堺打刃物

大阪府

16世紀の中頃、ポルトガル人によって鉄砲、たばこが伝来しました。16世紀の後半には、たばこの葉を刻む「たばこ包丁」が堺で作られるようになり、徳川幕府は堺に「極印」という品質証明の印を与え、専売を許可したために、堺刃物の切れ味と名声は全国各地へと広がりました。
江戸時代中期には、出刃包丁が出現し、その後各種の包丁が作られるようになりました。

  • 告示

    技術・技法


    包丁及び鋏の穂の成形は、刃物鋼を炉で熱し、鎚打ちによる打ち延ばし及び打ち広げをすることにより行うこと。


    焼入れは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    本焼き包丁にあっては、「土置き」を行い急冷すること。

     
    (2)
    本焼き包丁以外の包丁及び鋏にあっては、「泥塗り」を行い急冷すること。


    本焼き包丁にあっては、「あい取り」をすること。


    鋏の足の錆止めは、「くすべ」又は「色付け」によること。


    「刃付け」、「研ぎ」及び「仕上げ」は、手作業によること。

    原材料


    使用する素材は、炭素鋼又は鉄及び炭素鋼とすること。


    柄は、木製とすること。

  • 作業風景

    工程1: 刃金(鋼)付け

    加熱した地鉄の上に、硼酸などを混合した粉末をつけた刃金(鋼)を重ねて、約900度の熱を加えて鍛接します。

    工程2: 整形

    うち延ばした本体を、更に600度~700度に加熱してうち延ばし、包丁としての形に整えます。

    工程3: なまし

    刃金(鋼)を柔らかくし、内側のひずみをのぞくために、700度~800度に加熱した後、自然に冷まします。

    工程4: 荒たたき

    経熱間鍛造の際に生じた鎚跡と、ベト穴を埋めて平らにするために、さらに常温で鍛錬します。

    工程5: 裁ち廻し

    仕上げならした包丁を、形に合わせて余分な部分を切り落とします。

    工程6: 摺り回し

    裁ち廻しの際に生じたかえりと不要な部分をグラインダーで削り落とし、更にヤスリで擦り整形します。

    工程7: 泥塗り

    焼き入れの時に早く均等に冷却するために、包丁に泥を塗り、炉の後部の余熱でよく乾燥させます。

    工程8: 焼き入れ・焼き戻し

    刃金(鋼)の硬度を高めるために、750度~800度に加熱した後、水の中に入れ急冷する。さらに刃金(鋼)にねばりと強さを持たせるために180度~200度に加熱した後、自然に冷まします。

    工程9: 刃付け(研ぎ)

     
     
     
     

    荒研ぎ→むみ磨き→歪み取り→平研ぎ(包丁の平研、厚さを決める)→歪み取り→平磨き(砥石で研いで目を細かくする)→たがね入れ(包丁のねじれを直す)→本研ぎ(包丁の切れ刃を付ける)→歪み取り→刃引き(仮の刃をつける)→歪み取り→裏研ぎ(包丁の裏を研ぎ、正しくくぼみをつける)→裏バフあて(砥石で研いだ「目」を細かくする)→刃研ぎ(仮に付けた刃を薄くする)→バフ仕上げ(さらに目を細かくする)→刃の色だし→木砥あて(木の砥石で目を通す)→際引き(「樫の木」でしのぎをつける→手木砥あて→霞ぼかし(砥石の粉で練った粉でゴムを使用してぼかす)→刃研ぎ→裏押し→子刃合わせ(かえり等をとり、最後の刃を付ける)→水拭き→油拭き(錆び止め)→歪み取り→仕上がり
    以上27行程の研ぎの作業により、切れ味の良い包丁に仕上がります

     

  • クローズアップ

    火と鋼の芸術に板前の腕がなる

    刃物研ぎの伝統工芸士森本一郎さんの作業場をたずねた。扉を開けると漂う鉄粉とニカワの匂いが、かつての下町の路地裏を思い出させる。カランコロンと下駄をならしてその人は現れた。

     

    高速回転の研ぎ器をあやつる

    「桐の高下駄は足元が暖かく感じるんです。仕事上、砥石には水が付き物。床が常に濡れているから、この高さもちょうどいいんです。」森本さんの仕事場には荒研ぎ用、本研ぎ用など5台の研ぎ器が並ぶ。直径90センチ以上の大きな電動研ぎ器が大きな音を立てて回転する。その砥石を抱え込むようにして刃物を研ぐ。工程が進むとともに、さらに甲高い金属音が追加された。砥ぎ機の下には摩擦による熱を取るために水が張られている。森本さんの履く高下駄の意味がよく分かる。金属と、天井の高さと床の水により、足元が冷えてくるのだ。石油ストーブの上に置かれたドラム缶にお湯が張られていた。森本さんは錆止め液で濡れて冷たくなった手をそのお湯でさっと洗い次の工程に進んだ。研ぎ機にはランダムな傷が付けられている。「この傷がないと摩擦が強くなり刃物が吸い付けられてしまって危ないんです。この傷を付けるための鉈も鍛冶屋さんと相談してあつらえてるんです。」ランダムに付けられているように見える傷も、経験がなければ付けられない難しいものだったのだ。

    足下の下駄が個性的

    板前と刃物職人の想いをこめた包丁

    人間の顔が一人づつ違うように、手作りの包丁はひとつひとつすべて違う。板前さん用のさしみ包丁となると、1日に20本ほどしか研ぎあげることが出来ないという。西洋料理にはたくさんの種類のナイフを使う。しかし、日本料理のための、和包丁は西洋包丁に比べると種類が少ない。日本人は器用なので1本の包丁で色々な細工が出来るからだ。その分、板前さんからの多くの要望は細やかで、かつ微妙なものである。自分の思いのままに仕上げたいという板前としての思い入れと、その思いに応えたいという双方の心が、1本の芸術的な技をもつ包丁を生み出す。
    仕上げの段階では冷たい水に直接手を入れて、砥石で研ぐ。「この程度の冷たさなんてたいしたことないよ。ぼくらの若い頃は表面に氷が張っていたんだから。」シャク、シャク、シャク・・・包丁は独特の音をあげながら、輝きだしていく。刃物研ぎの最後の段階だ。森本さんは真剣な表情になった。白熱灯の明かりがゆれる中、包丁はさらに輝きを増した。

    安定して研げるように研ぎ機の上にハンドルがついている

    刃物は凶器ではない

    「近頃、刃物を使った物騒な事件が起こり、残念なことです。でも刃物自体は、危ない物ではないんです。ただ、使い方を間違うと大変な凶器になるんです。だから単一的に包丁=危険とされてしまうのは悲しい気がします」一昔前、学校では危ない物は子供から遠ざけようと、カッターさえ持たせなかったのだ。でもやっと近頃、刃物の危険性と利便性を学んだ上で、使ってみようという方針に変わってきたという。「地場産業の社会見学で、この工房にも、小学生が訪れるようになりました。私は、出来るだけ体験してもらってるんです。もって生まれた“感”という物もあるけれど人間は若ければ若いほど新しい事を修得する力があります。だから理屈ではなく体で感じ取ってもらえれば、ここに来てくれた値打ちがあります。そして堺の歴史にふれ、体験することで伝統産業に興味を持ってもらいたいんです。そうすることで後継者がどんどん生まれてくれたら嬉しいですからね。」

    刃物をとことん知り尽くした森本氏。仕上げの砥石を前に

    1本の包丁には何人もの職人の魂が入っている

    「火造り」「研ぎ」などの工程ごとに専門の職人が携わり、独自のこだわりに満ちた刃物づくり。これを単なる切る道具として片づけるには、奥深い魅力がありすぎると思った。「近頃少し、台所に立つようになりました。包丁を実際に使ってみると、板場さんからの包丁に対する要望がよくわかるからです。魚を3枚におろしてみたり、野菜をきれいに切ってみたり・・・料理と言っても、もちろん包丁を使ってみるため。だから味の保証はありません。」そう言って少し照れくさそうに笑った。

    包丁の研ぎ加減は、自分の髪に当てて調べるという

     
    • 研ぎ機に摩擦用の傷を付けるための斧

    • 研ぎ機にも様々なサイズがある

    こぼれ話

     

     

概要

工芸品名堺打刃物
よみがなさかいうちはもの
工芸品の分類 金工品
主な製品包丁
主要製造地域堺市、大阪市
指定年月日昭和57年3月5日

連絡先

■産地組合

堺刃物商工業協同組合連合会
〒590-0941
大阪府堺市堺区材木町西1-1-30
堺伝統産業会館内
TEL:072-233-0118
FAX:072-238-8906

http://www.sakaihamono.or.jp/main.html

特徴

板前さんの包丁は、ほとんどが堺打刃物と言われているように、用途に応じた包丁が色々揃っています。その研ぎすまされた刃先が特徴です。

作り方

堺打刃物は、地金と刃金を鍛接して作るのが特徴です。地金になる鉄は極めて軟らかい鋼で、刃先になる刃物鋼は、炭素がたくさん含まれた鋼で、焼入れをして硬い刃先となります。硬い刃先と軟らかい地金とが接合して鍛造されるので、折れず曲がらず良く切れます。

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