桐生織

群馬県

1200年ほど昔、宮中に仕える白滝姫が桐生の山田家に嫁に来て、村人に養蚕や機(はた)織りを伝えたのが始まりと言われています。
鎌倉時代末の新田義貞の旗揚げや、1600年の関ヶ原の合戦では、徳川家康が桐生の白絹(しらぎぬ)の旗を用いたこと等から、桐生織物はその名を全国的に高めました。さらに19世紀前半には幕府の保護もあって、金襴緞子(きんらんどんす)や糸錦(いとにしき)のような高級織物を生産するようになり、この技術・技法は今の桐生織に引き継がれています。

  • 告示

    技術・技法


    お召織にあっては、次の技術又は技法により製織されたしぼ出し織物とすること。

     
    (1)
    先染め又は先練りの平織り、綾織り若しくは朱子織り又はこれらの変化織りとすること。

     
    (2)
    お召糸に使用する糸は、下よりをした後、わらびのりその他の植物性糊料を手作業によりもみ込むこと。

     
    (3)
    お召糸のねん糸には、八丁式ねん糸機を用いること。

     
    (4)
    しぼ出しは、「湯もみ」によること。

     
    (5)
    たて糸の密度は、1センチメートル間100本以上とすること。


    緯錦織にあっては、次の技術又は技法により製織された紋織物とすること。

     
    (1)
    「ジャカード機」を用いる先染め又は先練りの平織りの変化織り又は綾織り、朱子織り若しくはこれらの変化織りとすること。

     
    (2)
    製織には、「手投杼」、「引杼」若しくは「八丁以上の杼」、6枚以上の「伏せ綜絖」又は「引箔装置」を用いること。

     
    (3)
    紋は、よこ糸で表わすこと。この場合において、「八丁以上の杼」を用いて製織するものは、「縫取り紋」をすること。


    経錦織にあっては、次の技術又は技法により製織された紋織物とすること。

     
    (1)
    「ジャカード機」を用いる先染めの平織り又は綾織りとすること。

     
    (2)
    たて糸は、3色以上とし、2本以上の男巻から引出し一群とした後、手作業により筬羽一羽ごとに引き込むこと。

     
    (3)
    「綾竹」の位置を修正するとともに、手作業によりたて糸の張力が均一になるように調整しつつ、製織をすること。

     
    (4)
    よこ糸は、「かげぬき」と「地よこ糸」とを交互に打ち込むこと。この場合において、よこ糸の密度は、1センチメートル間40本以上とすること。

     
    (5)
    紋は、たて糸で表わすこと。


    風通織にあっては、次の技術又は技法により製織された紋織物とすること。

     
    (1)
    「ジャカード機」を用いる先染め又は先練りの二重織りとすること。

     
    (2)
    製織は、織物の表裏が転換するように2色以上のたて糸及び2色以上のよこ糸を用いて経緯二重織りをすること。

     
    (3)
    「縫取り紋」をすること。

     
    (4)
    たて糸の密度は1センチメートル間120本以上とし、よこ糸の密度は1センチメートル間40本以上とすること。


    浮経織にあっては、次の技術又は技法により製織された紋織物とすること。

     
    (1)
    「ジャカード機」を用いる先染め又は先練りのたての重ね織りとすること。

     
    (2)
    たて糸は、2色以上とし、2本以上の男巻から引出し一群とした後、手作業により筬羽一羽ごとに引き込むこと。たて糸の密度は1センチメートル間150本以上とすること。

     
    (3)
    「綾竹」の位置を修正するとともに、手作業によりたて糸の張力が均一になるよう調整しつつ、製織をすること。

     
    (4)
    紋は、「浮きたて」又は「浮きたて」及び「絵緯」とすること。

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    緯絣紋織にあっては、次の技術又は技法により製織された紋織物とすること。

     
    (1)
    「ジャカード機」を用いる先染め又は先練りの紋織りとすること。

     
    (2)
    たてかすり糸の染色法は、「手くくり」、「板締め」又は「型紙なせん」によること。

     
    (3)
    紋は、「絵緯」又は「縫取り紋」とすること。

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    綟り織にあっては、次の技術又は技法により製織された搦み織物とすること。

     
    (1)
    「ジャカード機」を用いる先染め又は先練りの搦み織りとすること。

     
    (2)
    製織には、「手投杼」若しくは「引杼」、「紋振い」又は「変り筬」を用いること。

    原材料


    使用する糸は、生糸、玉糸、真綿のつむぎ糸若しくはこれらと同等の材質を有する絹糸、綿糸、麻糸又は金糸若しくは銀糸とすること。


    使用する箔は、金箔、銀箔若しくはうるし箔又はこれらと同等の効用を有するものとすること。

     

  • 作業風景

    製糸、撚糸、染色、デザイン、織り、仕上げの工程を経て一反の反物を織り上げる桐生織。分業化により洗練された技術の高度さは全国でも有数です。
    桐生織には7つの技法(お召し織、緯錦織(よこにしきおり)、経錦織(たてにしきおり)、風通織(ふうつうおり)、浮立織(うきたており)、経絣紋織(たてかすりもんおり)、綟り織(もじりおり))があります。ジャカードを用いた豊かな表現力が特長です。
    ここでは代表的な「お召し織」ができるまでを紹介します。

    工程1: 製糸

    蚕の繭から絹糸を製糸し、“生糸(きいと)”にします。たて糸、よこ糸で使用する糸の種類は異なります。

    工程2: 精練・染色・糊付け

    薬品を入れた熱湯の中で60分生糸を練り上げ、余分なものを取り除いたのち、糸を指定の色に染め上げます。
    その後、お召し独特のしぼを作るために、よこ糸に繊維の重さの倍の量の糊を手作業でもみこみます。糊によってこの後の撚糸の際によりがもとに戻るのを防ぎます。

    工程3: 撚糸(ねんし)

    ごく細い糸をよりあわせて糸を丈夫にすることを撚糸といいます。お召しでは桐生で開発された八丁撚糸機を使用して、1メートルにつき、1500回から2000回の強いよりをかけます。この後糸繰りをして、整経、管巻きの準備をします。

    工程4: 整経、管捲き(せいけい・くだまき)

    たて糸の本数、幅を決めて、所定の長さに整えます。これを整経といい、よこ糸を木管に捲(ま)くことを管巻きといいます。巻き方には手動、機械、自動巻きの各方法があります。ここまでで、糸の準備は終了です。

    工程5: 意匠、紋切

    着物のデザインをします。紋様を意匠紙という方眼紙に写し取り、それに従って紋紙にたて糸の上げ下げの情報を指示する穴をあける紋切という作業が行われます。現在では先端技術をうまく取り込み、コンピュータ上で作成したデザインを画像データとして保存し、そのデータを直接織り機に送って紋様を織りあげる方法もとられています。意匠の幅が広がり、元来定評のあった桐生織の豊かな表現力が一層高まりました。

    工程6: ジャカード・機拵え(はたごしらえ)

    紋紙やコンピュータからの紋様データを綜絖(そうこう:たて糸を上下させる装置)に与える機械がジャカードです。ジャカードの運動を通糸からたて糸に伝えて開口させ、紋様をつくり出します。

    工程7: 機織り(はたおり)

    開口してたて糸が上下する間を緯入れによって糸が左右に行き交う(筬打(おさうち)するといいます)ことにより織り上げます。糸という「線」が織物という「面」になっていきます。ジャカードがたて糸の上下の開口を指示し、様々な文様が織物の表面にあらわれます。織りあがった布地の表面は細かく検査されます。

    工程8: しぼ出し

    お湯に反物をひたし、よこ糸についている糊を落とし糸によりが生じます。このよりが布地の表面にしぼ(織物面の凹凸)としてあらわれます。

    工程9: 整理

    しぼ出しをして縮んだ布地を湯のしして幅を広げます。木づちで叩き、風合いを出します。幅や長さを計り、傷や汚れを検査して補修して完成です。

     

     

  • クローズアップ

    時代を彩る進取の気勢 桐生織

    江戸のはるか以前より織物産地として発展してきた桐生。守るべき伝統と革新を融合させてきた桐生織の歴史からは日本が工業化を成し遂げていく様子を見ることができる。

     

    桐生織の歴史

    桐生織の歴史は古く、現存している文書からは8世紀初頭から朝廷への朝貢品として上野(こうずけ)の国、今の群馬県からあしぎぬが献上されていたことがわかっている。関が原の戦いの際に、徳川家康が小山にいた軍を急遽、関が原に帰すために求めた旗絹に応じ2410疋(ぴき)を差し出したこともある。その縁から桐生は幕府から厚遇され、織物の一大産地としての発展を遂げた。
    新井實さんは桐生の地で、20代目となる機屋の当主である伝統工芸士。伝統工芸の未来を見据えたお話を伺った。

    表現力豊かさが桐生織の特長

    製造にコンピュータを導入?

    「伝統工芸には2種類ある。ひとつは伝統をしっかり守っていくべきもの。もうひとつは時代の先端の技術を融合させていくべきもの。桐生の織物は新しい技術を自らの物となしえたからこそ世界に認められる繊維産業になることができたのです。」
    桐生織では柄のデザインにコンピュータを用いた最先端の画像処理技術が使われている。“伝統”のイメージからは一見似つかわしくない光景だ。「機械を導入すると言っても、合理化のための自動織機と、付加価値を増し技術を洗練するために入れる機械とでは全く意味が違いますよ。」と、先端の技術に飲み込まれることなく自分の物として活かすことを説く。欧米の技術を取り入れ、欧米以上の製品を作ってきた、いかにも日本の技術らしい考え方だ。

    コンピュータを使ったデザインの企画

    日本の織物産地に大きく貢献した桐生織

    時代の先端を自分の物にしてしまう、そのルーツは江戸時代にまでさかのぼる。1738年、京都で飢饉と大火事が起こった。その際にあぶれた西陣の織工を桐生に招き入れ、同時に各地の優秀な人たちが織物技術を身につけようと桐生に移り住んだ。そしてこの織工たちが現在の織物産地に招かれ各地に技術を伝えていったのだという。「桐生には生粋の桐生人は少ないですよ。各地の出身者がのれん分けしてもらって織物職人になったのです。だから彼らには元々保守的な考え方がなくて各地に技術を伝えていった、というわけです。」桐生を通じて織物の技術が伝播したことが各地の紋織りの際の開口運動を記憶する紋紙を見るとわかるらしい。全国のほとんどの織物産地で使われている紋紙が桐生と同じものだからだ。「桐生では技術こそ西陣から学びましたが、それを鵜呑みにしたわけではないのです。桐生の技術として組み変えてから伝えたことが各地の紋紙からわかるのです。」
    全国に織物の技術が伝えられていたからこそ、後の産業革命で日本がいち早く繊維工業を興すことができたのだ、と桐生の歴史に誇りを持って新井さんは語る。

    昔ながらの織機上部のジャカードが紋型である。

    豊かな表現力も近代技術との融合があったからこそ

    桐生織には7つの技法がある。中でもジャカードを用いた技法で織られた織物の表現力には目をみはる。「この柄も、世界に輸出することを考えていたからできた技術なのです。」桐生では明治期に輸出用の広幅織物に力を入れた。広幅織物には伝統的な織物よりも緯糸が織りなす柄が豊かだ。広幅織物の技法を小幅な織物にも応用したことでより緻密な紋様を表現できるようになった。
    「戦争では大切な織機を失いました。しかし桐生では自分たちの手で織機を作り自ら復興を成し遂げていったのです。」現在ではコンピュータを使ったジャカードを地域に広く導入している。桐生の方式は全国のジャカードの標準になっている。これも桐生の織工が一丸となって協力したからだという。協力、自立、積極性、これらが桐生の織物のみならず、手工業しかなかった日本に工業がスムーズに定着した理由なのかも知れない。

    7つの技法のうちのひとつ、“綟り織(もじりおり)”の紗

    これからのヒントを垣間見る

    20世紀初頭から日本を引っ張ってきた繊維産業は、時代の荒波にもまれながら技術を発展させてきた。そして欧米の技術を取り込みながらも独自の伝統もしっかり守っている。21世紀、桐生織は次の波にどのように乗っていくのだろう?時代を読むヒントを感じさせてくれる、伝統と先端の融合である。

    職人プロフィール

    新井實

    「新しい技術に溺れることなく新しい技術を自分のものにする、これが難しい。」と語る桐生織協同組合常務理事。日本伝統工芸士会副会長も務める、伝統工芸士会きっての弁士だ。

    こぼれ話

    桐生の伝統の紗綾市(さやいち)を現代に再現

    新田義貞が鎌倉幕府と戦う際の旗印の絹、徳川家康が小山から軍を関が原に送った時の旗絹、桐生の絹は戦国武将の旗として使われた歴史があります。その縁から時代の武将から大事にされた桐生は地理的な位置にも恵まれ、交易の要所として発展しました。
    写真の絵は今も言い伝えられている紗綾市の図です。盛んな絹の取り引きは町を栄えさせ、各地の物産が集まりました。
    現代に紗綾市の伝統を蘇らせようと、毎年11月上旬には“SAYA市”と称したイベントが市内にて開催されています。

    • 紗綾市を絵画織で再現(新井實氏作)

     

概要

工芸品名桐生織
よみがなきりゅうおり
工芸品の分類 織物
主な製品着物地、帯
主要製造地域桐生市、太田市、みどり市 栃木県/足利市
指定年月日昭和52年10月14日

連絡先

■産地組合

桐生織物協同組合
〒376-0044
群馬県桐生市永楽町5-1
TEL:0277-43-7171
FAX:0277-47-5517

http://www.kiryuorimono.or.jp/

特徴

桐生織は品種が多く、生産の量の少ない付加価値の高い先染めジャカード織物です。いずれもセンスの良いデザインや紋様で作られています。

作り方

生糸、絹糸を主な原料としています。デザイン、紋紙、機拵(はたごしらえ)等の準備工程を経て、撚糸(ねんし)、染色、糸くり、緯糸管巻き(よこいとくだまき)、整経をし、織り上げられます、お召は八丁撚糸機(はっちょうねんしき)で撚(よ)りをかけた緯糸を使い、製織後シボ取りをします。

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