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TRADITIONAL CRAFTS

土佐打刃物Tosa Forged Blades

天正18年(1590年)土佐一国を総地検した、長宗我部地検帳に、399軒の鍛冶屋がいたことが記されています。土佐打刃物の本格的な隆盛は、江戸時代初期土佐藩による、元和改革(1621年)から始まります。
藩の森林資源の確保及び新田開発の振興策の遂行により農・林業用刃物の需要が拡大し土佐打刃物は生産量・品質ともに格段に向上しました。土佐打刃物は多少の機械化は取り入れたものの、江戸時代の技術と伝統は、平成の世まで受け継がれています。

Records show that at the end of the 16th century there were some 400 smiths at work in Tosa. While they were skilled in the making of the samurai sword, they also seem to have made sickles and knives at the request of local farmers. Subsequently, with the promotion of forestry and the development of new fields in the area, bladed tools for agriculture and forestry were made in large quantities and a production center for forged goods came into being.

A variety of knives, hatchets, sickles and axes are now produced alongside quality saws. A form of ""free forging"" is used to great effect in the making of these tools and each one is made individually.

  • 告示

    技術・技法


    成形は、鉄、炭素鋼又は鉄及び炭素鋼を炉で熱し、鎚打ちにより打ち延ばし及び打ち広げをすることにより行うこと。


    斧及び鳶のひつは、「ひつ抜き」により行うこと。


    鋸は、胴と一体の材料で、「首・中子造り」を行うこと。


    鎌、包丁、鉈及び柄鎌の焼入れは、「泥塗り」を行い急冷すること。


    片刃鉈にあっては、「樋」を付けること。


    「歪取り」、「刃付け」、「研ぎ」及び「仕上げ」は、手作業によること。

    原材料


    使用する素材は、鉄、炭素鋼又は鉄及び炭素鋼とすること。


    柄は、木製とすること。

  • 作業風景

    土佐打刃物の工程は細かく分けられています。ここではその工程の大きな流れをご紹介します。

    工程1: 炭切り(すみきり)

    フイゴで風を送り火を自在に操るためには、大きさを揃えて炭を切ることが重要な作業となります。俗に「炭切り三年」といわれるほどの熟練を要します。

    工程2: 鋼・鉄づくり

    土佐打刃物の大きな特徴は鉄に鋼(はがね)を割り込ませるやり方にあります。まず刃先となる鋼づくりをします。そして鉄に割り込みを入れ鋼をはさみ軽く打ちこみます。熟練した職人は寸法を取りません。それでいて寸分の狂いもありません。接合剤としてホウ酸をかけ火に入れます。これを「沸かしづけ」といいます。

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    工程3: 鍛接(たんせつ)

    鉄と鋼(はがね)を一体化させる作業です。最近はあらかじめ鉄と鋼が一緒になっている力材(りきざい)を使う産地が多くなりました。鍛接したものを「地きり」します。

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    工程4: 鍛造(たんぞう)・整形

    ベルトハンマーと手で鎌の形を造って行きます。昭和の初期に開発されたベルトハンマーは生産量を大幅に増加させました。細かいところは槌(つち)で型を整えます。このように自由自在に形を造って行くやり方を自由鍛造といいます。

    工程5: 荒研ぎ(あらとぎ)

    焼き入れの前に、荒研ぎをします。生とぎ(なまとぎ)ともいいます。

    工程6: 泥塗り(どろぬり)

    焼入れを良くするために、鎌に泥を塗ります。

    工程7: 焼入れ(やきいれ)・焼戻し

    刃物の硬度、固さを決める大切な作業が「焼入れ」です。火の色と焼け具合で温度を見極めます。770度~800度で熱したのち、水で急速に冷やすことによって硬くなるのです。刃物には硬度だけでなく、ねばりも必要です。そのために行うのが焼き戻しです。焼戻し温度はおよそ170度。水のはじき加減を見ながら温度を読みます。

    工程8: 歪(ひずみ)取り

    焼き入れ、焼戻しによっておこる全体の歪(ひずみ)を取ります。表、裏、丹念にたたきます。

    工程9: 刃付け・仕上げ

    最後の仕上げとなる刃付けです。あげ刃、中研ぎ、こば付けと丁寧に仕上げます。切れ味にすぐれた土佐型うす鎌の完成です。他産地で分業化が進む中、一貫した工程で行う土佐打刃物への評価が高まり、伝統的工芸品に指定されています。

     

  • クローズアップ

    鉄と火と水の芸術、古式鍛造(こしきたんぞう)の魅力

    高知県は全国でも屈指の湿暖多雨地であり、古くから良木に恵まれ、多くの木材を搬出してきた。それにともなう山林伐採用の打刃物が古くから造られていた。また、鎌倉時代に刀鍛冶の技術が移入され、その古式鍛造(こしきたんぞう)の伝統は現代にも受け継がれている。

     

    ひたすら切れ味を追求して、人生を鎌にかける男

    俗に「炭きり三年、前打ち五年、後の三年肌で打つ」といわれ、一人前になるまでには十一年の歳月が必要だとされる打刃物の世界に、10歳の頃から弟子入りして修行した山崎道信(やまさきみちのぶ)さん。山林鎌の製造ひと筋に人生をかけて60年。土佐のいごっそう(頑固者)にお話を聞いた。

    400年の歴史と伝統をほこる土佐の打刃物は日本刀と同じ「玉鋼(たまはがね)」を刃先に使用

    厳しかった修行時代

    「おやじは腕のいい鍛冶屋でしたが、世渡り下手で家は貧乏でした。父親の元に弟子入りしてからは、食事も寝起きも職人さんと一緒。相撲の世界と同じでそれは厳しいものでしたよ。」炭きり、焼き入れなどの工程はいっさい教えてはもらえない。なにもかも黙って師匠の技術を傍で見ながら習得するしかなかったという。「昔はどこの村にも鍛冶屋があって、トン・テン・カン。トン、テン、カン。というつち音が聞こえたもんでしょう。」師匠と弟子が息をぴったり合わせて、二人一組で鎌、斧、鍬などの刃物を打ちだしていた。「少しでもタイミングがずれると、すぐに平手打ちが飛んでくる。一切の妥協は許してくれません。子ども心につらかったもんです。」

    左手で自在にフイゴを操って風を送り、右手で炭の火加減を読む

    ベルトハンマー機の開発が流れを変えた

    昭和の初期になって、同じ高知県下の坂本製作所がベルトハンマー機を開発。4キロもの大槌を振り下ろして作業する前打ちの工程を機械がするようになった。これまで二人がかりで一日約42本仕上げていた山林鎌を、一人で100本作ることができるようになった。「私はちょうど15歳ぐらいだったので、すぐに機械の扱いかたのコツをつかんで親父にほめられ、得意になって年配の職人さんたちに機械の扱い方を教えたもんです。」しかしハンマーが前打ちをするようになっても、その後の工程は昔とまったく変わらず妥協を許さない職人の世界だ。

    昭和の初期に開発されたベルトハンマーとは60年の付き合いになる

    土佐打刃物(山林鎌)の特徴

    「今は、時代がどんどん進んで、焼き入れ作業も温度を設定したボイラーを使うようになりましたが、ちいさい頃から体で覚えた炭の色、炎の温度、真っ赤に焼けた鉄の寸法は、温度計やものさしがなくても寸分もくるいません。図面を引けと言われてもできませんが、造れと言われれば何本でも同じ寸法のものを造れます。」ベルトハンマーを相手に真っ赤に焼けた鉄を自在にあやつり自由に整形する「自由鍛造」が土佐打刃物の特徴である。山崎さんの鎌は研げば研ぐほど良さが判る。刃のあるかぎり何年でも使える。使い捨てではない本物の味だ。

    昔ながらの自分専用の工房で、鎌を打ち出すのが楽しくて仕方がないと笑顔の山崎さん

    伝統を残しながら、いかに新しい息吹を吹きこむか

    山林業の衰退とともに山林鎌の需要も激減し、アジアから輸入された極安の鎌が日本中のホームセンターに並び、打刃物の業界も青息吐息だ。山崎さんはこの現状を打開するために三代目の後継ぎである長女のお婿さんと力を合わせて、土佐打刃物の良さを持ちながらコストを押さえた草刈鎌を開発した。その切れ味が人気を呼び、各地から注文が殺到しているという。私も自然農法をかじった時期に安い鎌を買ったことがある。しかし、どの鎌も二、三度草を刈ると折れたり曲がったりして役に立たなくなった。まして竹の根切りなどしようものならすぐに刃こぼれしてひどい目にあった。素人の消費者もいつまでもだまされはしない。時代が本物を求めだしている。

    設備は多少近代化しても、一本ずつていねいに仕上げられる土佐打刃物の鎌

    職人プロフィール

    山崎道信 (やまさきみちのぶ)

    1926年生まれ。10歳から父親に弟子入りして腕を磨く。山林鎌の鍛造(たんぞう)一筋に65年目を迎える。

    こぼれ話

    「古式鍛造(こしきたんぞう)」を残そう

    師匠と弟子、二人一組になって刃物を打つ。古式鍛造かつて高知県下に1000人以上いた打刃物の技術者も時代とともに減少化する一方です。職人たちも高齢化し、後継者育てが業界の最大の悩み。山崎道信(やまざきみちのぶ)さんは、県下の二世たちを相手に、横座(親方)と前打ち(弟子)、二人一組となって刃物を打つ「古式鍛造」の技術を伝承していこうとはりきっています。
    昔どおり炭を切り、フイゴを使って火をおこし、大づち、小づちで丹念に打ち込んでいきます。4キロもの大づちを使う作業に「これほど重労働だったとは・・・。」と若者たちも驚嘆。まっすぐ振り下ろすのも難しかった二世たちですが「なんとか形になってきた」と山崎さん。近い将来、女性の打刃物師も誕生するかもしれませんね?

    「火の温度は、肌で見る」古式鍛造の職人が一人前になるには11年かかったという

     

概要

工芸品名 土佐打刃物
よみがな とさうちはもの
工芸品の分類 金工品
主な製品 斧、鳶(とび)、鋸、鎌、包丁、鉈(なた)、柄鎌(えがま)、鍬(くわ)
主要製造地域 高知県/高知市、安芸市、南国市、須崎市、土佐清水市、香美市他
指定年月日 平成10年5月6日

連絡先

■産地組合

高知県土佐刃物連合協同組合
〒782-0034
高知県香美市土佐山田町宝町2-2-27
香美市商工会内
TEL:0887-53-4111
FAX:0887-53-4113

http://tosahamono.com/

■関連展示場・施設

特徴

土佐打刃物は、全国各地から形状や重さの違う刃物の注文を多く受けていたため、原寸と形を書いた注文書だけで製造ができます。これを称して「土佐の自由鍛造」と呼ばれています。この事は土佐の製造品種が多いことからも想像できますが、また少量多品種製造が可能なので、現在まで土佐打刃物が作り続けられています。

The craftmen of Tosa Uchihamono can create any blade according to the nationwide requests by just receiving mere description of its shape and size. Their method is known as Jiyu-Tanzo (free-forging) of Tosa. Their techniques survived until now by getting advantage of their ability to create a wide variety and small number of products, which explains why Tosa has a wide variety of cutlery.

作り方

鋼や鉄を炉で熱し、鎚(つち)で打ちのばしながら形を作ります。形になったものの刃の部分を研ぎ製品にします。また、斧や鳶等は、鉄材にたがねでヒツ穴を抜く「抜きビツ」と呼ばれる方法で作られています。

An iron or steel is hammered out to shape from while heated in a furnace. The edge is sharpened afterwards to make a complete product. Special method called nuki-bitsu (perforating by chisel) is used to create tools such as axe or hatchet.