女一代トークショーの様子
特別展「女一代のわざ 女性伝統工芸士展~作家とともに」初日、
14時から青山スクエアではトークショーが行われました。
今回は11名の女性工芸士の方に、
話をお伺いしました。
トップバッターはこの方・・・。
烏城紬は岡山県指定の工芸品で、
他の産地の紬よりも縦糸が少なく、横糸を撚りません。
そのため、着心地がよく軽い着物に仕上がるのも特徴の一つです。
現在は地域の公民館で、
何人かと一緒に製作をしています。
元々、須本さんの家では、
綿の織物を作っていたそうですが、
祖父の時代に絹糸に変え、「烏城紬」という名前になったそうです。
また須本さんは、
数年前に全国伝統的工芸品公募展の内閣総理大臣賞を取ったこともあり、
賞に選ばれた作品は、
今も家に飾っているとおっしゃっていました。
次にお話をしていただいたのは、
絣と言えば、久留米絣が有名ですが、
広瀬絣も昔は絣の名産地としてその名前をとどろかせていました。
久留米絣は細かい模様を得意とするのに対し、
広瀬絣は大きな模様を得意とするという違いがあります。
描かれる図柄は、
縁起のいいものとされており、
松竹梅や鶴、亀、寅などですが、
最近は幾何学的な模様も取り入れるようになりました。
広瀬絣は久留米絣と同じく、
糸の状態の時に染める「先染め」技法を使っており、
横絣や絵絣などで模様を現しています。
広瀬絣で使われている藍は、
天然藍で、
染め上げるまでに20~30回程度染めています。
そのため、ジーンズとは違い、
色落ちしないのが特徴です。
また、藍はもともと薬草として輸入されてきた物のため、
アトピーの方に着ていただいても、
肌荒れを起こすことはありません。
誰にでも気軽に着て頂けるのが、
広瀬絣だとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
東京手描友禅といえば、
全ての工程を一人で行うというイメージですが、
現在は他の産地でも分業制ではなくなってきているため、
東京手描友禅の特徴と言えなくなっているそうです。
ただそれでも、デザイン的なものを多く作っているのが、
東京手描友禅なのではないかとおっしゃっていました。
田邊さんは昔から絵が好きなことに加え、
物心つく前から着物を着ていたそうです。
大人になり、デザインの仕事をしようと専門学校に行った際、
とあるきっかけで東京手描友禅の世界を知り、
この世界に飛び込んだとおっしゃっていました。
今は若手の育成と、
自身の作品作りに時間を費やしているそうです。
次にお話しいただいたのは、
京友禅は加賀友禅と比べられることが多いそうですが、
違いはというと、
仕上の際に金色の刺繍糸を使うということでした。
布地に金色が入るので、
とても華やかになり、京都の優雅さが出てきます。
京友禅の業界ではほとんどが男性で、
伝統工芸士の資格を持っている割合も、
男性が100名なら、女性は5、6名程しかいないとおっしゃっていました。
また、京友禅は昔から分業制で作られているのですが、
20代の時に独立をした富川さんは、
最初から最後まで責任を持って作りたいという思いから、
一人で作っているそうです。
次に、お話をしていただいたのは、
平野さんは一度医療関係のお仕事をされていたそうですが、
仕事を辞めたあと、
趣味で陶器を作っていたのを仕事にしたいと思うようになったそうです。
始めは益子焼の産地に訪れた平野さんでしたが、
ちょうど作り手学校の募集の時期が終わったばかりでした。
そんな時、声をかけてくれた作家の方が、
平野さんの実家が石川県と知り、
だったら九谷焼があるじゃないかと勧められたそうです。
九谷焼の学校へ通い始めた平野さんは、
その後、絵付けへの興味が高まり現在に至っています。
生活の中で気軽に使ってもらえるような作品を、
今後も作っていきたいとおっしゃっておりました。
次にお話をしていただいたのは、
備前焼と言えば、釉薬を使わず、
土の色味をそのまま出しているのが特徴です。
川井さんは、親の影響もあり、この世界に入りました。
年に1度、登り窯を炊き、
作品を作っています。
独特な世界観を持つ川井さんの作品には、
熱烈なファンが付くほどです。
ただ現在、川井さんの後を継ぐ人がおらず、
後継者問題に悩まされているとのことでした。
次にお話をしていただいたのは、
美濃焼と言えば、「志野釉」、「黄瀬戸釉」、「織部釉」、を使っている人がほとんどなのですが、
加藤さんは「白雪釉」を使っています。
さらに、自然の葉っぱなどを貼りつけて焼くという、
独自の技術も持っているのが特徴です。
一番好きなものは何かと聞かれると、
「桜の葉っぱ」だと答えました。
桜の葉っぱは葉脈が、綺麗に出るため、
焼き物と相性がいいそうです。
作品を作る際には、
盛り映えがするようにと考えていると、おっしゃっていました。
次にお話をしていただいたのは、
青木さんの作品の特徴は、
花の図柄の絵付けです。
桜が好きだとおっしゃっていた青木さんは、
作品でも桜をモチーフにすることが多いとおっしゃっていました。
最近は、帯どめのブローチを伊万里焼で作り、
伊万里焼の世界を広げていっているそうです。
次にお話をしていただいたのは、
村上木彫堆朱は分業制で、
木地を作る人、彫りをする人、塗りをする人がいます。
その中で池野さんがしているのは、
塗りの工程。
よく鎌倉彫と比較されることがありますが、
鎌倉彫で使われる彫刻刀は丸いのですが、
村上木彫堆朱で使われる彫刻刀は角張っているものという違いがあるそうです。
村上木彫堆朱もだんだんと作り手が減ってきている為、
後継者不足に悩まされているとおっしゃっていました。
次にお話をしていただいたのは、
井尻さんは山中漆器の中でも、
装身具を中心に作っている方です。
天然石にデザインを施して、
美しいモノを造り続けています。
ただ使っているものが天然石ということもあり、
デザインのために削ったりはしないそうです。
そのままの形を活かしてこそ、
天然石を使う意味があるとおっしゃっていました。
最後にお話をしていただいたのは、
奈良筆のもっとも古いものは、
現在、正倉院に保管されていると言われています。
ただ、一般公開されていないので、
実物を見たことはないとおっしゃっていましたが、
その当時の筆のレプリカを作っているそうです。
その他にも、
田中さんは様々な形の筆を作り続けています。
筆は作れば作るほど、知れば知るほど、
奥が深く、
どんどんとその世界にはまっていったとおっしゃっていました。
ただ問題は、
現在、竹を刈る人が二名しかいなくなってしまったということ。
奈良筆も後継者問題で悩まされているようでした。
今回のトークショーの内容は、13日に行われたものですが、
14日にも同じように他の作り手の方を対象としたトークショーが行われ、
大反響の後、終わりました。
「女一代のわざ 女性伝統工芸士展~作家とともに」は1月25日まで行われ、
毎日、制作実演や製作体験がありますので、
いつもより華やかな青山スクエアに、
ぜひ足を運んでみてください。