匠を訪ねて~美濃焼 38年間携わって見えてくるもの
2015年7月6日 青山スクエアにて制作実演中の佐藤公一郎さんを訪ねました。
美濃の穴窯 佐藤公一郎さん
制作実演を見に来てくださっているお客様と楽しくお話をしながら美濃焼きについて説明をしておられました。
制作実演で作られていたのは、湯呑、お茶碗、お皿、花瓶の四つ。それぞれつくるのに特徴があり、特に平らなお皿は作るのが難しいそうです。
美濃焼は毎日作るからこそ腕が磨かれていく
美濃焼はある日突然うまくなるものではなく徐々に変化していくものだからこそ自分ではその変化に気づきにくいそうです。
これは美濃焼に限らないと思いますが、焼き物にも「才能」というのは存在しています。ですが「才能」だけでは同じ形のものを50個、100個と作ることは出来ません。
例えば同じ形の湯呑を作ろうとした場合、人にもよるとは思いますが、2年間毎日作り続けていれば誰でもできるようになります。「同じ形を作る」というのは、形を作るだけではなく焼き方にもコツが必要で、それを修得するのにどうしてもそれぐらいかかってしまうんですね。
「私の場合は」なのですが、10年経った時に8年前に作った物を見て、ようやく自分も一人前になれたなと思うようになりました。ですが、20年経って10年前に作ったものを見た時には「いや10年前はまだまだだった」と思いなおしました(笑)
そしてさらに30年が過ぎてみると「あぁ、10年前のものはまだ若かったんだ」と思ったり、昔作れなかった形のものが作れるようになっており、年月を積み重ねるだけ焼き物の技術は磨かれていくんだと改めて思うようになったんです。
陶芸で難しいのはデザインと価格
人によって違うのかもしれませんが、私が一番難しいと感じているのはデザインと価格です。
どういう形を作ろうかということが決まれば、思い描いたように作ることができますが、その「どういう形」という発想が難しい。これだけは経験を積めば何とかなるというものではないですね。
あとは、価格。
かかった時間と原材料の費用から計算するというような単純なものではなく、焼いてみたら素晴らしいのができたなど主観的な判断が必要になるので、陶芸を見る目があったとしても、いつもこの価格でいいのかと迷ってしまうんです。
才能と趣味嗜好は必ずしも一致しない
佐藤さんはもう20年も前から小学校で陶芸を教えているそうです。
美濃焼を知ってもらうために20年前から小学校で陶芸を教えています。1回3時間。
小学生ということもあって、やはり初めて陶芸をするという子がたくさんいます。年間700~800人ほどに教えているのですが、その中でも大体5名ほどのお子さんは「造形的な才能」を感じるような子がいることに、私は驚きました。
初めてなのに陶芸では難しいとされるような形をいとも簡単に作ったりするので、こういう子が将来陶芸家を目指したらきっと素晴らしい作品をどんどん生み出す人になると思うのですが、私がその学校に教えに行くのは1度きりのため、私からその子に対して「才能があるよ」と伝えられずにいます。
ただ「才能」があったとしても、その子が実際に陶芸が好きでなければ続きません。それならば「不器用」であっても陶芸が好きで、ずっと続けられる人のほうが陶芸家としては成功します。
実際に陶芸家の中には不器用な人もたくさんいますしね(笑)
焼き物は奥が深い
この4点は同じ土、同じ釉薬(ゆうやく)を使って焼いています。
一番手前の湯呑だけがガスの窯で36時間かけて焼いており、きれいな緑が浮き出てきました。
奥の3つは薪の窯で5昼夜焼いたもの。窯のどこに置くかで出てくる色味が違うのがとても面白いです。
焼き物に正解はありませんが、作り続けていくうちに作れる幅が広がっていきます。体が動くうちは夏は長良川へ行って鮎掛けをし、それ以外の時間に焼き物をする・・・どちらも私にとっては生活の一部です。
美濃焼についてはこちら
http://kougeihin.jp/item/0406/