漆のもつ独特の渋さと深い味わい
香川漆器 : 渡辺光朗さん
2015年6月23日 青山スクエアにて制作実演中の渡辺光朗さんを訪ねました。
香川漆器の基礎知識
香川漆器は、江戸時代後期に、玉楮象谷が、「蒟醤(きんま)」、「存清(ぞんせい)」等タイや中国から伝わってきた漆器技法を研究し、それらにわが国古来の技法を加えて新しい技法を生み出したことから始まりました。
その技法を受け継いで、現在香川県の高松市を中心に、特色のある漆器が数多く生産されており、
それらを総称して「香川漆器」と呼んでいます。
座卓や飾棚、盆、茶托、菓子器等、種類の豊富なことでは全国一です。
代表的な技法である、「蒟醤(きんま)」、「後藤塗(ごとうぬり)」、「存清(ぞんせい)」、
「彫漆(ちょうしつ)」、「象谷塗(ぞうこくぬり)」は、いずれも使っていると歳月とともに
「渋」と「味」が美しさを増し、香川漆器独特の色調がでてきます。
香川県内はもとより、全国各地からも年々注文が多くなり、現在注目されています。
自分が家業を継いだのは、自然のなりゆき
(Q) まず初めに、この職業に就こうと思ったきっかけを教えてください。
父が香川漆器の伝統工芸士であったことが一番の理由です。私は4人兄弟の次男なのですが、私以外の兄弟は皆、工芸士とは全く関係ないサラリーマンをしています。
(Q) そうなんですか。御長男ではなく、次男である光朗さんが家業を継いだのは、何か特別な理由があったのですか?
いや、特に理由はないのですが、昔から兄弟の中では自分が器用な方だったことと、
小さいころからモノづくりが好きでしたから、自分が家業を継いだのは、自然のなりゆきだったように思います。
(Q)そうですか。では、香川漆器には難しい名前の5種類の技法があって、わたしのような素人には解りにくいのですが(笑)、渡辺さんはその中でも『後藤塗』が得意だとうかがいました。その理由を教えてください。
そうですね。これにも特別理由はないのですが、伝統工芸士である父の得意としていた技法が『後藤塗』だったので、私も必然的に引き継いだという流れです。
ただ私の場合は、父の『後藤塗』の技法を継承しつつ、更に『存清』の技法をプラスして独自の作品を作っているんです。
(Q)え? ・・・といいますと?
今、制作実演で作成しているものがまさに『後藤塗りの研ぎ・存清点彫り』というものなのですが、
後藤塗りに存清の点彫りを施しているところなんです。
簡単に言うと、このシャーペンのような道具で、花の輪郭を点彫りしていき、
最終的には金粉を混ぜた漆で磨いて、輪郭部分に金粉を埋め込むというものです。
写真では少し伝わりにくいかもしれませんね。
明日・6/24(水)まで制作実演は行っていますから、この機会にぜひ直接皆さん見ていただきたいですね。
そうですね!先ほども、女性のお客さまがかなり熱心に質問されていましたよね。
せっかくここで制作実演をしているので、ぜひ声をかけていろいろ質問していただきたいですね。
気軽に話かけていただいて結構ですよ!