秋田杉桶樽

秋田城遺跡から、15~16世紀のものとみられる桶に使った薄板、底板、取っ手等が発掘されています。
江戸時代初期の秋田藩家老の日記に、現在の雄勝町の酒屋で桶が使用されていたという記録が残っています。
角館町の青柳家には、19世紀前半の手桶、櫃、岡持(おかもち)が残っています。これは溜(ため)塗りで銅たが、竹たがが使われています。形は現在のものと同じです。

  • 告示

    技術・技法


    榑の木取りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「寸甫割り」は、割り楔を用いて丸太の末口から割ること。

     
    (2)
    「巾割り」及び「小割り」は、「目切れ」のないように行うこと。

     
    (3)
    荒削りした後、充分に乾燥させること。

     
    (4)
    「罫形」及び「正直台」を用いて「正直突き」をすること。


    たが作りは、次のいずれかによること。

     
    (1)
    竹たがにあっては、次の技術又は技法によること。

     
     

    たがに使用する竹は、「寒切竹」とし、「竹磨き」は、「甘肌」部分を残すこと。

     
     

    「身仕上げ」及び面取りをすること。

     
     

    たが編みは、「ねじり編み」又は「ぐみ編み」とし、巻数は、5巻き以上とすること。

     
    (2)
    銅たが及び真鍮たがにあっては、「重ね継手」又は「組み込み継手」によること。


    組み立て仕上げは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    使用する榑は、「赤身」、「白肌」又は「甲付き」とすること。

     
    (2)
    榑立てに補助釘を使用する場合には、竹釘を用いること。

     
    (3)
    「外目鉋」、「胴かけ銑」又は「丸鉋」を用いて「外丸」を仕上げ、「内目鉋」又は「丸鉋」を用いて「内丸」を仕上げること。

     
    (4)
    たがは、固定蓋があるものにあっては、4本以上、ないものにあっては、1本以上かけること。

     
    (5)
    木口の仕上げ削り及び面取りをし、たがを磨くこと。


    仕上げに塗り等をする場合には、「ろう拭き」、柿渋仕上げ又は「溜塗り」によること。

    原材料


    木地は、スギとすること。


    たがの素材は、マダケ、銅又は真鍮とすること。


    漆は、天然漆とすること。

     

  • 作業風景

    秋田杉桶樽ができるまでの工程を簡単にご紹介します。

    工程1: 木取り

    まず製品の大きさにあわせた扇型の木片「くれ」を作ります。材料になるスギの丸太を中心から扇型に割り(寸甫割り)製品の大きさにあわせ大体の大きさに割ります(巾割~小割)。木目の出し方によって「柾目ぐれ」「板目ぐれ」があります。作る製品によって使い分けます。

    工程2: 銑(せん)がり

    「ウマ」と呼ばれる作業台にまたがり、さきほどの木片を目的の寸法にあわせて削っていきます。このとき「銑」という独特の道具を使います。外側を削ることを「外銑がけ」、内側を削ることを「内銑がけ」といいます。

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    工程3: 正直(しょうじき)突き

    くれとくれの継ぎ目を作っていく工程です。「けがた」と呼ばれる定規をつかって正確な形をとっていきます。

    工程4: くれ立て

    より美しさが引き立つように木目と色を合わせ、くれを組立て円形状の外枠をつくります。つなぎ目には竹くぎを使います。形が崩れないように仮たがを使い仮止めをしておきます。

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    工程5: かんな仕上げ

    丸みをもった歯のついたカンナで内側と外側をカンナがけし表面を仕上げます。同時に「罫引き」を使い底板を入れるため溝を刻みます。これは「蟻切り」と呼ばれています。

    工程6: たがかけ・底入れ

    最後に事前に作っておいた竹のたがをはめ、底板を入れ、手足を使ってたがを締めていきます。外側から入念にくれを締めていき完成です。

     

  • クローズアップ

    秋田杉の持つ木目の美しさと手触りの感覚  秋田杉桶樽

    寸分の狂いなくひとつひとつのパージ(短冊状の小幅の板)を作り組み合わせる技と良質の秋田杉が出会ったとき、この美しく、使いやすい暮らしの道具になる。竹の箍(たが)と秋田杉のみを用い昔ながらの技を今に伝えるこだわりの職人、この道50年の鎌田勇平さんにお話を伺った。

     

    寒い秋田育ちの杉だからこの美しさと強さが出る

    「寒い所だから短期間に木が生長しない。つまり年輪の間隔が狭い。これが秋田杉で作る桶樽の最大の特長である美しさと強さを生むんです。」ひとつの製品をつくるにもたくさんの秋田杉から厳選し、木目、色を合わせるのに手間を惜しまない。合わせ方は企業秘密だそうだ。

    桶樽を作るための数多くの道具がならぶ。この”せん”という曲線をもつ道具も桶樽を作るための独特なもの

    立地条件に恵まれた能代に自然とこの伝統が根付いた

    「このあたりは北前船の寄港地であり、米代川流域の秋田杉の集まるところ。自然と桶屋、大工、鍛冶屋といった職業が繁盛する立地条件に恵まれていたんですね。」鎌田さんも弘化3年(1846)創業の老舗の11代目だ。江戸・明治にその技が開花し戦後の最盛期には秋田杉桶樽屋は約300軒を誇っていたが、昭和36年ごろからのプラスチック製品、アルミ製品の拡大や水道の完備で需要が激減。今では30軒たらず、職人も30名程度になっているという。しかし、今また「おひつ」をはじめ木の風合いが見直され出しているそうだ。

    食べ物という「生き物」は生きた木に入れてこそ味が落ちない

    たとえば「おひつ」にご飯を移すことは、移しかえるときにまんべんなく空気が入り米の変化が始まってうまみが出てくるということ。もちろん、炊き上がった米の温度と湿度をうまく調整すれば、冷めてもかたくならない。「そして、秋田杉は日本の米の糀菌と相性がいいんでしょう。檜や他の材質ではこうはいきませんね。」機能という点でも現在のハイテク電化製品を上回っているかもしれない。

    展示会への出張実演も楽しいお客様との出会いの場

    職人でありながら鎌田さんは積極的に昨今各地で開かれる伝統的工芸品の展示会へ実演に出かける。「お客さんと冗談を話すのが楽しみなんです。冗談を通じてお互いの人柄に触れる。でもね、これが案外買ってくれるんですよ。義理でも・・・ね。」こんな鎌田さんだからファンも結構多い。NHKの某スポーツキャスターもその一人とか。

    いろんな日常の道具を秋田杉とこの技でチャレンジする

    「高校を出て強引にこの世界に入ったけど実は『木工デザイナー』になりたかったんです。でもその時に見たいろいろなものづくりが今役にたっています。」杉の道具の魅力をもっと知ってもらおうと鎌田さんが考えたのが”テーブルウェア”。つまり食卓にのる器類への応用だ。中でも秋田杉の「ビア・ジョッキ」は自信作。「結露ができない、熱を逃がさない。だから泡が消えないんです。」この杉とこの技を生かした新しいデザインへの鎌田さんの挑戦、研究には終わりはない。「たくさん買って欲しいけど、大事に長く使ってください。もちろん痛んだり壊れたらいつでも直しますよ。」と地球環境へのやさしさも忘れない。「自分たちの技でこれらの材料に命を吹きかえる。それがわれわれの仕事なんです。」最後にそう熱く締めくくられた。

    快心のビア・ジョッキ。秋田杉と伝統の技とのコラボレーションが産んだぜひ持っておきたい究極の一品

    職人プロフィール

    鎌田 勇平

    伝統的工芸士。昭和8年生まれ。
    この度、鎌田さんをモデルにしたミュージカル「のしろ衆物語」ができたそう

    こぼれ話

    桶工法を使ったテーブルウェア

    秋田杉桶樽作りで伝承されてきた桶工法の技術は現在ではテーブルウェアの領域に生かされています。
    アイスペールやジョッキなど様々な作品群がありますが、いずれもきちんとしたセオリーを踏まえ、桶工法の良さを最大限に生かすことを目指してきた成果です。
    たとえば、一見奇抜に見える秋田杉のビールジョッキは、冷たさを逃がさない、泡が消えないといったメリットがあります。
    また、昔ながらのおひつは、炊き上がった米の温度と湿度をうまく調整し、冷たくても固くならないなど、むしろ今の電気炊飯器の保温機能よりもずっと優れている点が多いと思われます。
    便利、快適さを追う中で、忘れられてきた自然の素材の良さがまさにここにあります。
    我々の食卓にもぜひ欲しい逸品ばかりです。

    • 木のぬくもりが感じられる樽やジョッキなど

     

概要

工芸品名秋田杉桶樽
よみがなあきたすぎおけたる
工芸品の分類 木工品・竹工品
主な製品櫃(ひつ)、菓子器、花器、酒樽、銚子樽、ジョッキ、すし桶、風呂桶、傘立
主要製造地域大館市、能代市、秋田市、横手市他
指定年月日昭和59年5月31日

連絡先

■産地組合

秋田杉桶樽協同組合
〒016-0895
秋田県能代市末広町4-3 (有)樽富かまた内
TEL:0185-52-2539
FAX:0185-55-1527

http://www.chuokai-akita.or.jp/oketaru/

特徴

天然秋田杉は、年輪が揃っていて木目が細かく、美しく、香りが良い上に、伸び縮みが少ないため狂いが生じにくい等、優れた特性を持っています。秋田杉桶樽の木の温もりは、生活に潤いと豊かさを与えてくれます。

作り方

製作工程は6つに大きく分けられます。丸太から柾目(まさめ)板、板目板の「榑(くれ)」という短冊状の小幅の板を作り、それに外銑(そとせん)、内銑(うちせん)をかけて外形を整えます。 「榑」を輪のように立てたものに、たがをかけ、底や蓋(ふた)を付け、木地(きじ)を磨いて、合成樹脂塗料、柿渋等で仕上げます。

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