名古屋伝統工芸わざもん衆祭と備前焼天地窯<菅形基道>作陶展のトークショー
本日から始まった特別展「名古屋伝統工芸わざもん衆祭」と、
匠コーナー「備前焼天地窯<菅形基道>作陶展」のトークショーが、
青山スクエアにて14時から開催されました。
今回はその時の様子をお伝えいたします。
最初に、事務局の武田さんに、
今回の特別展「名古屋伝統工芸わざもん衆祭」の話をうかがいました。
そもそも「名古屋伝統工芸わざもん衆」とは、
技を持った人たちが名古屋で集まったもの。
きっかけは百貨店の催事だったそうですが、
現在は名古屋市にも協力を得て活動しているそうです。
今現在集まっているのは、13業種。
伝統的工芸品や名古屋市の伝統工芸に加え、その他の工芸品もいる、
異業種の集まりは日本で初めて。
発足は2014年の7月のイベントに向けて開始されたので、
同じ年の3月頃から。
まだ2年ほどしかたっていないものの、
若手の人たちが伝統工芸に興味を持つのに貢献していると仰っていました。
次に、作り手の有松・鳴海絞の村口さんがお話をしてくださいました。
ブランド名「まり木綿」は、
村口さんのお名前「実梨(まり)」とコンビを組んでいる方の名前「木綿」から付けた名前。
村口さんは名古屋芸術大学でテキスタルデザインを専攻し、
事業で「有松・鳴海絞」を習ったのが、
きっかけでこの業界に興味を持つようになりました。
村口さんが行っている手法は、「板締め」。
布を三角に織り、
板で挟んで付け込んで色を付けます。
同じ染め方をしても、
同じ模様にならないところが魅力的だと言っていました。
一番売れている商品は、手ぬぐいと洋服。
あとは地下足袋。
地下足袋は紺色の物を白に脱色してから、
模様をつけるというのは他にはないもので、
人気商品だそうです。
室内で履くように買う人もいるのだとか。
最後に今後の展望はと伺うと、
今は「板締め」が主ですが「豆絞り」など別の技法を使ったり、
木綿だけではなく絹など他の素材も使ってみたいと言っていました。
続いて瀬戸織部の加藤さんがお話をしてくださいました。
元々家が窯元で、
100年ちょっと続いているそうです。
今回、特別展に持ってきた作品は緑のものが多いですが、
元々織部は古田織部さん好みの作品のことを指すので、
色の指定は無いようです。
加藤さんも、緑の他に黒だったり赤だったりするものも作っています。
ただ、織部の緑は、
瀬戸とか美濃の土でしか出せない色なので、
今回はあえて緑の作品を多く持ってきたとのことでした。
加藤さんはろくろとたたらが中心で、
絵はお母様が描いています。
元々分業制だったので、
お父様がいらした時も、お父様がろくろをし、
絵は描かなかったそうです。
毎年新しい商品を考えたりするんですかという質問に、
自分が欲しいと思ったものを作っていると言っていました。
例えば、さんまを食べていて、
ちょうどいい皿がないなと思い、
だったら作ってしまおうということで縦長のお皿を作ったりというイメージ。
そうやって、
どんどん使い勝手のいい食器が生まれています。
最後に、
陶器は作っているだけで良かった時代は終わり、
今はお客様の声を聞いて作り、
さらに自分たちで営業をしなくてはならない時代になったと言います。
ひと昔前よりは大変な時代ではあるものの、
やりがいはありますと楽しそうに話していました。
次に瀬戸組子の山田さんがお話をしてくださいました。
瀬戸組子は指定の工芸品ではありませんが、
とても技術の高い工芸品の一つです。
そんな瀬戸組子の魅力に惹かれた山田さんは、
独立を機に瀬戸組子も作るようになりました。
もともとは家具を作っていた山田さん。
今は兄弟ともに、
たくさんの瀬戸組子を作っています。
瀬戸組子の魅力は、
きちっとしていて、整然としているところだそうです。
ねじを使わずに作られているので、
少しでもズレが生じると、
品物としては失敗作となってしまいます。
今までの中で一番大きなものは、
1.5m×1mのついたて。
ですが、最近はクラフト系のイベントにも参加することが多く、
小物類も作っているそうです。
山田さんの作るものは北欧系をイメージするような、
やや洋風のデザインが多いのも特徴。
今後は男性的なデザインの瀬戸組子も作っていきたいとおっしゃっていました。
最後に、匠コーナー「備前焼天地窯<菅形基道>作陶展」の菅形さんがお話をしてくださいました。
備前焼35年の菅形さんは、
親が窯元というわけではありませんでしたが、
親戚に何軒かあったので興味を持ち始め、
自分で窯を開いたそうです。
菅形さんと言えば、
最近は猫の置物が多いのですが、
これはご自身の家で5匹の猫を飼っているからだそうです。
最近、4時5時ぐらいに目が覚めてしまう菅形さん。
起きた時にそばにいる猫を見て、
そのまま手びねりで猫の置物を作ります。
そして、気分が乗ってきたら仕事開始。
手びねりはやめて、ろくろを回し始めるそうです。
菅形さんは登り窯しか使っていないそうなのですが、
若い時には年に6回も窯を炊いていました。
ですが現在は、2、3回になってしまったそうです。
備前焼の難しいところは、
窯炊き。
釉薬をつけずに焼くので、
焼き方だけで変化をつけるのが特徴だからだそうです。
そのため備前焼で一人前の窯炊きを、
身につけるには30年は必要だとか。
今後はどんなものを作ってみたいですかという質問に対して、
菅形さんは後世に残るようなものを作りたい、
特に花器は自由度が高いため、
完成形がないのでキリがないと笑いながらおっしゃっていました。
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今回お話をしていただいた匠たちの展示は、それぞれ
特別展「名古屋伝統工芸わざもん衆祭」~5月25日までと、
匠コーナー「備前焼天地窯<菅形基道>作陶展」~5月18日まで開催しています。
土日も制作実演や制作体験もあるので、
ぜひ青山スクエアにお越しください。