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TRADITIONAL CRAFTS

福山琴Fukuyama Koto

福山琴の始まりは、江戸時代初期に福山城が築かれた頃と言われています。江戸の城下町では、芸事が盛んで、福山でも歴代藩主の奨励もあって歌謡、音曲が盛んに行われました。
幕末から明治にかけては、秀れた琴の演奏家が生まれました。こうした背景から福山では琴の需要が多く、早くから琴作りが行われていました。

It seems likely that the making of Fukuyama Koto started at the time of the erection of a castle at the beginning of the Edo period (1600-1868) in Fukuyama, which is now a city in Hiroshima Prefecture. Craft industries flourished in castle towns during the Edo period, and with encouragement from the feudal lord at the time, both accompanied and unaccompanied songs were very popular in Fukuyama.
In the latter years of the Shogunate and right through the Meiji period (1868-1912), superb koto players from Fukuyama appeared and trained many budding musicians. It is perhaps, therefore, little wonder that koto from this old castle town gained such a good reputation and production of these beautiful flat harps was quick to follow.

Well seasoned paulownia (Paulownia Sieb. et Zucc.) of the very best quality is used to make these instruments which are brimming over with exquisite craftsmanship evident in the extremely detailed work. The superb tone, the beautiful grain on the soundbox and the splendid decorations are a product of the technical brilliance of the highly experienced makers of the koto.

  • 告示

    技術・技法


    甲造りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「甲挽き」した後、屋外で12か月以上自然乾燥すること。

     
    (2)
    「荒ぐり」した後、手作業による「仕上げぐり」をすること。

     
    (3)
    甲の裏の彫りは、「綾杉彫り」又は「子持綾杉彫り」とすること。


    組立ては、「とめ甲」又は「くり甲」とすること。


    仕上げは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    甲及び裏板は、鏝を用いて焼き上げること。

     
    (2)
    甲及び裏板の「みがき」は、いぼたろう及びうずくりを用いること。

    原材料

    甲及び裏板に使用する木地は、キリとすること。

  • 作業風景

    福山琴の製作工程は、1)製材工程、2)乾燥工程、3)甲造工程、4)装飾工程、5)仕上げ工程、の5つに分けることができます。

    工程1: 製材工程

    まず、原木選びおよび吟味という作業から始まります。桐の原木は国産および、北米産のものが使用され、末口(すえくち)径400~600ミリメートルのものが選ばれます。やや湾曲しているものが良いとされています。この桐の丸太材を年輪や、曲がり具合、節の有無などからよく吟味したものに、最適な製材方法を決めていきます。これが墨付けと呼ばれる作業です。この作業は職人の熟練の目を要するものです。次に墨付けを行ったら、いよいよ鋸で製材していきます。まず幅を決めるために両側を鋸で切り落とす大割りという作業です。それから、琴の形をおおまかに挽く、甲挽き・板挽きという作業に移ります。

    工程2: 乾燥工程

    先の製材工程で製材した材料を、屋外の乾燥場で「野ざらし」という天然乾燥で行われます。乾燥期間は、1年~3年を要し、数回の梅雨を経験させることが必要です。長期間、放置することで桐材に含まれる「アク」を除いて、木を枯らせることによって、寸法を安定させる働きがあります。こうして、木の狂いやそりを取り除きます。この後、さらに人工乾燥が行われます。

    工程3: 甲造工程

    刳り、彫り、板付け、焼き、磨きの各工程に分けられます。刳りは倣(なら)い機能を持った鉋盤で荒削りを行います。取り付ける部品の加工が大体終わると、甲の内部に彫刻を施す彫りの作業です。この彫りは、等級に応じて簾目(すだれめ)、綾杉(あやすぎ)、子持ち綾杉などの模様が施されていきます。ノミで丁寧に彫っていく細かい作業です。次に、板付けは共鳴層となる裏板の加工と取り付け作業。こうして木地の加工が完了したら、続いて、焼き作業に進んでいきます。焼きは、灼熱に焼いたこてで表面を焼いていきます。この作業は、琴独特の色彩を醸し出していくものです。磨きは、焼きの作業で生じた炭化物を除去することと、独特の光沢を出すために行う作業です。

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    工程4: 装飾工程

    一般的に飾り付け作業と呼ばれるもの。装飾部品の数が多くて、複雑で、かつ微細な加工が求められるために、琴作りの作業の中では一番時間を必要とされる工程です。四分六(しぶろく)、竜角(りゅうかく)、柏葉(かしわば)、竜舌(りゅうぜつ)、丸型(まるがた)、前脚(まえあし)、後脚(あとあし)、柱(じ)が主な装飾部品ですが、象嵌(ぞうがん)、蒔絵、寄せ木等の伝統的な装飾技法を駆使して美しい琴を作っていくのです。特に、柏葉の装飾である「玉渕巻き」は福山琴の特徴となっています。また、竜舌の部分は蒔絵業者に装飾を依頼して、高蒔絵(たかまきえ)、平蒔絵、研ぎ出し蒔絵等の技術を使って華麗な世界を作り出していきます。

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    工程5: 仕上げ工程

    金具を取り付け、琴のレベル調整を行い、前脚の着脱の調整をおこないます。楽器としての完成度を確かめながら検査を行い、梱包されて出荷されます。こうして福山琴は完成するのです。

     

  • クローズアップ

    新しい息吹を伝える妙なる音色、福山琴

    誰もが知っている琴の名曲「春の海」。この曲の舞台となった鞆の浦にほど近い福山。この風光明媚で気候温暖な城下町は、琴の全国生産量の実に70%を占める。数ある伝統的工芸品の中でも楽器類で指定されているのは、福山琴のみだ。

     

    懐かしく、優雅な琴の音色

    琴の音色を聞くと、誰しもその優雅で繊細かつ、ときにはダイナミックな響きに思わず耳をかたむけてしまうのではないだろうか。お正月にどこからともなく聞こえてくる「春の海」、これを聞くと新年のすがすがしい感じがして、なぜか心が和んでくるようだ。六尺(1メートル82センチ)に施されたさまざまな美しい装飾も、琴のまた大きな魅力である。「こと」と言えば、現在では普通は十三弦の琴を指すが、古くは弦楽器の総称であった。しかし『源氏物語』には、琵琶(びわ)、箏(そう)、琴(きん)と区別してある。箏と琴のちがいは、箏柱(ことじ)の有無にあり、あるものが「箏」で、ない方が「琴」である。しかし、「箏」は当用漢字に採用されてなく、一般的に「琴」が今では総称として通用している。

    福山琴 伝統美と技の生きた福山琴

    歌謡、音曲のもともと盛んな福山

    福山琴の歴史は、元和5年(1619年)水野勝成(徳川家康のいとこ)が福山に城を築いたころに始まる。江戸時代の城下町では武士や町人の子女の芸事が盛んで、ここ福山でも藩主が歌謡、音曲を奨励した。江戸時代の終わりに、琴の名手、葛原勾当が備後・備中で活躍したこともあって、福山を中心として早くから琴が生産される土壌ができていった。「春の海」で有名な箏曲家、宮城道雄の父は福山・鞆の浦出身で、この曲の舞台は、彼が少年のころによく訪れた鞆の浦であると言われている。30年ほど前は若い女性のたしなみとして、お茶や生け花、裁縫とともに琴を習うのはごく一般的であり、昭和45年頃が福山琴もその出荷がピークであった。

    甲の裏面に施される装飾模様の彫り

    日本の伝統美と技が息づく、琴の細工

    琴の甲の裏面に施される装飾模様の彫りには簾目(すだれめ)・綾杉・子持ち綾杉・麻型彫りといったものがある。これは音を豊かにする音響効果とともに、装飾効果としても重要である。また琴の装飾部分で大きな役割を担うのが、蒔絵や柏葉の部分である。この飾り付け作業は、装飾部品も多く、複雑で精緻な加工が求められ、もっとも時間を要するところである。琴は、単なる楽器ではなく装飾品としても、見て楽しめ、華がある。「基本的には鳴りもの。いい音がせんと意味がない。」と話す琴職人の小川さんはこの道50年。「一人前になるには10年くらいかかる。難しいのは、甲を刳っていくところ。このカンが一番難しい。職人のセンスがもっとも問われる部分だ。」と話してくれた。普段はおだやかなまなざしも琴の前で作業にとりかかると、真剣そのもの。しかし、その瞳の奥には琴に対する深い愛情が感じられる。「素材が自然のものだからひとつひとつ、皆違う。桐の木の産地や堅さ。その素材をうまく生かして、対応できることがいい職人。腕だけじゃなくて、カンやセンスが必要。」

    装飾部分(柏葉)の細かい作業

    子供たちの情操教育にもひと役

    福山では、子供たちの情操教育と琴演奏技術の向上を図り、全国小・中学生箏曲コンクールを毎年開催している。また新しい取り組みとして、小さな小学生でも扱いやすく、乗用車に積めるサイズのコンパクトな新福山琴を開発した。これは調弦などのメンテナンスも今までのものより、ずっと簡単に行えるのも特徴だ。「もっと気軽に、多くの人に琴の魅力に接してもらえれば」と、小川さんは期待を寄せている。子供たちや若い女性たちに、日本の音色、和の音階や旋律の豊かさを知ってもらい、音楽の楽しさを伝える良い機会になるのではないだろうか。琴を演奏することは、楽器をただ弾くというだけでなく、立ち居振る舞いを美しくし、豊かな人間性を育むことにつながるはずだ。

    • 完成した福山琴の数々

    • 作業中の小川さん

    職人プロフィール

    小川賢三

    18歳で琴職人の道を志し、この道50年のベテラン。新しい製品作りに常に挑戦している。

    こぼれ話

    装飾性の高い日本の琴

    甲の裏に装飾と音響効果を兼ねて彫られる。繊維やひもの張りつめたものを爪弾くと、音が鳴ります。これを応用したものが弦楽器であり、ヴァイオリンやチェロ、コントラバス、ハープなどオーケストラでおなじみの楽器たちや、ポピュラーなギターなど。アジア各地でも、それぞれの風土に合わせて弦楽器は親しまれてきました。日本の琴が、それらと大きく一線を画しているのは、その装飾性の高さにあると言えるでしょう。昔から絵巻の中に、琴が描かれるシーンは数多く存在しており、当時の貴族たちの優雅な暮らしぶりがうかがえます。楽器としてただ楽しむばかりでなく、部屋のインテリアとして、あるいは財力を知らしめるものとしても琴は有効だったのでしょう。

    重要な装飾部分の、蒔絵

     

概要

工芸品名 福山琴
よみがな ふくやまこと
工芸品の分類 その他の工芸品
主な製品
主要製造地域 広島県/福山市
指定年月日 昭和60年5月22日

連絡先

■産地組合

福山邦楽器製造業協同組合
〒720-0002
広島県福山市御幸町下岩成735-1
TEL:084-955-5895
FAX:084-955-5895

http://www.bingo-fukuyama.jp/383.html

■関連展示場・施設

特徴

最高級の桐乾燥材を使用し、精巧な細工が施される等、手作りの良さが随所にあふれています。優れた音色、甲の木目の美しさ、装飾の華麗さは、経験豊かな琴職人の手作り技術によって生まれています。

These articles are made of the finest dry paulownia wood processed with exquisite care so that even the most minute details shine with the beauty of craftsmanship. The excellent tone, the beauty of the shell’s grain and the elegance of the decorations are born out of the expert hands of experienced koto craftsmen.

作り方

原木の桐選びから始まる琴の製作工程は、桐材の乾燥までに約1年。その後、甲のえぐり、彫り、焼き、磨きへと続き、装飾工程の飾り付け、蒔絵、そして、仕上げの金具付け、調整となります。この工程のほとんどが、熟練した琴職人の手作業で丹念に仕上げられます。

The koto manufacturing process starts with the selection of the suitable pawlonia raw wood which is then dried over the course of one year. This is followed by the gouging, carving and burning of the shell, by the application of the decorations and the gold leaf and by the mounting and adjustment of the metal fittings. Most of these stages will be completed by the hands of skilled koto craftsmen working with great care.

産地からの声

長期間使用しないと、楽器に緊張感がなくなります。使い込むことによって、良い音が出るようになります。

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