技術・技法
1 次の技術又は技法により製織されたかすり織物とすること。 (1) 先染めの平織りとすること。 (2) かすり糸のかすりを手作業により柄合わせし、かすり模様を織り出すこと。 2 かすり糸の染色法は、「織締め」によること。
奄美における大島紬の始まりは、7世紀頃に遡ります。産地が形成されたのは18世紀初期のことで、その後、技法は鹿児島にも伝わりました。絣模様は締め機(しめはた)という独特の機を用いて作られます。糸を染める「泥染め」の技法は特に有名です。
紬のルーツは、遠くインドでうまれたイカットという絣織り(かすりおり)だと言われており、イカットが、スマトラ、ジャワからスンダ列島一帯に広がりを見せた頃に、奄美大島にも伝わったと言われています。
1 次の技術又は技法により製織されたかすり織物とすること。 (1) 先染めの平織りとすること。 (2) かすり糸のかすりを手作業により柄合わせし、かすり模様を織り出すこと。 2 かすり糸の染色法は、「織締め」によること。
使用する糸は、生糸とすること。
本場奄美大島紬は、気の遠くなるような数々の工程を経て、できあがるまで半年から一年以上もかかります。人々は自然の恵みを受けながら、我が子をいとおしむように大島紬を育んできたのです。そのたゆまない先人からの努力の積み重ねが、世界に類をみない絣織りの至宝と、神秘的な染織の美学と評されるまでの作品を生みだしたのです。 今回は本場奄美大島紬ができるまでの、おおまかな工程を説明いたします。
絣は、糸一本一本に文様を染める技法で、文様の部分を糸などで括る防染です。染色すると、その括られた部分が染まらずに文様が染め分けされます。初期の大島紬は、芭蕉の繊維などで手括りして絣文様を染め出していました。素朴な絣から、いろいろな絣を組み合わせたりして次第に複雑になり、また絣括りの糸も綿糸を用いて、細かな文様になってきました。そして、大島紬の人気も高まり、生産の増加が求められるようになってきました。しかし手括りの絣えは需要に応えられず、また絣のズレなど正確な絣表現には限界がありました。そんな折、かねてから研究熱心な鹿児島市の大島紬機屋の永江伊栄温は、息子当八とともに明治40年、絣の新技法を開発しました。 それは絣を織締するもので、絣の正確さと生産能率の向上に画期的な技法の開発でした。その後改良が加えられ、現在では、自由で多彩な絣表現が可能となったのです。 さて本場大島紬の作業工程の説明ですが、本場大島紬は図案に始まり、織り上がるまで半年から一年かかります。その間、約30もの複雑な工程を経て作られます。ここではその一部を簡単にご紹介いたします。
【糸を基準にした工程】 各糸によってその工程は異なってきます。簡単に糸によっての工程を追っていきます。 A.よこ地糸 染色–水洗–仕上げ剤処理–乾燥–管巻き B.よこ絣糸 下染め–薄糊付け–糸繰り–整経–糊張り–乾燥–絣締–染色–絣部分解き–すり込み染–蒸熱処理–絣全解–上枠–水洗–仕上げ剤処理–乾燥–小あげ–管巻き C.たて絣糸 下染め–薄糊付け–糸繰り–整経–糊張り–乾燥–絣締–染色–絣部分解き–すり込み染–蒸熱処理–絣全解–上枠–水洗–仕上げ糊張り–乾燥–絣配列–絣疋分け–絣板巻き D.たて地糸 染色–水洗–仕上げ糊入れ–乾燥–糸繰り–整経–地たて巻き その後、C.とD.のたて糸系を「機掛け(はたかけ)」します。本格的な織工程に入り、完成へともっていきます。
本場大島紬は、1300年の歴史と文化に育まれ、古来より高級絹織物として高く評価されてきた。その特長は、世界に類を見ない絣織りの技法と神秘的な“泥染め”にある。
職人プロフィール
野崎松夫 (のざきまつお)
昭和16年生まれ。 先代(父親)の跡を継ぎ、泥染めの世界へ入って30余年。 現在は3代目(息子さん)とともに伝統の技法を守り続ける。
こぼれ話
ネリヤカナヤの神と共に唄い踊る島人たち
奄美の人々は海の彼方にネリヤカナヤ(神の国)があると信じ、その暮らしは太陰暦で営まれていました。奄美、沖縄の琉球文化に特徴的に見られる「ユタ」「ノロ」と言われる人々の存在も忘れてはならないでしょう。シャーマン的な働きや身の上の相談役として、今なお、島人の支持を得ています。 奄美の各集落には太陰暦により「ユタ」「ノロ」が、つかさどる祭祀や習慣が根強く残っています。古来、島人の暮らしは自然の懐に抱かれ、海の幸に恵まれたものだったのです。太陽や月とともに季節がめぐり、農作業や祭りが行われました。 旧暦の8月には、収穫の感謝と豊作を祈る祭りが多く、なかでも「ショッチョガマ」は400年の歴史を持つ、重要指定文化財指定の行事。早朝、山腹のわら屋根の上で、集落の男衆が祭詞を唱え、屋根を崩す勇壮な祭りです。夜になると生命感あふれる踊りと唄掛けの世界が広がります。 さとうきび地獄といわれた薩摩藩の搾取の時代から、人々は唄うことで労働の苦しみを、紛らわせてきました。唄のそばには必ず踊りの輪があります。そして、島独特の伝統料理と、サトウキビから作った焼酎さえあれば、夜がふけることも忘れて、島人たちは大いに笑い、語り合うのです。
本場大島紬の命は、絣の細やかさにあり、すべての柄は絣の集合体で表現される。熟練した織工が、たて糸とよこ糸の絣模様が正しく交叉するよう、7~8cm織り進むごとに細い針の先で絣を一本一本丹念に正しく揃えていく。織工には細心の注意と根気が必要とされ、一反織り上げるのに、40日以上の日数がかかる。
職人プロフィール
菱沼彰 (ひしぬまあきら)
【南風(なんぷう)】—本場大島紬伝統工芸士。 初代【南風】の跡を継ぎ、25年。 2代目南風として、その作品のファンは数多い。
こぼれ話
本場大島紬の“染め”の分類
1.泥染大島紬 (どろぞめおおしまつむぎ) 伝統的なテーチ木と泥土染め方法で染色した糸を用いて織り上げられた、高級な紬です。光沢を抑えた渋みの黒色としなやかな感触が豊かな気品を醸し出します。泥染地に白絣が茶色がかって見えることから、茶泥大島とも呼ばれています。 2.泥藍大島紬(どろあいおおしまつむぎ) 植物藍で先染めした糸を絣むしろにして、それをテーチ木と泥染めで染色したものです。泥染よりさらに深みと艶がました黒地に、藍絣の調和がシックで魅力的に映ります。 3.植物染大島紬 (しょくぶつぞめおおしまつむぎ) テーチ木、藍以外の草や木などの植物から抽出された天然染料で染められたものです。古典的な染色法に、改善を重ねて染めあげたもので、微妙やさしい色調が見直され、彩りも多彩な大島です。 4.色大島紬(いろおおしまつむぎ) 合成染料を使用して、色絣模様に染色したもので、多彩な色調と自由なグラディエーションは、大島紬の無限の可能性を広げました。色使いが自由なので、モダンなものや大胆なデザインも豊富にできます。 5.白大島紬(しろおおしまつむぎ) 白、あるいは淡地色の大島紬です。春の終わり、秋の初めなど単(ひとえ)衣仕立てにしても使えます。明るくお洒落な感覚が好評です。
宮崎県都城市で作られる本場大島紬は、古来から伝わる伝統技法だけにこだわらず、染めにおいても、自然の草木を使った“草木染め”などを取り入れている。デザイン、販売方法などにも、進取の気鋭が随所に見られる。
職人プロフィール
谷口邦彦 (たにぐちくにひこ)
都城絹織物事業協同組合理事長。 現在は主に大島紬のデザインと総合的な管理を主としている。 織物のかたわら、ジャズピアノも弾く趣味人でもある。 囲碁、将棋ともに5段の腕前。
こぼれ話
ウェルネス都城
都城市は、伝統産業はもちろん、古来からの歴史があり、『ウェルネス都城』の宣言をしています。人が元気・まちが元気・自然が元気をキャッチフレーズに、個人の身体的健康から、精神的健康、人間性をも含んだ概念で、平成10年にこのことを宣言しています。今回はその『ウェルネス都城』が自慢できる、観光名所をご紹介いたします。 関之尾(せきのお)公園は、緑したたる関之尾は、大自然の力が作り出した造形美であふれる天然の美術館のようです。特に、世界最大級を誇る甌穴(おうけつ)群が見物。さらにしぶきを上げる3つの滝。四季折々の表情を見せてくれる素晴らしい景観は、大地の力強さと自然のやさしさをたたえています。日本の滝100選にも選ばれた滝は、幅40メートル、高さ18メートルにも及ぶ大滝です。
工芸品名 | 本場大島紬 |
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よみがな | ほんばおおしまつむぎ |
工芸品の分類 | 織物 |
主な製品 | 着物地 |
主要製造地域 | 奄美市、鹿児島市、大島郡竜郷町、喜界町、宮崎県/都城市他 |
指定年月日 | 昭和50年2月17日 |
鹿児島県本場大島紬協同組合連合会
〒891-0123
鹿児島県鹿児島市卸本町4-7
本場大島紬織物協同組合内
TEL:0099-204-7550/090-2079-3459
FAX:0997-53-8255
本場大島紬織物協同組合
〒891-0123
鹿児島県鹿児島市卸本町4-7
TEL:099-204-7550
FAX:099-204-7551
鹿児島県絹織物工業組合
〒890-0056
鹿児島県鹿児島市下荒田1-26-20
株式会社中川内
TEL:099-256-0488
FAX:099-256-0490
都城絹織物事業協同組合
〒885-0031
宮崎県都城市天神町3-6
株式会社東郷織物内
TEL:0986-22-1895
FAX:0986-22-4289
本場奄美大島紬協同組合
〒894-0068
鹿児島県奄美市名瀬浦上町48-1
TEL:0997-52-3411
FAX:0997-53-8255
繊細でしかも鮮やかな独特の美しい絣模様、そしてシャリンバイと泥染めによるしぶい風格、しなやかで軽く、しわになりにくい、奄美の自然から生まれた、人に優しい織物です。
原図から図案設計され、それをもとに絣締(かすりじめ)をし、シャリンバイと泥で染色した後、これをほどいて加工を行い、最後に製織が行われます。全工程には約半年から1年かかります。