高岡銅器

富山県

高岡銅器は、江戸時代の初め、加賀前田藩が、鋳物の発祥地である河内丹南の技術を持った7人の鋳物職人を招いて鋳物工場を開設したことに始まります。
高岡鋼器は花器、仏具等の鋳物に彫金を施す「唐金鋳物(からかねいもの)」を作り出したことにより発達しました。明治時代には、パリ万国博覧会に出品されたことから世界でも知られるようになり、全国の生産量の9割を占めるまでに至っています。

  • 告示

    技術・技法


    鋳型造りは、次の技術又は技法によること。

    (1)
    砂型であること。

    (2)
    溶湯と接する部分の鋳物砂には、双型、焼型又はろう型にあっては、「紙土」又は「真土」を用い、生型にあっては、「肌砂」を用いること。

    (3)
    鋳型の造型は、「挽き型」又は「込め型(「ろう型」を含む。)」によること。

    (4)
    双型、焼型又はろう型にあっては、鋳型の焼成又は乾燥(「肌焼き」を含む。)をすること。

     

    (5)
    生型にあっては、原型抜きには、「水筆」によること。

     


    鋳物の表面に彫金をする場合には、手作業によること。


    鋳物の表面は、「煮込み法」若しくは「焼色法」により又は漆若しくは鉄しょうを用いて着色をすること。

    原材料


    鋳物の素材は、銅合金とすること。


    着色剤に用いる漆は、天然漆とすること。

  • 作業風景

    鍛造法や地金材料により違いますが、ほぼ次のような順路で製品化されます。ここでは伝統的工法の内、焼型鍛造法を紹介します。

    工程1: 原型製作

    作る鋳物製品の設計図(デザイン・スケッチ)にそって原型(石膏・木材・粘土等)をおこし、それを用いて鋳型を作る。

    工程2: 真土(しんど)つけ

    離型材を塗布した後に、紙土・粗真土で鋳型を造形し、中に鉄筋で鋳型の補強をします。最後に乾燥させます。

    工程3: 型合わせ

    分割された外型と中子型をセットして鋳型が完成します。外型と中子型の隙間が製品の肉厚になります。

    工程4: 外型の完成

    鋳型から原型をはずして外型が完成します。

    工程5: 精錬・熔解工程

    精錬された使用金属を配合溶解して、高温の熔湯をつくる。

    工程6: 鋳込み(熔合金合金注入)

    1150℃~1250℃くらいに溶解された銅合金を鋳型に流し込みます。

    工程7: 型外し・仕上げ工程

    熔解工程における熔湯を鋳型に流し込み、凝固し冷却した後に型をばらし製品を取り出す。そして仕上げ処理へ。

    工程8: 研磨・彫金・象嵌など

    磨き上げたり、彫金を施したり、象嵌を施したりします。

    工程9: 型外し・仕上げ工程

    各種薬品、天然発色材料を使って緑青色など、ブロンズの特性を活かした着色を施します。

     

  • クローズアップ

    金・銀・銅の合金が織りなす美しさ 高岡銅器

    高岡銅器の産地は分業化が進んでおり、原型・鋳造・仕上げ・研磨・着色・彫金・象嵌(ぞうがん)などの分野でそれぞれ連携を取り合って製品を作っている。今回は、合金の美しさをうまく生かす象嵌師の方に話を伺った。

    親の仕事を手伝って

    鳥田宗吾(とりたそうご)さんは昭和15年生まれ。父親が高岡銅器の象嵌(ぞうがん。素地に溝などを彫り、その形に合わせて他の金属をはめ込むこと)の仕事をしていた関係もあり、子どもの頃から銅器の制作現場で仕事を手伝っていた。中学卒業と同時に親元で修行を始める。親が象嵌時に合金を使っているのを見て、合金の魅力にとりつかれ、以来約45年、高岡銅器の制作に携わってきた。「象嵌は手間がかかるから誰もやらん。でも私はやる。」鳥田さんがこう語るのには訳がある。「高岡にはとにかく細かい細工ができる技術があり、そういう細工をすることが高岡銅器の特徴ではないでしょうか。」高岡銅器に対する誇りと、伝統の技を受け継いでいる使命感が感じられる。

    鳥田宗吾さん。昭和15年生まれ。第一回日本伝統工芸士会作品展で特選をもらった経歴を持つ。好きなお酒は「立山」。

    金属の色の違いだけで色彩を表現

    鳥田さんが得意とする象嵌は、土台となる銅に溝を彫り、そこに金や銀などの金属を入れる。「メッキと違い、一度入れたら絶対に取れない。」と鳥田さんは力を込める。一見すると金色や銀色の細い線がただ描いてあるだけのように見えるものが、象嵌によって金属が埋め込まれていると分かったときには、本当に驚くばかりである。さらに驚くことに、描かれた絵はどれもきれいな色が付いているが、その色は金属が持つ色だけで表現されているのである。「金に銀を混ぜると青金、金に銅で赤金、銅に金で赤銅、銅に銀で四分一」など合金の種類によって色が変わるのである。「作っているときはそんなに色の違いはないんです。最後に薬品に入れて酸化させるとパッと色が出てくる。その時が一番楽しいですね。」と鳥田さんは目を細めて語った。

    驚くことに、この色すべてが金属の持つ色なのだ

    アイデアは自然を見て

    鳥田さんは飾り皿や壺、香炉などに絵を描き、それを象嵌で表現する。その図柄を考えることから仕事の内である。「最近は魚のサヨリを題材にいくつか描いたけど、これは釣りに行った時にサヨリがエサに群がる様子が面白くて図柄にしたんです」と作品を見せてくれた。サヨリが群でぐるぐると回っている絵が生き生きと描かれている。島田さんの作品を見ていると「金属=冷たい」というステレオタイプは打ち崩されてしまう。「絵ができたらほとんど完成です。後はこつこつと象嵌するだけ。」と語る鳥田さん。高岡銅器の象嵌には絵を描く技術も高いレベルが要求されるのである。

    象嵌の材料になる金や銀の糸や板

    現物を見れば分かる

    「まあ、一つ作るのに3~4カ月はかかるかな。」それだけに一つの作品の値段は高い。しかし「現物を実際に見てもらえれば、その良さは分かると思います。決して高すぎることはありません」と自分の仕事に自信を持っている。銅器生産が全国シェアの90%を占める高岡は、その技術も他の追随を許さない。高岡のなかで揉まれて付けた自信は、実績が裏打ちされているので心強い。特に合金技術とその色を引き出す酸化技術に関しては、他の産地ではまねができないといわれている。

    象嵌で使う鏨(たがね)。すべて自作で500本はある

    心にゆとりを

    「私が作っているようなものは、ちょっと心にゆとりがないと手が出ませんわな。でも興味がある人はいつでも見に来て欲しい。見ないと分からないことが多いから。」鳥田さんの最近お気に入りの色は「緋金(ひきん)」。淡い赤みを帯びた金に近い銀色と表現すればいいのだろうか。不思議な柔らかい色をしている。これがまさに「見ないと分からない」ものである。この色はぜひ、心にゆとりを作り、直接自分の目で見た方がいい。

    こぼれ話

    象嵌(ぞうがん)の秘密

    土台となる銅に溝を彫って、そこに金や銀の金属を埋め込む象嵌の技術は大変高度なもの。象嵌された部分の断面図をとったとすると、溝の底の部分が広く口のほうが狭くなっていて、その溝に金や銀が埋まっているのです。職人さんが「絶対に取れない」というのもわかりますね。さらに、埋め込まれた金属の上に重ねて埋め込むこともあり、これを「鎧象嵌(よろいぞうがん)」といいます。
    金属の埋め込みが終わると最後は薬品に浸けて酸化皮膜を付け、色を付けますが、このとき重要な役割を果たすのが大根おろし。薬品に浸ける前に大根おろしで全面を洗うと金属の色がきれいに出るのだそう。一体誰が発見したのでしょうか。先人が試行錯誤を繰り返したことが想像できます。

    • 細い線も点もすべて埋め込まれたもの

     

概要

工芸品名 高岡銅器
よみがな たかおかどうき
工芸品の分類 金工品
主な製品 花器、香炉、ブックエンド、文鎮、パネル、置時計、壁面レリーフ、照明器具
主要製造地域 高岡市
指定年月日 昭和50年2月17日

連絡先

■産地組合

伝統工芸高岡銅器振興協同組合
〒933-0909
富山県高岡市開発本町1-1
(財)高岡地域地場産業センター3F
TEL:0766-24-8565
FAX:0766-24-8566

特徴

商品の種類や表現意図により13種類の工法があります。色々な工法を駆使して鋳造、加工された製品は、卓上置物から花器、香炉、パネル、ブロンズ像、大仏にまで及んでいます。

作り方

製造工程は、鋳造と加工に分かれています。鋳造は、金属が溶けて液状になることを利用して成形する方法で、高温で溶かした金属を鋳型に注ぎ込み、冷ました後型から取り出し、彫金や着色等の加工を施して完成させます。鋳造の方法には、伝統的工芸品として指定された焼型、双型、蝋(ろう)型の他にも色々あります。

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