【企画展】ザ・職人展と肥後象がんのトークショー
8月18日より、【企画展】「産地選抜 第4回 DENSAN ザ・職人展~輝く男たちの世界~」と匠コーナー「熊本 肥後象がん展 震災を経て、今」が始まりました。
初日の14時からは、トークショーが行われましたので、その様子を少しご紹介します。
※トークショーは2時間強にも及びました。
始めにお話をしていただいたのは、秩父銘仙の新井さんです。
秩父銘仙の特徴は、
先に縦糸だけを染める手法をとり、裏表がない生地に仕上げることです。
縦糸でデザインを決めて染めているのですが、
横糸に何色の糸を使うのか、どんな素材を使うのかでも表情は様々に変わります。
昔は女性の着物を作るという意識でしたが、
現在は、気軽に生活の中に入っていけるようなものをという意識で作っているそうです。
次にお話しいただいたのは、
名古屋黒紋付染の武田さんです。
名古屋黒紋付染は、黒の無地に紋が描かれている最高の礼服のことを言います。
先に生地を黒色に染めるのですが、
その時に紋が入るところに黒色が染み込まないようにしておき、
染めなかった部分に紋を描いていくそうです。
最近は着る人がほとんどおらず、
名古屋黒紋付染の技法を活かした他の形で、
着物や小物類を作っています。
墨流し技法を使った、
ストールも最近は人気だとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
赤津焼の梅村さんです。
赤津焼は瀬戸市の赤津地区にある焼き物で、
土地としては狭い所で行っているため、
窯元も少ないそうです。
梅村さんは絵を描くのが好きなので、
焼物には細かな絵が施されているものが多くあります。
赤津焼の難しい所は、
織部の緑色。
窯の温度が高すぎると黄緑色になり、
温度が低すぎると光沢が出なくなるのだとおっしゃっていました。
続いてお話しいただいたのは、
大谷焼の森さんです。
大谷焼の特徴は、
地元の土や材料を使い水瓶や瓶など大きな物を作ることです。
ただ現在は7軒しか窯元がなく、
大物を作るのはそのうちの2軒しかありません。
そのうちの1軒が森さんの家だそうです。
森さんは日用雑貨を作り、
食卓に合うようなものを作っていきたいとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
山中漆器の針谷さんです。
山中漆器は分業制で、
木地ろくろ師や蒔絵師など多岐にわたって分かれています。
その中でも棗の木地は、全国の9割を担っており、
山中で作られた木地を他の産地にも届けているそうです。
針谷さんは蒔絵師で、
ここ数年はアクセサリー作りに従事しています。
家族でブランドも立ち上げました。
始めは大きなブローチなどを主に作っていたのですが、
買っていかれる方の年齢層が高めの人で、
親子で買いに来た場合、
母は購入しても、娘は購入しないという場面を多く見てきたそうです。
そこで、若い人に向けた小柄なアクセサリーブランドも立ち上げて、
現在に至っています。
今は、女性だけではなく、男性用アクセサリーのブランドも作っています。
次にお話しいただいたのは、
江戸指物の井上さんです。
江戸指物で作るのが難しいのは、
引き出しのあるものだったそうですが、
28年も従事していると、反対に得意分野に変わったそうです。
江戸指物で使っている木は、
生きている木のため、
置かれている環境によっても伸縮したり膨張したりと、
様々な動きをしています。
そのため、井上さんは購入いただいた場合、
メンテナンスをするために、
購入された方の家にお邪魔して修理をしているそうです。
売ったら終わりではなく、
購入されたら、そこからがそのご家庭との付き合いの始まりだと、
おっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
播州三木打刃物の田中さんです。
田中さんは、越前で修業をしたのち、
実家に戻って播州三木打刃物を作るようになりました。
実家は草刈の鎌を作っていたのですが、
時代に合わせて鎌だけではなく包丁も作り始めたのは、
田中さんの代になってからです。
刃物は鍛冶屋として良いものを作るものの、
他との違いを出すにはどうすればいいのかを考え、
柄の部分に注目し、
様々なアイデアを出して新商品を作り続けています。
次にお話しいただいたのは、
同じく播州三木打刃物の森田さんです。
森田さんは実家が播州三木打刃物を作っていたわけではなく、
元々は彫金をしていたそうです。
大学卒業後、南部鉄器や燕三条、岩谷堂など様々なところを巡り、
東京で千代鶴さんと出会い、弟子入りをしました。
現在は、すべての工程を任されている状態で、
現在のまま進んで行けば、
免許皆伝になるとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
金沢仏壇の大竹さんです。
金沢仏壇は分業制で木地師、宮殿師、
その中で、大竹さんは蒔絵師として従事しています。
漆の工芸科を卒業し24歳で独立したため、
始めはなかなか仕事に結びつかなかったそうです。
現在は、仏教的なものも、自然と受け入れられるような、
物を作っていきたいとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
播州そろばんの高山さんです。
高山さんは伝統的なそろばんも作りますが、
新しいものも作っています。
そろばんなので、数は変えることは出来ませんが、
素材は樺と柘植の二つだったものを別のもので代用したり、
色は自由に変えられるという発想から、
カラフルで可愛いものも作り、人気を博しています。
ただ最近は、
そろばん自体が見直されており、
子どもの右脳を鍛えるために使われたり、
お年寄りのボケ防止のために使われたりと、
需要が伸びてきているとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
江戸木目込人形の柿沼さんです。
江戸木目込人形の歴史は、
京都の上賀茂神社で作られたのが発祥だと言われています。
昔は節句人形などを作ることが多かったのですが、
現在は節句人形を飾る家も少なくなり、
需要が減ったそうです。
現在は13人のデザイナーとのコラボ作品を開発している途中で、
発表できる段階に入ったら、お披露目をしたいとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
甲州印伝の山本さんです。
甲州印伝は鹿の皮に伊勢型紙を置き、
その上に漆を置いて作るものです。
鹿は、その昔、
絶滅危惧種に認定されたため、
日本では鹿の皮を手に入れることができなくなりました。
現在は、鹿が多く生存(むしろ増えすぎている)しているため、
日本の鹿の皮を使ってもいいのですが、
絶滅危惧種に認定された時間が長かったために、
皮を剥ぐ職人がいなくなってしまい、
やはり現在も鹿の皮は輸入をしているのだとおっしゃっていました。
次にお話しいただいたのは、
甲州手彫印章の望月さんです。
甲州手彫印章の材料は象牙や柘植です。
象牙の方が長く使うことができるのですが、
柘植の方が加工はしやすいそうです。
ハンコの良し悪しは印影にあります。
小さな空間で、どうやって文字を納めるのか、
またハンコを押した時に、
相手に印象付けるにはどういう形がいいのかにもこだわっており、
甲州手彫印章の工程の中で一番重要で難しいのは、
印章に筆で下書きをしている時だと、おっしゃっていました。
最後に、匠コーナーで来られていた、
肥後象がんの麻生さんにお話しして頂きました。
肥後象がんは純金と純銀を鉄に、
はめ込んで作るもののことを言います。
麻生さんはアメリカで彫金を習い、外国で作り手として活動をしていました。
その後、地元である熊本に戻り、
何かできることはないかと探している時に、肥後象がんの育成プログラムを見つけ、
この業界に入ったそうです。
麻生さんは、新しい物を作っていきたいという気持ちが強く、
様々なチャレンジをしています。
ただ、地が鉄なので応用範囲が狭く、
どういうものを作っていくのか思案中だとおっしゃっていました。
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【企画展】「産地選抜 第4回 DENSAN ザ・職人展~輝く男たちの世界~」と、
匠コーナー「熊本 肥後象がん展 震災を経て、今」は、
ともに8月23日までです。
毎日数名の匠が青山スクエアにいますので、
ぜひお越しください。