三河仏壇

愛知県

三河仏壇の始まりは、江戸時代中期に遡ります。仏壇師が、矢作川の水運を利用して得られるマツ、スギ、ヒノキの良材と三河北部の猿投(さるなげ)山麓で採れた漆を材料として、仏壇を作ったのが始まりだと言われています。
その後、岡崎市内はもとより三河を中心とした地域で、仏壇作りをする人が増え、現在の三河仏壇の産地が形作られました。

  • 告示

    技術・技法


    「木地」の構造は、「ほぞ組み」による組立式であること。


    なげしは、「うねりなげし」、「かぶとなげし」又は「通しなげし」とすること。


    障子は、「腰付花子障子」、「通し腰付障子」、「花頭障子」又は「通し障子」とすること。


    宮殿造りは、「肘木桝組み」によること。


    塗装は、精製漆の手塗りとし、「木目出し塗り」にあっては、「ろいろ仕上げ」をすること。


    蒔絵及び金箔押しをすること。

    原材料


    木地は、ヒノキ、ケヤキ、ヒメコマツ、ホオ、イチイ若しくはセン又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    金具は、銅若しくは銅合金又はこれらと同等の材質を有する金属製とすること。


    漆は、天然漆とすること。

  • 作業風景

    仏壇の製作工程は大きく8つに分けられます。木地造り、宮殿(くうでん)造り、彫刻、塗り、錺金具(かざりかなぐ)造り、蒔絵(まきえ)、箔押(はくおし)、組立の8つで、その各工程を、「八職」と呼ばれるそれぞれの専門職が分業しています。仏壇のひとつひとつが、高度な技を持つ職人たちの合作なのです。

    工程1: 木地造り

    材料となる檜などの木材を木取りして、仏壇内外の部位をつくって仮組みします。木地は30近い部品から成り立ちますが、その全ての部品を「ほぞ組み」します。ほぞ組みとは、木と木を組み合わせて留める方法で、分解修理が可能です。木地造りでは、「はぎ付加工」という三河仏壇独自の技法の技法を使います。これは、台木ににかわなどを塗ってはぎ板を合わせた後、荒縄で巻いて炭火にかざし締め付けて接着させるものです。

    工程2: 宮殿造り

    仏壇内にある宮殿の屋根や柱、仏像を安置する須弥壇などをつくって仮組みします。宮殿は宗派によって「荘厳造り」「堂造り宮殿」「宮殿御坊様造り・御坊様造り」「禅宗桝組造り」に分かれます。三河仏壇の宮殿の豪華さは全国有数です。

    工程3: 彫刻

    構図に従って花、鳥、龍、唐草、天人などを彫ります。彫刻は自然乾燥させた檜、紅松などの木材を使います。彫刻がつけられる部分は、三河仏壇の特徴になっている「うねり長押(なげし)」の上、宮殿の内回り、障子などですが、障子の中央に「花子彫」という花模様を彫った彫刻をつけるのは三河仏壇の特徴です。

    工程4: 塗り

    砥の粉下地を塗り乾燥を繰り返した後、水を引いて砥石でみがき下地をつくります。塗装は刷毛で漆を塗って乾燥させ、駿河炭で水研ぎをする工程を繰り返して仕上げます。金箔を押す部分には「箔押し漆」、呂色(ろいろ)部分には「呂色漆」、艶仕上げの部分には「塗立漆」を使います。呂色とは駿河炭などでみがいて漆に艶をつけることで、呂色師と呼ばれる専門の職人が担当します。

    工程5: 錺金具(かざりかなぐ)造り

    図柄に従い、ノミと金槌を使って彫り模様を浮かせたり、抜いたりして仏壇の各所を飾る金具をつくります。錺金具は使われる場所によって「内金具」と「表金具」に分けられ、それぞれ専門の職人が担当しています。三河仏壇では、内金具の中で戸当りなどの平面的な錺である「毛彫(けぼり)金具」に「浮出し技法」を使って立体感を出すのが特徴です。

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    工程6: 蒔絵(まきえ)

    塗装をほどこした上に、図柄に従って金粉・銀粉を使って絵を描きます。蒔絵には「泥盛り蒔絵」「平蒔絵」「箔下蒔絵」「金粉まき」がありますが、とりわけ泥盛り蒔絵は、下絵に基づいて筆で蒔絵用泥を盛り上げ、図柄に立体感を出すもので、高度な熟練を要する技法です。

    工程7: 箔押(はくおし)

    塗装した上に金箔をはりつけます。まず、押漆を平均的に塗った後、綿で漆を拭き取り、金箔を箔箸を使って押していきます。そのあと、柔らかい綿でこすって余分な金箔を払い落とします。

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    工程8: 組立

    それぞれの専門職によって作られた部品を組み立てます。まず最初に錺金具を取り付け、次に宮殿や胴、内回りなどを組み立てます。さらに各部品を取り付けて布で拭き上げたあと、入念なチェックが済んで完成となります。

     

  • クローズアップ

    繊細で華やかな仏壇の彫刻をつくる

    三河仏壇は「八職」と呼ばれる八つの専門職の分業で作られているが、中でも彫刻を担当する 彫師(ほりし)は、技術と同時に高いオリジナリティを求められる仕事である。彫刻の精巧さは三河仏壇の特徴のひとつでもあり、長年彫師として活躍してきた大竹勇さんに、仏壇の彫刻を彫るという仕事について伺った。

     

    十年でやっと買っていただけるように

    「つい何日か前に、偶然、昔のデッサンが出てきたんですよ。」そう言って見せていただいた赤い表紙のスケッチブックは、大竹さんが16歳で親方のところに弟子入りした当初使っていたものだ。その中に、横に並んだ渦巻きのようなものが描かれているページがある。入門して最初に彫った渦巻き雲だ。「ああ、こんなんやったんだなあ、と思いました。」雲、菊の花、細い唐草と練習する中で、よく指を切った。彫刻刀が手のひらを突き抜けて、今でもしびれが残っているという。「研ぎができるようになって、道具がよく切れるようになると、怪我が減るんです。」彫師の世界は昔から、五年は奉公、十年でやっと仏壇屋さんに買っていただけるものが作れるようになるといわれているのだという。

    彫刻をする大竹さん。作業机の上には約20本の彫刻刀が並ぶ

    サイズの制約の中から生まれた豪華さ

    三河地方では仏壇を押入の中に置くのが慣習だ。それは、以前この地方では養蚕が盛んで、家の中で蚕を飼い、薪を燃やしたため、仏壇がすすで汚れるのを防ぐ目的だったのだという。この地方の家の標準的な押入は畳を横に二畳分で、その真ん中に仏壇、両脇に夫婦箪笥を一本ずつ置いた。このスペースにうまく収まるようにという合理的な理由から、三河仏壇の標準的なサイズ、高さ五尺八寸(約175センチ)幅三尺七寸(約112センチ)ができた。三河仏壇の特色はこの制約の中でいかに豪華な仏壇を作るかというところから来たものが多い。台が低く仏壇の本体部分が大きいこと、長押(なげし)の真ん中を上にカーブさせて中の豪華な宮殿がよく見えるようにした「うねり長押」、障子の真ん中に花模様の彫刻を配した「花子障子」などである。三河地方は信仰心の厚い土地柄で、三河仏壇の豪華さも、この地方の寺院の豪華な内陣を家の中に再現したいという強い信仰心の表れだといわれている。

    大竹さんの彫る天人。壊れそうでいて丈夫なものを、という

    京都や奈良の寺めぐりは毎年

    「彫刻は目立つところにあるんですよね。」と、大竹さんは言う。仏壇正面の長押の上、花子障子の彫り物など、確かに彫刻は目立つ。彫刻の精巧さは三河仏壇の豪華さを印象づける要因でもあり、お客さんが仏壇を選ぶときにも彫刻の良し悪しが大きなウエートを占める。何本か同じような仏壇が並んでいたときに、この彫刻がいいから、といって買ってくれたお客さんがいると仏壇店から電話をもらった時には、うれしかったのと同時にいっそう勉強しなくてはと身が引き締まったという。彫師の仕事はオリジナリティが求められる仕事だ。「雲なら雲といっても、風がないときの雲、たなびく雲、嵐のときの雲、みんな違うんですよ。人によって個性が出ますね。」カメラ、ビデオを持っての京都や奈良の寺めぐりは毎年の恒例だ。研究し続けなければできない仕事だという。

    16歳で弟子入りして最初に彫った雲のデッサン

    心が通うものを作る

    大竹さんが持っている彫刻刀はおよそ100本。木の材質や彫るものによって使い分ける。よく使うものは柄の部分が真っ黒で、ビニールテープで補強してあったりする。だめになったら刃の型を木にとって東京や伊勢の鍛冶屋に注文して作ってもらうという。その彫刻刀で彫る作品は繊細で精巧だが、壊れそうでいて丈夫なものを作っていると大竹さんは言う。また、出来上がったときのことだけでなく、塗りや金箔など、後の工程の人の作業のしやすさも考えて彫るのだそうだ。八職が分担して作ったものを合わせてひとつにする仏壇だからこその心配りだ。「人様が手を合わせて下さるものを作るんだから、ただ作るのではなく、心が通うものを作っていきたいですね。」という大竹さんの言葉が、仏壇職人という仕事を表しているように思えた。

    大竹さん所有の彫刻刀はおよそ100本。東京などの専門店にオーダーして作る

    職人プロフィール

    大竹勇 (おおたけいさむ)

    昭和18(1943)年生まれ。中学卒業後、16歳で親方に弟子入りし、以来40年以上彫師として活躍するかたわら、組合の副理事長も務めている。

    大竹勇さん。京都・奈良の寺社めぐりは毎年かかさないという

    こぼれ話

    伝統技術でみこし作り

     

    • 出番を待つ三河仏壇青年部のみこし

    • 全国屈指の規模を誇る岡崎夏祭りの花火大会。毎年8月の第一土曜日に開催

     

概要

工芸品名 三河仏壇
よみがな みかわぶつだん
工芸品の分類 仏壇・仏具
主な製品 仏壇、宗教用具
主要製造地域 岡崎市、豊橋市、半田市、安城市、西尾市、知立市、刈谷市、蒲郡市、碧南市、豊田市他
指定年月日 昭和51年12月15日

連絡先

■産地組合

三河仏壇振興協同組合
〒444-0025
愛知県岡崎市曙町2-1
TEL:0564-24-7766
FAX:0564-24-7766

http://www.aiweb.or.jp/mikawabutsudan/

特徴

毎日のおつとめが便利なように、台が低く作られていることが特徴です。また、「うねり長押(なげし)」という仕様のため、華麗な宮殿(くうでん)が良く見えます。伝統的な技術・技法によって作られ、漆、彫刻、金具、蒔絵、金箔押し等豪華な仕上げが施されています。

作り方

三河仏壇は、一人一職一芸で、8人の専門職の製品が集まって完成されます。木地造り、宮殿造り、彫刻、漆塗、蒔絵、金箔押し、飾り金具作り、組立の順番で作り上げられます。

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