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TRADITIONAL CRAFTS

播州そろばんBanshu Abacus

そろばんは室町時代の終り頃、中国から長崎を経由して大津に伝わりました。
安土桃山時代に、豊臣秀吉の三木城攻略時に、大津に逃れた住民が、そろばんの技法を習得し、地元に帰って製造を始めたのが播州そろばんの始まりと言われています。昭和35年には360万丁と最も多く生産されましたが、その後電卓の出現によって、その需要は減少しています。

Coming first from China, the abacus was brought to Otsu from Nagasaki toward the end of the Muromachi period (1392-1573). It was during the following Momoyama period (1573-1600), when Toyotomi Hideyoshi sieged Miki castle, that the people of this small castle town fled to nearby Otsu, where some learned how to make the abacus. When they finally returned to their homeland, they began making what became the Banshu Soroban.
The peak of production here was in 1960, when 3.6 million abacuses were made. Demand has gradually fallen since then due to the appearance of the electronic calculator. The abacus, however, still has value as it provides a much more graphic way of visualizing calculations, and as such still has a place in the curriculum of many schools, where in the past principals of education were ""reading, writing and abacus"". Some also believe that using an abacus can stimulate the brain and prevent senile dementia.

Dense hardwoods such as ebony are used for the frame and boxwood and birch are used for the beads. The smooth operation of these abacuses is one of their special features but, the fineness and delicacy of the work, makes them works of art in wood.

  • 告示

    技術・技法


    乾燥は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    玉材にあっては、原木の状態で6か月以上、粗形の状態で1日以上自然乾燥をすること。

     
    (2)
    軸材にあっては、竹の状態で1か月以上、生ひごの状態で1日以上自然乾燥をすること。

     
    (3)
    枠材にあっては、原木の状態で6か月以上、小割材の状態で6か月以上自然乾燥をすること。この場合において、小割材は、いげた積みにより乾燥をすること。


    玉造りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「面削り」、「口切り」及び「面抑え」をすること。

     
    (2)
    「穴くり」をした後、いぼたろうを用いて艶出しをすること。

     
    (3)
    オノオレを玉材に使用する場合には、「赤太」部分を使用し、ベンガラ及び光明丹を用いて染色すること。


    軸造りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    軸材は、「甘肌」部分を残して「ひご引き」をすること。

     
    (2)
    すす竹以外の竹を軸材に使用する場合には、蒸し上げをした後、染色をすること。


    枠造りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「はと目入れ」をすること。

     
    (2)
    枠の上面は、「丸みかけ」をすること。

     
    (3)
    枠の裏板は、くり小刀を用いて「くり」をすること。

     
    (4)
    左右の枠の仕口加工は、上枠に対しては「丸細」又は「うろこ細」により、下枠に対しては「うろこ細」によること。

     
    (5)
    枠は、トクサ及びムクの葉を用いてみがくこと。


    組立ては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    上下の枠は、「おがみ合わせ」をすること。

     
    (2)
    「目竹止め」、「裏棒止め」、「隅止め」及び「定位点打ち」をすること。

    原材料


    玉材は、オノオレ、ツゲ若しくはソヨゴ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    軸材は、マダケとすること。


    枠材は、コクタン、アカガシ若しくはミズメ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

     

  • 作業風景

    そろばんを作るためにはまず材料を用意しなければなりません。枠(わく)・珠(たま)・軸(ひご)の3つの材料ですがそれぞれ別の工場で作られます。

    工程1: 枠材作り

    アフリカやインドネシアから輸入されたコクタンの木で枠を作ります。製材工場で割られ、そして板にされ、さらに細かく切って各部分に合わせた板に加工されます。

    工程2: 珠作り

    斧が折れるといわれるほど固いオノオレカンバという木を主に使い、高級品にはツゲやコクタン、シタンも使います。原木を輪切りにし、丸い形に打ち抜き、さらに削って珠の形を作ります。

    画像をクリックすると動画が再生されます

    工程3: 軸作り

    材料は真竹で、高級なものにはすす竹を使います。竹を寸法切りにし、小さく割って丸いひごに加工し、磨いて仕上げます。

    <組み立て>
    揃った材料は職人さんのところへ運ばれて、いよいよ組み立てです。

    画像をクリックすると動画が再生されます

    工程4: 枠加工

    枠加工(枠板に穴をあけます)
    まず上下と左右の枠板に自動カンナをかけて、きれいにしたら、みぞと穴をあけます。それぞれ軸のはまる穴、裏棒のはまる穴、裏板がはまるみぞになります。次に裏板用の板から裏板をつくります。そして上枠と下枠の間に入る板「はり」に穴をあけ、竹の軸を通す穴を作ります。その「はり」にみぞを彫り、セルロイドをうめます。さらに竹ひごを切って軸を用意しておきます。最後に枠の組み合わせができるよう、「ほぞ」を作り、仮に組み合わせてみます。

    工程5: 軸の差し込みと珠入れ

    はりに軸を差しこみます

    珠入れ(軸に珠を入れます)

    工程6: 組み立て

    組み立て
    珠が入れば、下の枠と右の枠、裏板、裏棒をとりつけ組み立てます。

    工程7: 目竹どめ、裏棒どめ、すみどめの穴あけ

    上枠・下枠に裏棒どめ、目竹(竹の軸)どめ、すみどめの穴をあけます。穴をあけたらアルミニウムの針金をさし、はさみで切ります。こうすることによって裏棒・軸・左右枠はしっかりおさえられ、そろばんは丈夫になります。

    工程8: 磨き

    最後に枠を丹念に磨きます
    針金を切ったあと、やすりがけします。最後の仕上げは紙やすりやムクの葉でこすって磨き上げます。こうしてつやを出し完成です。

     

  • クローズアップ

    質を変えてこれからも生き続ける「そろばん」

    電卓の普及でわたしたちの回りから姿を消してしまったそろばん。しかしながら、そろばんは前よりもそのよさが見直されながらしぶとく生き続けている。この道40年の伝統工芸士・宮本一広さんにそろばんの良さを伺った。

     

    盛況時は年間360万丁の生産

    「今じゃ考えられないね。私がそろばんを作り始めて5年目の昭和35年には、小野で360万丁も作っていたよ」と当時を振り返る宮本さん。当時小野市内には350もの工場(家内工場ではあるが)があり、日本一の生産量を誇っていた。昭和40年代の電卓登場以来その数は減少しつづけて、今は工場も50になり、生産量は45万丁前後になってしまっている。数は減ったが、「名指しで私のそろばんを求めてくれる人が日本全国にいるんですよ」と顔をほころばせる宮本さん。珠算教室の経営者や会計士など、職業柄そろばんにひときわ思い入れのある人が注文してくる。なぜ今もそろばんを使ってくれるのだろうか。

    伝統的工芸品のそろばん

    細かいところまで配慮されている工芸品:そろばん

    「そろばんの上・下の枠に小さな穴があいてますが、なんだか分かりますか」と聞かれてはたと考えた。それらは目竹どめ、裏棒どめ、すみどめの穴だが、その目的を聞いて感心せざるを得なかった。「枠板から竹軸や裏棒にキリで穴をあけてアルミニウムの針金を差しこむ穴なんです。細い竹軸に狙いをつけて、竹の真ん中に穴をあけるんです。アルミニウムの針金をそこに差し込めば、枠板と竹軸が固定されるんです。」小さな穴がそんな大きな意味を持っているとは本当に驚きだ。そろばんが丈夫なわけがよくわかった。宮本さんは仕上に使う「8種類のサンドペーパー(目の粗いものから細かいものまで)」と「砥草」と「ムクの葉」を見せてくれた。これらで丹念に磨き上げるのである。途中、つやを出すため天然の白蝋でこするという。本当に細かい配慮が最後の最後までなされている。「こんなことがありましてね」と宮本さんが切り出した。「以前わたしが横浜でそろばん製作の実演会をしていたとき、見にきてくれた子どもにそろばんをあげました。それから何年かたった後、神戸の珠算競技大会でその子に偶然会ったんです。『おっちゃんのそろばん使いやすいわ、初段になった今でも使っています』と言われたとき、これほど嬉しかったことはなかったですね」と、宮本さんは感慨深く語ってくれた。「わたしのポリシーは、使う人が使いやすいそろばんを作ることなんです。手抜きは一切しません。もし体調が悪ければ作りません。」とそろばん作りにかける思いは強い。こうしてできあがったそろばんは、使いやすく、玉のはじきがよく、美しく、工芸品としての価値が本当に高い。

    • 珠と軸の調整具合は大事なところ

    • 仕上がり具合を見る宮本さん

    教育に最適なそろばん

    工芸品としての価値だけではなく、そろばんは教育の教材にぴったり。「今の子が暗算に弱いのはそろばんをあまりしてないからではないのかな」と宮本さん。実際、そろばんを使うと大変効果が出る。指を動かすことにより脳を刺激し、頭の回転を早くする。数の理論やけたの意味、10進法の明確な理論を与えるという効果をあげる。集中力や忍耐力を引き起こし、積極的になり精神が強くなり、いいことづくめである。IT時代においても、そろばんはその重要性をますます発揮していくことだろう。宮本さんの作られたそろばんは多くの人に使われれるのを待っている。

    これからもそろばんを作り続ける意欲一杯の宮本さん

    職人プロフィール

    宮本一広

    1940年生まれ
    この道45年、そろばん普及のため全国及び海外までも実演に出かける

    こぼれ話

    計算道具から教育教材への変換

    そろばんの歴史は古く、紀元前3000年のメソポタミアにまでさかのぼる。日本には室町時代(1500年代)に中国から伝来。その後長い間計算道具として使われてきた。しかし電卓の影響でそろばんは消滅の危機を迎えた。その危機を乗り越え、今もそろばんの普及に精力を傾ける元理事長・内藤逸二さんにお話をうかがった。

    ◆天敵電卓現る

    「全盛時(昭和35年頃)は小野市だけで年間360万丁を生産し、工場は350もあった。」と内藤さん。しかし昭和40年代の電卓のすさまじい普及により、そろばんの生産量は急激に落ちていった。また消費税の導入も更にダメージをあたえた。「おそらく平成13年は生産量45万丁位になるでしょう」とよむのは藤原さん。確かに激減してはいるが消滅したわけでなく、しぶとく生き残っている。なぜだろうか。

    ◆教育教材として生きる

    「もし小学校の教材として使われなかったら全くその姿を消していた可能性があったかもしれない。」と内藤さん。実際の需要は学校の教育教材としてがほとんど。内藤さんたちは、25年以上前からそろばんをたんなる計算道具としてでなく、子どもの能力の開発の上で欠かすことのできない教材として訴え続けていたのである。文部省の指導要領が教材としての使用に影響するが、どのように移ってきたのだろうか。昭和40年の初めまでは、4~6年生の3年間そろばん授業がおこなわれた。しかし昭和45年の指導要領で3年生と4年生の2学年に変わった。次いで昭和55年の指導要領で「ゆとり教育」が提唱され「そろばんまたは電卓を使用」と記載され、3年生のみ、年間8時間の授業となった。「そのときの表現はこうだった。3年生はする必要があるが4年生はするのが望ましいというものだった。しなさいとは書かれなかった。結局3年生だけになってしまったんだ」と口惜しげに語る内藤さん。次は平成4年の指導要領。さらに減らされると誰もが思ったが、なんと3年生と4年生の2学年に戻ったのだ。「わたしたちの長年にわたる陳情が文部省に届いたものと思ってます」と感慨深く語る内藤さん。今度の指導要領の改正は平成14年。ぜひとも次の2点だけは希望を聞いていただきたいと熱く語るお二人。「2年生からの導入」と「電卓による計算の文章を削除して、そろばんによる計算の文章を入れること」の2点である。

    ◆そろばんの効用

    「そろばんというのは、数(かず)の概念を学んだり計数の勘を養ううえで、非常に有効なんですよ。電卓というやつは確かに便利だが、単純に答えをはじき出してくれるだけで、ミスをしても気がつかないことが多い。日本人の暗算能力の高さはそろばんのおかげともいわれており、そういう現代人が忘れていたそろばんのよさをもう一度見直してもらいたい」と内藤さん。実際、指を使うそろばんは脳の活性化に有効といわれる。とくに右脳の活性化に効果があるという。集中力を養うにもそろばんが有効であることは実証されている。外国でもそろばんの効用が認められてきている。アメリカでは早くも1978年に「アメリカ珠算センター」が設立され、公立の小・中学校を対象に珠算教育の指導がなされている。これまで指導にあたってきた学校は1,000校以上といわれ、推定10万人がそろばんを学んでいる。ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークなど6都市で珠算競技会もおこなわれている。日系人の多いブラジルでもそろばん人口は増えており、小・中学校や日本語学校、日系の商社・銀行などで珠算教育が実践されているという。その他イギリス、インド、ハンガリー、フィンランド、ニュージーランドなどかなりの国で珠算教育がなされている。もちろんそれらの国には日本からそろばんが輸出されている。もしかするとそろばんの効用については外国から逆輸入される日がくることになるかもしれない。日本国内での精力的な努力は内藤さんたちを中心にこれからもなされていくだろう。子供たちの教育のために。日本の将来のために。

    <内藤逸二さんプロフィール>

    昭和49年より16年間播州算盤工芸品協同組合理事長を務められる。その間伝統的工芸品申請・指定取得および文部省との交渉に代表としてあたられる。平成13年1~3月には、市内8小学校のうち6校にて「そろばんづくり」が実施されたが、そのとき組み立て指導をされるなど、今なおそろばん普及のため精力的に動かれている。

    • 超大型そろばんの広告塔(長さ9m、幅4m)

    • 珠算競技大会

    • 今もそろばんの普及に力を注ぐ内藤さん

     

     

概要

工芸品名 播州そろばん
よみがな ばんしゅうそろばん
工芸品の分類 文具
主な製品 そろばん
主要製造地域 兵庫県/小野市、加西市、三木市、加古川市、加東郡社町
指定年月日 昭和51年6月2日

連絡先

■産地組合

播州算盤工芸品協同組合
〒675-1372
兵庫県小野市本町600
TEL:0794-62-2108
FAX:0794-62-2109

http://web.pref.hyogo.lg.jp/ie07/ie07_000000020.html

兵庫県木珠事業協同組合
〒675-1362
兵庫県小野市久保木町563
下山健次様方
TEL:0794-62-4849
FAX:0794-62-3233

播州算盤製造業組合
〒675-1315
兵庫県小野市日吉町84-1
TEL:0794-62-3996
FAX:0794-62-3996

■関連展示場・施設

特徴

そろばんの玉はカバ・ツゲの木から、枠にはコクタン等、堅くて重い天然の木を用いています。「うろこ細」等繊細な伝統技術によって組み立てられたそろばんは、使いやすさ、珠(たま)はじきの良さに加え磨き上げられた美しさを備え、まさに木の美術品としての価値も備えています。

Soroban beads are made of birch or boxwood, while for the frame hard and heavy natural woods like ebony are used. These soroban, assembled by means of precise traditional techniques such as “urokosai“ (fish scale technique), in addition to their ease of use and the facility of working the beads, are also valuable art objects with a beautifully polished finishing.

作り方

原木の選定から始め、十分乾燥させた後に珠削り、軸のひごひき、枠等の製材を行い、それぞれの材料に仕上げます。それを中桟、上下左右の枠、うら板に加工し、軸に珠を入れて枠を組み、歪みを直して目止めで固定します。最後に艶出しをかけて仕上げます。

After the wood has been selected and carefully dried, the beads, the axis shaft and the frame are built, each being given a different finishing according to its materials. The middle crosspiece, up, down, left and right of the frame, back plate was processed on the, the beads are inserted onto the shaft, distortions are corrected and fixed in place with wood filler. The process is finally completed by polishing and glazing them.

産地からの声

昔から教育の基本が「読み、書き、そろばん」と言われているように、そろばんは計算力を養うための大切な用具です。また指先を動かすことにより、脳の活性化がはかられ、老化の防止に役立つと言われています。計算は電卓だけに頼らず、暗算力、記憶力をのばすそろばんを使ってみてはいかがでしょうか。