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TRADITIONAL CRAFTS

大阪浪華錫器Osaka Naniwa Pewter Ware

錫器が日本に伝えられたのは、今から約1300年程前、遣隋使の手によるものと言われています。
鎌倉時代初期に栄西が現在の中国の宋に渡り、茶壷作り職人を連れて来たのが錫職人のルーツとも言われています。江戸時代の中期に大阪に産地が形成されました。

Pewter ware was first introduced to Japan some 1,300 years ago by envoys from China. Later during the early part of the Kamakura period (1185-1333), the Zen monk Eisai visited Sung dynasty China and returned with a maker of tea urns. His skills with pewter are said to mark the real beginning of this craft in Japan. It was not until the 18th century, however, that a production center was established in Osaka.

Pewter is a very stable metal. It is ideal for such things as a sake flask as it does not affect the delicate flavors of this rice wine, and the taste of water kept in a pewter container is improved by an ionic action. It is also good for flower vases and especially good for the storage of such things as tea, which would deteriorate in anything less than an air-tight container due to high temperature and humidity.

  • 告示

    技術・技法


    鋳儘造りは、次のいずれかによること。

     
    (1)
    挽き物にあっては、石型、金型又は木型を用いること。

     
    (2)
    「打ち物」にあっては、石型及び型紙を用いること。


    削り整形は、次のいずれかによること。

     
    (1)
    挽き物にあっては、ろくろ、ろくろがんな及びきさげを用いて荒削りをした後、ろくろ及び仕上げがんなを用いて仕上げ削りをすること。

     
    (2)
    「打ち物」にあっては、金切りばさみ、「小刃」及び、「がんぎ」を用いて「荒削り」をした後、「がんぎ」、きさげ及び「こくり」を用いて仕上げ削りをすること。


    素地の接合をする場合には、「焼き合わせ」又は鑞金を用いる「鑞付け」によること。


    磨き仕上げをすること。


    加飾をする場合には、「くさらし」、槌目打ち又はろくろ模様付けによること。


    着色をする場合には、天然漆を用いること。

    原材料

    鋳儘の素材は錫とし、錫の純度は100分の97以上とすること。

     

  • 作業風景

    錫器を製作するには、簡単なもので1日、複雑なものは1カ月ほどかかるものもあります。では、錫器の製造工程を詳しくご紹介しましょう。

    工程1: 原材料

    材料は「錫」という金属です。日本ではほとんど採掘されておらず、マレーシア・タイ・インドネシア・中国などから輸入しています。錫の地金(インゴット)は35~45キログラムの重量で「1丁」という単位で扱われています。

    工程2: 鋳造工程

    錫の溶解温度は約230度で、都市ガスでも容易に溶かすことが出来ます。錫地金を鍋で溶かし、ドロドロになった錫(湯と呼びます)を、流れやすく斜めにした鋳型に柄杓でそそぎ込みます。しばらくしてナカゴをはずし、水に浸した刷毛で少し冷やし、固まったら型から取りだします。この時点でも、まだかなりの熱を持っています。それから、錫を注ぎ込む鋳口からはみ出した余分な錫を切り取ります。鋳型は製品の種類や形によって、大小様々あり、セメント、土、金属などから作られています。

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    工程3: 切削工程

    鋳込んだ丸い形のものは、ろくろを使って削りながら形を整える作業をします。こけしを削るのと同じようなものです。ろくろの行程は、錫器の製作の中心行程に当たります。鋳肌はザラザラして堅いのですが、かんなを使って削ると、錫本来の美しい輝きが引き出されます。花瓶のように細長く大きなものや一つの型で鋳造できない物は、上下別々に表面や内側をきれいに削って、上と下を接合して仕上げます。
    漆塗りの工程が終わった後のつや出しの仕事もします。品物の丸みや削る厚さなどは、全て経験豊富な職人の「勘」です。鋳肌を削り取る鉋・形を整える鉋・仕上げの鉋は、それぞれ使い分けられます。艶を出すために、昔から使われている「ムクの葉」「トクサ」なども使います。艶の色を生かした製品では、この工程で仕上がりになるものもあります。

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    工程4: 中仕事

    ろくろで作れない取っ手や注ぎ口などの付属部品を作り、本体に取り付けます。また品物を切ったり、曲げたり、槌目模様を付ける作業もここでします。

    工程5: 模様入れ行程

    ろくろで出来上がったものに模様(絵)を入れます。インクは漆またはエナメルを使います。これを硝酸液に浸すと、描かれた部分はマスキングされているので、他の部分だけが腐食し梨地状態になるのです。季節によっても腐食の度合いの変わる微妙な行程です。絵の浮き加減を確かめ、水洗いしてから、黒や朱色などの漆を塗り込んで、拭く行程を繰り返すことで、描いた部分が光り出し、模様が浮き上がって落ち着いた感じに仕上がります。

    工程6: 仕上げ行程

    漆が乾くとろくろでつやを出し、取っ手などを付け仕上げます。

     

     

  • クローズアップ

    物静かな輝きから感じられる錫器の魅力

    父親の錫の仕事場を見て育った伝統工芸士今井達昌さん。彼は幼い頃から錫を身近に感じて育った。プリンの空き缶に、拾ってきた錫の破片を入れてコンロで溶かしてみる。冷たい床に落ちるとだんだんと固まっていく。それが今井さんが作った錫製品第1号の「おはじき」であった。

     

    歴史ある錫も戦時下では・・・

    錫器の歴史は非常に古く、エジプトではBC1500年頃のものが出土し、中国では三国志の中にも現れている。日本に伝えられたのは1300年前。遣唐使、遣隋使によってもたらされたともいわれるが、一説によると栄西禅師により、中国からお茶とともに錫製の茶壺(当時は薬壺)が伝えられたとされている。かつて使用するのは、上流貴族に限られていたが、江戸時代より、一般的に用いられるようになった。大阪では戦前まで錫器の生産が盛んで多くの製造所があったが、軍事物資として提供したため、廃業に追い込まれたところが多かった。そんな中、錫器の技術保存のために組合を設立し、優れた職人を集めて生産を続けた。今井さんの祖父もそんな職人の一人だった。

    細かい唐草の細工を施した、朱の茶壺

    生活様式の変化とともにかわっていく錫食器

    伝統の品は、その製品が生まれた時代に適した形態で作られている。しかし時代がたつにつれ、生活様式は変化していく。「盃一つとっても、お膳で暮らしていた時代は、平たく上からつまみ上げる形態が便利でした。しかし現代、テーブルで食事をするようになると横からつかむ縦長の形態のほうが使い勝手が良いのです。そんな風に時代とともに変化させて、使う方のニーズに合わせていかなければなりません。伝統工芸だからといって昔からの形態のまま止まっていてはいけないのです。その時代に合う新しいものを積みあげていく、そしてを繰り返してつないでいくことが、伝統を受け継ぎ伝えていくこととなるのです。」

    味わいある、いぶしの茶壺

    錫器の効能

    錫の食器・茶器・酒器は中に入れる物の風味を増すといわれ、昔から毒素を消して腫物を予防する効能があると賞されている。また、密封性が高いので茶筒などに使っても中のお茶葉の香りを長く保つという。「実験していただければ分かるのですが、錫製のお茶筒を水に浸けても中に水が入りません。また、一つずつ本体と蓋を調整しながら手作りしているので、他の組合せでははまらないんです。」対の物でなければぴったりと合わさらないとは、まるでハマグリあわせのようだ。「錫器は錆びないので手入れは簡単なんですよ。時々、手垢などの汚れを洗剤などで洗い、水で流して柔らかい布で拭き取るだけです。」意外にも簡単に優美な光沢を保ち続けられるのだ。

    • 鋳造の釜の中では、錫が静かな光を放っている

    • ろくろが並ぶ工房では、ろくろの回る独特の音が響いている

    女性の興味を引きつける新製品

    「色々な形で伝統工芸品を残していきたいんです。だから新しい物の一つとして、ペンダントトップを伝統工芸の手法でつくってみました。」と今井さん。さすがにこれからの錫器産業の伝動力となるべく、若い後継者の発想だ。これには多くの女性が足を止めてくれると言う。このような物で伝統産業にふれるのも身近で良いかもしれない。「伝統ばかりに固執しないで、新しい世界を開拓していってくれることは、この業界としてはとても頼もしいことですよ。伝統として古い物も大切ですが、留まっていてはいけないんです」と大阪浪速錫器組合理事で、伝統工芸士会会長の杉本さんも語る。
    「私達には、先人が残してくれている技術があります。たとえば、それは先人が10年かかって生み出し技術だとすると、私達は受け継ぐだけなので5年ですみます。だから残りの5年間は次の者に何かを残すために動きたいと思うのです。」

    • 伝統工芸士会会長の杉本さん

    • これからの錫器を見つめる今井氏。後ろにはクラフトのペンダント

    • 模様入れるためのヤスリや小刀など

    こぼれ話

    お酒好きにはたまらない!

     

     

     

概要

工芸品名 大阪浪華錫器
よみがな おおさかなにわすずき
工芸品の分類 金工品
主な製品 神仏具、酒器、茶器、菓子器、花器
主要製造地域 大阪府/大阪市、松原市、羽曳野市、東大阪市
指定年月日 昭和58年4月27日

連絡先

■産地組合

錫器事業協同組合
〒546-0031
大阪府大阪市東住吉区田辺6-6-15
大阪錫器株式会社内
TEL:06-6628-6731
FAX:06-6628-6735

■関連展示場・施設

特徴

錫は安定の良い金属です。イオン効果が大きく水の浄化作用があり、微妙なうまみを損なわないため、酒器に適しています。花瓶にも適し、気密性があるため高温多湿のところでも保存性が高いので茶筒に向いています。

Tin is a very stable metal. It is very suitable for sake cups because the ion effect has strong water-purifying properties and it does not hide even the subtlest flavors. It is also suitable for flower vases and, being airtight and possessing high preserving properties even at high temperatures and in high humidity, is ideal for tea canisters.

作り方

錫は軟らかく機械加工しにくいため、ほとんどの工程が人の手によって行われます。工程は鋳造と研磨に大きく分けられます。キメの粗い鋳造物をろくろに取り付け特製の鉋(かんな)で表面を削り、滑らかに形を整え、磨いて艶を出し完成品にします。

Since tin’s peculiar softness makes it hard to process by machine, most manufacturing stages are performed by hand. The manufacturing process can be roughly divided into casting and polishing. After rough-surfaced castings are mounted on a turning lathe and their surface sanded with a special plane to make it smooth, they are then polished to bring out the gloss.