京小紋

京都府

京小紋の始まりは、基本となる型紙が作られた1200年前に遡ります。室町時代に起きた応仁の乱の後、様々な絹織物が生産されると辻ヶ花染や茶屋染が発達し、京都の堀川を中心として染色の職人町が出来ました。
上杉謙信の紋付小紋帷子(もんつきこもんかたびら)や徳川家康の小花紋小紋染胴服(こばなもんこもんぞめどうふく)等は、小紋の技法を駆使して作られています。この頃に、防染糊を置いたあと引染めする小紋の技術が完成されました。

  • 告示

    技術・技法


    図柄は、小紋調とすること。


    型紙は、柿渋を用いて手漉和紙をはり合わせた地紙又はこれと同等の地紙に彫刻したものとすること。


    型付けは、手作業により柄合わせすること。


    地染めは、引き染め又は「しごき」によること。


    なせんのりは、米粉に米ぬか及び食塩等を混ぜ合わせたものとすること。

    原材料

    生地は、絹織物とすること。

  • 作業風景

    「京小絞」は、技法的には型紙を使って文様を染める、「型染の染色」になります。京友禅の「型友禅」も基本的にはこの工程と同じです。多くの工程があり、京小紋が染め上がるまでには、普通1~2カ月くらいかかります。
    日本の染色は「糊で防染して染める」という技法が、古くから行われてきました。
    これに対してヨーロッパの染色は、「防染」という概念が無く、古くから銅版画の技法で布地の染色が行われていました。18世紀頃にジャワ更紗が輸入されるまで「防染」の技術や存在は知られていませんでした。
    京小紋の型紙は、和紙の型地紙に、刃物で模様を彫り抜いて作られます。防染には米から作った糊が使われてきました。狩野吉信(1552~1640年)の描いた「紙本着色職人尽絵」(重要文化財)にも、型置きの場面があり、1600年代に型染めが行われていたことがわかります。
    この「型染の染色」技法は、日本が世界に誇る高度な染色技術です。現在写真製版の型紙を使って、多彩色で染められている美しいイタリアのスカーフやネクタイも、その染色技法の原理は日本の「伝統型染」にあります。今日、一般に使われているプリント染色技法の起源は、実は日本の「伝統型染」の技法にあったのです。

    工程1: 型彫り(かたぼり)

    図案に適した彫刻刀を使って、型地紙(和紙を3枚ないし4枚、紙の目を交互に貼り合わせ、柿渋を塗って乾かしたもの)に模様を彫り抜きます。

    画像をクリックすると動画が再生されます

    工程2: 色合わせ

    友禅糊に染料液を加え、撹拌(かくはん)棒で十分混合して均質の色糊を作り、所定の色を出します。(この時、試験蒸しをします。)

    工程3: 型置き(かたおき)

    地張りした生地の上に型紙を置き、駒ヘラに防染糊または色糊を付け、模様を写します。一型ずつ順々に12メートルある生地全体に、模様づけをしていきます。

    工程4: 地染め(じぞめ)

    地色を染める方法は、2通りの方法があります。
    1つ目の方法は、「色糊」を駒ベラで塗る「しごき染」です。2つ目の方法は、刷毛に染料液をつけて塗る「引き染め」です。

    画像をクリックすると動画が再生されます

    工程5: 蒸し・水洗い

    地染めの終わった布を蒸し箱に入れて、染料が充分に生地に染着(せんちゃく)するよう、蒸気で20~60分間蒸します。
    蒸し終わったら、生地の糊や余分な染料を流水で洗い落とし、脱水・乾燥します。

    工程6: 仕上

    水洗いの終わった布を、湯気で巾出しをして整え、完成です。

     

  • クローズアップ

    日本の四季に映える京小紋

    友禅と影響しあいながら、独自の発展を遂げてきた「京小紋」。型友禅の技術が、そのまま生かされる京小紋には、雅やかな雰囲気がある。色使いや柄ゆきには、優しさや気品が溢れている。

     

    京小紋の魅力は、はんなりとした雅やかさ

    京小紋の歴史は古く、基本となる型紙が作られた1200年前がその起源とされている。小紋染めは、江戸時代の武士の裃として発展し、一般に“江戸小紋”と言われている。粋でおしゃれな小紋染めは、男女の「小袖」として江戸・京都の一般庶民の間で流行した。明治になってからは「型友禅」と影響しあいながら、単色から多彩色へと変化し、「京友禅」として独自の発展を遂げた。「京小紋」には「東京染小紋」と違った、はんなりとした雅やかな雰囲気がある。色使いや柄ゆきにも、やさしさや気品が溢れているのが特徴だ。現在、その伝統的な“京小紋”の持ち味を生かしながら、新しい手法でその活路を見出している池田染芸。その開発の現場に、染師・池田和男さんを訪ねた。

    繊細な錐彫りの伊勢形紙を使い染められている。帯を変えれば「結婚式から葬式まで」一枚の着物で着られる用途の広い着物でもある

    伝統的な“京小紋染め”の技が生みだす「鮫小紋グラデーション染」

    京小紋は、型友禅とも言われる。伝統的な文様も数多い。以前は、いろいろな文様を染めていたが「最近は、小紋の中でも最もデザイン性に優れた“鮫小紋”の文様にこだわっている」と言う池田さん。その“鮫小紋”に、京小紋独特の「はんなりとした雰囲気」がのせられた。“鮫小紋”の地色に裾ぼかしが入っている「グラデーション鮫小紋」だ。この、特許を取得した「新技法“地色ぼかし染め”の開発」にも、京小紋の伝統的な技術が活かされている。柔らかな風合いに仕上げられた小紋は、1999年秋グッドデザイン賞を取得。着物で初めて「Gマーク」の指定を受けた。審査でも高得点を取得した「グラデーション鮫小紋」は、特別賞候補にもなった。

    今までになかったものを創りたい

    池田さんは、染屋家業三代目。高校の商業科を卒業し、家業の染色に従事した。それと同時に3年間、京都市立美術大学(現在の京都芸大)の聴講生として、働きながら色彩学や美術史を学んだ。
    「創造力を生かす」のが趣味だと言う。業界で『ブック見本』といわれるカラー写真の付いた見本帳にスライドフィルムを使ったり、作業能率を上げるために型洗い場に簡単なシャワーを取り付けたりした。また、友禅板に紙テープを貼って板の汚れを防ぐことも考えた。日常の作業工程を見直し、提案・実践するうちに、23歳の時、「オートエアー自動噴霧器」を考案する。染型紙に湿りを持たせるために使う噴霧器には、従来空気を入れるのに手押しポンプが内蔵されていたが、替わりにエアーコンプレッサーを使うことを思いついたのだ。この発明は実用新案を取得し、科学技術庁長官賞を受賞した。「今までに無いもの、前例の無いことをする」のが好きなのだ。20代の時に、当時前例が無かった異業種が集まる勉強会「キモノファッション研究会」を創立し10年余り続けてきた。
    そんな池田さんの目の前にある「きもの業界」の現実は厳しい。銅版画の原理で、金属の円筒に繊細な鮫小紋などの文様を彫る「機械捺染」の技法で作られた「小紋」の出現。値段も安く均一に綺麗に染まる「大量生産された小紋」に押され、「伝統の技法で染めた」小紋は苦戦を強いられていた。「本物の“伊勢形紙の糊防染でできた京小紋”と、“機械捺染”の小紋が、誰にでも一目見て区別できる方法はないだろうか」。染師として現実を直視した池田さんにとって、この課題は挑戦し甲斐のある“テーマ”になった。かつて美大で勉強した色彩学のグラデーションの技法を応用し、新技術の開発に取組むことになった。

    京都は“歴史と職人の町”

    「伝統的工芸品の本当の良さを知る上でも、その産地に赴き、自分の目で見て確かめて頂くのが一番」だという池田さん。「京都は歴史の古い町ですし、伝統的工芸品も17品目と多い。日本の文化を支える技術の町でもあるんです。“ほんまもん”の伝統的工芸品を京都まで買いに来る、“買い物と観光の町”にしていきたい」と語る。
    本業以外のことにも精力的に取組む池田さん。交友範囲も広い。“染め”業以外で、今一番力を入れている事はインターネットだと言う。「これから、少しずつホームページの中身を充実させていきたい。“京小紋”の歴史や沿革を情報発信していきたいと思ってるんです」と、次の目標を語った。

    サントリー“響”のコマーシャルにも池田染芸の「鮫小紋グラデーション染」の訪問着が使われた

    職人プロフィール

    池田和男 (いけだかずお)

    1937年1月7日生まれ。
    京小紋 染師
    伝統工芸士
    京都府伝統産業優秀技術者

    こぼれ話

    伝統工芸の歴史を彩る小道具たち

    桃山時代に活躍した、狩野吉信画「職人図屏風」にも、型置きしている職人の傍らに、大小さまざまの「染桶」が描かれています。池田染芸でも工房の階段の踊り場に、壁面一杯積み重ねられた「染桶」がありました。桶は、使用された当時の職人達にとって身近に存在し、人生の傍らにあった小道具。長い歴史を生きてきた「染桶」には、造形的な美しさや時の流れを感じます。
    木桶は今でも「和」の味を残す小道具として、お料理用の「寿司桶」から「風呂桶」まで、私たちの身近にあるもの。私たちの「木桶」もまた、日常の暮らしの中に密着して家族の歴史と共に生き続けています。

    • 「極鮫小紋裾ぼかし訪問着」としてGマークを取得。鮮やかな地色が印象的

     

     

概要

工芸品名京小紋
よみがなきょうこもん
工芸品の分類 染色品
主な製品着物地、コート、羽織
主要製造地域京都市、宇治市、亀岡市、城陽市、向日市他
指定年月日昭和51年6月2日

連絡先

■産地組合

京友禅協同組合連合会
〒604-8217
京都府京都市中京区西六角町97
TEL:075-221-1713
FAX:075-744-6444

http://www.kyosenren.or.jp/

特徴

小紋は、武士の裃(かみしも)にあるような小さな文様を、一色で型染したものです。現代では、昔ながらの文字通り小さな文様で型染された小紋はもちろん、洋花等を思いきり大胆に図案化したものまで色々なものがあります。

作り方

精錬した白生地を、下湯のし後、とろ糊を一面に塗った友禅板に貼り付け、型紙の上から駒ベラで防染糊または色糊を付け、生地に模様を写します。そこにさらに地色を染めるための、地染または引染めを行い、蒸して、水洗いします。

totop