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【匠を訪ねて】
既成概念に捉われず好きなものを作っていく

南木曽ろくろ細工 : 小椋浩喜

2018年11月30日 青山スクエアで企画展に出展中の小椋浩喜さんを訪ねました。

南木曽ろくろ細工:小椋浩喜

南木曽ろくろ細工は長野県の伝統的工芸品です。白木の挽物が作られ、木曽漆器の木地に使われたり、南木曽ろくろ細工としてそのまま細工を施して盆や椀などが作られています。
今回取材をした小椋さんは、その中でも他の人とは少し違ったものを作ることで有名です。

家業としてそばにあった南木曽ろくろ細工

子どもの頃からずっと一緒

小椋さんの家では南木曽ろくろ細工が作られていました。

家兼工場というところだったので、物心がついた頃からは南木曽ろくろ細工がそばにあり、大人になったらこれを作る人になるんだと思っていたそうです。

「他に何かなりたいものがある」というような考えが入り込むすきもなく、真っ直ぐに南木曽ろくろ細工を見てきたのでしょう。

修行先は香川漆器

南木曽ろくろ細工の作り手が選ぶ修行先は、大抵は実家です。

ですが小椋家では小椋さんを香川漆器へ修業に行かせました。外のことも知った方がいいという父親の意向です。香川漆器は技術的な難しさはあったものの、元々の前向きな気持ちのまま素直に教えを自分の中で消化し実力をつけていきます。

和食器が似合わない日本人たち

日本人の生活の変化

修行先で習ったのは、木地作りの基礎と物づくり。

伝統的な物づくりも教えていただけましたが、クラフトが得意な先生だったので、ここで柔軟性を磨くことにもつながりました。

そして小椋さんは、お客様が本当に求めているものは何なのかということを深く考えるようになったそうです。

今の生活スタイルに合わせた物づくり

今の人が使いたいものは何だろう。今の人が喜んでくれるものは何だろう。今の人が探しているものは何だろう。

そんなことを考え続けた結果、小椋さんは洋食器をよく見るようになり、その形に木地を変えていけるのではないかと思い作り始めました。

そんな中で、小椋さんのオリジナル作品が生まれます。

南木曽ろくろ細工式スピーカーの誕生

まずは自分の好きなものを形に

小椋さんが作りだしたオリジナルのスピーカー。

スピーカーに興味のあった小椋さんは、これを南木曽ろくろ細工で作ることができないのかと思案し、作り上げたものです。生み出してから外観の作りは変わっていませんが、音に関しては変わってきています。

例えば夜中に、「こんな風にしたら音がもっと鮮明になっていい音楽が聞こえるかも!」と思いついたことを、翌日の昼に試すということを繰り返していますが、たいていの場合は、現状よりも音が悪くなったり、何も変わらなかったりということがほとんど。

ですが、失敗を繰り返しているうちに本当のひらめきが起こり、改良が成功することもあるそうです。そうやってスピーカーも日々進化を遂げているので、まだまだ今の状態が最終形状ではないとおっしゃっていました。

お客さんとの会話の中で生まれていく新商品

人好きのする性格

小椋さんの凄いところは他にもあります。それは、初対面の人とでもすぐに仲良くなるところ。

取材をしていて驚いたのは、実演をしている時に声をかけてくれたお客さんと意気投合し、一緒にお昼を食べてきたと笑いながら話している内容。

匠コーナーで実演をする作り手の人はたくさんいますが、初対面のお客さんとすぐに仲良くなって外に出かけてしまうという人は中々いません。

そんな小椋さんということもあり、お客さんとの会話を大事にしています。

新しいアイデアが生まれる瞬間

伝統的な物ばかりではなく、今の生活に合ったものを作り続けている小椋さんがヒントにしているのは、お客様との会話。

例えば、コーヒーフィルタやコーヒー豆を入れる茶筒のようなものが欲しいとお客様に言われたそうです。コーヒーは日本でも一般的に飲むものですが、茶筒に入れるのは何か違いますし、コーヒーメーカーのそばに置いておくのも違和感があります。

そこで白木の挽物で作った南木曽ろくろ細工が洋風の形をしていたら、コーヒー豆を入れるものとして合いそうだというのがお客様の感想。

小椋さんは、さっそく作ってみようと前向きに考えています。

些細なところに伝統工芸を

コップにもライトにも

伝統的工芸品は今の世の中に合わなくなってきているという人もいます。ですが、本当にそうだろうか?と疑問を抱いているのが小椋さんです。

本当はお客様も伝統的工芸品を探しているというのが、小椋さんの考え。ただ、今の生活用品にあった形の伝統的工芸品がないから、お客様が買わないだけ。

コーヒー豆の入れものもそうですが、他にもガラスのコップの下に敷く部分を南木曽ろくろ細工で造ったり、テーブルライトの縁を南木曽ろくろ細工で作ったりすると、喜ばれるのではないでしょうか?

もちろんそれは、南木曽ろくろ細工だけに限ったものではありません。漆であっても同じです。生活の彩りとして伝統的工芸品を取り入れることができます。

頭を柔軟にして考えていけば、まだまだ伝統産業も伸びるというのが小椋さんの考えです。

南木曽ろくろ細工 小椋浩喜展

今回取材をさせて頂いた小椋さんは、匠コーナー「南木曽ろくろ細工 小椋浩喜展」で12月5日まで青山スクエアにて制作実演をしています。

その期間は、南木曽ろくろ細工のスピーカーでの音楽も演奏中です。

また普段は長野県にある「けやき工房 カネキン小椋製盆所」にいますので、長野県に立ち寄った際には訪れてみるのもいいかもしれません。