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TRADITIONAL CRAFTS

牛首紬Ushikubi Pongee

牛首紬の名は、その生産地である白山の麓の牛首村(現在の石川県白峰村)の地名に由来します。平安時代末期の平治の乱で敗れた源氏の落人大畠氏が、牛首村に逃れて来て山城をかまえた時、同行していた大畠氏の妻たちが機(はた)織りに優れていたため、その技を村の女性たちに教えたところから始まったと伝えられています。文献では江戸時代初期の「毛吹草」の記述が最初です。江戸時代後期には全国に広く販売されたと言われており、昭和10年前後に生産のピークを迎えました。

Ushikubi Tsumugi is named after a village called Ushikubi, which lies at the foot of Mount Hakuzan, where this fabric is produced. This village is now called Shiramineson and is in present-day Ishikawa Prefecture.
Ohata, a fugitive from Minamoto's defeated armies at the battle of Heiji in 1159, fled with his wife to Ushikubi where they hid themselves. The women with him were skilled weavers and taught pongee weaving techniques to the womenfolk of the village. First mention of the cloth is found in Kebukigusa, a travel chronicle published around 1643. It is said that by the end of the Edo period (1600-1868), it was widely sold throughout the country reaching peak production around 1935.

The special feature of this cloth is the fact that it is woven with slubbed silk thread reeled from dupion cocoons, each created by two silk worms. Its distinctive luster and slubbed thread give it a simply, folk-cloth feel combined with a natural robustness and sense of quality that only really becomes evident when the cloth is dyed. The cloth is used to make such things as kimono accessories, kimono and obi as well as a range of other traditional items.

  • 告示

    技術・技法

    次の技術又は技法により製織された織物とすること。

     
    (1)
    先練り又は先染めの平織りとすること。

     
    (2)
    たて糸に使用する糸は生糸とし、よこ糸に使用する糸は「座繰り」による玉糸とすること。

     
    (3)
    よこ糸の打ち込みには、「手投杼」又は「引杼」を用いること。

    原材料

    使用する糸は、生糸又は玉糸とすること。

  • 作業風景

    牛首紬のできるまでには、糸づくりから藍染め、製織まで多くの工程があります。ここでは、主な作業工程の大きな流れをご紹介します。

    工程1: まゆより

    座繰り製糸ができない繭を取り除き、良質の玉繭を選び出します。

    工程2: 煮繭

    糸が順序よく解けやすくするために、繭をお湯の入った鍋の中に入れ、しゃもじで沈めながら煮ます。その後、煮繭機により水蒸気と湯中での処理を交互に繰り返します。

    工程3: 座繰製糸

    足踏繰糸機を用いて、繭から必要本数を合わせて一本の糸にして取ります。製糸方法は繰糸釜の中で繭を沈ませながら糸を取る「沈繰法」と繭を浮かばせながら糸を取る「浮繰法」という2つの方法があります。

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    工程4: くだ巻き

    製糸にて繰枠に取った糸を水分を含んだ状態で、木製の管に巻き取っていきます。

    工程5: 八丁撚糸

    木管の糸より八丁撚糸機で経糸1mに280回、緯糸1mに180回の撚を掛け、木枠に巻き取ります。

    工程6: 精練

    沸騰した水の中に石ケン及び炭酸ソーダを入れ、経糸は約70分、緯糸は約85分練り上げます。この作業によって、絹の感触や光沢が生み出されます。

    工程7: 糸叩き(糸はたき)

    この作業により蚕の糸特有の”うねり”を取り戻し、空気をより多く含んだ糸にします。

    工程8: 藍染

    藍の原料であるスクモに木灰汁、石灰を混ぜ合わせ、発酵させた染料で染めあげます。

    工程9: 植物染材煮出

    植物の根、皮、葉、幹などを煮出し、色素を分離させる。

    工程10: 糊付け

    製造工程の中で、糸が羽毛立ったりすることを防止するためにこの作業を行います。糊付けの方法は、しぼり機または脱水機にかけ、糊を絞り出します。

    工程11: 糸繰り

    精練、染色、糊付けの終わった綛をかせ繰り機により小枠に巻き取ります。

    工程12: 整経

    製織の準備のため、経糸を目的の織物に必要な本数及び長さに計り、目的の幅に均整に配列して尾巻に巻き取ります。整経方法は「ドラム式」と「経台式」の2つの方法があります。

    工程13: 機掛け

    綜絖通し台に筬を取り付け、上と下の糸1本づつを1組として、筬の1羽ずつに引き通し、製織できる状態にします。

    工程14: くだ巻き

    製織の際に便用する杼の中に入るくだに緯糸を巻き取ります。

    工程15: 製織

    高機による手織り作業です。左右交互の足踏みにより、経糸が上と、下とに分かれます。右手の紐を引くことにより杼を左右に飛ばし、緯糸を運びます。この運動を繰り返して布を作ります。この織りには、優れた技術と気の遠くなるような根気が要求されます。

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  • クローズアップ

    小さな自然の神秘が織りなす絹の織物

    牛首紬は、白山の麓にある白峰村(旧牛首村)に古くから織り継がれている自家製の織物。この地方は、養蚕と機織りを生業とししてきた。もともと、「つむぎ」は藩政時代に織物の着用を禁じられた町民が絹物と区別するために呼んだのがその始まりらしい。

     

    親子二代にわたり伝統を受け継ぐ職人魂

    今までの歴史のなかで、時代によっていろんな推移があったが、現在は石川県の無形文化財のひとつに指定されている牛首紬。糸つむぎ歴30年という大ベテラン職人の山下とみさんにお話をお伺いした。「うちもおばあちゃんの代から、お蚕(かいこ)さんを飼って大事にしとりました。」と静かに語ってくれた。牛首紬の大きな特徴は、玉繭(たままゆ)から直接手引きする糸で織られること。玉繭とは、蚕が繭を作る際に2匹の繭が共同で作った繭のことで、2匹の蚕の糸が中で複雑に絡まりあっているため、通常の繭よりも糸が切れやすく、糸引き作業はきわめて困難で熟練の腕を要する。けれども、この玉繭こそが、自然の小節からできる独特の表情を生み出してくれる。牛首紬は、この玉繭からできた糸を横糸に、通常の繭からの糸を縦糸に美しい綾を織りなしていく。

    絹の光沢のなかに独特の小節をもつ牛首紬は、光によっても微妙に色が変化する

    しなやかなうえに、耐久性のある牛首紬の寿命は100年以上

    手際よく糸を紡ぐ山下さんは、言う。「こんなたいへんな作業は、きっと機械には無理でしょうね。でも、これがあるから手織独特の風合いと絹の光沢、そして抜群の耐久性もあって、重宝されているんとちがいますか。」確かに美しさばかりでなく、しっかりとした紬で、うまく着たなら3代にわたって100年は持つという。「昔は、山から採ってきた桑の葉をお蚕さんに、朝昼晩の2回ずつ6回あげてました。繭を作り始め、その繭が透けてきたら、まむしという台に乗せて1週間おいておきます。」

    昔からずっと使っている足踏み式の糸紡ぎ機

    地道な糸引きこそが、牛首の伝統工芸を支える技となる

    「繭は熱を加えていかんと、すぐちぎれてしまうので、小羽切れというもので、ていねいにほどいていきます。この時に、繭の糸が切れやすいんで、気をつけんとね。」機械にはできない、まさに職人芸の域で、特にこの作業には細心の注意と集中力が必要だ。「だいたい数十個単位の繭から1本の糸を紡ぎますが、一反作るには、およそ4000個ほどの繭がいることになりますね。」冬場は蒸気と熱が暖かくていいが、夏場は蒸し暑くてたいへんな作業だという。そんな背景から、なかなか次世代にこのたいへんな作業を継いでくれる人がいないという。

    小羽切れで、ちぎれないように繭の糸をほどいていく

    縦糸約200デニール、横糸約280デニールの超極細の世界

    「未だに、完璧な糸なんてできたことはないですね。初めの頃は指に糸が吸い付いてうまくいかなかったし、きれいに紡げたかなという時がたまにあっても、あとで見てみると、太さが微妙に違ったりで・・・。ちょっとした気持ちの変化とかで、糸が太くなったり、細くなったりしますから。今でもうまくいきませんね。なかなか・・・。」
    30年のベテランの山下さんで、完璧な糸が紡げないとしたら、何年、この地道な糸紡ぎの作業をしたら、一人前になれるのだろう?

    「たいへんな仕事ですけど、うれしいのは、やはり紬を来ている人と会ったとき。自分の糸で織ったかどうかまではわかりませんが、なんだか顔がほころびますね。この間も、女優の水谷よしえさんが、牛首紬を着られて、この場所に来られたんですよ。思わず、感激してしまいましたね。」
    着物を身につけると女性がさらに美しくなるのは、この繊細な世界が、醸し出すしなやかな自然美の賜物かもしれない。
    糸によりをかけるための八丁式撚糸機。つい最近までは手作業で糸よりも行われていた

    • 山下さんたちの代が最後の頼みの綱。この糸が紡ぐ人がいなくなれば、紬を織ることもできなくなってしまう。

    • 山下さんたちの代が最後の頼みの綱。この糸が紡ぐ人がいなくなれば、紬を織ることもできなくなってしまう。

    職人プロフィール

    山下とみ (やましたとみ)

    糸つむぎをして、早30年という山下とみさん。ふだんもよくきものを身につけ、作業をするとか。年齢は、内緒ということ。

    こぼれ話

    食卓を優しく彩る牛首紬

    最近は、着物の用途以外にテーブルウェアとしても活躍している牛首紬。

    天然シルクの輝くような美しさとやわらかな風合いは、洋風のテイストにも和風のテイストにもどちらにもマッチ。

    春夏秋冬、移りゆく美しい季節を四季それぞれの草木染めの色で表現する牛首紬のテーブルウェアはちょっとした気品で華やかに食卓を彩ってくれます。

    玉繭による柔らかな地風は、牛首紬独特のもの。空気を含んだように柔らかな糸を手織り機で織り上げているから、クッションにも艶やかで優しい手触りになっています。

    コースターやテーブルセンターからクッションまで、独特の表面の美しさと天然染料ならではの深みのある色彩に触れ、身近なインテリアに生かしてみてはいかがです?

    • 洗練された色合いの牛首紬のテーブルウェアコレクション

    • ちょっぴり贅沢な空間を演出するテーブルセンター

    • 柔らかい肌触りのクッションはひとつは欲しい

     

概要

工芸品名 牛首紬
よみがな うしくびつむぎ
工芸品の分類 織物
主な製品 和装用品、着物地、帯、小物類
主要製造地域 石川県/白山市
指定年月日 昭和63年6月9日

連絡先

■産地組合

石川県牛首紬生産振興協同組合
〒920-2501
石川県白山市白峰ヌ17
TEL:076-273-2400
FAX:076-273-4414

http://www.icnet.or.jp/dentou/national/09.html

■関連展示場・施設

特徴

2匹の蚕が共同で作る玉繭(たままゆ)から作られる、太くて節のある玉糸を使って織り上げるのが特徴です。玉糸特有の節と独特の光沢は、白生地のままよりも、染め上げることで、野趣に富んだ優雅さと、素朴な民芸調の味わいが表れます。

The main characteristic of this cloth is that it is woven using thick silk threads obtained from double cocoons formed by two silkworms together. The unique knots and shine in the silk threads develops a rustic beauty and simple folk art mood through dyeing the fabric rather than leaving it natural white.

作り方

玉繭の選別から始まり製糸、撚糸、精練、染色、製織等大きく分けて14の工程を、すべて手仕事による一貫作業で行い、その工程には伝統の技が生かされています。特に糸作りは製品の良し悪しを決定する重要な工程です。

Silk cocoons are selected, then made into threads, spun, refined, dyed, and woven. There are fourteen major process categories, and it is all done by hand in a continuous operation, which uses many traditional techniques. The forming of the threads is a particularly important step which determines the quality of the finished product.

産地からの声

紬織物はカジュアルな着物とされ、着用範囲が限られていましたが、牛首紬は織り上げる技術を高め、セミフォーマルまで着用されるようになっています。