2018.04.27

匠を訪ねて~越前焼 “しぶい”ではなく”可愛い”越前焼を目指して

2018年4月27日 青山スクエアで特別展に出展中の司辻健司さんを訪ねました。

越前焼:司辻健司

越前焼は日本六古窯の一つで、平安時代末期から焼き続けている福井県の伝統的工芸品です。かめ、壷、すり鉢、舟徳利、おはぐろ壷などの暮らしで使われる器が多く作られています。

ただ現在は産地の規模としては小さくなっているものの、越前焼の青年部が発足しており、若手の力も徐々に大きくなっているところ。司辻さんは、その青年部に所属しており、他の産地の青年部との交流も盛んに行っているようです。

幼いころから、そばにあった越前焼


家業が越前焼

司辻家では越前焼を作っており、司辻さんは小さな頃からそばに土がある中で育ってきました。そのため、大きくなったら、越前焼を継ぐんだろうなと思うまでもなく、自分の中で越前焼の存在が当たり前のようにあったそうです。

ただ、越前焼以外に本当に面白いものはないのかと考えた時期があり、大阪の学校に通うことになります。

そこでは器だけでなく、ジュエリーなど、今まで携わったことのないものまで一貫して習うので、司辻さんの視野は一気に広がりました。

 

色とりどりのステンドグラスとの出会い

司辻さんはステンドグラスと出会い、こんなにカラフルなものが世の中にあるのかと知りました。一時は、越前焼ではなく、ステンドグラス職人になろうかと、考えたこともあったそうです。

ですが、生活をしていくことを考えると、ステンドグラスではイメージがわかず、二番目に好きだった越前焼を継ぐことを決めました。

越前焼の新しいスタイル


薄作りの越前焼

越前焼の産地では、現在薄作りの商品開発を進めています。

越前焼の土はもともと粘り気のあるものなのですが、その性質を生かしてさらに品種改良を重ね、薄く作っても強度のある焼き物ができるように作りました。

他の産地ではなかなかできない、この形状は越前焼のこれからのスタイルとなっていきそうです。

薄さ1ミリの世界

司辻さんも、この薄作りの越前焼に取り組みました。

ですが、品種改良された土があったとしても、簡単には作り上げることは出来ません。司辻さん曰く、薄いものを作るろくろの技術、窯の温度、うまく焼けたとしても鉄分が噴出してしまうなど、様々な試行錯誤をした上じゃないと出来ないそうです。

 

司辻さん自身は、この薄型の越前焼を完成させるまでに、3年かかったとおっしゃっていました。

渋い越前焼の世界


越前焼と言えば焼き締めのものであったり、釉薬をかけたとしても渋いものが多く、カラフルなものはありません。ただ、そうなってしまうのには理由があります。
それは、越前焼の土が焼成をすると黒っぽくなってしまうため、どんな色を塗ってもくすんだ色になってしまうからです。

だから越前焼は、どの作品も渋いものばかりというイメージがついてしまったのでしょう。

ですがステンドグラスに興味をもった司辻さんは、越前焼を受け継ぐと決めてからも、色へのこだわりを捨てることはしませんでした。

司辻さんの作る越前焼


カラフルなものを

20代の頃はステンドグラスそのものを越前漆器に取り入れようとしましたが、1年ほど試したものの製品といわれるレベルまでにはならなかったそうです。

 

現在は、なるべくカラフルになるような越前焼を日々考えて、これまでの越前焼とは違うものを作っています。

越前焼は土で勝負し渋いものであるべきだという考えの人もいるため、司辻さんの作るものは賛否両論ありますが、それでも色へのこだわりは捨てずに新しいものを作り続けているそうです。

越前焼×漆


廃業はしているものの

明治時代、越前焼の作り手の中に、漆を塗って器を作っている家がありました。いつの時代も、素朴な色味だけではつまらないと感じる作り手がいるということなのでしょう。

その人は、越前焼の外側に漆を塗って、これまでにない形のものを作っていましたが、商品としての評価をもらえず廃業してしまいます。

ですが司辻さんは、そういった試みをしている人がいたという事実が励みになっているそうです。

最後に、これから先、どんなものを作っていきたいですかと聞いたところ、越前焼に対して「可愛い」と言ってもらえるようなものを作っていきたいとおっしゃっていました。

 

これから、どんな越前焼を生み出してくれるのか楽しみです。

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今回お話をしていただいた司辻さんは、
特別展「福井の伝統工芸 春の贈り物」で4月30日まで青山スクエアにて実演をしています。
(福井の伝統工芸 春の贈り物は5月2日まで)

ぜひ遊びに来てくださいね。

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