2015.08.11

匠を訪ねて~東京手描友禅 心が喜ぶ絵柄づくりを求めて

2015年8月11日 青山スクエアにて制作実演中の大地佐和子さんを訪ねました。

東京手描友禅の匠:大地佐和子さん

東京手描友禅とは、構想、図案、下絵、糸目糊置き、友禅の色挿し、仕上げまでの工程すべてを一人で行う伝統工芸。江戸時代から東京で続いている文化でもあります。

そんな東京手描友禅の若手である大地さんにお話をうかがいました。

 

 

東京手描友禅を始めたきっかけ

絵を描くことと伝統工芸が昔から好きだった大地さん。

大学を卒業してから東京都中野区で行われていた伝統工芸展に行ったのをきっかけにこの業界に入ることになりました。

そのプロセスもとても面白く、まるで東京手描友禅が大地さんを呼び寄せたようなそんなお話でした。

 

 

 

巡りに巡って出逢った東京手描友禅

東京都中野区の伝統工芸展で東京手描友禅に出会った大地さんは、この業界に入るにはどうしたらいいのかと工芸士さんにうかがいます。伝統工芸士さんは「東京は今募集をしていないから、京都に行ってみては」とアドバイスをしました。

 

大地さんはすぐさま京都へ一泊旅行に行きます。
そこで出会ったのが、京友禅の巨匠とも呼ばれている田端喜八先生。

 

田端喜八先生に相談した大地さんでしたが、返事はあまり芳しいものではありませんでした。実家が京都にあるのであればよかったのですが、東京から一人で京都に引っ越してきて、この業界に入るにはかなり厳しいと言われたのです。
ですが田端喜八先生は「せっかく東京にいるのだから東京手描友禅に弟子入りできないかを聞いてみては」と言って、東京手描友禅の理事長に向けた手紙を持たせてくれました。

 

東京に戻った大地さんは理事長に手紙を渡します。理事長に「うちも今は募集をしていないけど、協会に履歴書を送ってみたら?」と言われ、履歴書を送ることに。

 

それからしばらくしたのち、東京手描友禅をしている小倉貞右先生から声がかかります。
「うちも募集はしていないんだけど、工房見学をしてみるかい?」と言われ、大地さんはすぐに工房見学へ行きました。
工房で小倉貞右先生といろいろと話をしているうちに、なんと小倉貞右先生の修行先が、大地さんが京都で出逢った田端喜八先生の先代だったということが判明。

 

「これは何かの縁」ということで、大地さんはついに東京手描友禅の世界に入ることが出来たそうです。

 

可愛いだけ、綺麗なだけじゃないデザイン

大地さんがデザインをする中で一番人気のあるフクロウ。

フクロウには「不苦労」や「福来」と言われて開運や金運アップの縁起物という側面もあります。大地さんがデザインするものには、すべて何かの意味が込められているそうです。

 

フクロウのデザインの種類は多く、小物や着物のいろんなところにこのフクロウが登場します。

 

 

 

 

 

 

持っている人、身に着けている人が幸せになれるように

新作の十二か月の信玄袋~こいのぼり~

大地さんが目指す東京手描友禅は、持っている人がつい鏡で自分を見たくなるような、そんなデザイン。

 

人に自慢したくなるというのとはちょっと違って、デザインの中にも遊びがあり、「くすっ」と笑ってしまうようなそんなものを作っていけたらと話していました。

 

十二か月の信玄袋~せいくらべ~

元々、東京手描友禅は江戸の粋なデザイン。ちょっとしたダジャレもデザインにしてしまうのが東京手描友禅のいいところ。

 

大地さんはそんな伝統的な考え方と、若い女性らしい感覚を合わせてモノづくりをしているので、可愛いけれどそれだけじゃない素敵な東京手描友禅が生まれているのです。

 

その他の十二か月の信玄袋

  

福はうち/南天だるま/冬だるま

 

  

願いごと/お花見だんご/乾杯

 

  

春七宝/月と兎とカメ/あした天気に

 

海へ

 

12か月分の信玄袋はどの柄もそれぞれに思いを込めて作られています。

 

これからも努力を重ねてコツコツと

今はようやく修業時代が終わり、自分の工房も持つことが出来た大地さん。

東京手描友禅の組合にも入っており、今年の4月からようやく準会員になれたそうです。

 

まだまだこれからもこの世界で生きていくために、しなければならないことがたくさんありますが、頑張っていきたいと思っていますと若手職人らしい熱い心を秘めた方でした。

 

どれくらいの規模の工房にしたいのですかと聞いたところ、今はあまり大きくするということは考えていない様子で、とにかく足元を固めて目の前の仕事を丁寧に取り組みたいとのこと。

 

お弟子さんについては、ご自身が一人前になった頃に続いてきた手描友禅の技を次の世代に引き継げたらと、はにかみながらお答えいただきました。

 

東京手描友禅は、大地さんと同世代の人は意外と多いそうですが、大地さんの下の世代がほとんどいないそうで、今後が少し不安な様子。

大地さんは今後も青山スクエアのイベントやデパートでのイベントで制作実演をしてくそうなので、一度ご本人とお話をしてみて東京手描友禅の世界をのぞいてみるのもいいかもしれません。

 

大地さんは8月15日(土)と17日(月)にも青山スクエアにて制作実演を行っております。

大地さんが所属している「東京都工芸染色協同組合」はこちら
http://www.tokyotegakiyuzen.or.jp/

 

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