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TRADITIONAL CRAFTS

琉球びんがたRyukyu Bingata Dyeing

琉球びんがたの始まりは、15世紀中頃にまで遡ることができます。
琉球びんがたは王府の手厚い保護の下で生産され、19世紀初めの歴史書には琉球の紅型(びんがた)が東洋花布と称され、福建市場において名高い貿易品であったことが記されています。
第2次大戦により壊滅的な打撃を受けましたが、戦後、紅型保存会の結成、沖縄びんがた伝統技術保存会の結成、昭和59年の国の「伝統的工芸品」の指定を経て、その振興が図られています。

The origins of Ryukyu Bingata dyeing can be traced back to the middle of the 15th century, when King Shoen was on the thrown. The court gave its unfailing patronage to the craft and according to a 1802 chronicle, Ryukyu Bingata was called a "floral cloth of the east" and was highly regarded at the market in Fuchien, China.
Although almost completely wiped out during the Second World War, efforts were made to revive this craft and in 1950, the Bingata Preservation Society and the Okinawa Bingata Preservation Society were formed. This was followed by government recognition in 1984, when bingata was formally designated as a Traditional Craft Product.

Bingata dyeing is the only dyeing craft in Okinawa combining the techniques of stencil dyeing from China and the hand dyeing skills of Kyoto yuzen. Silk, cotton and abaca, which is a banana fiber cloth, are hand dyed using pigments and vegetable dyes. The cloth known simply as bingata is brightly colored where as eshigata is vat dyed with Ryukyu indigo. Each one has an enigmatic appeal peculiar to the South Seas.

  • 告示

    技術・技法


    図柄は、びんがた模様を基調とすること。


    型彫りは、柿渋を用いて手漉和紙をはり合わせた地紙又はこれと同等の地紙に下絵を貼りつけ、「突彫り」で行うこと。


    型付けは、手作業により柄合わせすること。


    「筒引き」には、布製の糊袋を用いること。


    「色差し」、「刷り込み」、「隈取り」、地染め及び地の模様染めには、筆又は、はけを用いること。


    「色差し」及び「隈取り」の色彩は、顔料を用いること。


    防染は、型付け、「筒引き」又は「糊伏せ」によること。


    防染のりは、もち米粉に米ぬか及び食塩等を混ぜ合わせたものとすること。


    藍型の藍染は、琉球藍を用いること。

    原材料

    生地は、絹織物、麻織物、芭蕉布又は木綿織物とすること。

  • 作業風景

    琉球びんがたは、いくつもの色を使う紅型と、藍一色でそめる藍型の二つに大きく分けられます。それぞれに、型紙を使う型染と、手で模様を描く筒引きの二種類の技法があります。着尺、帯、風呂敷など、用途によって使い分けられています。細かな図案の型紙を彫ったり、模様のひとつひとつに顔料を差したりと、どの作業にも集中力と細心の注意が必要です。模様の部分を先に染めてから地を染めます。

    工程1: 型彫り

    型紙には白地型と染地型の2種類があります。型紙になる渋紙に、直接模様を描くか、または薄紙に描いた下絵をはりつけます。細かい模様の部分から彫り始めます。小刀の刃先を前方に向けて持ち、上から当てて垂直に切っていきます。これを突彫りといいます。曲線を自由に表現でき、模様の線がやさしく温か味のあるものに仕上がります。彫り上がった型紙は沙張りをします。

    工程2: 型付け

    布に型紙を置き、ヘラで防染糊をムラにならないように塗ります。型紙の彫り落とされた部分に糊が付き、生地に模様が型付けされます。糊はもち米とぬかを粉にしたものを炊き、水を加えて作ります。

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    工程3: 筒引き

    型紙を使わないで、手で模様を描く手法です。防染糊を木綿の筒袋に入れ、絞り出しながら布に描いた下絵をなぞります。型染めとはひと味違った躍動感のあるものができます。風呂敷のような大きなものや、バッグなどを作るときに使います。

    工程4: 色差し(配色)

    差し刷毛で模様に色を塗ります。顔料に豆汁(ごじる)という大豆の汁を混ぜ合わせて色を作ります。暖色系から寒色系へという順序で差していきます。

    工程5: 刷り込み(2度ずり)

    顔料は定着しにくいので、もう一度差し刷毛で差し、しっかり刷り込みます。差し刷毛で塗ったあと、刷り込み刷毛を使います。刷り込み刷毛には、女性の髪の毛が使われています。

    工程6: 隈取り

    琉球びんがた独特の技法です。模様に濃い色を入れてグラデーションをつけます。花弁の縁に円を描くように入れたり、葉の葉脈に入れたり、模様の半分に入れたりしてぼかします。このあと蒸して色を定着させます。水洗いをします。

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    工程7: 糊伏せ

    地を染める前に、模様の上に防染糊をつけます。

    工程8: 地染め

    藍染めは藍壷につけ、地染は刷毛で染料を塗って染めます。幅の広い刷毛を使います。

    工程9: 蒸し

    約1時間蒸して、色を定着させます。

    工程10: 水洗い

    生地についた余分な染料、顔料、防染糊を洗い落とします。乾かして完成です。

     

  • クローズアップ

    南の太陽にも負けない鮮やかな色

    染織が盛んな沖縄にあって、ただひとつの染めが琉球びんがたである。もともとは王族、士族の女性が晴れ着として着ていたもの。南国らしい鮮やかな色とやさしい柄が調和して、多くの女性たちをひきつけている。

     

    びんがたの振袖はあこがれの的

    工房の端から端へ張り渡された淡い緑とピンクの布に、テッポウユリやブーゲンビリアの花が踊っている。筆が布をこするシャカシャカという音が響く。普天満紅型工房の佐藤実さんは、妻の真佐子さん、娘の真由美さんと家族三人で、特別注文の衣装に色差しをしていた。
    実さんは琉球びんがたに取り組んで27年、高い技能を持つ伝統工芸士だ。新しい柄に意欲的に挑戦し、美しい作品を次々に生み出している。
    「すべての工程を自分でできるのが魅力です。最初から最後まで一人でできる。頭に浮かんだイメージを引っ張り出して、染めて、形にしていくのは楽しいですね。」
    5年前、娘の真由美さんが成人式を迎えたときには、家族で2週間かけて振袖と帯を作った。華やかなびんがたの振袖は、沖縄でもあこがれの的。そのあでやかさはたくさんの人の目を喜ばせた。

    華やかなびんがたは振袖にもぴったり

    その日の気持ちや体調が色に表れる

    びんがたを印象的にしているのは、赤、黄色、紺、緑といった鮮やかな色だ。南の明るい光に映える、風土にあった色が使われている。地は染料で染め、模様は顔料で色差しをする。実さんに顔料の配合を見せてもらった。9種類の顔料を豆汁(ごじる)という大豆の汁でペースト状にし、それを配合して色を作る。わずかな差で違う色になってしまう微妙な作業だ。
    「気持ちが充実しているときと、していないときで色が変るんです。」
    心や体の状態がそのまま作品に現われる。手仕事の怖さであり、おもしろさでもある。ひとつの作品に使う色は9~18色。赤系統の淡い色から差していき、徐々に濃い色に移っていく。塗った色をしっかり付着させるために、刷り込みを行なう。これはびんがた独特の工程だ。もう一度色を差し、その上から女性の髪の毛で作った筆で刷り込み、色を均一にならす。
    「こすることで布に塗ってある糊の小口がなめらかになり、やさしい線になります。型紙の厚み、糊の厚み、みんな手伝ってびんがたのやわらかさが出るのです。」

    • 赤、黄、青、緑、紫はびんがたの基本の色

    • 髪の毛の筆で顔料をていねいに刷り込む

    古典は次の世代に伝えていける

    製作に励む一方、気軽に触れられる展覧会を企画するなど、びんがたを広く知ってもらうための地道な努力を重ねている。高価な着物と思われがちだが、「色も模様も古典的で流行に左右されません。古くならないから、次の世代へ伝えていける。そう考えると決して高くないと思いますよ。」
    むやみに流行は追わない。流行を追わないことにも努力は必要だ。そして新しい柄や色づかいを考えたり、新しい楽しみ方を提案することも忘れていない。
    「いくつもの色が入っていると、目は着物より人にいくのです。着ている人が引き立ちます。年齢や作法にとらわれず、自由に着てほしい。着物に限らず、イブニングドレスにしてもいいと思います。大事に使っていただければうれしいですね。」
    そう話す実さんの目は、たいへんな工程を着実に進めながら、琉球びんがたの行く末をしっかりと見据えているようだった。

    工房には製作中の布がいくつも張られている

    職人プロフィール

    佐藤実

    1948年生まれ。
    73年に普天満紅型工房に参加。伝統工芸士。琉球びんがた事業協同組合理事長。

    工房で黙々と布に向う佐藤実さん

    こぼれ話

    味わいのあるやわらかな線を出す突彫り

    琉球びんがたには独特の技法がいくつもありますが、「突彫り」はその代表的なものです。びんがたには型紙を使う手法があります。その型紙を彫るときの小刀の使い方に特徴があるのです。普通、小刀は手前にすべらせて紙を切ります。こうすると線はシャープになります。それに対して突彫りは、小刀を上から当て、垂直に下ろして切っていきます。
    「むずかしい彫り方ですが、慣れると曲線を自由に彫ることができます。ぽってりしたソフトな線になって、びんがたならではの味わいが出ます」と佐藤さんはいいます。
    出来上りを大きく左右する作業ですから、道具も大切にしています。小刀は自分で作ります。竹に刃をはさみ、糸で固定します。刃の先はグラインダーでけずって、曲線を持たせます。一人一人が使いやすいように工夫をこらしています。
    琉球びんがたのほっとするようなあたたかさは、長い工程の中で生まれてきますが、こうした目に見えないところにも秘密が隠されていました。

    • さまざまな太さの刷り込み刷毛を使い分ける

     

概要

工芸品名 琉球びんがた
よみがな りゅうきゅうびんがた
工芸品の分類 染色品
主な製品 着物地、帯、飾布
主要製造地域 沖縄県/那覇市、宜野湾市、浦添市、糸満市、豊見城市、島尻郡玉城村
指定年月日 昭和59年5月31日

連絡先

■産地組合

琉球びんがた事業協同組合
〒900-0016
沖縄県那覇市前島1-11-12
テレホンビル1階
TEL:098-862-5594
FAX:098-862-5594

http://c8.x316v.smilestart.ne.jp/okinawa-wind/bingata/

■関連展示場・施設

特徴

中国の型紙の技法、京友禅の手法も取り入れた沖縄で唯一の染物です。綿布、絹布、芭蕉布等に顔料、植物染料を用いて手染めします。色鮮やかな「紅型(びんがた)」と琉球藍の浸染(しんせん)による「藍型(えしがた)」とがあります。それぞれ南国独特の神秘的な魅力を持っています。

Ryukyu Bingata is the only dyeing technique in Okinawa. It uses techniques introduced from China and Kyoto. Cotton, silk or bashofu textiles are hand-dyed with pigments and plants. Magnificent Bingata (red) and Eshigata (indigo) are typical. Both have fabulous charms unique to the tropical islands.

作り方

技法によって「型付け(型染め)」と、型紙を用いず生地に下絵を描き、糊袋の筒先で下絵の上から糊を置き、その後彩色する「筒引き(筒描き)」とに分かれます。また、色調には「紅型」と「藍型」があります。型紙は、柿渋を用いて手漉(す)き和紙を貼り合せた地紙の下にルクジュをあてがい、下絵にそって小刀で凸彫りします。染色の際、模様の部分に色挿(さ)しをし、その上に隈取りというぼかし染めが施され、立体感を表現します。

Ryukyu Bingata is made by either Katatsuke (stencil dyeing) or tsutsubiki, which directly draws draft patterns to the fabric and paint it after gluing. There are two color tones: Bingata (red) and Eshigata (indigo). A stencil for dying is made of washi papers bonded by persimmon juice. The stencil is underlaid by a rukuju (dried tofu) while carving. Patterns on the fabric are dyed by irosashi technique, and then kumadori (ombre painting) is applied to add stereoscopic effect.

産地からの声

1人1人の作り手が心を込めた手作り品です。沖縄特有の朱の色を堪能して下さい。なお、木綿や麻は上質石けん水にしばらく漬け、すすぎ洗いをし、絞らずに干します。紬や絹は専門の洗濯屋に出して下さい。