越中和紙

富山県

奈良時代に書かれた「正倉院文書」等の古文書に越中国紙(えっちゅうのくにがみ)について記されています。
また、平安時代に書かれた「延喜式(えんぎしき)」にも、税として納める作物として和紙が記されている等、極めて古い歴史があります。
江戸時代からは八尾地方の和紙は薬用を始めとして色々なことに使われ、平村の和紙は加賀藩で使用する紙として盛んに生産され、今日に受け継がれています。

  • 告示

    技術・技法


    抄紙は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「流し漉き」又は「溜め漉き」によること。

     
    (2)
    簀は、竹製又は紗製のものを用いること。

     
    (3)
    「ねり」は、トロロアオイを用いること。


    乾燥は、「板干し」又は「鉄板乾燥」によること。

    原材料

    主原料は、コウゾ、ミツマタ又はガンピとすること。

  • 作業風景

    原料となるのは、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)。和紙作りは栽培されていた楮を11月頃刈り取り、乾燥させ、外側の黒皮を除去する(楮たくり)ところから始まります。

    工程1: 水浸または雪晒し

    乾燥してある白い皮を柔らかくします。雪の多い五箇山では雪に晒すことで純白の和紙ができます

    工程2: 煮熟(しゃじゅく)

    苛性ソーダまたはソーダ灰の溶液で2時間煮ます

    工程3: アク抜き、洗浄

    アクをよく抜きます

    工程4: 漂白洗浄

    障子紙類は、さらし粉や次亜塩素酸ナトリウムで漂白します

    工程5: 塵取り

    繊維に傷やゴミがあるときれいな紙にならないので、水中に浸して傷やゴミを丹念に指先で取り除きます

    工程6: 叩解(こうかい)

    打開機やビーターで繊維をほぐします。打ち叩くと繊維は刺激されて粘りが出てきます

    工程7: 紙漉き

    漉槽(ふね)に水を張り、紙料とネレ(トロロアオイ粘液)を入れ、漉き簀と桁を用い、紙料液をすくい上げてゆすります(流し漉き)。漉きあげた紙を1枚ずつ積みあげます(紙床(しと))。1日に漉き上げる和紙は200~300枚です

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    工程8: 圧搾

    翌日、漉き上げた紙床の水分を1日がかりで搾ります

    工程9: 乾燥

    圧搾した紙を1枚ずつ剥がして天板や板に干し、乾燥します

    工程10: 選別

    厚さにふぞろいがないか、傷や汚れがないか、1枚ずつ厳重に選別します

    工程11: 型染め

    模様紙の場合は、型染めをします(型彫り→のり置き→水元)

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    工程12: 出荷

    障子紙の場合は裁断後、出荷します

     

  • クローズアップ

    雪と水、手わざが織りなす越中和紙

    八尾和紙、五箇山和紙、蛭谷(びるだん)和紙。越中では3つの地域で独自の和紙づくりが受け継がれてきた。雪深い山間(やまあい)で、自然と親しんできた人の手と良質な楮(こうぞ)からつくられる越中和紙には、凛とした気品と風格がうかがえる。

     

    「おわら風の盆」で知られる八尾町は和紙の里

    飛騨の山々と富山平野の中間に位置する八尾町は「富山の売薬」の薬袋紙の産地として栄えてきた。“八尾山村千軒、紙を漉かざる家なし”とまで謳われれるほどであったが、今では2カ所の紙漉き場を残すのみ。その1つである「桂樹舎」の吉田泰樹さんにお話を伺った。

    雪に晒した楮からできる和紙はとても丈夫

    良質の楮からできる丈夫な和紙

    越中和紙は産地ごとに製品の特徴が異なる。八尾和紙は「八尾民芸紙」とも呼ばれ、染紙や工芸紙、型染めによる模様紙や和紙加工品の生産もさかん。一方、五箇山和紙と蛭谷和紙は障子紙や書画用紙、出版用紙などが主流を占める。共通して言えるのは「生活用品として使われてきた背景から、丈夫なのが特徴」だと吉田さん。

    鯉のぼり製作に追われていた作業場

    植物の性質を知り抜く昔からの技術

    和紙の原料として使われるのは「楮」のほかに「雁皮(がんぴ)」と「三椏(みつまた)」。そして均一な紙を漉くのに欠かせないのが「ネレ」。アオイ科の「トロロアオイ」の根を砕いて水に漬けてできた透明な粘液が「ネレ」だ。1枚ずつ漉いた紙はそのまま積み重ねていくが、不思議なことに引っ付かない。トロロアオイには粘り気があるのにお互いをつき離す性質があるそうだ。吉田さんは「ネレ」を触りながら「昔の人はえらいなあ。植物の性質をよく知っとるもんな。私たちはその技術を受け継いでいるだけだから・・」としみじみ語っていた。

    「ネレ」の触感はまさにトロロそのものだった

    人間国宝のもとで染色の修行を3年間

    吉田さんは大学卒業後、いったん外の世界に飛び出す。人間国宝でもある芹沢けい介氏のもとで3年間染め物の修行をしたのだ。芹沢氏は、型染めの工程をすべて自分で行うことで独創的な作品を制作した染色工芸家。八尾和紙は模様紙の生産が多く、この間の経験は、吉田さんのその後の和紙づくりにも大いに影響を与えているという。

    一枚一枚丹念に色を置く模様紙づくり

    模様紙には型紙と防染のりを使う「型染め」という技法がとられる。図案を作成して型を彫り、色をつけない部分にのりを置き、染め、水につけてのりを落とす、という作業が繰り返される。一枚一枚、一色一色乾かしながら作業は進められる。この作業も昔から受け継がれてきた技術だ。吉田さんはここでもやはり「昔の人はえらい」ということを口にした。

    和紙人形でつくられた作業工程

    和紙の魅力を伝えたい

    「桂樹舎」では、手漉き和紙の展示場「和紙文庫」を一般に公開している。吉田さんの父・桂介さんが国内・国外から集めたさまざまな資料や作品が並んでいる。展示物のなかには前述の芹沢けい介氏の作品もある。展示を見ながら吉田さんは「紙は今では生活必需品ではなくなってきているけれども、1200年の歴史をもつ文化をすたらせるわけにはいきません。長い間生活の一部であった和紙の魅力を多くの人に伝えていければ・・・。」と話してくれた。

    作業場ではシーズンに備えて鯉のぼり製作に追われていた。丈夫な和紙に鮮やかな色が丹念に置かれていく。小振りながらもたくましい鯉のぼりの姿は、子どもの成長を祝う端午の節句に似つかわしく思えた。

    職人プロフィール

    吉田泰樹

    1952年生まれ。
    大学卒業後、3年間染め物の勉強をした後、紙漉きの世界に入る。(有)桂樹舎を経営。

    こぼれ話

    五箇山・こだわりの和紙「悠久紙」

    合掌造で有名な五箇山も越中和紙の産地。五箇山にただ一つ残る生産農家、宮本友精さん親子は、楮(こうぞ)づくりから紙漉きまで、昔ながらのやり方を守り続け、こだわりの「悠久紙」を作っています。
    春の楮畑の手入れに始まり、夏の草刈り、秋の刈り取り、そして冬は皮剥ぎから雪晒し・・・。宮本さんの和紙作りは、昔と変わらない手作業で行われています。薬品も極力使いません。
    こうしてできた純楮和紙は、強くて優美。「千年近く経ても墨の色も紙の色も変わらない」といわれ、京都の桂離宮の修復など、寺院や文化財の修理、修復に重宝されています。
    和紙づくりに携わって70年をすぎる正真正銘の「和紙職人」、宮本さんの言葉から。「一年で太った楮を、水と光に晒して、和紙にして、ちゃんと乾くところに置いときますりゃ、千年でも、まだまだもつということは、信じられないほどきついもんじゃと思うとります。それが自然の力なのだなあ・・・。信じられないけれども信じております。」

    • さらし粉や苛性ソーダを使用しないため、黄色がかった自然の美しさの紙ができる

     

概要

工芸品名 越中和紙
よみがな えっちゅうわし
工芸品の分類 和紙
主な製品 染紙、書画・版画用紙
主要製造地域 下新川郡朝日町、富山市、南砺市
指定年月日 昭和63年6月9日

連絡先

■産地組合

富山県和紙協同組合
〒939-2341
富山県富山市八尾町鏡町668-4
桂樹舎内
TEL:076-455-1184
FAX:076-455-1189

実店舗青山スクエアでご覧になれます。

特徴

越中和紙は古典的な障子紙、半紙、提灯紙、近代的な書画、版画用紙や100種以上にも及ぶ染紙等多品種が生産されています。また、強靱なコウゾ紙は、型染絵加工品として全国で売られています。

作り方

製造工程は、コウゾを煮る─コウゾの煮熟、打解、叩解、紙漉(す)き、乾燥等全国の産地と同様ですが、書院建築の障子に使用する「書院紙」や文化財補修用紙、提灯紙等はコウゾを雪に晒(さら)してから煮ます。また、染紙には草木染め、染料染め、顔料染め等色々な技術を使っています。

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