房州うちわ

関東でうちわ作りが始ったのは江戸時代です。当時房州はうちわの材料となる竹の産地でした。房州でのうちわ作りは明治10年ごろからといわれており,明治17年(1884年)には安房郡の一大物産として生産されていたとのことです。
京うちわ,丸亀うちわとともに日本三大うちわのひとつとして,南房州で受け継がれています。

  • 告示

    技術・技法


    骨及び柄の部分は、筒状で同一の接続したメダケにより丸柄で出来ていること。


    骨作りは、「竹の選別」、「皮むき」、「磨き」をした後に次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    「割竹」は、水につけて割きやすくしたメダケを、日本剃刀を用いて細かく割くこと。

     
    (2)
    細かく割いた骨を、石の上で転がす「もみ」により骨の角やささくれを取ること。

     
    (3)
    うちわの骨をささえる「弓」を通す横穴を開けること。

     
    (4)
    「編竹」は、編棒を差して糸を編むように骨にからめること。

     
    (5)
    「柄詰」は、柄の穴に柳の枝を詰め穴を埋めること。

     
    (6)
    「弓削」は鉈や小刀でマダケを削り、横穴に差すこと。

     
    (7)
    「下窓」は間隔をそろえて糸を張ること。

     
    (8)
    「窓作り」で弓削を曲げて糸を結び形を揃えること。

     
    (9)
    「目拾い」で反発しあう交互の骨を平にしたて、形を整えること。

     
    (10)
    押切器を使って余分な骨の「穂刈り」を行うこと。

     
    (11)
    焜炉を使った「焼き」により骨のくせを直すこと。


    貼りは、次の技術又は技法によること。

     
    (1)
    貼りには刷毛、ヘラを用いること。

     
    (2)
    断裁には押切器又は断裁機を用いること。

     
    (3)
    へり付けには、刷毛及び小刀を用いて縁紙を貼ること。


    柄の仕上げは、柄尻に下塗りと上塗りを行うこと。


    仕上げには、圧着器を用い、骨を浮かび上らせること。

    原材料


    竹は、骨部分には房州産のメダケ、弓には房州産のマダケ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    編みで使用する糸は、木綿糸又は絹糸とすること。


    地紙は、和紙とし、生地は絹織物又は綿織物とすること。


    加飾をした地紙及び生地は、顔料、染料又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    柄尻には、穴を詰めるために柳の枝を用い、下塗りには胡粉、膠を使用し、上塗りには漆か顔料又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

  • 作業風景

    房州うちわは一本の竹を割いて柄と骨を作り出すうちわです。製造工程は21あり、分業で作られます。工程の中には特に熟練を要する作業もあり、それらの作業は長年の経験を積んだ専門の職人によって行われます。
    全体の製作管理といくつかの作業は「うちわ屋」と呼ばれる問屋によって行われます。<工程の流れ> 

    工程1: 竹の切り出し(うちわ屋)

    うちわの骨に使用する女竹を地元の竹林から切り出します。
    女竹は房総半島に自生する細い竹で、うちわには指の太さぐらいのものを使用します。
    切り出しは竹の肉が締まっていて虫がつかない10月から1月に行われます。
    切り出した竹を適当な長さに切り分けます。
    うちわには均一な太さの竹が必要なため、一本の長い竹からうちわ2、3本分の材料しか取ることができません。

    工程2: 皮むき(うちわ屋)

    女竹の皮をきれいにはがし、節の周囲のゴミをとります。
    節の部分に芽のあるものは、芽も刮ぎとります。

    工程3: 磨き(うちわ屋)

    皮をはいだ竹を磨き機にかけ、表面についている汚れやゴミを落として磨きます。

    工程4: 水付け(割き屋)

    竹を一晩水につけて割き易くします。

    工程5: 割竹(さきたけ)(割き屋)

    竹の節のやや上の位置に糸を強く巻きつけて固定し、裂け目を止める目安とします。糸の位置まで刃物を入れ竹を均等に割きます。八つ割位になったところで、内側の肉の部分を削ぎ落として竹を薄くし、さらに細かく分割していきます。
    分割する数はうちわの形や大きさによって変ります。

    工程6: もみ(うちわ屋)

    割いた部分を硬い石の上に転がしながら擦りつけ、ささくれや断面の角をとって滑らかにします。この作業は「もみ」と呼ばれます。

    工程7: 穴あけ(うちわ屋)

    節の下にうちわを支える「弓」を通す穴を開けます。

    工程8: 編竹(編み屋)

    竹の裂け目より10cm程度上のあたりに糸をかけて、割いた竹が一直線に並ぶように編んでいきます。

    工程9: 柄詰め(うちわ屋)

    柄を切って長さを整え竹の空洞に柳の枝を詰めます

    工程10: 弓削(すげ)(弓削屋)

    真竹を削って弓用の太いヒゴを作り、節に開けた穴に通します。加工が済んだものはうちわ屋を経由して下窓屋に渡されます。

    工程11: 下窓(下窓屋)

    編み上がった竹の間隔が均等になるように揃えて扇型に広げ、竹のコシを折って形を作ります。竹を編んだ糸の端は穴に通してあるヒゴに仮結びします。

    工程12: 窓作り(下窓屋)

    穴に通してあるヒゴを弓状に曲げ、たるみのないように糸を引いて整えしっかりと結び直します。糸を固定した後、編んだ竹の間隔などを再度整えます。

    工程13: 目拾い(うちわ屋)

    糸の少し上の位置に細い竹ヒゴを通します

    工程14: 穂刈り(うちわ屋)

    押し切り機を使って余分な骨を刈り込みます。

    工程15: 焼き(うちわ屋)

    熱した金属の台に骨をのせて加熱します。加熱することで骨組の形が安定します。骨組みが安定したら竹ヒゴを外します。

    工程16: 貼り(貼り屋)

    予めうちわの形にカットしてある表面の紙を伏せ、その上に糊を付けた骨を乗せ、さらに上から裏紙を貼りつけます。

    工程17: 断裁(うちわ屋)

    押し切り機を使って端を切りうちわの形を整えます。

    工程18: へり付け(縁屋)

    うちわのへりに細い紙を貼り付けて、断裁面を包みます。

    工程19: 下塗り(うちわ屋)

    柄に詰めてある柳の隙間を、胡粉とニカワを水で溶きあわせたもので埋め、柄の尻を平らにします。

    工程20: 上塗り(うちわ屋)

    下塗りが乾いたら、その上に顔料を塗り柄の部分を仕上げます。

    工程21: 仕上げ(うちわ屋)

    紙を貼った部分にローラーをかけ、骨を浮き上がらせて出来上がりです。

    工程22: 完成

     

     

  • クローズアップ

    心地よい風を生む人の技 房州うちわ

    温暖な気候に恵まれた房総半島。この地には昔から女竹と呼ばれる竹が自生している。女竹の太さは人の指ほど。細くてしなやかなこの女竹を使って「房州うちわ」が作り出される。
    「房州うちわ」は、柄の先端を割いて骨を作るため軽くて丈夫で使い易い。かつては台所の必需品として、現在では夏の風物詩として愛されている。その製造元として、数々のうちわを送り出してきた「丸山一郎商店」の二代目店主、丸山忠弘さんを作業場に訪ねた。

     

    うちわの町

    房総半島の南端、館山や富浦では、近隣で採れる女竹を使って明治時代からうちわが作り続けられている。
    当初は豊富な材料を活かして竹でうちわの骨を作り、それを東京に出荷していた。そこに東京のうちわ問屋が参入したことで、骨づくりはうちわ作りへと変っていった。特に関東大震災後には、多くのうちわ職人が移り住み、うちわ製造が盛んになった。
    うちわ職人を取りまとめるうちわの製造元は「うちわ屋」と呼ばれる。最盛期には、小さな町の中に20軒を超える「うちわ屋」があり、うちわ作りはこの一帯を代表する産業として活況を呈していた。うちわのデザインを決めるのは「うちわ屋」だが、実作業はさまざまな専門の職人によって行われる。
    「露地に行くとどこの家も竹を割って表に干しているというくらい、うちわの仕事をしてる家が多かったですね。家業が「うちわ屋」ですから、子どもの頃はよく、使いで加工の済んだものを引き取りに回ったものです」と丸山さんは語る。

    職人たちの技を集めて

    「房州うちわ」は分業で生産される。一本の「房州うちわ」が完成するまでに必要な工程は21。「うちわ屋」は、各工程を受け持つそれぞれの専門の職人のあいだを行き来して製造の流れを管理する。工程のいくつかは「うちわ屋」内部で行われるが、熟練した専門の職人の技が必要とされる作業も多い。
    中でも特に熟練が求められる業種に「割き屋」がある。「割き屋」は柄の先を細かく割いて骨にする仕事を受け持つ。まず竹を均等な幅に割き、その内側の肉を削ぎ落として竹を程よい厚みに整える。さらにそれをうちわの大きさに見合った数に合せて細かく割いていく。直径1センチの竹であれば、分割する数は40数本にも及ぶ。割き方が粗雑だとガサガサしたうちわになり、骨が細かったり薄過ぎたりすればうちわにコシがなくなり使いにくいものになる。「割き屋」の仕事ぶりがうちわの善し悪しを左右するとまでいわれる。
    「割き屋」の他にも熟練が必要な業種はある。うちわ紙を貼る「貼り屋」や、うちわの縁に紙を貼る「縁屋」。このほかにも、「編み屋」、「弓削屋(すげや)」、「下窓屋」など、うちわ作りはさまざまな職人の熟練した技によって支えられている。「房州うちわ」は、何人もの職人の手を経て初めて形になるものだから、「いかにいい職人さんを抱えて、いい仕事をしてもらうかなんですね」と丸山さんは語る。

    選んでもらえる「うちわ」のために

    「房州うちわ」は、丈夫で使い易いことからかつては台所や風呂場で火を起すなど、もっぱら実用に使われていた。そうした需要が減ってきた最近では、夏の風物詩として、装飾や涼しさを求めて購入する人が多い。一本一本丹念に吟味して選んでもらう時代になって、作り手側にもいっそう気合いが入ってきたという。
    製品が選ばれる時のポイントはやはり絵柄だ。「房州うちわ」では、白いうちわに絵付けをすることもあるが、基本は絵柄のある貼り地を使う。
    「絵柄はいろいろですね。絽や藍染めなどの布から千代紙まで自分で探します」
    絵柄選びはもちろん、貼り地の裁断も一枚一枚仕上がり状態を思い描きながら丸山さん自らが行う。絵柄の入り方次第で粋にも野暮にもなってしまうからだ。「うちわ屋」の個性を見せる勝負所だけに気配りも格別だ。

    風がちがう「房州うちわ」

    「房州うちわ」は、軽く手を動かすだけで柔らかな風を作り出す。しなやかな竹の骨に支えられたうちわ面は、わずかな力でも空気をとらえて優しく解き放つ。その風の心地良さは、天然のそよ風に似ている。
    「使った人からは『風がちがう』といわれます」と丸山さんは語る。「房州うちわ」の作る優しい風は、房総半島の竹林を抜ける涼やかなそよ風を思い起こさせる。

    職人プロフィール

    丸山忠弘 (まるやまただひろ)

    昭和14年生まれ。会社勤めを経験した後「丸山一郎商店」の二代目に。以来45年以上に渡ってうちわ製造に携わっている。
    房州うちわ振興協議会会長

    こぼれ話

    女竹(メダケ)と男竹(オトコダケ)

    房州うちわに用いられる女竹は別名オンナダケとも呼ばれる竹で、川岸や海岸の丘陵地帯に群生する笹だ。節間が長く柔軟性に富むことから、楽器のケーナや釣り竿などにも用いられている。
    一般に「竹」と聞いて思い浮かべられる真竹(マダケ)は、男竹と呼ばれる。丸亀うちわに代表される平柄うちわに用いられているのは男竹である。
    同じうちわでも、女竹のうちわと男竹のうちわでは随分と印象が違う。
    房州うちわ丸亀の平柄うちわ

     

概要

工芸品名房州うちわ
よみがなぼうしゅううちわ
工芸品の分類 その他の工芸品
主な製品うちわ
主要製造地域館山市、南房総市
指定年月日平成15年3月17日

連絡先

■産地組合

房州うちわ振興協議会
〒294-0036
千葉県館山市館山1564-1
館山市役所 商工観光課内
TEL:0470-22-3362
FAX:0470-24-2404

http://www.bosyu-uchiwa.com/

特徴

良質の女竹を骨部分に、真竹を弓部分に使用し、京うちわの差柄、丸亀うちわの平柄に対して、丸柄であること、丈夫で半円の格子模様が美しいうちわです。

作り方

うちわの骨部分は、一本の丸い女竹をそのまま細かく割いてあわせの構造をもつ骨を作ります。次にできた骨にていねいに和紙や絹織物、綿織物を貼り、へり付けを行ったあと、柄尻を塗って仕上げます。

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