伝統的工芸品を探す
TRADITIONAL CRAFTS

駿河雛人形

駿河雛人形のルーツをたどると、「桐塑(とうそ)」による煉天神にその始まりを見ることができます。美濃から土細工師を呼び寄せて土人形を作り出したのが始まりとされています。
その後衣装を着せた天神が作られるようになり、1853年作のものが現在まで残っています。江戸末期には衣裳着天神(いしょうぎてんじん)が作られていました。

The roots of Suruga Hina Ningyo can be traced back to simple clay dolls known as neri-tenjin. Tenjin is another name for Sugawara Michizane, a Heian period (794-1185) scholar, who was respected as a god of learning. But the craft itself started when a local man called Aono Kasaku gathered around him people skilled in making things in clay and began making dolls. Then tenjin, which were dressed, were made and examples dating back to 1853 still exist today.
By the end of the Edo period in 1868, more elaborately dressed dolls known as ishogi-tenjin were being produced.

The individuality of each doll maker is seen in the choice of color and the pattern of the cloth as well as in the making of the body. However, these idiosyncrasies are even more marked in the arrangement of the postures. This is referred to as the udeori or furitsuke. It is the last process in the making of a doll and so important that even if a hundred dolls were set up in a line, it would still be possible for an expert to discern at a glance which doll was made by which maker. A wide selection of dolls is being made including those for the Hina Matsuri or doll festival. Others include figures from the past as well as a contemporary form of the neri-tenjin doll.

  • 告示

    技術・技法


    素地作りは、次によること。

     
    (1)
    煉天神にあっては、頭及び胴体は桐塑を用いる「生地押し」によること。

     
    (2)
    天神人形、十五人揃い、時代人形及び五月人形にあっては、次によること。

     
     

    頭の成型は、桐塑を用いる「生地押し」によること。

     
     

    胴造りは、「藁胴づくり」によること。

     
     

    手足の成形は、桐塑を用いる「生地押し」又は木地を用いる「削り」によること。


    胡粉塗りは、次によること。

     
    (1)
    煉天神の頭及び胴体は、「地塗り」「水拭き」をした後、2回以上の「上塗り」をすること。

     
    (2)
    天神人形、十五人揃い、時代人形及び五月人形にあっては、次によること。

     
     

    頭は、「地塗り」「置き上げ」「中塗り」及び「水拭き」をした後、5回以上の「上塗り」をすること。

     
     

    手足は、「地塗り」「中塗り」及び「切り出し」又は「指切り」をした後、3回以上の「上塗り」をすること。


    彩色は、次によること。

     
    (1)
    煉天神にあっては、次によること。

     
     

    面相描きは、面相筆又は細筆を用いて「冠」「髪」「目」「まゆ毛」「髭」を描き「口紅入れ」をすること。

     
     

    衣裳は、太筆又は細筆を用いて描くこと。

     
    (2)
    天神人形、十五人揃い、時代人形及び五月人形にあっては、次によること。

     
     

    義眼を用いるものにあっては、小刀による開眼の後、眉毛、髪の生え際を面相筆又は細筆を用いて墨書きし「口紅入れ」をすること。

     
     

    義眼を用いないものにあっては、面相筆又は細筆を用いて面相描きすること。


    「髪付け」は、くせ直しをした後、「植え付け」をすること。


    衣装の「裂地」に裏打ちする場合には、紙を用いる「袋ばり」によること。

    原材料


    「桐塑」に使用する用材は、キリとすること。


    手足の木地に使用する用材は、キリとすること。


    髪に使用する糸は、絹糸又はこれと同等の材質を有するものとすること。

  • 作業風景

    静岡でおもに作られている胴体部分の作業工程を紹介します。

    工程1: わら胴寸法切り

    稲わらに紙を巻いたものを乾燥させた後、切断します。

    工程2: 削り

    包丁で必要な形に切り落とします。

    工程3: 胴組(どうぐみ)

    針金を通して手と脚の部分をつくり和紙でくるみます。綿などを入れ肉付けします。

    画像をクリックすると動画が再生されます

    工程4: 着せ付け

    衣装を着せていきます。中には綿を入れて膨らみをもたせます。

    工程5: 腕折り(振り付け)

    腕を折り、形を整えます。

    工程6: 頭(かしら)つけ

    頭を差しこみます。静岡では分業体制のため、頭をつけない胴体のまま納品することが多くなっています。

    画像をクリックすると動画が再生されます

    工程7: 完成

    小道具などをつければ完成です。

     

  • クローズアップ

    思いを込めた雛人形のその優しい存在感 駿河雛人形

    静岡の雛人形のルーツは天神信仰に基づく「天神雛」である。男児誕生を祝って贈られる天神雛にたいし、女児誕生には内裏雛が贈られるようになった。県内では1カ月遅れの4月3日に両方の雛を飾り、女の子も男の子も一緒に節句祝いするところが多いという。

     

    分業体制による全国シェアの拡大

    雛人形は頭(かしら)と胴体、手足、飾り物が分業で作られており、静岡はそのうちの胴体制作では全国生産の約7割を占める。量産体制が可能になったことで発達した産業ともいえる。人形制作「高木人形」の作業場をのぞくと、床一面に所狭しと制作途中の人形が積み上げられていた。色鮮やかな衣装が目に飛び込んでくる。広い部屋の中で10人ほどの女性従業員が慣れた手つきで次々と作業をこなしている。機械を使うこともなく地味で静かな作業場ではあるが、きらびやかな衣装の明るい色彩のために、どこか異空間に迷い込んでしまったような、不思議な雰囲気に包まれる。

    分業による雛人形制作。静岡ではおもに胴体が作られる

    技術が人形の「人らしさ」を生む

    社長の小林昇さんは26歳でこの業界に入り、実際に人形作りを始めてからのキャリアは25年ほど。流れ作業的に行われる胴体作りの中で、仕上げである振り付け(腕折り)が小林さんの仕事だ。1日50組は作るという量産体制を支えるのは、素早く正確な仕事を可能にする技術だろう。振り付けを待つ人形が小林さんの脇に並ぶ。実のところ、頭のつかない胴体だけの状態のものを「人形」としてとらえるのは難しい。美しい衣装をつけていても、やはりそれはまだ、きれいな布を使った「物」にしか見えない。ところが、まっすぐ横に伸ばされた腕を小林さんが「目打ち」を使って折り曲げ、動作をつけると、まるで命を吹き込まれたように「物」が「人形」へと変化する。人らしい温もりが生まれてくる。

    時代とともに好まれる人形も変わる

    「振り付けには職人の技術が集約され、個性が発揮される。」とよく言われる。「衣装を着た姿をきっちり見せることが必要ですからね。左右対称でなければならないし、首から肩、肩からひじ、ひじから手首と、長さのバランスも重要です。いちいち物差しで測るわけではないから、ある程度は勘でやるわけです。」袖の部分に綿をつめるなどして、型くずれしないように、また女性の優雅さ、男性のりりしさが表現されるようにする。衣装の色の重ね方にも職人の癖が出る。「そりゃ、自分の好きな色を使うからね。」だが、自分の好みを客に押しつけすぎてもいけない。「まず客がいて、注文をとっての仕事ですから、あまり頑固にこだわるわけにはいきません。買ってもらえなければ意味がないでしょう。」客の要望に応えながら、売れるものを作る。好まれる人形の顔だちや衣装の色合いは、やはり時代によって変わるらしい。バブルのころは淡い色の衣装に人気があったが、最近は昔風のオーソドックスなものに戻っている。顔立ちも昭和40年代の高度経済成長期には丸顔で目がはっきりしたものだったのが、今では細面で切れ長の目の古典的なものが復活しているという。時代の精神が人形作りにも影響する。

    飾りものをつければ完成

    飾ることを考えて、きれいに作る

    少子化、住宅事情の変化で売り上げを伸ばすのは難しくなっている。東京や大阪など大都市になるほど家が狭く、立派な人形を贈りたくても置く場所がない。「最近では3月に飾る時以外は預かります、という人形メーカーもありますよ。」時代の変化に応じて、作る側も柔軟な発想が求められるところではあるが、若い世代に節句行事のもつ意味を再認識してもらうことも必要だ。雛祭りは、もともと紙やワラで作った人形(ひとかた)に子どもの厄災を移して、海や川に流した「流し雛」の習慣がもとになったもの。それがしだいに健康や幸せを願うという意味合いで人形を飾るようになった。子どもを思う気持ちとともに、職人の精魂も込められている。託されてきた日本人の思いを忘れたくはない。

    • 美しさは優れた職人の手により生まれる

    • 一面の雛人形。女性たちの手で衣装が着せられていく

    職人プロフィール

    小林昇 (こばやしのぼる)

    1944年生まれ。人形に関わり続けて30年。話をする間も振り付け作業の手を休めない。

    こぼれ話

    農業神としても敬われた天神様

    天神様、すなわち菅原道真は学問の神様として有名ですが、もうひとつ、農業の神様でもありました。静岡の雛人形のルーツと呼ばれる土天神(練り天神)は、朱色の彩色を施しています。かつては稲を植えて水を引き入れるときに土天神を置き、天の農業神を招く目印にしたということですが、その朱色は火と太陽に通じるもので、生育する稲に虫がつかないよう、祈りをこめたものでもあったそうです。現在、静岡でこの土天神を作っている職人は一人しかいません。
    桐の挽き粉と生麩糊とを練って型抜きしたものを、乾燥させて色をつけるのですが、その素朴さと鮮やかな色が印象的です。細い眉と切れ長の涼しい目。顔の表情も作り手によってずいぶん変わりますが、この人形を見ると神様が身近な存在に感じられます。

    • あざやかな朱色が特徴の土天神

    • 人形の表情に職人の思いがこめられる

     

概要

工芸品名 駿河雛人形
よみがな するがひなにんぎょう
工芸品の分類 人形・こけし
主な製品 雛人形、煉天神(ねりてんじん)、時代人形
主要製造地域 静岡県/静岡県/静岡市、焼津市、藤枝市、富士市、牧之原市、志太郡岡部町及び大井川町、榛原郡吉田町、庵原郡由比町
指定年月日 平成6年4月4日

連絡先

■産地組合

駿河雛人形伝統工芸士会
〒421-0112
静岡県静岡市駿河区東新田4-10-21
にんぎょっ子内
TEL:054-257-3983
FAX:054-257-5786

■関連展示場・施設

特徴

雛人形の最初の工程である胴作りと、布地の柄や色彩等の選び方には作者の特徴が表れます。それよりもさらに作者の個性が表われる工程が、「腕折り(振付けとも言う)」です。これは雛人形作りの修行の中でも最後の工程とされ、100体並んでいても「腕折り」を見れば誰の作品かわかるほど重要なものです。

The personality of the artist comes out in the making of the torso, which is the first step in making hina ningyo dolls, and the patterns and colors used in the fabric. Another step that shows the artist's personality even more is the bending of the arms. This is one of the final steps learned when training to make hina ningyo, and even with one hundred dolls lined up, it is said one can identify the artist by looking at the way the arms are bent.

作り方

衣裳人形は、胴体部分になる稲のワラを固く巻き、腕や足となる針金に木毛(もくげ)を巻き付け、胴体と合体してその上に衣装を着付け、最後に振付けをして完成します。桐塑による煉天神は型に桐の引き粉と生麩を混ぜたものを入れ型抜きした後、10日間程度自然乾燥させ、冠や髪の毛の加工、顔の描き込み、衣裳の加工、小道具、台作りをして仕上げます。

The costumed doll is made by first tightly wrapping rice straw for the torso, then wrapping wire for the arms and legs with wood wool. Next, these are combined with the body and fitted with clothing, and finally the arms are bent and the doll is complete. Neritenjin dolls are made using toso, which is a mixture of paulownia sawdust and wheat gluten that is pressed into a mold, then left to dry for approximately ten days. Next, the doll is affixed with a cap or hair, then the face is painted on, it is dressed, the smaller props are added, then the platform is made, and it is complete.

オンラインショッピング

7100872000016
人形・こけし 静岡県

駿河雛人形

天女の舞い

7100872000023
人形・こけし 静岡県

駿河雛人形

琴の調べ