「工芸文具展」で見つけた!相棒にしたい文具
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「文具を作っている産地さん、多くないですか?」
中国で古来より書斎(文房)で愛用されてきた道具のうち、「筆・墨・硯・紙」の4つをもって文房四宝(ぶんぼうしほう)と言うのはよく知られるところ。文具を愛するスタッフの何気ないひと言から企画がはじまった「工芸文具展」が、4月13日 (木) まで特別展と匠コーナーで同時開催中です。
※今展示会では、展示作品を広義に捉えるため、“文具” と題しています。
初開催!工芸文具展
文房四宝のどれもが伝統的工芸品として指定を受けています。
伝統的工芸品をあらためて見渡してみたら、四宝以外の産地でもバリエーション豊かに、伝統的な技術・技法が生かされた文具たちが作られていました。
温故知新の筆記具たち
文具展を開催するとなったのが2月。
ちょうど文具作品のリサーチを始めた頃に開催されていたのが「日本伝統工芸士会 秀作展」と「銀座名匠市」。そこで出会った2つの筆記具は、ひとつは新しく、ひとつは懐かしく、筆記具の温故知新というようなものでした。
大内塗
ShapeN ボールペン|津村 真衣
大内塗のこれからを担う若手の津村さんと産地のチカラが組み合わさって誕生したのは、ひょうたんのようにくびれたシルエットが特徴的なボールペン〈ShapeN〉。伝統的な技と現代の感性が融合した新ブランドです。
#おおうちぬり #山口県
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身体的な柔らかさを表現したという優美な曲線は柔らかく手に馴染み、筆記具として重要な、書く際にぶれない安定感があります。本体が拭き漆で仕上げられているため、艶や質感は使い続けるうちに持ち主それぞれに変化していくという、育てる喜びを味わえる文具です。
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〈ShapeN〉の木地には山口県産材が使用されていますが、注文に合わせた木地の製作も可能な限り対応しているとのこと。洗練された佇まいのボールペンには高級感と特別感があり、会社の記念品などにもおすすめです。常設展示はしておりませんが、ご入用の際にはお気軽にお問い合わせください。
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江戸指物
鉛筆ホルダー/キャップ|戸田敏夫
鉛筆派だという戸田さん。江戸指物の「現代の名工」が手掛けた鉛筆ホルダーはキャップにもなる優れもの。このホルダーがあれば、ちびた鉛筆も最後まで快適に使えます。
#えどさしもの #東京都
原型は戸田さんご自身が30年ぐらい前から仕事で愛用していたもので、その愛用品はキャップにはならないタイプだったそう。あるとき娘さんから「(鉛筆を)抜いたら入るの?」と聞かれたことでキャップにもなるような改良が加えられ、2022年に完成したばかりの新作です。
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口に施された装飾には和竿に見れられる糸巻の技法が用いられています。この糸はただの飾りではなく、キャップにもなるように改良したことで薄くなった口の強度を上げるためのもの。見た目は華奢でありながら堅牢に仕上げるのが特徴といわれる「江戸指物」ならではの工夫です。
今回特別に、数点だけご紹介が叶った激レア文具です。
造形美の共演者
硯と墨。その造形美に魅せられる人も多い2つの宝は、切っても切り離せない良き相棒。コツと墨を硯に当て、シュッと磨る。柔らかく立ち上る墨の匂いにどこか郷愁を誘われます。
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赤間硯
硯板(円)|日枝陽一
~伝統の技と現代的な造形美との融和~を思う日枝さんの硯。平らにしか見えないようで、実は中心に向かってほんの少しだけ窪んでいる。造形美と道具としての機能性への飽くなき探求心を感じる逸品。
#あかますずり #山口県
赤間硯の原材料である赤間石(あかまいし)は、石英(せきえい)や鉄分を多く含む石であり、硯としてよく知られるのは赤紫色を帯びた茶褐色の「紫雲石」。そのほかにも4種の石があります。
墨を削る歯の役割を果たす「鋒鋩(ほうぼう)」がみっしりと立っているので、よく墨を磨き、墨の発色が良く、早く墨が磨れ、さらっとのびの良い墨汁が得られます。
鈴鹿墨
綿華|進誠堂
その名の通り、綿実の油煙で作られた墨。とても珍しい逸品です。濃墨では艶のある純黒で、中~淡墨にすると品のある黒茶系の墨色です。
#すずかすみ #三重県
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墨というと、学校の授業で使用したシンプルなものを思い浮かべるかもしれませんが、実際には多種多様な姿を見せてくれます。絵付けや、「墨型」による緻密な彫り、多彩な色、香り。
このごろは、書をたしなまずともその造形美や清廉な墨の香りを楽しむ、という方もお見掛けします。
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文房四宝ではないけれど
甲州手彫印章
一文字落款印|望月煌雅
「ゑ」があったり、一文字だけ彫られた落款(らっかん)印には遊び心が感じられます。ひらがなとアルファベットがあるので、海外の方への贈り物としても。
#こうしゅうてぼりいんしょう #山梨県
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文房四宝ではないけれど、欠かせないのが印(署名)です。時代の流れとともにはんこ不要論が叫ばれる中ではありますが、押印がされていると引き締まる心地がします。
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ユーモアに富んだ望月さんのハンコには猫と犬の肉球を模したものも。実演の合間に、「青山スクエア」肉球ハンコを彫ってくれました。工芸文具展の12日 (水)・13日 (木)には望月さんが在店されるので、お気軽にご相談ください。ハンコ彫りもご予約不要で体験していただけます。
ご希望の一文字を講師が篆書体で字入れし、それをご自身で彫刻。最後に講師による仕上げあり。
日程:12日 (水)・13日 (木)
料金: 1,800円
講師:望月 煌雅(もちづき こうが) HP:甲州手彫印章望月煌雅
時間:30~60分程度
季節の便りに
江戸からかみ
グリーティングカード|東京松屋
江戸の町人文化の中で発展した江戸からかみは自由闊達でのびやか。モチーフも日常生活に馴染み深いものや自然の草花など季節感溢れる文様が多く見られます。
#えどからかみ #東京都
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東京では桜の開花の便りもすぎ、穀雨(こくう)を待つばかり。雨の恵みを受けて植物が生き生きしはじめる頃に、のびやかなモチーフのカードに気持ちを乗せて、季節の便りを出してみませんか?
青山スクエアで初開催の「工芸文具展」は4月13日(木)までの開催です。食器と同じくらい、もしくはそれ以上に傍にある文具たち。毎日の、それこそ一生の相棒となるような文具に出会っていただければ幸いです。
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*掲載商品に関するお問い合わせ先* 青山スクエア|03-5785-1301