勝山竹細工

勝山竹細工は19世紀の初頭に始まり、江戸時代末期には産地としての形が整っていたと言えます。
主な製品である「そうけ」「めしぞうけ」に関連するものとして、江戸時代末期に作られたと思われる「張そうき」と呼ばれる竹籠が現在まで伝えられています。

  • 告示

    技術・技法


    「こしらえ」は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「寸取り」には、「寸竹」を用いること。

     
    (2)
    「洗い」をした後、「外節削り」及び「荒割り」をすること。

     
    (3)
    「輪竹」造りは、「内節落し」、「幅決め」及び「面取り」をすること。この場合において、「そうけ」、「めしぞうけ」及び「米あげぞうけ」に使用するものにあっては、「つがい削り」をすること。

     
    (4)
    「外輪」造りは、「へちる」、「幅決め」及び「面取り」をすること。この場合において、「そうけ」及び「めしぞうけ」に使用するものにあっては、「端削り」をすること。

     
    (5)
    「内輪」造りは、「厚さ決め」、「幅決め」及び「面取り」をすること。この場合において、「そうけ」及び「めしぞうけ」に使用するものにあっては、「端削り」をすること。

     
    (6)
    「穂竹」造りは、「厚さ決め」、「幅決め」及び「細割り」をすること。この場合において、「そうけ」及び「めしぞうけ」に使用するものにあっては、「端削り」をすること。

     
    (7)
    「芯骨」及び「小骨」造りは、「幅決め」、「へちる」、及び「厚さ決め」をすること。この場合において、「みぞうけ」に使用するものにあっては、「止め作り」をすること。

     
    (8)
    「ひご」造りは、「へちる」、「中割り」、「厚さ決め」、「幅決め」及び「面取り」をすること。この場合において、「そうけ」、「めしぞうけ」及び「米あげぞうけ」に使用するものにあっては、「細割り」をすること。

     
    (9)
    「外当て」及び「内当て」造りは、「へちる」、「幅決め」及び「面取り」をすること。「外当て」にあっては、「端削り」をすること。

     
    (10)
    「つる」及び「こうがい」造りは、「厚さ決め」、「幅決め」、「面取り」及び「端取り」をすること。

     
    (11)
    「足」造りは、「切り込み」及び「面取り」をすること。

     
    (12)
    「くさび」造りは、「厚さ決め」、「幅決め」及び「端削り」をすること。


    「編み」は、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「輪造り」をすること。

     
    (2)
    「中組」をした後、「小骨裂き」及び「ひご編み」をすること。この場合において、「中組」及び「ひご編み」は、「ござ目編み」によること。


    「縁仕上げ」は、「当て縁仕上げ」によること。


    「みぞうけ」にあっては、「くさび入れ」をすること。

    原材料

    使用する竹材は、マダケ又はこれと同等の材質を有するものとすること。

     

  • 作業風景

    勝山竹細工にふれると、まるで職人さんのあたたかいぬくもりが伝わってくるよう。すべて昔ながらの手作りで、一品一品ていねいな手仕事でできています。その作業は切断、竹洗い、竹割り、編み組と、おおまかに4つに分けることができます。

    工程1: 切断・竹洗い

    まず竹林から竹挽き鋸(たけひきのこ)で竹を切り出してきますが、ここで竹を切る時期というのがもっとも重要です。悪い時期に切ると、虫害にあったり、品質が低下することにつながります。毎年、切る時期は11月から12月にかけて。この時期に1年分の竹を切り、風通しの良い日陰で保存します。次に細工に入る前に、竹をたわしでごしごしと洗います。こうやって、竹についた汚れをきれいに落とします。

    工程2: 竹割り

    続いて、竹割り作業に入ります。竹専用の鉈(なた)で約1メートルから、品物によると5メートルくらいに切ったものをまずふたつに割ります。この作業を荒割りと言います。このときの鉈は、切れすぎないことが肝心。あまり切れすぎるとケガのもととなるので、ほどほどの切れ加減にしておきます。そしてその割った竹を今度は、小割りと言ってもっと細いものにしていきます。この時に使う鉈は、先ほどのものとは反対に、ひげが剃れるくらいによく研いだものを使います。鉈の切れは、商品のつやにも影響するそうです。こうやって骨や仕上げの縁の部分を作り、もっと細くしてひごも作成します。

    竹細工には、竹の表面の青い部分を使います。このため完成した製品は最初、みずみずしい若草色を帯び、竹の青い香りがぷんと漂っていますが、使い続けるうちにだんだん飴色になり、つやが出てきます。最初の内の青くて若いのも、年月を経ていい色になってくるのも、どちらにもそれぞれの魅力があり、使う楽しみと言えるでしょう。また伝統工芸品では、ひごの面をひとつひとつ取ってあるので、お米などの小さなものでも引っかかることはありません。
    初心者はまず、次におこなう編む作業から習い始めます。竹を割ることの方が難しく、またウェイトも大きいのです。この竹を割る作業の習得には、2~3年はかかると言われます。

    工程3: 編み組

    こうしてやっと、竹を編む作業に入ります。まず初めに仕かけと言って、専用の昔からの竹の寸法をもとに枠を決めます。そこにひごを縦にかけ、骨を横に通していきます。この時の職人さんの、このひごをより分ける両手の指の動きは、見事としか言いようがありません。次に中組みという作業に移ります。今度は骨にひごを通していく番です。

    ここで問題になるのは竹の節ですが、節をそろえたり、あるいはわざと微妙にずらしたりして、模様のようにしていきます。まさに職人芸ともいえる、腕の見せどころとなるところです。
    こうやって全体の形を常に注意しながら、次々とひごを足して編んでいきます。編みながら形が気に入らないときは、多少の修正がきくのが竹のまたよいところ。角のあがり部分と、一番最後の仕上げは重要なポイント。ここで製品の善し悪しが決まってきます。ふちには、自然の、やはり地元勝山の地で取れた葛籠(つづら)を使います。このふち部分に葛籠を使用したものが、伝統工芸品に指定されています。針金でふちを結わえたものは略式となります。

    工程4: 完成

    こうして、職人の手間ひまをかけてやっと完成するのです。

     
  • クローズアップ

    真竹の美と技、勝山竹細工

    どこの農家にもある「そうけ」。昔からずっと変わらないそのフォルムは、お百姓さんたちの使い勝手がよいからこそ。この素朴で実用性の高い工芸品を、匠たちの技で自然芸術の域にまで高めたのが、勝山竹細工だ。

     

    長い伝統のある竹細工の村、勝山

    岡山市内から車でおよそ2時間、岡山県の北部に位置する勝山町。こののどかな山村で勝山竹細工は作られる。いったいこの地に、どこの誰が竹細工の技術を伝えたのかは定かではない。しかし、もうすでに160~170年もの間、この技が職人からまた職人へと伝えられていったと言われる。江戸末期には竹細工の村として生活が成り立っていたことが、文献にも残っている。

    風情ある勝山の町並

    生活シーンに合ったさまざまな竹細工製品

    農家の庭先でよく見かける「みぞうけ」「大ぞうけ」「米揚籠」、そして「飯籠」。これが伝統工芸品に指定されている4品目である。これらはお米などの穀物はもちろんのこと、野菜入れとして、また土砂を運ぶ際の土木作業用としても重宝されている。その他にも民芸品の「末広」や「どじょう籠」「びく」、実用的な「くず籠」「パン籠」「盛り籠」、そして茶室によく似合う「花器」など、さまざまなデザインのものが時代の潮流に合わせて作られている。およその竹細工なら注文によって、作ってくれる。これらを中国五県に広く行商販売し、その使い勝手のよさと耐久性で人気となり、勝山竹細工は名声を博していった。

    できあがった勝山竹細工の製品

    勝山ですくすくと育った真竹

    勝山竹細工の魅力は、熟練職人のすばらしい技とともに、地元の竹林からとれた真竹と葛籠(つづら)を使う点である。作業所のすぐ裏手には竹林があり、りっぱな青々とした竹がそびえたっている。この竹のうち、3年から5年たったものを切る。そのくらいの竹が一番、弾力や粘り、つやなどにおいてすぐれているためだ。製品の良・不良は、やはり素材によるところが大きい。粘りと光沢があり、節と節との間隔が長くて、竹の根元が太く、素直にまっすぐ生育し、なおかつ竹の質のよいもの・・・これらすべての条件をみたすのが真竹である。また生育場所によってもその品質に影響するが、勝山の恵まれた自然のなか、竹細工に適した真竹が育つのだ。次に大切なのが、竹を切る時期。時期の悪いときに切ると、品質の低下や虫害の恐れがある。毎年11月から12月にかけて、材料となる竹を切る。このときに切った竹を風通しのよい日陰に保存し、1年中使う。「良い竹を見て、良い時期に竹を切る」というのが、職人さんたちの合言葉だそう。

    原材料の真竹とオリジナルの寸法

    しなやかな青竹と熟練の技の出会い

    作業所に一歩足を踏み入れると、青竹のすがすがしい香りがなんとも言えず鼻に心地よい。川元さんは、この道50年という大ベテラン。父も祖父も竹細工職人だったことから、自然と自分もこの道に進んだと言われる。おおよその仕事が一人できちんとできるようになるのに約5年、誰が見てもいい仕事ができるようになるには、さらに5年を要するという。なるほど、彼の手元をみつめるとその無骨な手からは想像できないほど、繊細に竹をあやつっていく。熟練の技とは、こういうことを言うのであろう。
    「うれしいのは、自分の気に入ったものができたとき。また遠方から愛用しているお客さんが見えられて、ほめていただけたときは格別だった。」竹を割っている作業中の真剣な表情とはうってかわって、笑顔で話す川元さん。逆につらいのは「真冬の寒い時期に、竹を洗う作業。冷たいではなく、痛い。実際、手が切れることもある。」ということだ。しかしそういうつらい作業を超えて、自分の納得のいくものができたときの喜びは、どんなに大きいことだろう。美しいカーブを描く、できあがった竹細工の数々。川元さんの手にかかると、竹は自在にあやつられているよう。しかし少しさわれば分かることだが、それは弾力も強く、ちょっとやそっとでは言うことをきかないがんこもの。この弾力の強い竹と、熟練した匠の技との幸せな出会い。これが勝山竹細工であろう。

    作業所の裏手にある竹林

    年月とともに艶の出る竹の魅力

    竹割りの作業では、4種類のなたや竹用のこなどの刃物を使う。またスケールなどの物差しは使わず、昔ながらの竹にしるしをつけたオリジナルなものを使用している。これは、勝山竹細工の仕事は寸法方式ではなく、肌で体得し、肌で教え伝える作業ということを端的に示すエピソードでもあり、興味深い。
    青々とした新品の竹細工製品も、その香りともども魅力であるが、年月がたち、茶色く色づいて、つやが出てくるとまた一層、愛着もわいてくる。これは厳選された良質の真竹ならでは。そこに職人の技と、使う人の愛情が加わり、勝山竹細工はさらにつややかさを帯びるのであろう。

    見事な手さばきの川元さん

    職人プロフィール

    川元武十

    この道50年のベテラン。竹細工の職人であり、勝山竹工協同組合の営業部長も兼任。

    こぼれ話

    暮らしに生かす竹の効用

    松竹梅と言われ、おめでたいものの代表でもある竹。それは冬の寒さに強く、雪にも折れることなく、常に青々として、3年ほどで成長する力強い生命力にあやかりたいと願う人々の心からきたものでしょう。そんな竹ですが、最近は竹のみならず、竹炭のパワーにまであやかっている人が急増中!竹炭とは、竹を900度以上で焼いて炭にしたもの。その様子を顕微鏡で見ると、縦横に細かい穴がびっしりあいているのがよくわかります。この穴の数はなんと、備長炭の2.5倍と言われています。お部屋の消臭・除湿に、ご飯を炊くときに入れればふっくらとミネラルたっぷりのおいしいご飯に。

    • 竹林自体にも森林浴の効果が

    • 暮らしに息づく竹製品

     

概要

工芸品名 勝山竹細工
よみがな かつやまたけざいく
工芸品の分類 木工品・竹工品
主な製品 そうけ、めしぞうけ、米あげぞうけ、パン籠、盛籠、花器、壁掛け
主要製造地域 真庭市
指定年月日 昭和54年8月3日

連絡先

■産地組合

(勝山竹細工)真庭市 勝山振興局 地域振興課
〒717-0013
岡山県真庭市勝山319
TEL:0867-44-2607
FAX:0867-44-4569

特徴

一貫して実用工芸品本位に製作を続けています。製品は素朴な中にも存在感があり、使いやすさと丈夫さには定評があります。竹という素材の持つ味から、和洋の食卓に利用できる活用性の広さがあります。

作り方

材料はマダケという竹です。晒(さら)しも皮剥(は)ぎも行わずに使用します。工程は、こしらえ工程と編み・総仕上げ工程に大きく分けられます。こしらえ工程では、製品の種類や大きさ、製品に使用する部分に応じて、「寸竹(すんたけ)」で寸法取りし、水を付けたワラでこすって汚れを落とし、用途に応じて伝統的な技法で「削り」「割り」を行います。編み・総仕上げ工程では、製品別に「輪作り」「ござ目編み」等の技法で仕上げます。

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