伝統工芸 青山スクエア

大館曲げわっぱ

関ヶ原の戦いで負けた豊臣方の武将であった佐竹義宣が、徳川幕府によって、それまでの領地であった水戸から秋田へ移転させられた時、秋田の領民の暮らしはとても貧しく、その日の食べ物に困る者さえあるくらいでした。
大館城主となった佐竹西家は、領内の豊富な森林資源を利用して貧しい状態を打開するため、下級武士たちに命じて、副業として曲げわっぱの製作を奨励しました。また農民には、年貢米の代わりとして、山から城下まで原木を運ばせたと言われています。製品は酒田・新潟・関東等へ運ばれました。

  • 告示

    技術・技法


    木地造りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    曲げに使用する板材は、スギの柾目板とし、仕上げ削りをすること。

     
    (2)
    「はぎ取り」をする場合は、かんなを用いてすること。

     
    (3)
    「煮沸」をした後、手作業による「曲げ」をすること。

     
    (4)
    「つま取り」をする場合は、小刀を用いてすること。

     
    (5)
    「樺縫い」をする場合は、「目通し錐」を用いてすること。

     
    (6)
    ふた、底板、取手、脚又は注ぎ口がある場合は、それぞれ、かんな、小刀又はのみを用いて成形すること。


    組立ては、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    底板の「仕込み」は、「平底」、「上げ底」又は「しゃくり底」のいずれかによること。

     
    (2)
    「曲げ輪重ね」は、「鉢巻きかけ」、「帯かけ」又は「重ね合せ」のいずれかによること。

     
    (3)
    手作業による仕上げ磨きをすること。


    塗りをする場合は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「花塗り」にあっては、柿渋に松煙を混ぜ合わせたものを塗付した後、精製漆を用いる「地塗り」、中塗り及び上塗りをすること。

     
    (2)
    「しばき塗り」にあっては、「ベンガラしばき」をし、柿渋を用いる「渋塗り」をした後、透漆を用いる上塗りをすること。

    原材料


    木地は、スギ、ヒバ若しくはホオ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    「樺縫い」に使用する樹皮は、サクラの樹皮とすること。


    のりは、そくいとすること。


    漆は、天然漆とすること。

  • 作業風景

    曲げわっぱができるまでの工程を簡単にご紹介します。

    工程1: 製材・部材とり

    原材料には「天然秋田杉」のみを使用。丸太を柾目が美しくでるように製材します。5mmほどの厚さに挽いた後両面をかんながけします。接着部となる板の端部をかんなで薄く削ります。

    工程2: 煮沸

    薄く加工した部材を約一晩水に漬けておき、曲げ加工前に熱湯で数分煮沸し薄板を曲げやすいようにやわらかくします。

    工程3: 曲げ加工

     
     

    工程4: 乾燥・接着・樺縫い(桜皮とじ)

    乾燥後、重ね合わせ部分を接着剤で接着、およそ2昼夜乾燥させます。先の平たい「はり」を使い樺で接合部を縫い留めます。

    工程5: 底入れ・組み立て・仕上げ

     

    より詳細な工程の紹介は「大館曲ワッパ協同組合」のホームページ

     

  • クローズアップ

    優美な木目、軽くて木のぬくもりのある 大館曲げわっぱ

    秋田音頭にも歌われる大館曲げわっぱは、自然の厳しさに耐えた弾力性の高い天然秋田杉だけを利用する。こまかな年輪が生み出す独特の美しさと淡黄色の明るく美しい木目、強靭さ、そして香り。その軽さと扱い易さは伝統的工芸品と堅苦しく考えずに日常の身近な容器としていつも側に置きたいと思わせる。伝統の技を伝えるわっぱ職人、栗盛さんに「曲げわっぱ」への思いを語ってもらった。

     

    津軽の水飴の容器としての需要が大館曲げわっぱの伝統を残す

    正式には「曲げ物」といいその伝統は日本各地にちらばっている。17世紀、当時の大館城代佐竹西家は領内の豊富な森林資源を利用し、藩の窮乏を打開するため下級武士たちに命じ、副業として「曲げわっぱ」の製作を奨励、その伝統がこの地に伝わった。「父の時代、プラスチックやアルミといったものに押され需要が激減しました。でも、青森・津軽の名産「水飴」の容器として重宝され一定の需要を維持でき生き残ることができました。」その後「やはり伝統の工芸品として残そう。」という機運が高まり現代的なニーズにも合う製品作りが始まったようだ。

    伝統の技を熱く語るわっぱ職人の栗盛さん
    昭和23年生まれ。老舗「栗久」の六代目。職人とは思えない軽妙な語り口に思わず聞き入ってしまうファンも多いとか

    今日の職人としての私を作った妻の一言

    「東京からデザインの先生を呼んで研究もしました。ある時、わが家に接待した一人の先生から『奥さんどうして自分の家で曲げわっぱを使わないの?』と質問され、あろうことか『だって使いにくいんですんもの。かさばるし重ねるとすべってしまうし・・・。』って妻が答えちゃった。」晴天の霹靂とはまさにこのこと。「でもね、それで自分が何をすべきかわかったんですよ。」この出来事がきっかけで業界初、円錐形のわっぱや重ねてもすべらない台つきのわっぱが完成した。それからは使う人の立場で多くの改良を加えていき、デザイン性や伝統の美を損なうことなく、より使いやすい多くの新作わっぱが完成している。

    底にもうひとつ輪をつけることで重ねられるように改良された小皿

    親子で同じ仕事をするとけんかの元!?

    栗盛さんは老舗「栗久」の六代目。「やはり小さいころから何かを作るのは好きでしたね。高校は地元の木工科に行きましたがその時に木の素養を覚えました。」この素養が新しい製品作りや改良に役立っているそう。「父はわっぱではなく「樺細工」の職人でした。わっぱは父の弟、つまりおじさんがやってたんです。おじさんへの対抗意識もあって自分はわっぱを始めました。親子でぶつかることもなかったので今思えばそれが良かったのかも・・・。」ちなみに栗盛さんには今大学生の息子さんがいらっしゃるそうだが、曲げわっぱを継いで欲しいかどうかについては何もおっしゃらなかった。

    使い終わったら必ず上向きにして乾かしてください

    「とにかくこれだけは守ってください。美しく長持ちさせるコツです。」ついお皿と同じように扱ってしまいがちだが、伏せて長時間おいてしまうと水分が十分蒸発せず特に隅のところが黒ずんでしまうとのこと。「桶にしても何でも、水滴をきるために最初数分は伏せていても白木のものは上向きにするなんて昔はだれでも知っていたよ。こんなことからも日本の伝統が生活の中から失われていくのを感じるな。」正しく扱えば20年は裕にもつ。もちろん痛んだら修理もしていただけるとのことだった。

    伝統的なものを使うことはその産地の山や水を守ることにつながる

    「わっぱの特徴は木の柾目だけを見せるところ。木口(木の切り口のこと)がでないので黒ずんだりしないし痛みにくい。それに木を薄い板にして使うので軽い。」その特徴を生かして、今「風呂桶」を試作中だ。「お客様のニーズを聞いてから自分の技を使ってどう作るかを考え、形にするのが職人だ。行き当たりばったりにいろんなものを作ればいいってもんじゃない。」そんな栗盛さんはニーズを聞くために全国を飛び回る。「でもね、今でも少なくなった天然秋田杉が平成19年からとれなくなるんです。造林の木では幅の広い柾目板がとれないので長い円筒のものが作れなくなる。それをどうするかが目下の課題。山と森をしっかり守っていかないと、いいわっぱもできなくなります。」多くの人が、たとえばこの「曲げわっぱ」を見直し使うことで秋田の森を守ることにもつながるのではないだろうか。

    ご自慢の「円錐形」わっぱでできた「サラダボール」

    こぼれ話

    本物志向の流れの中で復活を遂げた大館曲げわっぱ

    大館曲げわっぱの持つ弾力性、天然秋田杉の美しさを生かした作品群はその優美さも相まって様々な場面で見直されてきました。食器、容器類では弁当箱、すし鉢、おひつ。食卓でお馴染みのフルーツボール、サラダボールなどもあります。また、手付き盆、丸盆、角盆などの盆類。意外なところではジョッキ、アイスペール、ぐい飲みなどの酒器類。湯飲み、茶筒、おしぼり入れも定番となっており広範囲の作品群が生活の随所に浸透してきています。ふるさとのやさしい杉の香りがこころを和ませ、明るく整った木目は現代感覚にもみごとにマッチしています。

    • 皆で囲んでみたいテーブルとコーヒーセット

     

概要

工芸品名 大館曲げわっぱ
よみがな おおだてまげわっぱ
工芸品の分類 木工品・竹工品
主な製品 櫃(ひつ)、水差し、盆、すし鉢、弁当箱、菓子器、小物入れ、コーヒーカップ、ビールジョッキ
主要製造地域 大館市
指定年月日 昭和55年10月16日

連絡先

■産地組合

大館曲げわっぱ協同組合
〒017-0841
秋田県大館市大町29-1
TEL:0186-49-5221
FAX:0186-57-8490

http://odate-magewappa.com/

特徴

天然の秋田杉の柾目(まさめ)と香りが冴(さ)え、木目は真っ直ぐで弾力に富んでいます。軽くて、年輪の間隔は細かくきれいに揃い、鮮やかな赤、淡い黄色の明るく上品な木目が生かされた製品には、シンプルな味わいの中に美しさと気品があります

作り方

天然の秋田杉を手割り、または製材により薄く剥(は)いで、熱湯につけます。板が軟らかくなったところで取り上げ、台の上でコロという道具に巻き込むようにして曲げ、重ね合わせ部を仮止めして自然乾燥させます。乾燥後、接ぎ手の部分を接着剤で接着してから、閉じ穴を開け、この穴を桜の皮で縫い止めます。蓋(ふた)板または底板を入れ込み、接着して仕上げます。

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