2018.07.23

匠を訪ねて~甲州手彫印章 楽しみながら成長していく甲州手彫印章の匠

2018年7月23日 青山スクエアで企画展に出展中の望月煌雅さんを訪ねました。

甲州手彫印章:望月煌雅

甲州手彫印章は、山梨県の伝統的工芸品です。江戸時代末期に甲府市内で御印版を扱う版木師によって、各種印材による印章が作られていました。印材はツゲもしくは水牛でできていて、手彫だからこその味を現代にも伝えています。

甲州手彫印章を始めたきっかけ


子どもの頃からそばに

望月さんが小学校の頃、印章作りは全盛期を迎えており、同級生の半分以上の家が印章に携わる仕事をしていました。

それでも人手が足りず、隣町の人に副業に入ってもらったりもしていたそうです。

小学校の社会科見学でも印章作りを見に行くほどでしたし、望月さんの家でも印章を作っていたので、自然と自分も作る人になるんだと思っていました。

 

印章の全盛期を過ぎると…

 

ですが望月さんが大人になり職人への道を進もうと決めた時には、印章の全盛期は過ぎており、職人になりたいといっても反対する親が出てくるほどになってしまいました。

それでも望月さんは職人としての道を突き進み、今に至っています。

 

 

 

印章作りの勉強


弟子入りをして覚える印章

現在も山梨県には甲州手彫印章を教えてくれる学校はありません。

なぜなら、元々家業として行うことが多かったため、親から子に受け継いだり、弟子入りをして師匠の技を盗んで一人前になったり、といった方法で覚えるものだからです。

ですが、望月さんが技術を学ぼうと思った頃には、お父様は亡くなっていました。

そのため、他県ではあったものの印章作りを学ぶことができる神奈川県の学校に通うことにしたのです。

まずは深さを出すところから

写真は、印章作りの工程を段階を追って置かれているのですが、「布字(文字入れ)」「荒彫り」「仕上げ」と大きく3工程に分類することができます。

一番初めに任されるのが真ん中の彫りの工程。写真でいうと右から3つ目と4つ目にあたります。そしてこの彫りができてくると、仕上げを任されるようになります。

字入れは最後まで師匠が入れるので、手彫印章の中で最も重要な工程で、中々そこまでたどり着くのに時間がかかるそうです。

 

コラボ作品を作る中で


工芸品産地18箇所以上とのコラボ

ここ数年、望月さんは他産地の人やデザイナーさんとコラボを進めています。例えば花個紋を書いているデザイナーさんとコラボして、その人の誕生日の花個紋の絵を印章にしたり、印章入れに信州紬や博多織を取り入れたりと、様々な挑戦をしているのです。

また最近は、紀州漆器や会津塗、越前漆器、村上木彫堆朱などの漆器産地18ヵ所以上とコラボをして、印章入れと印章(印材)に、その産地の塗や蒔絵を書いてもらって印章を作るということもしています。望月さんのこういった新しい取り組みは、伝統的工芸品産業自体に今までにない風を巻き起こしているともいえるでしょう。

いつでも気軽に使ってもらえるハンコを


「実印じゃなくて、認印にしたいわ」

望月さんが作る印章は、判を押しやすいものばかりで、使って頂くお客様から「実印じゃなくて、認印にしたいわ」と言われたこともあるそうです。また漆器産地とコラボして作った印章にも、もっと気軽に押せるハンコとして使いたいという要望があり、認印サイズの印章も作るようになったとおっしゃっていました。

手彫印章は角印や実印のように、めったに使わない大事なハンコとして使われることが多いのかと思っていたそうですが、せっかく作ってもらった印章を金庫に眠らせたくないと言ってくれるお客様に心を打たれ、気軽に使える印章作りをしていきたいと思うようになったそうです。

甲州手彫印章の魅力


彫り続けたいと思える手彫印章

望月さんは、甲州手彫印章の魅力に取りつかれた存在です。仕事は甲州手彫印章を作ることですが、趣味も甲州手彫印章を作ること。だからこそ、色々な発想で新しいことを思いつくのかもしれません。

彫れば彫るほど、作れば作るほど、もっとうまくなりたい、もっと使い易い印章にしたいという思いだけで、今までやってきました。

甲州手彫印章は後継者問題も抱えていますが、望月さんが楽しみながら印章作りをしていると、同じように作りたいという若手も出てくるのではないかと思います。

 

企画展「匠のわざ~夏」

今回お話をしていただいた望月さんは、
企画展「匠のわざ~夏」で明日まで青山スクエアにて制作体験をしています。

ぜひ遊びに来てくださいね。

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