伝統工芸 青山スクエア

金沢箔

金沢の金銀箔の歴史は、戦国時代後半、現在の石川県南部を中心とした地域を支配していた加賀藩の藩主前田利家が、朝鮮の役の陣中から国元へ箔の製造を命じる書を送っていたというところまで遡ることができます。
江戸幕府は箔座を設け全国の箔の生産と販売を統制していましたが、明治維新後、幕府の統制がなくなったのを機会に金沢箔は技術的にも量的にも大きな発展を遂げました。
高品質の箔の生産により、国内においては独占的な箔の産地としての地位を保っています。

  • 告示

    技術・技法


    「紙仕込み」をすること。この場合において、用いる紙は、手漉きのコウゾ紙、ミツマタ紙若しくはガンピ紙又はこれらと同等の材質を有するものとすること。


    「澄み打ち」及び「打ち前」をすること。


    「縁付き金箔」の場合には、「箔移し」をすること。

    原材料

    地金は、金、銀若しくは銅又はこれらと同等の材質を有する金属とすること。

  • 作業風景

    金箔の製造工程は「延金製造」「澄打ち製造」「箔打ちおよび箔移し」の3工程に大別され、各工程はさらに細かい作業工程に分かれています。主な流れを紹介します。

    工程1: 金合わせ

    金の地金をいきなり叩いて薄く伸ばし、箔にするのでなく、まず金合金の地金を作ります。金地を銀と銅の地金とともに混ぜて炉茶碗に入れ1,300度位に熱します。完全に鎔解したら金流し台に流し込み冷却したものが金合金です。

    工程2: 延金

    金合金を帯状に延ばした「延べ」と呼ばれるものを「台切り」で約6cm角の小片に切ります。

    工程3: 紙仕込

    澄打紙の一種、12.6cm角の「小兵」という和紙に延金をのせ、約200枚ほど重ねます。上下それぞれに「ふるや」と称する紙を、各30枚ほど重ね、「袋革」でおおい、「乳革」でしっかりとめます。

    工程4: 澄打ち

    延金を紙一杯に打ち延ばし、「荒金」という16.8cm角の澄打紙に移しかえます。荒金を約200枚重ね、同じように「ふるや」を上下に当て、紙一杯に打ち延ばします。次に荒金を4分の一に切った約6cm角の小片を18.3cm角の大きさの澄打紙に入れ、紙一杯まで打ち延ばしていきます。大重を化粧鋏で整形し、澄打紙の「上り」に移し入れ、艶を消すために、ふたたび打ってできたものが「打上り澄」です。

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    工程5: 仕立て

    打上り澄を30枚ほど重ね、20.1cm角の型を当てて折りまげ、たち包丁で折目から切ります。これが「仕上り上澄」であり、「上澄」または「澄」とも呼ばれます。澄は三つ折りにして澄箱に入れ、箔屋に届けられます。

    工程6: 紙仕込

    金箔は上澄を打ち延ばして作るのですが、上澄を入れる箔打紙の紙質が金箔の良否を左右します。優秀な職人でも箔打紙が悪ければ質の悪い金箔しか作れないといいます。

    工程7: 引き入れ

    ここでは1,000分の3ミリの上澄を、10,000分の1~2ミリほどの薄さの金箔に仕上げます。21cm角の上澄を切箸(澄切箸)で11あるいは12の「小間」という小片に切っていきます。小間は広物帳の間にならべて一時保管し、打ち立ての際に打紙に移し入れます。その作業を「澄の引き入れ」といいます。

    工程8: 打ち前

    澄の引き入れを終えた小間紙を重ね、上下に女紙、白蓋を重ね、さらに白蓋の上に当革をあて、捲きしめて糊づけします。上下をさらに袋革で覆い、糊付けした乳革でしっかりととめ機械で小間打ちを行います。手打ちに比べると力、速度が一定し、品質にむらがなく仕上りも速いため、現在ではすべて機械打ちで行っています。

    工程9: 渡し仕事・抜き仕事

    小間打ちで半ば打ち延ばしたものを、今度は主紙に移し変えます。これを「渡し仕事」といい、さらに主紙で紙一杯にまで打ち上げて、箔打ちが完了です。打ち上がった箔は打紙から広物帳に移し変えます。これを「抜き仕事」とか「ぬきごと」といいます。このときに箔の良否を選別し、品質の良否に従って別々の広物箱に納めて、切り揃えるまで一時保管されます。

    工程10: 箔移し

    最後の工程。広物帳の箔を所定の大きさ(主に10.9cm角、12.7cm角、15.8cm角、21.2cm角の4種類)に切り揃えます。この作業全体を「仕上げ移し」といいます。箔の切断器である「枠」を右手に持ち、革板上の箔に当て、上下にずらして切り、切り終えた金箔は切紙(間紙)にのせ、箔を移してできあがりです。

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  • クローズアップ

    金箔の善し悪しを左右する紙仕込みが「金箔」の命

    金沢で金箔が初めてつくられたのは、今からおよそ半世紀ほど遡る1593年。時の加賀藩初代藩主・前田利家が、豊臣秀吉の朝鮮の役に際して金・銀箔をつくるように命じたのが、その始まりといわれている。

     

    紙づくりにこだわる職人がいたから全国一の金箔が生まれた

    金箔の歴史は古いが、その工程には頭が下がるほど、ひとつひとつに力と技が籠もっている。まずは、金箔の話の前に紙づくりから語らなければならない。
    「金箔に使う紙仕込みには、およそ4カ月ほどかかります。」そう語るのは、熱野嘉和(ねつのよしかず)さん。この道40年の金箔づくりの名人(箔打ち職人)である。「いい金箔を作るには、まず、いい下地紙と呼ばれる箔を作る紙づくりからです。箔打ちには、軟らかい水が欠かせないということから、水に恵まれたこの金沢で金箔が発達したのです。昔は、浅野川や犀川の近辺にたくさん箔打ち職人が住んでいましたが、騒音などで今は郊外に移りました。」
    実際に箔打ちの現場を見せてもらって納得。ものすごい振動と同時に、ハンマーが打ち下ろされる時の音はガンガンと耳にこだまするほど。こんなたいへんな作業なしには金箔はできないものなのか・・・。

    • 金箔の独特のなめらかな表情は職人によって異なる

    • 昔使われていた手打ちの道具(現在は手打ちは行われていない)

    金箔には、大きく分けて「断切(たちきり)」と「縁付(えんづけ)」がある

    金箔には、大きく分けて、手すきの和紙を手間ひまかけて仕込んだものを箔打紙に用いるという、古来よりの製法でつくられる「縁付」と、カーボンを塗付した特殊紙を箔打紙に用いる、現代的な手法でつくられる「断切」がある。「縁付」は、様々な要因から職人が最近どんどん減っている。熱野さんは、昔気質の「縁付」職人。「縁付」職人の平均年齢は64歳、現在48名しかいない貴重な存在の一人だ。
    「箔打ち職人の家では、朝は4時半起き、夜はえんえんと夜なべを手伝うのがあたりまえ・・子供の頃から一枚の金箔ができるまで一家総出で夜なべをしてましたね。でも結局この道を選んで、中学を出てすぐにおじいちゃんと親父の後を継ぎましたんで、うちの場合は、もう100年になります。」
    手の甲にできたいくつもの年期の入ったたこが、長年の仕事への真摯さを物語っている。けれども、「今は息子が継いでくれたから一安心。」と話す熱野さんの顔はほころんでいた。

    機械打ちでは1分間に700回の上下運動を行う

    金箔を一万分の1ミリに仕上げる技

    金箔の製造工程は「延金製造」「上澄製造」「箔打ちおよび箔移し」の3工程に大別されるが、熱野さんは、この中の「箔打ちおよび箔移し」の工程で打紙作りも行う。これらの各工程はさらに細かい作業工程に分かれるが、どの工程もひとつひとつ気が抜けない作業。箔打紙を作る作業では、まず金沢産の中島紙や二俣紙を材料に何度も何度も灰汁(あく)に漬け、叩き、乾かす。そのときに柿渋や卵を入れて、なめらかな紙を作っていく。金箔に波打つような表情を出し、優しい風合いを作るためのこの仕込みにはおよそ3~4カ月かかる。「今では、安価な「断切」の金箔が一般的になってしまってますが、神社仏閣や高級仏壇、文化財の修理などに、主にこの縁付が使われています。」
    「箔の三原則は、『ナリ』と『光沢』と『トケ』。ナリは、箔にくぼみ(輪の型)が残らないようにすること、光沢は風合いのある真の輝き、トケは独特のなめらかさを持っていること。特にこのナリは、灰汁(あく)で決まると言ってもいいほどです。灰汁によってできた薄い膜がなめらかな表情を出し、光沢を作ってくれます。」

    渡し仕事、抜き仕事と呼ばれる主紙に移し変える作業

    「箔打ちおよび箔移し」は繊細な神経を必要とする作業

    正直言って、金箔のための紙づくりでこんなに力がかかるとは、つゆ知らなかった。このあとの工程で、その澄の引き入れを終えた小間紙をうちのばし、それをさらに主紙(完成された箔打ち紙)に移し変え、さらにをハンマーでうちのばしていく作業が続く。この作業は集中力と力の技の結晶だが、ここでは千分の3ミリの上澄が、一万分の1~2ミリほどの薄さの金箔に仕上られていくのだから、どれだけ大変な作業か想像できるかもしれない。
    「金箔には、その人その人の手癖があって、ナリが違ってきます。息子にも、まだまだ紙仕込みはまかせられませんわ。」見せてもらった金箔は、向こう側が透けるように薄く、確かにトロッとした上品な質感があった。職人芸の極みを見たような気がした。

    箔を打つ紙仕込の作業。たいてい奥さんの仕事

    職人プロフィール

    熱野嘉和 (ねつのよしかず)

    この道40年の金箔づくりの名人。
    親子4代を守る老舗的「えんづけ」の箔打ち職人。

    こぼれ話

    ひがし茶屋街にひっそりと佇む、純銀と純銀箔の趣味雑貨の店

    純銀箔もまた、金沢の伝統工芸品のひとつ。純金箔とまた違った上品さを醸し出す、純銀箔を生か したすてきな食器や置物がたくさんあります。
    普段にも使えそうな洒落たグラスに純銀箔が入っていたり、純銀箔を施したお猪口など友人へのプレゼントにいいかも。シルバーの素敵なアクセサリーもお手頃な値段で、ちょっとしたおみやげにも使えそう。
    純金箔、純銀箔を扱ったレトロなお土産物やさんは、たくさんありますので、金沢旅行にいったときにぜひのぞいてみてください。

    • お客様のもてなしに使いたい純銀箔の器

    • 洒落た純銀箔入りのグラス

     

概要

工芸品名 金沢箔
よみがな かなざわはく
工芸品の分類 工芸材料・工芸用具
主な製品 神社仏閣、仏壇仏具、織物の金糸・銀糸、漆器の蒔絵・沈金、陶磁器の絵付け、屏風(びょうぶ)・襖(ふすま)紙・壁紙、看板・金文字・水引き・表具用
主要製造地域 金沢市、小松市他、富山県/富山市
指定年月日 昭和52年6月8日

連絡先

■産地組合

石川県箔商工業協同組合
〒920-3122
石川県金沢市福久町ロ172
TEL:076-257-5572
FAX:076-257-5583

http://www.icnet.or.jp/dentou/insti/09.html

特徴

箔は極めて薄く、金箔では厚さ1万分の1~2mmです。このためどんな複雑な模様の材料にも箔押しができ、そのうえ原料である金の輝きは少しも失わず、その美しさと華やかさは人々の心を惹きつけて止みません。

作り方

金箔は金を原料とし、これに少量の銀を混ぜた合金を作り、ロール圧延機(あつえんき)で100分の1mmまでに押しのばします。次に澄打紙(すみうちし)に挟んで1000分の1mmまでに打ちのばして「上澄(うわずみ)」を作り、最後にこの「上澄」を箔打紙に挟んで箔打機で打ちのばして、箔に仕上げます。

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