました。
革新的なもの
伝統的な益子焼を作っていきたいと思っている大塚さんですが、新しいものを考えないわけではありません。
大塚さんは、益子焼が食器類というイメージに縛られているので、それ以外のものも作っていけるようになりたいとおっしゃっていました。
大塚さんのお子さんは少年サッカーをしているのですが、サッカーチームに頼まれて、益子焼でトロフィーを作ったりもしています。
また、益子焼でメダルも作って、益子焼の可能性を広げていきたいそうです。
益子焼を海外へ
これからの時代を見据えて
これからの世の中、生活環境はこれまで以上に速いスピードで変わっていきます。
その中で、どうやって益子焼を生き残らせるのか、後の人たちに益子焼の伝統を伝えていくのかを考えると、日本だけに視野を向けていては狭すぎるそうです。
伝統文化を海外でも花開かせ次の時代へつなげる施策を・・・そうやって考えて日々を過ごす毎日だと、大塚さんはおっしゃっていました。
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今回お話をしていただいた大塚さんは、
匠コーナー「益子焼伝統工芸士 大塚雅淑展」で5月23日まで青山スクエアにて実演をしています。
ぜひ遊びに来てくださいね。