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TRADITIONAL CRAFTS

名古屋黒紋付染Nagoya Black Dyeing

江戸時代の初め頃、現在の名古屋市を中心にした地域をおさめていた尾張藩の藩士が、徳川家康から尾張の紺屋頭に認められ、尾張藩の旗印や幟(のぼり)等の染色品を作るようになったことに始まります。
その後、江戸時代末期には、藩士や庶民の黒紋付染が行われるようになりました。19世紀中頃には組合組織が作られました。

At the beginning of the 17th century, the Owari clan controlled the area centered on present-day Nagoya. It was then that the Kosakai family--one of the families of retainers--was recognized as clan dyer by the Shogun, Tokugawa Ieyasu, and the making of clan flags and banners at this time led to the establishment of this craft.
The dyeing of a black cloth with reversed-out family crests for clan members and others began at the end of the Edo period (1600-1868). In the middle of the 19th century, dyeing in the area became very much more organized and a union was formed.

In order to faithfully reproduce a family crest on a piece dyed cloth, a paper stencil is used. The mon'ate amitsuke technique, which is peculiar to Nagoya, is used and although time consuming, the black shows no tendency to seep. In the case of brush dyeing, a starch paste resist is applied and dyed by the torobiki kurozome technique to produce a rich black. Nowadays, formal kimono and those for mourning are most commonly made.

  • 告示

    技術・技法


    「紋糊置き」は、次のいずれかの技術又は技法によること。

     
    (1)
    浸染にあっては、「紋当網」を用いて紋型紙の両面貼りあわせをすること。

     
    (2)
    引染にあっては、紋型紙及び「紙筒」を用いること。


    染色は、次のいずれかの技術又は技法によること。

     
    (1)
    浸染にあっては、紅又は藍の下染をした後、本染をすること。

     
    (2)
    引染にあっては、次のいずれかによること。

     
     

    「三ッ引黒」による場合は、藍の下染をした後、植物性染料を主染料とし、これと媒染染料等により、それぞれ2回以上の引染をすること。

     
     

    「とろ引黒」による場合は、紅又は藍の下染をした後、「とろ引染」をすること。


    紋上絵をする場合は、手描き又は紋彫刻をした型紙を用いる刷り込みによること。

    原材料

    生地は、絹織物とすること。

  • 作業風景

    名古屋黒紋付染の作業工程は、正絹の白生地に家紋を染め抜き、礼装用の黒の着尺地(着物一着分の反物。冬物は16メートル、夏物なら12メートル)を仕立てるまでです。本染めは染料に生地を浸して染める「浸染(しんせん)」と、染料を刷毛で塗る「引染(ひきぞめ)」があり、引染の中にもいくつかの技法がありますが、ここでは、名古屋黒紋付染で最も多く使われる浸染の作業工程をご紹介します。

    工程1: つもり

    きれいに染まるようにアクを取り去った絹の生地に、 注文された寸法どおりに袖や襟、身頃などの印をつけていきます。これによって紋の位置が決まります。

    工程2: 紋型はりつけ

     
     

    工程3: 紋当網付け

    「紋当金網(もんあてかなあみ)」という直径5センチほどの真鍮の金網を紋型紙を貼り付けた上から当て、糸で締め付けます。生地の裏表両面に貼り付けた型紙を2つの紋当金網で押さえることにより、紋型紙がずれたりはがれたりするのを防ぎます。

     

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    工程4: 下染め

    まず、生地を水に浸します。これは、型紙に十分水を吸わせて染料を吸い込ませないようにするためです。それから下染めを行います。下染めは深みのある黒色を引き出すために行われる工程ですが、この下染めには「紅下(べにした)」と「藍下(あいした)」の二種類があり、黒の本染めをしたときの色合いに微妙な違いが出ます。好みでどちらでも選べますが、江戸時代には紅下は女物、藍下は男物に使われていました。下染めは80~90度の染色浴槽に染料を入れて溶かし、その中に生地を入れて、染めむらのできないようにときどき動かしながら10~15分間染めます。

    工程5: 本黒染

    本黒染には「浸染」と「引染」がありますが、浸染では、反数に応じた分量の黒色染料を90~95度の染色浴槽に入れ、下染めを行った生地を入れて、ときどき動かしながら30~40分間染めます。ゆっくりと時間をかけて染めるのが名古屋黒紋付染の特徴で、これによって、経年劣化の少ない色のあせない黒が得られます。この後一昼夜水に浸けた後、紋当金網と紋型紙をを外します。そしてよく洗い、自然乾燥させます。

     

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    工程6: 紋上絵(もんうわえ)

    家紋の形に白く染め抜かれたところ(紋場という)に家紋の細部を描き入れます。にかわの少ない上質の墨を使い、極細の筆と定規、分度器を使って一筆一筆手描きで家紋を完成させます。名古屋黒紋付染の完成です。なお、描かれた家紋は洗っても落ちません。年月がたって紋場が汚れ、家紋が薄くなってきたら、紋洗いをする事によってまたきれいに使えます。

  • クローズアップ

    「化けない黒」を持つ贅沢

    名古屋黒紋付染の特徴は、黒を染める段階から紋型紙を使って家紋の形を染め抜くことと、ゆっくりと時間をかけて染め上げることにあり、それによって年月を経ても色があせない堅牢度の高い黒色が得られる。注文を受けてからしか作れず、手間もひまもかかるが、この製作方法こそが高級品といわれるゆえんである。

     

    堅牢度抜群の名古屋黒紋付染

    天皇家の桐の御紋の輪郭は桐の葉の上に三つの花房がある複雑な形をしている。このような形の紋も、他の産地では、家紋の位置を丸く残して染めておいた黒生地を、最後の紋上絵(もんうわえ)の段階で輪郭に合わせて塗りつぶす。家紋の形に関わらずに地色の黒を染めることができるため大量生産には向くが、経年劣化して家紋のまわりが変色することがある。けれども名古屋黒紋付染は、最初から桐の葉と花の輪郭に合わせて作った型紙を当てて地色の黒を染めるため、紋のまわりの部分の色があせない。職人さんが「化けない」と表現する、抜群の堅牢度である。

    男物一着分を浸染する大野さん。染液は90度以上の熱さだ

    学生服でお得意さん回り

    大野さんは、江戸時代から続く染物屋の五代目だ。9歳の時にお父さんが亡くなり、数え年12歳で家業を継いだ。旧制中学時代は学生服で一宮や鳴海のお得意さん回りをしていたという。先祖代々のお得意さんの大きな呉服屋が何軒もあり、若い衆も6~7人かかえていた。まだ中学生の大野さんは必死だったという。「でも、今思っても、お得意さんには恵まれました。若い衆にも恵まれました。」それで、ここまでやってこられたという。大野さんが18歳だった昭和15年頃、奢侈(しゃし)品禁止令(庶民の贅沢を禁じた命令)が出て染物はできなくなった。20歳で出兵し、昭和21年5月に名古屋に戻ってきたとき、南桑名町(今の栄2丁目のあたり)にあった店は空襲で燃えてなくなっていた。

    30~40分浸染した生地

    戦地から戻って染物屋を再開

    その時、大野さんは25歳。それから、また再び染物屋を立ち上げた。以前大野さんのところで働いていた人が、焼け跡に一台だけ残っていた脱水機を保管していてくれて、大野さんが名古屋に戻ったときに持ってきてくれた。昔からのお得意さんが畳と自転車を融通してくれて再スタート。黒紋付染の着物は礼装用の衣装だ。世の中にゆとりがなければ売れる商品ではない。特に名古屋の黒紋付染は注文生産。再び商売が軌道にのるまでは大変な苦労があったのだろう。仕事のことを振り返って何が一番記憶に残っていますか、と伺って即座に出てきたのが戦争のことだった。

    紋当金網。この金網で紋型紙がずれないように押さえる

    黒の反物が並ぶ中でもひときわ目立つ黒

    大野さんの染めには特別の技がある。企業秘密だから詳しくは教えられないというが、浸す染料の温度に差をつけることによって黒に光沢を出すのだそうだ。多くの職人さんが黒紋付染を展示する展示会で、大野さんの黒はひときわ目立つという。「ウチの色を欲しがって、教えてくれってみんな来るんですよ。」と、大野さんは笑う。大野さんの秘伝の技は名古屋ではずいぶん広まったのだという。

    紋型紙あれこれ。美濃和紙を7~8枚貼り合わせたものをノミで彫って作る

    需要の減少からの後継者難

    けれども、黒紋付染をとりまく状況は厳しい。着物離れが進み、黒紋付染の主力製品の家紋入りの喪服や黒の羽織の需要は減った。他の商品に応用がききにくいのも弱点だ。「何とか後継者を育てたいね。今、組合にいる若い衆をこれからどうやって一人前にするか・・・。」大野さんの息子さんも黒紋付染の職人だったが、今は洋服の方をやっている。家紋の入った喪服は以前は嫁入り道具のひとつだったが、今、若い人で結婚する時に喪服を揃える人は少ない。それでも、和服の喪服を着る人を見た時には、その凛とした雰囲気に目をくぎ付けにされることがある。ブラック・フォーマルは10年もすると時代遅れで着られなくなるが、和服なら長く着られるし、と思ったりもした。

    大野重信さん。お話をしながらも、タイマーで染めの時間を正確に計る

    職人プロフィール

    大野重信 (おおのしげのぶ)

    昭大正11(1922)年生まれ。
    江戸時代から続く染物屋に生まれ、数え年12歳で家業を継ぐ。以来、70年近く黒紋付染ひとすじ。

    こぼれ話

    家紋あれこれ・動物の家紋

    家を象徴する紋章は平安時代に使われるようになり、衣服や家具、牛車などにつけられました。後に武士の目印となり、江戸時代になって庶民の間にも広く普及しました。現在、日本全国で六千をこえる家紋があるといわれていて、その多彩さとデザインの面白さには驚かされます。
    家紋には日本古来の動植物がいろいろ登場しますが、特に面白いのは動物の家紋です。うさぎはかつて神聖な動物と考えられていたそうですが、(図4)など、ちょっと笑えるものもあります。ほかにも様々な動物が家紋に使われていて、見ていて飽きません。

    • (図3)「上下向雀」。これも顔がコワイ

    • (図5)「結雁金」

概要

工芸品名 名古屋黒紋付染
よみがな なごやくろもんつきぞめ
工芸品の分類 染色品
主な製品 着物地、羽織
主要製造地域 愛知県/名古屋市、西尾市、西春日井市師勝町
指定年月日 昭和58年4月27日

連絡先

■産地組合

名古屋友禅黒紋付協同組合連合会
〒451-0074
愛知県名古屋市西区万代町1-28
TEL:052-531-9875
FAX:052-531-9875

http://www.meigiren.com/shiru/i_dantai/i_01.htm

■関連展示場・施設

特徴

家紋を描き入れた時の紋の染際をきれいに染め上げるため、浸染(しんせん)では初めから家紋の形の紋型紙を使用します。名古屋独特の紋当網付(もんあてあみつけ)技法で染めるので、染色時間も長く、黒色がしっかり染まっています。引染(ひきぞめ)では紋の形に防染糊(のり)を伏せて、黒の色艶の優れた「トロ引黒染(くろそめ)」で染め上げます。

In order to make cloth with family crests that stand out well, a stencil of the crest is used from the start when dip-dyeing. They are dyed using a technique unique to Nagoya called monate-amitsuke, which has a long dyeing time, resulting in a deep black color. With brush dyeing, the shape of the crest is covered in paste to resist the dye, and the fabric is dyed with the torobiki-kurozome technique which results in a deep and lustrous black.

作り方

「浸染」と「引染」があり、紅または藍の下染をします。「浸染」では紋を付ける部分に紋型紙を生地の両面から貼り合わせ、金網を当てて締付け染料液に長時間入れて染め上げる紋当網付技法を行います。 「引染め」では紋の部分に防染糊を伏せて三ツ引黒染やトロ引黒染技法で、刷毛を使用して染め上げます。その後で白く残った部分に紋章を手描きで入れます。

There is dip dyeing and brush dyeing, and the fabric is first dyed with red or blue. For dip dyeing, the family crest has stencils pasted together through the fabric, with a metal net clamping them together before soaking the fabric in the dye for a long period of time, with the monate-amitsuki technique. For brush dyeing, the crest part is covered with resist paste, and the fabric is dyed black using techniques such as mitsuhiki-kurozome or torobiki-kurozome, and finished with a brush. Afterwards, the parts of the crest that remain white are drawn in with a brush by hand.

産地からの声

喪服は着用の機会が少ないのですが、年に一度は虫干しで風を通しましょう。着用した後はしみ落としをして衣紋掛(えもんかけ)にかけて、天気の良い日に和紙の畳紙(たとうし)に入れてしまって下さい。防虫剤を入れると紋の際が変色する事がありますので、紋の部分には和紙を当てておけば良いでしょう。