庄川挽物木地

16世紀の末、現在の石川県南部を中心とした地域を支配していた加賀藩が使用する材木を、庄川の流れを利用して送るという、流木事業が始められました。
流木は庄川町地内の貯木場にたくわえられ、北陸における一大集散地となりました。
その豊富な木材を求めて、19世紀の後半に職人が庄川町でろくろ木地を商売にしたのが、庄川挽物木地の始まりと伝えられています。現在では34社が事業を行い、生産高において全国有数の産地となっています。

  • 告示

    技術・技法


    横ロクロ及びぜんまい鉋を用いる荒挽き及び荒仕上げ削りをすること。この場合において、自然乾燥及び強制乾燥をすること。


    横ロクロ、からかさ鉋及びうす刃を用いる仕上げ削りをすること。


    手作業による仕上げ磨きをすること。

    原材料

    木地は、トチ、ケヤキ、マツ、サクラ、イヌエンジュ、クワ、カツラ、セン、イチョウ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

  • 作業風景

    庄川挽物木地ができるまでの流れを紹介します。

    工程1: 原木

    挽物木地の素材としては、主にケヤキとトチが使われます。ケヤキは硬くて重量感があり、木目がおもしろいのが特徴です。またトチは変形しにくく、漆との相性がいいため、漆製品の木地として主に使われます。最近ではクワ、エンジュ、神代木などさまざまな素材が使われています。
    原木の状態を外面から判断して、製品の種類、寸法に合ったものを選定します。

    工程2: 製材

    原木を使用寸法の厚さに板びきにします(製材所に委託することが多い)。
    横木で加工する(道管が器に平行に走る)ため、年輪がさまざまな形で表れるのが庄川挽物の特徴です。

    工程3: 板づみ

    製材した板材を6か月から1年板づみにして自然乾燥します。こうすることで木がゆがみにくくなります。

    工程4: 木取り

    描かれた円よりやや大きめに外側を丸のこ機で引き落とします。

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    工程5: 荒挽き

    大まかな形をろくろを使って削り出します。

    工程6: 乾燥

    荒挽きした材料を乾燥室に入れ、水分8%まで火力乾燥します。その後乾燥室から出し、再び水分が12%に戻るまで外気にさらします。(乾燥戻し)

    工程7: 仕上げ

    十分乾燥戻しした材料を外仕上げ、中仕上げの順に木地製品にします。

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    工程8: 拭漆塗

    仕上がった白木地に生漆を数回塗り重ね木目のきれいな商品にします。

     

  • クローズアップ

    使い手自らが木の美しさを引き出す 庄川挽物木地

    使い手自らが手入れを続けることで深い色と艶を出し木目の美しさをさらに強調すことができる庄川挽物木地。その美しい木目を木から削り出す挽物職人に、庄川挽物木地の作り手として語ってもらった。

     

    町を歩くと「ろくろ」の音が聞こえていた

    庄川挽物木地作り50年の但田宅治さんが挽物の世界に入ったのは、戦後間もまない昭和23年のこと。当時は庄川の町を歩くと「どこからともなく『ろくろ』の回る音が聞こえていて、道沿いの工房などでは子供がじっと仕事を眺めていたもんです」と語る。それから17年間は親方の元で働き、その後独立。「独立してからはよく勉強しました。茶道具なんか流派によって寸法が違うので、うっかり作れんのです。お茶の勉強もしました」この日も伝統的な茶托や丸盆の他に、ロウソク立てや花瓶なども挽いており、新たな作品作りのための勉強に余念がない。また、今まで挽いた中で最も大きかったのは3尺(約90センチ)もののケヤキの盆。「お客さんのところでどうなっているのか気になるね」と作品のその後を気遣う但田さんである。

    妻の秀子さんと共に歩んできた職人人生

    お客さんの喜びが作り手の喜び

    「私は作り手ですから、消費者に高く評価されると嬉しいです。作り手の喜びはお客さんが喜ぶことです」そう語る但田さんの作業場には今まで作ってきたさまざまな木地(まだ塗装されていない木の製品)があった。どの木地も消費者に喜んでもらおうと試行錯誤を繰り返して作り上げてきたものだ。クワの木で作った急須、香炉、一輪挿し、栗の木の鉢、椀、盆などなど。「最近では木の形を生かしたものがよく売れる」と、とにかくさまざまなもをを挽くことができる。また但田さんは「邪道とは思いますが、抹茶椀を木で作ったこともあります。私は木の抹茶椀もいいものだと思います。それを認めてくれる人が一人でも増えてくれたらいいですね」と語っている。

    木で作られた自慢の抹茶椀と急須

    父から息子へ受け継がれる技

    「この仕事は地味な仕事です。一人前になるまでに暇もかかります。でも一人前になったら自分の思い通りのものが作れます」その面白さに惹かれたのであろうか。但田さんの息子さんも同じ作業場で庄川挽物木地を作っている。息子さんの作業の様子を眺めていると、変わった形の刃物を使っていることに気付いた。庄川独特の「からかさカンナ」と「薄刃」である。唐笠の形に似たものと薄い板のような形をしている。「これらの刃物は自分で作るんです。親子であっても決して人のものは使いません」この言葉に、庄川挽物の技術が親から子へ確実に受け継がれていることを感じた。

    各職人が自分で作る「からかさカンナ」

    うちののれんは「一意専心」

    但田さんの工房には「一意専心」ののれんが掛かっている。以前、書道の先生が書いてくれたものだという。「その言葉通りに生きていくのがいいと思うし、実際うちはそれでやってきている」お客さんの注文に誠実に答える仕事を続けている。庄川挽物一筋で生きてきたので挽物木地に対する思い入れも強い。「白木地のものは毎日茶殻で磨くと、そのうちきれいな色になるんです。私がうちで使っている盆はきれいな色になるのに3カ月かかりました。まあ、やってみてください」そういって1尺(約30センチ)もののケヤキの盆を渡してくれた。お盆の色がゆっくりと変化していく様はまるで生き物を育てているかのようで、今ではかけがえのない一品になっている。

    職人プロフィール

    但田宅治

    昭和4年生まれ。
    「私は自然を愛しています」と語る伝統工芸士。
    好きなお酒は「若鶴」。
    石川さゆりをよく聞く。

    こぼれ話

    白木地(しらきじ)製品の魅力

    庄川挽物木地の中で特徴的なものの一つは白木地製品です。木地は一般に漆などの塗装が施されて初めて製品となります。ところが白木地製品は塗装されずに木地のままで製品となります。この白木地製品は丁寧に磨かれており、空気に触れているだけで時と共に色と艶が変化するのです。写真の木地は5年ほど前に作られたもので、そのまま空気に当てていただけでご覧の色と艶に変化したものです。
    また、その変化を人為的に早める手法が茶殻を使う方法です。毎日茶殻を付け、布で磨き続けると深い色と艶が出てきます。3カ月も続けると漆のような色と艶になるといいます。使い手が自分の好みで色と艶を付けることができるのです。皆さんも是非お一つ手に入れて試してみませんか。

    • 空気と時間が木地に色と艶を付けるという

     

概要

工芸品名庄川挽物木地
よみがなしょうがわひきものきじ
工芸品の分類 工芸材料・工芸用具
主な製品茶盆、茶托(ちゃたく)、菓子器、椀、茶櫃(ちゃびつ)、茶筒、銘々皿、盛鉢
主要製造地域高岡市、砺波市、東砺波郡庄川町、井波他
指定年月日昭和53年7月14日

連絡先

■産地組合

庄川木工協同組合
〒932-0315
富山県砺波市庄川町示野116
TEL:0763-82-1155
FAX:0763-82-5341

http://www.shokoren-toyama.or.jp/~mokkou/

特徴

天然の木の魅力はそれぞれ持ち味が違うことにあります。年輪が様々な形で現われ、その表情は変化に富み、独特の深い色調は木目を引き立てます。木の温かみを大切にした製品作りを目指し技術を磨いています。

作り方

原木を製材した後、板積みにして、6ヶ月から1年ほど自然乾燥させます。荒挽き作業を行い、乾燥室で材木の水分が8%になるまで火力乾燥します。これを乾燥戻しして、ろくろで仕上げます。

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