「立ち雛」-”いにしえ” への回帰-
令和の時代に即したシンプルな美しさ
その起源を平安時代にまで遡るといわれる「雛人形」は、女の子の健やかな成長と幸せへの祈りが込められた祝いの形。その成り立ちは、厄災や穢れを引き受ける草木や紙で出来た人形(ひとがた)であったといわれています。
やがて人形(ひとがた)は立ち姿の人形(にんぎょう)「立ち雛」となり、時代の流れとともに装飾品が増え、衣装も十二単の絢爛な「座り雛」となりました。
そしていま、ミニマルであることが好まれるといわれる令和において、2体だけのコンパクトさや落ち着きのある上品な装いの美しさを持つ「立ち雛」が注目を集めています。
落ち着きある上品な衣装
厄災や穢れを引き受ける人形(ひとがた)であった趣を残す「立ち雛」は、その装いもどちらかといえば素朴であり、雛人形らしい華やかさを秘めながら上品で落ち着いたものが多く見られます。
江戸木目込人形
悠久雛 / 柿沼東光 作
正絹名古屋帯地を使用した上品で落ち着いた衣装を纏った雛人形。豪華な飾りのないその姿は、受け継がれてきた悠久の昔を思わせてくれます。
江戸木目込人形
春峰雛 / 有松陽寿 作
古式ゆかしい延喜の趣ある雛人形が身に纏うのは、正絹一越ちりめんに松模様を絞り出しの技法にて浮き上がらせ金沢本金箔を押す『箔押』の技法で表現された衣装。華美ではない奥ゆかしい華やかさは、いつの時代においても褪せることのない格式の高さが感じられます。
人生の節目や幸せの贈り物として
シンプルな美しさを持つ「立ち雛」は、還暦などの人生の節目を祝う贈り物としても喜ばれる逸品。近年では、段飾りは住まいのスペース的に飾ることが難しい、自分の雛人形をもっていなかったのでという方などが、ご自分用にお買い求めになることも増えています。
江戸木目込人形
祝雛 / 一秀 作
還暦に。2度目の誕生を寿ぐ、祝いの形。
「一秀」は1948年、木村弁之助(一秀)により創業して以来、伝統とは革新の積み重ねであるとの考えのもと、ひな人形に新しい価値を吹きこんでいます。
《note》
還暦は、干支 ( 十干十二支 )が一巡し誕生年の干支に還ること。満60歳、数えで61歳のことを指します。生まれた年に戻ることから、人生の一つの区切りとなり、生まれ直しと考えられてきました。赤いちゃんちゃんこや座布団などの風習は、赤色による魔除けの意味合いを持つ産着を模したものといわれています。
博多人形
松・竹・梅が描かれた博多人形らしい彩色の雛人形。福福しい顔立ちと穏やかな笑みを浮かべた表情は、見ているだけで幸せな気持ちになります。
後ろ姿もかわいらしく。
丁寧な手仕事を感じられます。
贈られた人への幸せを願う「ものがたり」の息吹を人形に込める博多人形。「土と語らう」といわれる人の形をした工芸品は、雛人形においても独特の存在感があります。
時代を経てその意味合いや形が変化してきた工芸品は数多くありますが、巡り廻るとまた元へと回帰していくのかもしれません。千年の時を過ごしてきた「立ち雛」と、令和の時代に出会っていただければ幸いです。
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