2019/11/11(月)

古今東西 かしゆか商店【津軽塗の椀】

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは、青森を代表する伝統工芸「津軽塗」の工房。漆を塗る・研ぐ・磨く…を繰り返す美しい手仕事に出会った。

 

青森の弘前市郊外では、いたるところにリンゴ畑がある。今回訪ねた〈松山漆工房〉の隣にも。
最近、漆が気になっています。きっかけは漆で器を修繕する“金継ぎ”を習い始めたこと。漆の奥深さや艶やかな美しさに興味が湧いたんです。そんな時、着物の小紋柄のような細かいドット柄の漆椀を見て、「この模様はどうやって生まれたの?」とびっくり。それが青森の津軽塗だと聞いて、どうしても見てみたくなりました。

「津軽塗は江戸時代中期、弘前藩のもとで発達した伝統工芸。最初は刀剣の鞘を飾るために使われ、やがてお膳やお椀にも用いられるようになりました。漆を何層にも塗り重ねた表面を、平らに研ぎ出して模様を表すのが基本です」

と話すのは、〈松山漆工房〉の松山継道さん。お椀ひとつ完成させるために48の工程が必要と言われるほど手間のかかる工法は、300年以上変わっていないそうです。

Purchase No. 20【 津軽塗の椀 】漆を”研いで”模様を表す 北国の可憐な手仕事。津軽塗の代表的な技法「七々子塗」の椀。希少なオレンジ色の顔料を混ぜた朱漆を使い、雪輪の模様を重ねた。
さて、伝統的な塗り方にも種類がある中、工程を見せていただいたのは、ドット柄が可憐な「七々子塗」。ナナコは魚の卵のことなんですって。昔の人のネーミングセンスが、何だかかわいい。
漆をつけた仕掛けベラで模様を施す。
まずは挽き物職人がつくった木地に刷毛で漆を塗り、漆が濡れているうちに菜種を蒔きつけます。シャラシャラシャラ、乾いた音が耳に気持ちよく響いてくる。
松山継道さんと。
「漆を乾かした後で、ヘラを使って菜種を剥ぎ落とすと、クレーターが残るんです。ここに黒漆や朱漆を重ね塗りして研ぎ出すことで、輪っか状の模様が現れます」

なるほど、津軽塗の模様は、地道な“研ぎ”によって生まれるんですね。最初は華やかに思えましたが、よく見ると奥ゆかしいのはそのせいなのかもしれません。

「たとえば輪島塗では、漆の上に模様を描きます。でも津軽塗は、“漆の下”に模様をつける。この模様がうまく出てくるかどうかは、表面を研ぎ出して初めてわかるんです。いったん研ぎ始めたら一切修正ができないので、まったく気を抜けない。毎回ドキドキです」

「色にも艶にも奥行きがありますね」とかしゆか店主。
同じように塗って研ぎ出しても、ひとつひとつ見ると全部違う。だからつくりがいがあるし、買う側にとっても選びがいがあるのでしょう。そんなわけで、今回の買い付けは、七々子塗の汁椀に決定。リンゴを思わせる丸い形にかわいいドット。「何度も塗り重ねてあるから丈夫で壊れにくい」という点にも惹かれました。こんなお椀があったら、具だくさんのお味噌汁が一層おいしく味わえるだろうな、と想像が膨らみます。
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