匠コーナーで体験!「尾張仏具」の野依克彦さんを訪ねました

仏様を荘厳するための道具

愛知県名古屋市を中心に生産されている「尾張仏具」。仏具とは、仏様を荘厳するための道具のことです。元々は寺院において僧侶が使用する用具でしたが、仏壇が一般家庭へ普及するにつれ、仏具も一般家庭で使用されるようになりました。

野依 克彦(のより かつひこ)さんは、仏具の中でも、主に仏具の装飾金具(錺(かざり)金具)の製造を手掛けています。伝統工芸士でもあり、若い職人への技術指導や、「尾張仏具」の技術・技法を生かした現代生活に合う製品開発を精力的に行うなど、産地活性化のために昼夜尽力されています。

 

経済産業大臣が指定する伝統的工芸品のうち、仏壇・仏具の産地は17産地。北から南まで、日本全国に産地があり、日本人の暮らしに根付いてきた工芸品です。そのうち、仏具として指定されているのは「尾張仏具」と「京仏具」の2つ。

仏壇・仏具の製造には非常に多くの工程があり、木工・漆工・金工など、様々な伝統工芸の技が必要とされます。

 

尾張仏具は木製漆塗り製品が中心で、江戸時代初期から仏壇とともに名古屋城下において生産されはじめ、江戸後期には下級武士の内職として発展しました。明治期以降には問屋が中核となり、これらの良質な材料はそのままに、専門性の高い技術を持った職人の分業制により、多種多様で質の高い仏具を大量に生産。尾張地域が日本の中心にあることと問屋の力が強かったため、尾張仏具が全国に広く流通するようになりました。

-参考:尾張仏具技術保存会HP-

尾張仏具の未来を作る「錺アクセサリー」

野依さんは伝統的な錺金具の技術以外に鍛金・七宝・高肉彫・象嵌など多彩な技術も学び、その技術を錺金具作りに活かし多種多様、そして高度な製品作りに精力的に取り組み続けています。

その中でも特にアクセサリー製作に注力されており、伝統的技術と和のデザインを組み合わせたアクセサリーはその錺金具の技術を生かし、繊細緻密な表現に驚かされます。

“飾るを錺る”をコンセプトに、男のライフスタイルを飾るブランド「nanako」。釣り好きな野依さんらしく、魚モチーフのピンズやネクタイピンがラインアップされています。釣り好きな方への贈り物としても人気なのだとか。

冒頭の動画で製作されていたのはこの「錦鯉」。鏨で刻み、糸鋸で抜き、ヤスリをかけ、色付けを施す。錺金具とほぼ同じ技法・工程を経て魚のピンバッチは作られています。特に最終工程の色付けにもこだわりがあり、塗料は一切使わず、薬液により素材(銅や真鍮)を化学反応させることで、自然な色味が生まれます。そのため色落ちしにくいのが特徴です。
非常に繊細で緻密な表現は受け継がれてきた技があるからこそ。歴史と受け継いできた人の温もり、そんなストーリーが伝わる逸品です。


青山スクエアで行われた展示では、製作体験も開催され、尾張仏具の装飾金具「錺金具」の彫金技法を体験することができました。体験するアイテムでこちらのヘアカフスを選ぶこともできたので、今回の取材でも体験させていただくことに。

ヘアカフス

結び目にフックを引っかけるだけで使えるヘアカフス。「ポニーフック」とも呼ばれるこのアイテムがあるだけで、ヘアアレンジが苦手な方でも簡単におしゃれアップデートが叶います。

1枚の銅板に彫刻が施され、ヘアカフスへと形を変えていく。最後の仕上げは産地にて行われ、後日手元に届く。

銅板に描かれたガイドライン通りに鏨(たがね:彫金の際に用いる工具)を打ち込んでいくのだが、どうにもむずかしく、どうしても手元がぶれてしまいがちに。

野依さんに打ち込みの際の ”コツ” をお伺いしたところ、「鏨の根元までしっかり押さえてまっすぐ打ち込む」と教えてくれました。意識しながら打ち込んでみるもののやはり一朝一夕で身に付くものではなく、体験したからこそ分かる技術力の高さというものを感じたひと時でした。

根元まで押さえて、まっすぐ打ち込む。野依さんの動きは一定のリズムでいっさいのブレがない。

体験中は野依さんがしっかりと指導してくれます。うまくいかないな、と煮詰まった時にタイミングよくサポートしてくださるのはさすがのひと言。


体験の機会があった際にはぜひトライしてみてください。ほんの一端を体験するだけかもしれませんが、その工芸品への理解が深まり、今までとは違った視点で工芸品を見ることが出来たり、匠との出会いを楽しめるようになるのではないでしょうか。


*掲載商品に関するお問い合わせ先*青山スクエア|03-5785-1301

 

 

 

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