美濃焼

岐阜県

美濃焼の歴史は古く、今から1300年以上前まで遡ります。最初は朝鮮半島から須恵器の技術が伝えられました。平安時代(10世紀)になると白瓷(しらし)と言われる灰釉(かいゆう)を施した陶器が焼かれるようになりました。
この白瓷は須恵器を改良し、釉薬(ゆうやく)を使ったものです。この頃から窯の数も多くなり、本格的な焼き物生産地となりました。安土桃山時代から江戸時代初頭にかけて、茶の湯の流行とともに、茶人の好みを反映した焼き物が生産されました。

  • 告示

    技術・技法

    1 成形は、次の技術又は技法によること。
    (1)ろくろ成形、たたら成形、押型成形又は手ひねり成形によること。
    (2)磁器にあっては、(1)に掲げる成形方法によるほか、素地が(1)に掲げる成形方法による場合と同等の性状を有するよう、素地の表面全体の削り整形仕上げ及び水拭き仕上げをする袋流し成形又は「二重流し成形」によること。

    2 素地の模様付けをする場合には、彫り、櫛目、印花、面とり、布目、はり付け、三島手、はけ目、化粧掛け又は掻き落としによること。

    3 下絵付けをする場合には、線描き、だみ、「描き絵」、「吹墨」、又は「摺絵」によること。この場合において、絵具は、「呉須絵具」又は「鬼板絵具」とすること。

    4 釉掛けは、「ずぶ掛け」、「杓掛け」又ははけ掛けによること。この場合において釉薬は、「志野釉」、「黄瀬戸釉」、「織部釉」、「鉄釉」、「御深井釉」、「灰釉」、「青磁釉」又は「美濃磁器釉」とすること。

    5 上絵付けをする場合には、線描き又は「筆絵付け」によること。この場合において、絵具は、「和絵具」とすること。

     

    原材料

    はい土に使用する陶土は、もぐさ土、美濃陶土、木節粘土、がいろ目粘土、藻珪又はこれらと同等の材質を有するものであること。

  • 作業風景

    工程1: 土練り

    十分に固さや水分が均一になった土は、次に中の空気を抜くために少しずつ回転させながら練ってゆきます。練った後が菊の花びらのように見えるので菊練りとも言われます。

    工程2: 成形(せいけい)

    ひもつくり、たまつくり、たたらつくり、手びねり、ろくろ成形など。

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    工程3: 乾燥

    成形後、削るなどの処理が終わったら、素焼きの前に陰干しあるいは天日で、ゆっくり乾燥させます。乾燥の時間は、作品の大きさや素地の厚さによって異なります。

    工程4: 素焼き

    成形し乾燥させた作品を700~800度の窯で焼きます。
    素焼きによって吸水性と強度が増し、釉薬がかけやすくなります。

    工程5: 下絵付け

    下絵付けとは施釉(せゆう)の前、すなわち釉薬の下に描くことを言います。
    絵付用の筆と好きな色の絵の具で描いていきます。

    工程6: 施釉(せゆう)

    施釉とは素焼きした作品に釉薬をかけることをいいます。作品の強化と装飾のために行います。ずぶがけ、ひしゃくがけ、スプレーがけなどの手法があります。

    工程7: 本焼(ほんやき)

    施釉したあと、高温で焼成します。窯詰めは慎重に、窯全体を均一の密度にして焼きます。窯は登り窯、ガス窯、電気窯などがあります。

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    工程8: 上絵付け(うわえつけ)

    上絵付けとは、施釉し本焼したあと、上絵用の絵の具で絵や文様を施し、700~800度で焼成する方法です。
    細かい線まで書き込むことができます。

    工程9: 完成

    焼成が終わったら、仕上げのやすりがけなどをして完成です。

     

  • クローズアップ

    美濃焼への想い

    400年の歴史を持つ美濃焼には志野、織部、黄瀬戸、瀬戸黒などの種類がある。「土練り3年、ろくろ10年」と言われる陶芸の世界で生きてきた職人に、美濃焼に対する思いと願いを語ってもらった。

     

    陶芸一筋

    林耕造さんは陶芸の町土岐市で生まれる。中学を卒業する頃には自分は窯業に関わるものだと思っていたという。高校では窯業を勉強する。「単に他の仕事を知らんかっただけです。後になってから他のこともやれたのではないかと考えたこともありました」とはいうものの、窯業に対する思い入れはかなりあったようだ。「輸出用の洋食器を作っていた親の仕事を見て、もっと良いものが作れるのではないかと感じていました。」卒業後は磁器を得意とする加藤幸兵衛に弟子入りする。そしてそこで10年間、生活用具としての和食器の勉強をした。28歳の時に独立し、土岐市の五斗蒔地区に工房を構え、現在に至っている。

    林耕造さんは昭和25年土岐市生まれの土岐市育ち。自作のコーヒーカップで焼酎「いいちこ」を飲む伝統工芸士

    作った人の温もりが残っている

    大規模な工場で作られた陶器が巷にはあふれているが、その一方で手作りの陶器を求める人も多い。比べてみると、どことなく違う。その違いを多くの人が求めているのだろうが、それは一体何なのだろうか。「作った人のぬくもりが残っているからではないでしょうか。作り手はそんなに意識していないけど、土づくりから一貫して作り上げるから、その辺でちょっとした違いが出てくるんじゃないですか」と林さんは語る。「ただ、そのちょっとした違いを生むのは過去にどれだけ仕事をしたかによると思います。1年や2年では出てきません。」このちょっとした違いを生むために職人は日々努力しているのである。手作りの陶器にはこうした職人たちの過去が映し出されるから惹かれる人も多いのかも知れない。

    手前が磁器用、奥が陶器用の土を削るためのカンナ

    もっといい物を作ろうと決心

    林さんが陶芸の世界に入った当時は、輸出向けの陶器の生産が盛んな時期だった。工場の規模も大きくなり、作業の分業化が進んでいった頃である。林さんは「分業化されたものではなく、一貫した仕事を身につけたい。そして大量生産のものよりもっと良いものを作ろう」と決心して、土を作り、生地を作り、絵を描いて、焼くという伝統的な陶芸の技術全般を身につけていった。林さんが得意とするのは青白磁。「修行中に見た磁器の印象が強くて、以来磁器にはこだわっています。」他にも五斗蒔地区で採れる五斗蒔土を使い、粉引、織部、黒織部なども作る。

    食器は使ってもらってこそ

    林さんの作った製品には「林」の字をモチーフにしたサインが記される。また、公募展などに出展する作品には名前の「耕」の字を記す。それらは林さんが責任を持ってひとつひとつ書き込むもので、品質保証書のようなものである。林さんは言う。「色んな食器を料理で使って欲しいですね。使い方はそんなに気にしなくていいと思いますよ。気に入った器を買って、好きなように使ってもらいたいです。そうすれば料理もおいしくなりますよ」かく言う林さんは自作のコーヒーカップで焼酎を飲むのが日課になっている。「とにかく使ってもらったらわかりますよ」そう言いながら林さんは目を細めた。

    • 「林」の字をモチーフにしたサインが記される

    • 土がみるみる器の形に変化していく様子は見ていて飽きない

    • 「器が違うと料理の味も変わるものです」と林さん

    こぼれ話

    武将で茶人古田織部

    美濃焼と言えばまず有名なのが「織部焼」です。作為的にひずませた非対称の大胆な形、斬新な幾何学的図柄、織部釉と称される美しい緑色に代表される斬新な色彩が織部焼の特徴です。この「織部」という名は「古田織部」という人物がその器を好んで使ったので付けられたものです。
    さて、その古田織部なる人物はいかなる人間だったのでしょうか。なんと言い伝えによると天下一の茶の湯の名人であり、かつ戦国武将であったと。お茶については千利休の高弟、武将としては信長、秀吉、家康に仕えたそうです。何とも不思議な経歴です。
    織部焼が史実に登場するのは1599年2月28日。古田織部が開いたお茶会で使われたと記録されています。ゆがんだ器で出されたお茶に一同驚きを隠せなかったようです。
    今はこの2月28日を「織部の日」としています。皆さんも是非この日は織部焼でお茶を飲みながら不思議な古田織部について思いをはせてみてはいかがでしょうか。

    • 大胆な形と斬新な幾何学的図柄が特徴です

     

概要

工芸品名 美濃焼
よみがな みのやき
工芸品の分類 陶磁器
主な製品 花器、茶器、飲食器、置物
主要製造地域 多治見市、土岐市、瑞浪市、可児市、恵那市、可児郡御嵩町
指定年月日 昭和53年7月22日

連絡先

■産地組合

美濃焼伝統工芸品協同組合
〒509-5142
岐阜県土岐市泉町久尻1429-8
美濃焼伝統産業会館内
TEL:0572-55-5527
FAX:0572-55-7352

http://www.minoyaki.gr.jp/

実店舗青山スクエアでご覧になれます。

特徴

伝統的工芸品として指定されている美濃焼は15種類あります。中でも志野、黄瀬戸(きぜと)、織部、瀬戸黒(せとぐろ)等は色合いを大切にしたもので、淡い色彩のソフトな素地と釉薬の仕上がり、バランスのとれたデザインを最大の見どころとしています。

作り方

ろくろ、手ひねり、押し型等の技法を使って形を作ります。その後、模様を彫り付けたり、竹櫛や金櫛で模様を描いたりして素地を飾り付け、素焼をします。素焼の済んだものに志野釉(しのゆう)、黄瀬戸釉(きぜとゆう)、織部釉(おりべゆう)といった釉薬を施して本焼を行います。最後の上絵付けには和絵具が使われます。

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