春日部桐簞笥

江戸時代初期、日光東照宮を作るために集まった職人が、日光街道の宿場町である春日部に住みつき、周辺で採れるキリの木を材料とした指物や小物を作り始めたのが始まりであると伝えられています。
江戸時代中頃の文献に、10人ほどの業者が記されていることや、「明和9年(1772年)」の裏書きのある桐箪笥が現存すること等から、すでに産地の形が整い始めたのがうかがえます。

  • 告示

    技術・技法


    乾燥は、自然乾燥によること。


    使用する板材は、無垢板とすること。この場合において、板材の厚さは、天板、側板及びたな板にあっては19ミリメートル以上、束板にあっては10ミリメートル以上、地板、裏板及び引出しの底板にあっては7ミリメートル以上とすること。


    側板に対する天板及び地板の接合は、5枚組以上の組み接ぎ又は11枚組以上のあり組み接ぎ若しくは包みあり組み接ぎにより、たな板の接合は、小孔ほぞ接ぎによること。


    引出しの部材の接合は、包み打付け接ぎ、組み接ぎ又はあり組み接ぎによること。


    とびら又は引戸を付ける場合には、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    板物にあっては、板材の厚さは、24ミリメートル以上とし、芯材の枠の接合は、平留め接ぎによること。

     
    (2)
    枠物にあっては、板材の厚さは、枠の部材にあっては20ミリメートル以上、戸板にあっては、8ミリメートル以上とし、枠の部材の接合は、平留め接ぎ又は留形やといざね接ぎによること。


    側板と足との接合には、「足くぎ」を用いること。


    仕上げは、うずくりを用いるみがき及びやしゃぶし着色をした後、ろうみがきをすること。

    原材料


    木地は、キリとすること。


    くぎは、ウツギ製又はこれと同等の材質を有するもとすること。


    金具は、銅、銅合金又は鉄製とすること。

     

  • 作業風景

    春日部桐箪笥、その起源は江戸時代初期、日光東照宮の造営に参加した工匠が日光街道に沿った宿場町である春日部一帯に群生していた桐に目をつけ、定住し、桐材をもちいて指物とよばれる家具などを作りはじめた時代にさかのぼります。江戸時代中期(1770年頃)には産地形成し、江戸に近い立地条件などから、天保年間(1830年頃)には桐箪笥、桐小箱の大きな産地を形成するにいたりました。その後、現在まで脈々と受け継がれてきたのが春日部桐箪笥です。今でこそ春日部には桐の木はほとんどないが、その技術は研鑚と努力を重ね高度なものです。

    工程1: 原木の切り出し

    主原料は会津産を主体に東北各県産の良質な桐を使います。副材料としては北海道産の朴の木、桑、ウツギを使用します。まず、原木を最大限、桐箪笥に生かせるよう勘案して切断します。並木は9ミリメートルから21ミリメートルの厚さに、柾木は四つ割後5.5ミリメートルの厚さに製板します。

    工程2: 乾燥

    製板した板を立て組み、井桁積みなどの方法で風雨にさらし、3カ月から4カ月ほど自然乾燥させ、さらに室内乾燥させます。

    工程3: 木どり工程

    次に桐材を同じ大きさにそろえる木どり工程を行います。部品の寸法より多少長めに切り落としてから幅寄せをします。表面材に使用する柾板は木目の曲がりと木目間隔のふぞろいをより直線的で等間隔なものに修正してから幅寄せをします。

    工程4: 狂い直し工程

    板に歪みが生じ曲がっているものは火であぶりながら、テコを利用し反りやねじれなどを修正します。修正した板は一本づつ、手カンナで微妙な調整をし、寸法に合った1枚の板にと貼り合わせます。

    工程5: 削り工程

    寸法どおりに、できあがった板はカンナでさらに仕上げられます。

    工程6: 組みたて工程

    組みたては鉄のくぎは使わず、ほぞで組み合わせウツギ製の木のくぎでしっかりととめられます。

    工程7: 仕上げ

    仕上げ加工は、まず、木地の表面にハケで水をつけ、歪みを復元後、微妙な調子と狂いを調整します。ひきだしや扉などがスームーズかつしっかり開け閉めできるのは、この徹底した繊細な作業のおかげです。調整がおわるとカンナで表面の仕上げ削りをします。そしてかやの根で作ったうづくりで木目がきれいに出るように磨きます。つぎに、やしゃぶしの煮出し液と砥粉(とのこ)の混合液で目止めと2度目の着色止めを行います。さらに、かやの根でつくったうづくりで磨き木目をきれいに出します。最後に蝋(ろう)を塗り、艶を出します。あとは必要な部分に金具を取り付け、全体を調整し点検すれば完成です。

     

  • クローズアップ

    こぼれ話

    よみがえる桐箪笥

    親から子へ、子から孫へと受け継がれる桐箪笥。その品質は300年変わらないといわれます。しかし、天然の素材を使っている以上、日焼けや汚れなど で、どうしても古びてきてしまうのは避けられません。そろそろ寿命?と考える前にちょっと待って下さい。良質の国産の桐を使っている春日部桐箪笥は、職人 の手にかかれば見事によみがえるのです。まず、古くなった金具をはずします。そして削りすぎないよう細心の注意と技術を駆使しカンナで薄く削り上げていき ます。長年の経験と技術のいる作業。するとどうでしょう、きれいな木目が再びよみがえるのです。良質な桐の再生能力と職人の技術の成せる技です。子供へと 譲り渡す時、引越しの時、古びた桐箪笥、春日部桐箪笥の職人のもとにリサイクルにだしてみてはいかがでしょう。新品のごとくよみがえって再び貴重な財産と なってくれるはずです。

概要

工芸品名春日部桐簞笥
よみがなかすかべきりたんす
工芸品の分類 木工品・竹工品
主な製品衣装箪笥、抽出(ひきだし)箪笥、洋服箪笥
主要製造地域さいたま市、春日部市、越谷市、南埼玉郡白岡町
指定年月日昭和54年8月3日

連絡先

■産地組合

春日部桐たんす組合
〒339-0054
埼玉県さいたま市岩槻区仲町1-7-14
金子 篤 様方
TEL:048-756-0348
FAX:048-756-0582

特徴

江戸の昔から、質実剛健な武士文化に育まれて来ただけに、無駄な飾りを廃した地味で質素な外観と、直線を基調にしたデザインが特徴です。

作り方

製造工程は大まかに「原木製材」「本体加工」「各部加工」「着色加工」「金具取付」に分かれます。桐箪笥の命である素材の美しさを存分に引き出すため、板の加工にはたっぷり手間暇をかけます。十分に自然乾燥させたキリの木の無垢板(むくいた)を使い、接合部には伝統技法を使い分けて頑丈に組み立てます。

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