京友禅

京都府

染色技法は8世紀から伝わり、手描友禅は江戸時代に京都の絵師宮崎友禅斉によって確立されたと伝えられています。扇絵師として人気の高かった宮崎友禅斉が、自分の画風をデザインに取り入れ、模様染めの分野に生かしたことで「友禅染め」が生まれました。
色数が多く絵画調の模様を着物に染める友禅染は、町人文化の栄えた江戸時代の中期に盛んに行われるようになりました。明治時代には、型紙によって友禅模様を染める「写し友禅染め」が開発されました。

  • 告示

    技術・技法


    手描友禅にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    図柄は、友禅模様を基調とすること。

     
    (2)
    下絵は、青花等を用いて描くこと。

     
    (3)
    防染をする場合には、糸目のり、「堰出しのり」、伏せのり又はろう描きによること。

     
    (4)
    「挿し」、「彩色」及び描き染めには、筆又ははけを用いること。


    型友禅にあっては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    型紙は、柿渋を用いて手漉和紙をはり合わせた地紙又はこれと同等の地紙に友禅模様を彫刻したものとすること。

     
    (2)
    型付けは、手作業により柄合わせすること。

    原材料

    生地は、絹織物とすること。

  • 作業風景

    「友禅」とは模様染めのことです。布を染める技法は古くからあったのですが、京都に友禅染と呼ばれる模様染めが広がったのは江戸時代に入ってからです。当時、扇絵師として京の町で人気を博していた宮崎友禅斉(承応3年=1654生)が扇絵で学んだ斬新な絵柄を、その頃までに確立されていた様々な模様でデザイン化したのが始まりだといわれています。この技法を考案した友禅斉の名前から「友禅染」と呼ばれるようになったとされています。明治時代になると、あでやかで色数の多い化学染料が使用され、またそれまでの「手描友禅」に対して型紙を使って大量に染めることの出来る「写し友禅」が発明されました。これが現在の「型友禅」と呼ばれるもので、これによって沢山の制作が可能になり多くの人々に広がっていきました。現在も、振り袖や留め袖には友禅染め技法が豊かに取り上げられ、さらに刺繍や金銀の加工も施し「染繍芸術」の世界を展開しています。

    工程1: 下絵(したえ)

    はじめに作家がデザイン、模様を考えて、着物の原寸大の図案を作成します。そして着物の形に仮縫いした白い生地に、図案に従って青花液を含ませた筆で下絵を描きます。この青花とは露草の栽培変種である大帽子花からとれる青色着色のことを言います。

    工程2: 糸目糊置(いとめのりおき)

    糸目糊置は筒紙に入れた糊(のり)を押し出しながら、下絵の線に沿って糊を置く作業です。この糊は糸目糊と呼ばれ、後の彩色の工程で彩色した染料がにじみ出たり混ざったりするのを防ぐ防波堤の役目をします。この後、豆汁を生地全体に刷毛で塗る「地入れ(じいれ)」という工程を行い、すぐに強い火で乾燥させます。これは、下絵の青花を消すとともに、糸目糊を生地に食い込ませて接着させるためです。

    工程3: 色挿し(いろさし)

    色挿しは、筆や刷毛に染料液を含ませて、下絵にそって糸目糊を置いた生地を電熱器(昔は炭火)の上にかざして乾燥しつつ、筆や小刷毛で、文様に様々な染料を着色する行程です。これは、染料を調合し、目的の色を得るまでにも年期のいる行程です。この後、「蒸し」という工程が入ります。蒸すことで染料を定着させ、色止めします。

    工程4: 伏せ糊置(ふせのりおき)

    伏せ糊置きとは色挿しした模様全体を、糊で覆う工程のことです。これは次の工程の地染めの準備であり、彩色した部分に地色が着かないようにするための作業です。この後、刷毛に染料液を含ませて生地全体に地色を染める「地染め(じぞめ)」という工程を経て、「蒸し」という工程で生地に染料を定着させます。さらに「水洗」で糊や染料を洗い流して、「張り・湯のし」で生地を整えます。これらの作業は挿し色が生地面で十分発色するようにするための行程です。鴨川や、今は涸れてしまった堀川といった美しい水脈のある京都では、かつては川の流れにまかせて色鮮やかな反物を洗い、友禅流しとして人々の目を楽しませた工程でした。

    工程5: 仕上げ

    最後に仕上げの装飾加工を行います。ここで細かい彩色、箔や砂子、刺繍などをほどこし、京友禅特有の華やかさを出していきます。金加工(きんかこう)という装飾加工では、金属箔や金属箔粉を糊などの着剤を用いて、染め上げた布に接着する技法です。糸目(金描)、ベタ箔(押箔)、摺箔、切箔、砂子(振金)、たたき、盛上箔、揉箔など、様々な技法があります。また、刺繍(ししゅう)という加工では両手を巧みに上下させて生地の表と裏とから刺し、多彩な糸で文様を表します。刺繍は金加工とともに、友禅文様を一層引き立てる行程です。

     

  • クローズアップ

    ひと色、ひと筆に手技の冴、京友禅

    江戸時代、京都の絵師宮崎友禅斎が創始したといわれる京友禅。気高く、ゆかしい京の美意識が映しだされる染色工芸である。創業以来200年の伝統を誇る五代田畑喜八さんに、京友禅への熱い想いをお聞きした。

     

    染色とは、いわば「染めない」ことを追求した技法

    日本独自の文化が開花した奈良時代から、服飾文化においては、ろう染め・絞り染め・挟み染めなどの染色技術や刺繍などが発達した。室町時代には更紗や印金、また桃山時代には辻ヶ花・絞縫箔などの華麗なきものが作られるようになり、京都の染色工芸の基盤が始まった。そして江戸・元禄時代の人気の扇絵師であった宮崎友禅斎が、扇の柄を着物に応用するべく友禅染めを作り上げたという。「染色というのは、いかに染めないようにするかを追求した技法です。染料につければ、生地を染めるのはいとも簡単。逆に染めずに白を残すことの方が難しい。その防染方法が、ろうならろうけつ染め、糸なら絞り染めです。友禅染めは糊を使うのが特徴。特に手描友禅の場合は、線描だから精緻な筆遣いに、作家の技の冴が際立つわけです。」

    作品名「天翔」

    田畑家が描く「雅と幽玄」の世界

    田畑家の初代喜八は、江戸の文化文政期に日本画を学んだ後、染色業を創業。公家や武家の姫君や奥方の御衣料を承る誂染師として活躍。3代目は、特に時代衣裳(いしょう)の素晴らしさに感動し、積極的に衣裳や裂を蒐集(しゅうしゅう)し研究材料とした。日本画を基礎とした「豆描友禅」「堰出し友禅」などの田畑家独自の技法で、京友禅に新風を吹き込んだ作品を創出、昭和30年には人間国宝に指定される。桃山・江戸時代の貴重な衣裳は、後に当代が「田畑コレクション」としてまとめた。格調高い「雅と幽玄」の世界を描いてきた田畑家は、染色文化の歴史の語り部としての役割も大きい。

    五代田畑喜八さん

    代々受け継ぐ信念は、「華主」

    代々受け継がれている田畑家のこだわりは「華主(かしゅ)=主人公は着る人」。京友禅作家として高い評価を得ながらも、作家はあくまでわき役と心得る。「舞台の主人公は、あくまで着物を着る女性。私たちは、その女性がより美しく、より豊かに見えるように、その舞台を作り上げるのが役目。作家が前に出てはいけない。着物は、着姿が基本。飾って美しいだけでは着物とはいえない。主人公の着姿を想定して、柄の流れや色遣いをデザインするわけです。人の顔だちも、昔と比べて目のぱっちりした洋風な顔だちの人が増えている。こういう人には、淡い日本的な色よりも、きりっと濃い地でメリハリをきかせる方が着る人を引き立てます。」と、伝統の技に、現代に磨かれた感性を加味する。

    机の下に炭火を置き、生地を乾かしながら色を挿す。炭は火花が飛び散らない茶道用の炭を使用。電熱器を使う工房も多いが、炭でないとよい色がでないという

    現代、そして未来へ。時代を超えた美を追求

    「例えば、朱色でも、昔は黄味が入っていました。黄色人種の肌には、確かにそういう色合いがしっくりくるわけです。しかし、洋風化された現代では、青味がかった朱色が好まれる傾向があります。図案にしても、より斬新なものが求められるようになりました。京友禅の品格や技の伝統は重んじながらも、現代から未来に通じる時代を超えた美を追求していきたいですね。また将来は、京都に染色を学ぶことができる美術館を作りたいと思っています。そこで、一般の人にも、友禅のよさをより多く知ってもらえる場にしたいですね。」時代の移り変わりをきちんと見据えながら、友禅の歴史を受け継ぎ、次世代に伝える重責を担えるのは、日本画を初めとする美術工芸というフィルターを通じて、染色工芸を俯瞰できるからかもしれない。

    色見本帳

    職人プロフィール

    五代田畑喜八

    1935年京都生まれ。早稲田大学第一文学部美術専修卒業・京都市立美術大学日本画科修了。株式会社田畑染飾美術研究所代表取締役。受賞作品多数。染織に関する著書も多い。現在、(社)日本染織作家協会理事長など。

    こぼれ話

    京友禅の魅力に触れる-公開工房・染工場

    京友禅の工程は、15以上に分類され、専業・分業化されています。京都染色協同組合連合会に加盟する1250事業所の中から、公開している工房や染工場をご紹介するマップです。京都散策がてら立ち寄って、京友禅の優美さに触れてみてはいかがでしょうか?

    • 京友禅公開工房・染工場ガイドマップ

     

概要

工芸品名京友禅
よみがなきょうゆうぜん
工芸品の分類 染色品
主な製品着物地、コート、羽織
主要製造地域京都市、宇治市、亀岡市、城陽市、向日市、久世郡久御山町
指定年月日昭和51年6月2日

連絡先

■産地組合

京友禅協同組合連合会
〒604-8217
京都府京都市中京区西六角町97
TEL:075-221-1713
FAX:075-744-6444

http://www.kyosenren.or.jp/

特徴

花鳥山水等を写した京友禅は、日本の着物の代名詞になっているといっても言い過ぎではないでしょう。多くの色を使いながらも、気高く奥ゆかしい京友禅の色柄には、京都千年の歴史が育んだ、美しい感覚が息づいています。

作り方

京友禅は、正絹(しょうけん)に手描き染めまたは型染めをしたもので、工程は多いものでは14工程もあり、これは専業分業化されて作られます。京友禅の型紙は、図柄も豊富で多彩です。なお、京友禅の技法は型友禅と手描友禅に大きく分かれます。細かく分類していくと、日本や外国から来た技術が伝えられていることがわかります。

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