真壁石燈籠

茨城県

茨城県真壁地方は、質の良い花崗岩(かこうがん)が採れることから、古くから石を生活用具として加工、利用してきています。
この地方の石材業の起こりは、室町時代末期に真壁町長岡地域一帯で始められた仏石作りであると伝えられています。真壁石燈籠として確認できるものとしては、真壁町の寺院境内にある、文政7年(1824年)に製造されたものが最も古いとされており、これを作った石工によって技術・技法が確立されました。

  • 告示

    技術・技法


    石の型造りは、主要工程において「のみ」、「はいから」、「こやすけ」、「両刃」、「びしゃん」及びこれらに類する道具を用いて、次の伝統的な技術又は技法によること。

     
    (1)
    原石又は荒石の墨出しは、差曲を用いて彫りの変化部の境界線を描く「矩出し」又は「面取り」の技法を基本とし、瘤の部分は「こぶはつり」によること。

     
    (2)
    墨出し後は、「荒切り」、「中切り」、「へりむしり」、「角とり」「片刃払い」又は「たたき払い」により整形すること。

     
    (3)
    彫りは、「突彫り」、「沈め彫り」、「透かし彫り」、「浮かし彫り」又は「肉彫り」によること。

     
    (4)
    仕上げは、「のみ切り仕上げ」、「びしゃん仕上げ」、「たたき仕上げ」、「消しつつき仕上げ」又は「筋消し仕上げ」によること。


    接合するばあいにあっては、火袋の上下を除き、ほぞ接ぎによること。

    原材料

    真壁御影石又はこれと同程度の品質の石であって、「帯」のないものとすること。

  • 作業風景

    石燈籠は、宝珠、笠、火袋、受(中台)、竿、地輪(下台)の6つの部分から成っています。各部ごとに墨出しから始めて仕上げ、最後にほぞ組みで積み上げて燈籠として完成します。
    完成に至るまでには、開発された18の伝統的技術・技法が使用されます。墨出しから、荒切りまではすでに700年代に確定されたものであり、仕上げに向かう他の技術は1300年から1500年代に改良が加えられたものです。のみ、びしゃんなど、技術を支える道具類も子弟相伝の枠内で石匠のたゆまぬ研究によって確定したものです。

    工程1: 石の選択

    地層でできている石には節目があり、その石の目をよく見極めないと、割れてしまうことになります。石の選択も重要な工程のひとつです。
    墨出し各部分ごとの寸法、形を石に墨付けしていきます。ここでも燈籠の良し悪しが左右される、気の抜けない工程です。
    墨出しが終わると、各部分ごとに、荒どりをした後、のみ、びしゃんなどの道具で根気よく手彫りで仕上げていきます。

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    工程2: 宝珠(石燈籠のシンボルとなる部分)

    1.原石から笠との接合部をほぞ組みするためのほぞを切り出します。
    2.受花下部と頭の先端部の形を作ります。
    3.頂点の先端部の形を作ります。
    4.受花を完成させ、宝珠全体の細部を整えます。

    工程3: 笠(笠の柔らかなアールも長年培った経験と技術、勘がたより)

    1.およその形を整えて荒取りします。
    2.下面全体の形を整えます。
    3.傾斜面を仕上げ、帯をつけます。宝珠のほぞを受けるほぞ穴を削ります。
    4.下面を削って火袋を納めるくぼみを浅く作ります。紋様を刻み込み、全体を整えます。

    工程4: 火袋

    1.紋様などの彫刻をほどこします。
    2.火口を切り込みます。
    3.火口の内部を削って空洞にします。(空洞をつくるのは高度な技術が必要)
    4.火口の墨出し線にそって火口を抜きます。火袋全体を仕上げます。

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    工程5: 受(中台)

    1.側面や受花部分を削って(受台花切り)下面に柱のほぞと組み合わせるほぞ穴を作ります。
    2.受花、紋様を完成させます。

    工程6: 竿(柱)

    燈籠全体の重量を支えるためより上質な石が使われます。他の部分に比べて紋様は単調ですがふくよかな丸みをを表現するためには経験と技術が必要です。
    1.上、下の面を側面に対して水平に整えます。
    2.受と地輪とに組み合わせるほぞを上下に切り出します。
    3.帯や紋様を入れて仕上げます。

    工程7: 地輪(下台)

    1.およその形を整えて、側面と下面とが垂直になるように削ります。
    2.反り花のつらを作って反り花紋様を入れます。
    3.柱のほぞを受けるほぞ穴を掘り、細部を仕上げて全体を整えます。

    工程8: 積み上げ

    完成した各部分をほぞ組みで積み上げて、重厚かつ繊細で優雅な真壁石燈籠が完成します。

     

     

  • クローズアップ

    真壁石燈籠 クローズアップ

    庭とのベストマッチング、真壁石燈籠

    その起源は鎌倉時代にまで遡ることができる真壁石燈籠。古くから加波山より採掘される良質な御影石を使用し高白度の色調を持つ。そして、歴史が産み出した、数百にも及ぶ伝統ある形。何百年の時を越えて、あなたの庭にもベストマッチする石燈籠がきっとあるはずだ。

     

    庭と一体となり、はじめて真壁石燈籠に魂が入る

    石燈籠というと、どれも同じような物という単純なイメージを持っていないだろうか。しかし、実際の石燈籠の世界は奥が深く多彩、そして繊細優雅である。なぜなら、石燈籠はそれ単体では成立しない。庭、庭園と一体となってはじめて魂が入るものだからである。一体となるためには、ひとつひとつ、その庭その庭に合った石燈籠でなければならない。
    「自分の作った石燈籠がお客様の庭に入り、一体となっているのを見たときが一番感動するね。」そう語る、石工の加藤征一さんに真壁石燈籠の真髄を聞いてみた。

    石燈籠への熱い思いを語ってくださった石工の加藤さん

    何世紀もの時を越えて

    石燈籠、庭に置かれ魂が入ると何世紀にもわたって生きつづけ、年を経るごとに風合いを増し、趣きあるわびさびの世界を演出しつづける。何百年の時を越えて残っていくものだから、仕事には大きなやりがいを感じるという。だからこそ手抜きの許されない緊張感も生まれる。
    今回、加藤さんをはじめ、やはり石工の息子さん、父親の家業を継ぐため年季奉公に来ている25歳の若者に会って共通して感じたことは、皆、同じように真壁石燈籠の石工であることに誇り、魅力を感じているということである。一人ひとりの石工が誇りと魅力を感じて仕事をしている真壁石燈籠では、後継者不足といった心配はいらないはずである。

    子弟相伝の歴史の中で進化してきた道具

    個性ある表情をもつ石燈籠

    石燈籠はお客様の庭に合うものが作られる。雪見系(雪見形、勧修寺形、琴柱形など)立物系(法隆寺形、日枝神社形、春日形など)活込系(織部形、水蛍形など)層塔系(五重塔形など)自然型、創作型など、歴史のなかで生み出された伝統ある形から創作のものまで、何百という形のなかからお客様のためにひとつひとつ手彫りで丁寧に作られる。その繊細優雅かつ重厚感ある彫刻は庭と一体となる姿が目に浮かぶようである。
    ひとつひとつ手彫りで作り出される真壁石燈籠は、その作者によっても微妙に違う雰囲気をかもしだすという。それぞれが個性ある表情を持ち、味のある手作りの石燈籠をぜひ選んで欲しい。時を経るごとにその良さを実感できるはずである。

    この柔らかな丸みを手彫りで作り出していく

    全国へ世界へ

    加藤さんは、真壁石燈籠の良さを知ってもらいたいと情報の発信と交流にも熱心に取組まれている。作業場近くの県道沿いに「石工房」という展示場を設け、暇があればお客様への説明も惜しまない。自身のお店のホームページも公開しており情報の発信に努めている。
    先日にはニューヨークから問い合わせがあり、注文を受けたそうだ。
    また、伝統的工芸品同士、もっと積極的に交流し刺激、活性化しなければという考えも持ち、自身の展示場では長崎の波佐見焼の展示、販売も行なっている。一度「石工房」をたずねてみて欲しい、真壁石燈籠のイメージが加藤さんの職人としての誇り、人間としての温かさを通じて大きく膨らむはずである。

    加藤さんが県道沿いに設けた展示場のほんの一部

    職人プロフィール

    加藤征一

    1940年生まれ15歳から石材加工に従事、真壁石燈籠の伝統を受け継ぐとともに情報の発信、交流にも積極的に取組んでいる。

    こぼれ話

    日本庭園だけではない

     

    • 笠間焼の陶板と組み合わせたものその1

    • 創作型の創作燈籠

概要

工芸品名 真壁石燈籠
よみがな まかべいしどうろう
工芸品の分類 石工品
主な製品 庭園用石燈籠、神社仏閣奉納用石燈籠
主要製造地域 桜川市
指定年月日 平成7年4月5日

連絡先

■産地組合

真壁石材協同組合
〒300-4408
茨城県桜川市真壁町真壁402
TEL:0296-55-2535
FAX:0296-54-1855

https://makabeishi.jp/

■海外から産地訪問
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真壁石燈籠~産地訪問記事

特徴

硬白度の色調を持つ真壁石燈籠は、柔らかさのある、繊細優美な彫刻が特徴で、しかも重量感があります。苔が付くことにより、一段とその特徴が生かされ、日本庭園等に一層の優雅さと趣きを与えます。

作り方

石の型作りは、主な工程では「のみ」「こやすけ」「びしゃん」等の伝統的工具を用います。彫りを変化させる境目になる線を原石に描くことを「墨出し」といい、差曲(さしがね)を用いて墨出しをした後、伝統的工具を使って、「のみ切り仕上げ」「びしゃん仕上げ」「叩き仕上げ」という伝統的な技術・技法で仕上げます。接ぎ合せは、火袋(ひぶくろ)という燈籠の火を灯す部分の上下を除いて、ほぞ接ぎとし、燈籠のバランスを保ちます。

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