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TRADITIONAL CRAFTS

山形仏壇Yamagata Household Buddhist Altars

江戸時代中期、紅花等を取引するようになったことから、京都方面からの人の行き来が多くなり、京都から仏壇、仏具作りの文化が入ってきました。
そうした環境から、江戸で彫刻技術を学んだ職人が、欄間、仏具等の彫刻を仕事とするようになりました。
その後、漆塗師、蒔絵師、金工飾り職人等をとりまとめて仏壇を製作をするようになりました。

By the middle of the Edo period (1600-1868), the number of people travelling to and from Kyoto had increased because of the trade in such crops as safflower from Yamagata. As a result, Buddhist altar culture found its way into the area.
Some craftsmen went to distant Edo (Tokyo) to learn carving skills and began working on such things as transoms and other articles related to Buddhism. Subsequently, workers of metal, lacquerers and maki-e decorators began to make household Buddhist altars.

Facings are of zelkova (Zelkova serrata) or sen (Kalopanax septemlobus) which are lacquered to bring out their grain and to give them a warmth. The kuden or inner sanctuary with its bracket assemblies has a heart-warming beauty. The fittings, which are inlaid with arabesque patterns on black, are grand within a composed setting, and the carvings of dragons and heavenly beings have a glittering splendor.

  • 告示

    技術・技法


    「木地」の構造は、「ほぞ組み」による組立式であること。


    宮殿造りは、「肘木桝組み」によること。


    塗装は、精製漆の手塗りをすること。


    蒔絵及び「艶消押し」による金箔押しをすること。

    原材料


    木地は、マツ、スギ、ケヤキ、セン、シナ、ヒノキ、ホオ若しくはカツラ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    金具は、銅若しくは銅合金又はこれらと同等の材質を有する金属製とすること。


    漆は、天然漆とすること。

  • 作業風景

    山形仏壇は7人の職人の手を経て作られます。それでは、それぞれの工程を詳しく見てみましょう。

    工程1: 木地(きじ)

    木造部分の製作で大部分をこの工程が占めます。まず、十分に乾燥させた材料を木取りし、仏壇の内側と外側を仮組みします。最初に作られる杖木(じょうぎ)の寸法を元にすべての部材を切り出します。
    ひとつの仏壇を作るために、この工程だけで一ヶ月を要する気の長い作業です。

    工程2: 宮殿(くうでん)

    細かな木材を組み合わせ、複雑ながらも荘厳な宮殿を内陣に仮組みします。ここで使う木材には、シナ、ヒバ、ホウノキなど細工のしやすい材質の木を選びます。桁を組んだ後に小さな桝を組み上げますが、二人ががりで作業しても10日間かかかります。

    工程3: 彫刻

    欄間、柱を飾る彫刻です。材質がやわらかいシナの木に飾りを彫り込んでいきます。飾り柄は唐草模様を基本にし、ボタン、菊など派手ながらも落ち着きのある花や孔雀、鶴、鳳凰などの鳥、天女が選ばれます。
    自分の好みに合うように、彫刻刀を自分で作る職人も多く、それらの刀を彫る柄に合わせて選びます。

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    工程4: 塗装

    漆を塗り、磨き、これを二ヶ月繰り返します。湿気のある方が乾きやすいという漆の性質があるため、風呂と呼ばれる木の箱の底に湿った紙を敷いて乾燥させます。

    工程5: 金具

    図柄を銅板もしくは真鍮板に写し取った後、何百という鏨(たがね)を使い分けて、微妙な模様を金属板に表現します。
    金具加工の最後には黒や金のメッキが施され、仏壇の荘厳さが更に増します。

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    工程6: 蒔絵

    漆で品格のある絵を描く前に、7回ほど和紙を使って漆を濾して細かな埃を除きます。蒔絵の名の通り、漆で描いた図柄の上に、金銀粉を蒔き入れることで、光を放つ絵が浮き上がって来るのです。

    工程7: 箔押し・仕組

    アルコールで溶いた漆を塗った金箔を、静かに押し付けて貼っていくと、みるみるうちに黄金の仏壇へと変わっていきます。箔押しに使う金箔は1グラムの金を1メートル四方に引き延ばしたごく薄い箔で、ひとつの仏壇に1300枚もの金箔が貼られていきます。
    薄い金箔は風に敏感なので、真夏でも風が入らないように窓を締め切って作業をします。とても忍耐の要る作業です。
    箔押しに竹箸を使うのは、静電気で金箔が箸から離れなくなってしまうことを避けるための工夫です。
    すべての工程の最後に組み立をして、仏壇が完成します。

     

  • クローズアップ

    信仰の山国に根付いた、みちのくの匠 山形仏壇

    両手を合わせご先祖を思いながら仏壇に向う。霊山そびえる山形は仏壇を作る木々も豊かな、みちのくの商人と匠の町。地元の山々から切り出した木材と漆から作られた山形仏壇の荘厳さは、拝む人の気持ちを思いやった300年の伝統の賜物。

     

    山々と自然に抱かれた地に育った匠の技

    周囲を山々に囲まれた山形の地には、古くから木工芸、漆の技術が根付いていた。山形に仏壇がもたらされたのは江戸時代中期、江戸から星野吉兵衛広高が持ち帰ったことがはじまりと言われている。豊かな木材資源と質の良い漆にこと欠かない山形に、匠の粋を集めた仏壇技術が隆盛したのは必然とも言える。
    主に東北地方を中心に広がった山形の仏壇は、300年の永きに渡り人々の心を鎮めてきた。

    分業が技術の深みをもたらした

    「明治ごろからは分業で仏壇を作っていますよ。」そう語るのは、自らも仏壇の彫刻を担う伝統工芸士、鈴木義雄さんだ。「昔は一人で全部の工程を作っていたけども、それでは産地としては育たない。分業にすることで東北一の仏壇産地になりましたよ。」各人が自らの職務を全うしなければ分業による工芸は成立しない。誰かの技術が低ければ他の職人の高度な技術も台無しになってしまう。しかし、分業になったことでそれぞれの職人は自らの技をより深めることができ、それが仏壇全体の完成度を高めている。

    箔押し。彫刻よりも平らな面に貼る方が難しいという

    仏壇分業の要仏壇販売

    「最近は卸では売らず、受注生産ですよ。」井上正太郎さんは仏壇分業の締めとも言うべき仏壇の販売を代々担ってきた。かつては製造と販売が分かれていることが多かったが、現在では井上さんのように多くの職人を抱えている仏壇販売者が増えている。製造現場に近い位置にいることで、お客さんからの要望を即、職人に伝えることができる。「近頃は家が狭いですからね。仏間の寸法も昔とは違うので小さめの仏壇が欲しいと言うお客さんが増えていますね。」住宅事情の変化は仏壇の伝統にも時代の風をもたらしている。

    金仏壇が仏壇の基本

    なんでここまで手間隙かけてご先祖を祀る必要があるのだろう?「いい物に手を合わせると心が落ち着くのですよ。安物の仏壇ではそうはいきません。」と井上さん。拝む者、供養する者の満足を、まばゆい光を放ちながらも同時に落ち着きを見せる仏壇はもたらしてくれる。
    「最近は唐木の仏壇が増えていますが、仏壇は金仏壇が基本です。」光に向って手を合わせるのは日本人が脈々とつないで来た文化でもある。光はすべてに対して恵みを与えてくれるお日様の象徴なのだという。

    拝む人の気持ちを慮った山形の仏壇

    納得のいかない仕事はしないのが職人

    繊細な彫刻、小さな木片を組み合わせ仏閣を形作った宮殿(くうでん)、隙のない仕事が繰り広げられる。「私どもの先輩には、“納得がいかない!”と言って、自分で作った物を壊してしまう人もいましたよ。私らから見れば羨ましいほどのできなんですがね。」鈴木さんが育った時代は職人が最も誇りを持って自らの仕事に就いていた時だったのだろう。

    先祖代々祀っていける確かな作り

    「この間、200年前の仏壇を仕立て直しました。」仏壇商の井上さんは古くなった仏壇の修理・組み直しも引き受けてくる。古くなった仏壇は分解して金箔、漆を塗り替えれば完璧に元に戻すことができる。安い材料を使ったものは残念ながら使い捨てになるしかない。
    「年数経つと落ち着きが出てくるのはいい仏壇だからこそ。」安い物はくたびれていくだけになってしまうそうだ。しかし、「今は生活が変わりましたからね。ストーブを家の中で焚くと金箔についた汚れが落ちなくなってしまいます。」昔ながらの暮らしはいい物を長持ちさせることに役立っていたようだ。

    山形の木には山形の漆が合う

    最近は国産の漆がめっきり減り、輸入物が一般的だ。伝統的工芸の世界にも輸入物は入り込んでいる。「塗ってみるとわかるのですがね、山形の木には山形の漆が一番馴染むのですよ。」土地で取れた漆が使われなくなって行く時代と共に生きてきた鈴木さんはそう感じているという。
    みちのくの山の霊力を頂いた木地(きじ)には、やはり同じ山の力が育んだ漆が合うのだろう。もちろん、みちのくの山の恵みで生きて来たご先祖さまも、同じ山の木で祀られた方が嬉しいに決まっている。
    厳しい東北の自然の中で生き、農と山を守ってきてくれたご先祖に感謝したくなるみちのくの匠、山形仏壇である。

    仏壇の技術は神輿づくりにも応用されている

    こぼれ話

    なくなった方を祀るのにどうしてそんなにお金をかけるのかしら?

     

    • 山形の山々。雪の力は昔の人には逆らい難い自然の脅威だったのかも知れない

    • 仏壇を拝む心はご先祖の供養だけでなく未来への配慮にもつながる?

     

概要

工芸品名 山形仏壇
よみがな やまがたぶつだん
工芸品の分類 仏壇・仏具
主な製品 仏壇
主要製造地域 山形県/山形市、天童市、尾花沢市、酒田市
指定年月日 昭和55年3月3日

連絡先

■産地組合

山形県仏壇商工業協同組合
〒990-2431
山形県山形市松見町8-11
TEL:023-632-1516
FAX:023-632-1517

■関連展示場・施設

特徴

木地前面にケヤキ、セン等の木の木目板を張り、「木目を出した塗り」を施し、温もりを出しています。肘木桝組みによる「宮殿(くうでん)」は心を打つ美しさです。黒色をつけて唐草模様に沈金を施した「金具」は落ち着きの中にも豪華さがあります。巻竜、天人等の彫刻は豪華絢爛です。

The surface of Yamagata Butsudan household alters are set with woodgrain boards of Japanese zelkova and castor-aralia, which are lacquered in the “Mokumedashita-nuri” technique which accentuates the natural woodgrain, providing a sense of great warmth. The cross lap wood joining technique used to assemble the “Kuden” palace creates a striking beauty which pierces the heart. The “Kanagu” gold-inlaid metal finishing pieces are coated in black lacquer with a paisley pattern, which creates a sense of calm grandeur. The scrolled dragons and celestial maiden carvings create a further sense of brilliant luxury.

作り方

山形仏壇は7つの工程に分かれており、最初に木地、宮殿を作り、その寸法に合わせて彫刻、金具を作ります。仮組みした後、漆を塗り、蒔絵、金箔押しをして金具を取り付けて仕上げます。

The steps of producing a Yamagata Butsudan household altar are divided into seven primary steps: first the wooden base is made, then the Kuden palace, and engravings are made according to the design, and next Kanagu metal finishings. The frame is then assembled once for adjustment, and then disassembled for lacquering, painting of the Maki-e gold dust paintings, application of gold leaf, and then the setting of the metal finishings before it is finally complete.

産地からの声

伝統ある仏壇産地としては、最も北にあり、仏壇は堅牢で、荘厳さの中にも木の温もりがあります。仏前での合掌は気持ちが落ちつき素直な気分になれます。先祖を敬う心が育ちます。心のよりどころとして、仏壇は大きな役割りを果たしているのです。