2019/11/6(水)

2つの伝統つなぐ帯 パレスチナ難民刺しゅう、着物と融合

刺しゅうの模様について打ち合わせをする山本さん(右)とダウラットさん=今年9月、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のアマリ難民キャンプで

 

 

中東のパレスチナ伝統の刺しゅうを、着物の帯に仕立て日本で販売する「パレスチナ刺しゅうOBI帯プロジェクト」が進んでいる。発案したのは、パレスチナなどとの文化交流を手掛ける東京都の自営業山本真希さん(41)。1948年のイスラエル建国で土地を追われたパレスチナの人々が、難民暮らしの中でも守り続けている刺しゅう。日本の着物文化の再生も目指し、山本さんは「2つの伝統を守りたい」と帯に願いを込める。 (蜘手美鶴)

 「私たちの刺しゅうがこんなふうになるのね。なんてきれいなの!」

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラマラ近郊にあるアマリ難民キャンプの集会所。今年九月、帯用の刺しゅうの買い取りに訪れた着物姿の山本さんが刺しゅうを帯部分に当てると、女性たちから歓声があがった。白地の布には、アーモンドの花や鳥の羽など伝統のモチーフが色鮮やかに縫い込まれている。「いい仕上がり」と山本さんにも笑みがこぼれた。

 プロジェクトの立ち上げは二〇一三年。ボランティアでパレスチナと関わりがあった山本さんは、民族衣装を彩る繊細なデザインの伝統刺しゅうに魅せられた。日本舞踊の名取でもあり、「和になじむ模様で、日本にありそうでない美しい帯になる」と発案した。

 地元非政府組織や難民キャンプの団体にデザインや色を指定して発注。約四メートルの布への刺しゅうには三~四カ月かかる。これを日本で職人が帯に仕立て、一本二十万~百万円ほどで販売。難民キャンプの団体から買い取る場合は、売り上げは全額渡し、女性たちの経済的自立につなげている。「女性でも難民でも、刺しゅうができればお金を稼ぐことができる」と山本さんは話す。

 パレスチナでは、刺しゅう技術は母から娘へ受け継がれる伝統だ。地域ごとにモチーフや縫い方に特徴があり、衣装の刺しゅうを見れば出身が分かるという。

 アマリ難民キャンプで刺しゅう作業をまとめるダウラット・アブシャウウィッシさん(51)も、六歳で母から刺しゅうを教わった。イスラエル建国と同時に両親は隣国ヨルダンに逃れて難民となり、自身は二十二歳で結婚してから難民キャンプで暮らす。「土地を追われた私たちにとって、受け継いだ刺しゅうは『私自身』を表すの。パスポートみたいなものね」と話す。

 母から譲り受けた刺しゅうを見せながら、「マキは何で私たちの刺しゅうで帯を作るの?」とダウラットさん。山本さんは「この美しい文化をシェアしたいの。日本人も最近は着物を着なくなった。お互いの伝統を守るために、この帯が必要だと思うのよ」と答えた。

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 刺しゅう帯やパレスチナ伝統衣装の展示会(駐日パレスチナ常駐総代表部主催)が六、七日に東京都港区のホテルアラマンダ青山で開かれる。六日は午後五時~同八時、七日は午前十一時~午後四時。入場無料で、事前予約が必要。申し込みは、総代表部=電03(5215)8700=へ。

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