豊岡杞柳細工

杞柳細工の始まりは1世紀の初めまで遡り、奈良正倉院御物の中には、今も「但馬国産柳箱」が残されています。
円山川の荒地に生えるコリヤナギで籠を編むことから始まった杞柳細工は、豊岡が城下町となった時期に産業としての形が整いました。
江戸時代には、藩主が杞柳細工を保護奨励して専売制度を確立したことから、豊岡の製品が世に知られるようになりました。

  • 告示

    技術・技法


    柳行李にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「水漬」をすること。

     
    (2)
    「弓糸」には、「竹弓」を用いること。

     
    (3)
    「差し」は、「弓糸」を「さん木」に固定して行うこと。

     
    (4)
    「編み」は、「押え木」で固定して行うこと。

     
    (5)
    「孫入れ」をすること。

     
    (6)
    「山起し」には、「当木」と木鎚を用いること。

     
    (7)
    「縁巻き」には、「とじ」を用いること。


    小行李にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「水漬」をすること。

     
    (2)
    「弓糸」には、「竹弓」を用いること。

     
    (3)
    「編み」は、「押え木」で固定して行うこと。この場合において、「編み」は、「平編」及び「山編」によること。

     
    (4)
    「縁巻き」には、「とじ」を用いること。


    柳籠及び籐籠は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「柳割り」をする場合には、「割り子」を用いること。

     
    (2)
    「面取」をする場合には、「幅決め」を用いること。

     
    (3)
    「水漬」をすること。

     
    (4)
    「底編」は、「割十字底編」、「十字底編」、「井桁底編」、「米字底編」、「小判底編」、「角底編」又は「共底編」によること。

     
    (5)
    「共底編」をしない場合には、「立芯曲」をした後、「縄編」をすること。

     
    (6)
    「側編」は、「並編」、「縄目編」、「飛編」又は「変わり編」によること。

     
    (7)
    「縁組」は、「共縁」又は「巻縁」によること。

     
    (8)
    「蓋編」する場合には、「並編」、「縄目編」又は「飛編」によること。

    原材料


    主材料は、コリヤナギ又は籐とすること。


    使用する竹材は、マダケ、モウソウチク又はこれと同等の材質を有するものとすること。


    使用する糸材は、麻又はこれと同等の材質を有するものとすること。


    使用する側補強材は、帆布若しくはこれと同等の材質を有するもの又は皮革とすること。

     

  • 作業風景

    豊岡杞柳細工というと、柳行李や飯行李が古くから有名ですが、ここではバスケットを参考に製造工程をみてみましょう。

    工程1: 底編み

    まず底の部分から編んでいきますが、編みあげるうえでの軸となる「たてり」となる太い丸木の柳を並べます。そしてそのたてりに直角に「あみそ」となる細い柳で編んでいきます。あみその引っ張り加減によって出来あがりが違ってきます。寸法通りに編みあがっているか注意しながら編んでいきます。

    工程2: 蓋(ふた)編み

    次いで蓋を編みますが、底の部分よりたてりを多くします。あみそは細い見映えのする柳を使います。編みあがったら蓋のカーブに合わせます。

    工程3: 底を木型の底に固定し、たてりをさす。

    たてりの位置の印を確認しながら印と印の間に平とじで穴を開けていきます。穴を開けたところに切り口が下に向くよう「たてり」を差していきます。そして「たてり」を折り曲げながら縄編みでかためていきます。そして2周ほど編んでたてりの両側に添え芯をします。

    工程4: 側編み

    3本の丸木で縄編みした後、「並編み」「飛び編み」「もず編み」「鎧編み」等20数種類もあるいろいろな技法でだんだんと登っていきます。必要なところまで編み上がったら、木型を抜きとって「縁組み」をします。「拝み縁」という技法で、蓋とぴったりしまるようにします。最後に立ったたてりが2本になったら、とじを使いながらそれぞれのところへ通して編んでいきます。そして最後に不要の柳を小刀で切り落とし形を整えて身の部分の完成です。

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    工程5: 上蓋編み

    底と同じように型にあわせて同じように編んでいきます。

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    工程6: 取っ手を作る

    輪にした「籐」を芯にして、薄くした柳を巻いて取っ手を作ります。

    工程7: 取っ手と蓋を取りつける

    三つ編みにした柳のひもを身に通して蓋とつなぎます。これで完成です。

  • クローズアップ

    新しく生まれ変わる豊岡杞柳細工

    ひと昔前まではどこの家の押入れにもあった柳行李(やなぎごうり)。引越しや旅には欠かせないものだった。また弁当箱として重宝したのも飯行李(めしごうり)だった。こうした一世を風靡した豊岡の杞柳細工は今や忘れ去れようとしている。はたしてその将来はどうなるのか、この道40年の伝統工芸士に聞いてみた。

     

    柳の柔らかさと強さ

    「見た目はとても柔らかく、それが人を引きつけていくのでしょう。でも素材そのものは非常に固く強いのです。」と語るのは伝統工芸士の八木田昌男さん。なるほど外見は柔らかく、つやがあり、時には涼しさを感じさせるが、触ってみるとしっかりとした作りになっている。八木田さんは「素材の良さが杞柳細工の持ち味」という。そもそも杞柳とはどんなものなのだろうか。杞柳とはヤナギ科ヤナギ属の「コリヤナギ」のことである。普通の、枝が下垂している柳とは違い、水辺に生育する落葉低木である。吸湿性が高く、虫が寄りつきにくいという特性を持っている。そのため衣装箱や弁当箱の材料に使われてきた。乾燥しているときはとても固いが、水分を含むと柔らかくなり加工しやすくなる。

    編み組みの作業風景

    手間のかかる栽培・皮むき

    需要の多いときは原料が全国から豊岡に集められ、原料に苦労することなどなかったが、今では自分たちで制作する分を栽培している。畑に植え、毎年秋刈り取り、冬越しさせ、そして春になったら、2、3本ずつ田んぼに挿す。そうすると新芽が出て、皮と茎との間に樹液が回り剥がれやすくなる。「このときだけです。簡単に剥げるのは。このとき皮をむくわけです。」と八木田さんはその微妙なタイミングを説明してくれる。また皮をむいた後も川の中できれいに洗い、ぬめりを落として、陰干しして土用をすぎてから使うとのこと。原料は太いままのものから、細く裂いたものなど準備しておく。作るときは材料を水にぬらしながら作るが、乾燥すると固くなり作業しにくくなるので、夏でも冷房をつけず作業することも多いという。とても手間のかかる仕事ではあるが、それが杞柳細工の奥の深さになっているといえる。

    時代の流れ

    戦後も買い物篭やバスケットの生産に追われ、昭和48年のオイルショックのときも需要は落ちなかった。でも昭和52~53年頃中国から大量の製品が輸入されると急激に需要が落ちた。「そのときは本当に大変でした。なかには、中国からの半製品を豊岡で加工するということもありました。粗悪品であっても安いほうが支持されましたね。」と当時を振り返る八木田さん。

    杞柳細工のアタッシュケース

    引き継がれる伝統

    需要減によってその存在意義が変わらざるをえなくなった。すなわち実用品から工芸品への転換である。本来のコリヤナギの特性がもつ価値をどのように伝えていくか。伝統を引き継ぐ人をどののように育てていくか。現在、八木田さんは初心者コースで30名、専門者コースで11名に教えている。初心者コースから専門者コースへ随時2~3名が進級されている。そこでは新しい試みがたくさん行われている。草木染め、漆染めなどである。草木染めはフキ・ツツジ・オニノゲシ・ウラジロカシ・クズなどを原料にしている。漆は今はカシューを主体にしている。形も今風にアレンジされ自由な作品が生まれている。講習生の多くは主婦の方たちであり、これまでの職人の仕事というより工芸士・作家へその質がかわっていっている。伝統工芸が、新たに市民レベルの参加をえて生まれ変わっている。再び息づいてきたのである。

    専門者コース講習中風景

    職人プロフィール

    八木田昌男 (やぎだまさお)

    大正15年(1926)生まれ。
    杞柳細工40年以上・伝統工芸士。長年にわたり県の工芸指導所の職員をされた。愛情と熱意を持って教えられているのが伝わってきます。

    こぼれ話

    「風前の灯」状態からの脱出

     

    • 動物の形の杞柳細工

    • 田中榮一理事長

     

概要

工芸品名 豊岡杞柳細工
よみがな とよおかきりゅうざいく
工芸品の分類 木工品・竹工品
主な製品 柳行李(やなぎこうり)、バスケット類
主要製造地域 豊岡市、養父市、美方郡香美町
指定年月日 平成4年10月8日

連絡先

■産地組合

兵庫県杞柳製品協同組合
〒668-0801
兵庫県豊岡市赤石1362
TEL:0796-23-3821
FAX:0796-24-0913

特徴

自然木の味わい、強くしなやかな風合い、柔らかさと粘りを生かしながら、職人の手によって一つ一つ編み上げていくカゴの技法には、縄編み6種類、側編み(そくあみ)33種類、縁組(ふちぐみ)18種類があり、製作する人の意図によって様々な作品が出来上がります。

作り方

杞柳細工は、コリヤナギや籐(とう)の持つ、水に浸すと柔らかくなり、乾くと堅くなる性質を利用して、編み上げていくものです。行李類はヤナギを麻糸で編み上げ、縁掛けを行って仕上げます。籠類は底編みの後、木型に付け、立芯曲げ(たてしんまげ)の後、縄編みで固定し、側編みを行い、編み終わったら木型を抜き、縁組を行い仕上げていくもので、それぞれの段階で各種の技法を用いて作品に仕上げます。

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