2019/11/19(火)

【ジャパン2020】 日本と北欧デザインの融合、世界に広まる「ジャパンディ」

清潔、静謐(せいひつ)、調和――。和風とスカンディ(北欧風)を混ぜ合わせた「ジャパンディ」デザインが広まりつつある。地球の反対側にある2つの地域に、一体どんな共通点があったのだろうか。

日本とスカンジナビア地方は8000キロ離れているが、少なくともデザインの領域では数々の共通点がある。どちらも素朴な機能性を重視し、自然素材を愛し、職人への深い尊敬の念に支えられている。

近年、両地域の共通点が「ジャパンディ」や「ジャパニーズ・ミニマリズム」として確立されつつある。ジャパンディの家具や食器、インテリアには、すっきりとした線、中間色、そして自然の風合いといった特徴がある。

インテリア・ジャーナリストのケイト・ワトソン=スマイス氏は、「ジャパンディでは日本のスタイルと北欧のスタイルが非常にしっかりと融合しており、それがうまく働いている」と説明する。

共通する美学

セレクトショップ「Heal’s」の主任バイヤーを務めるクリス・マナロ氏は、ジャパンディのトレンドを「北欧スタイルの特徴である『hygge(フーガ、家庭的な居心地の良さを指すスウェーデン語)』と日本の『侘び寂び』が融合し、ストレスのない雰囲気を作り出している」と定義する。ジャパンディのインテリアは「私たちがほっと一息つけるような清潔で静かな環境を作ってくれる」ので、忙しい現代のライフスタイルに合っているという。

多くのデザイナーにとって、共通する美学と職人技こそがジャパンディの中核だ。デンマークのデザイナー、ニーナ・トルストープ氏は、「日本と北欧、2つの地域につながりがあると感じる」と話す。トルストープさんは1950年代にまでさかのぼり、北欧のモダニズムをけん引した巨匠たちと、日系アメリカ人のインテリアデザイナー、イサム・ノグチ氏や、日本の工業デザイナー剣持勇氏に共通点があることを見いだした。

Wabi-Sabi finds beauty in the art of imperfection (credit: Ekaterina Senyutina / Alamy Stock Photo)Image copyrightEKATERINA SENYUTINA / ALAMY STOCK PHOTO
Image caption日本の「侘び寂び」は不完全さの芸術ともいわれる

デンマーク出身のラース・ヴァイエン氏も、両地域の共通点は職人にあると指摘する。ヴァイエン氏は1995年に初めて日本を訪れている。

「日本にはなお素晴らしい職人技が残っており、伝統が重んじられている。日本人はあらゆる点において完ぺき主義だ。私が日本のクライアントにデザインを持っていくと、そこではシンプルな設計と職人技巧が完璧に合致する」

ヴァイエン氏が日本のインテリア企業、興石に納入している「ENSO Lamp」は、天井から水平に吊り下げるもの。日本の提灯にヒントを得た作品だという。家具職人による手仕事で、「私のシンプルなデザインと最も繊細な職人技が合わさったものだ」とヴァイエン氏は説明する。

The Enso lamp by Danish designer Lars Vegen is a tubular pendant, inspired by Japanese craftsmanship (Credit: Dejan Alankhan)Image copyrightDEJAN ALANKHAN
Image captionデンマーク出身のラース・ヴァイエン氏による「ENSO Lamp」は、日本の工芸技術に着想を得た

ヴァイエン氏はまた、日本の石河泰治朗氏と共同でデザイン事務所を設立した。最初のコラボレーション作品は、デンマークのブランド「Motarasu」向けのダイニングチェア「Float」だ。丸みを帯びたシンプルなスチールフレームが、木製の座部と背もたれを支えている。日本とデンマークの伝統的な家具製造技術が使われている。

日本生まれのジョナ・タカギ氏とノルウェー出身のハルゲイ・フームスツヴェット氏も、ジャパンディ・スタイルの作品を生み出した。フームスツヴェット氏は、2人をつないだのはやはり職人の技だったと話す。

「私たちの住む現代世界で、家具は技術に主導されていない数少ない製品だ。代わりに美学や素材、職人技でできている」

「日本と北欧の製品は、伝統的にこうした性質の多くを内包している」

The Float chair by Vengen has pared-back lines (Credit: Steen Evald)Image copyrightSTEEN EVALD
Image captionデンマークのブランド「Motarasu」のダイニングチェア「Float」は、ヴァイエン氏と石河泰治朗氏の共同デザインによるもの

工芸が意味するもの

日本と北欧が互いの高度な工芸技術を評価している一方、同じようなことはイギリスでは起こっていないと、現在ロンドンに拠点を置くトルストープ氏は話す。

「イギリスでは工芸といえば高級品ではなく、靴下を編むことを指す。しかし日本とスカンジナビア地方では、手作りのもの、丁寧に作られ長持ちするものに評価が集まり、尊敬と愛情をもって受け入れられる」

トルストープ氏の事務所Studio Mamaは、日本の家具ブランドE&Y向けに全長1メートルの靴べらを製作した。「彫刻のような形で、床に直立する。手作りで、木目にこだわった」とトルストープ氏は説明する。E&Yはトルストープ氏のほか、スウェーデン人のクラッソン・コイヴィスト=ルーン氏、ヨハネス・ノーランダー氏、フィンランド人のミカ・トルヴァネン氏、イルッカ・スッパネン氏などとコラボレーションしている。

同じくロンドンに拠点を置く安積朋子氏は、これまでに「ジャパンディ」という単語は聞いたことがないと言う。しかし、「日本のクライアントであるタイム・アンド・スタイルが今年、ストックホルム国際家具見本市に初出店し、大きな評価を得たときに、そのトレンドに気づいた」と話した。東京とアムステルダムに店舗を持つタイム・アンド・スタイルは、来年の同見本市に安積氏の茶器セット「Gyokuro Tea Box」を出店する予定だ。

安積氏のTNAスタジオが発表したガーデンチェア「Au」は、ロンドン・デザイン・フェスティバルのイベントの一環。ロンドンのヤング・ヴィック劇場のクワメ・クウェイ・アルマー支配人から着想を得たものだ。木材の色の薄さやすっとした曲線は「ジャパンディ」の名にふさわしいと言える。

TNA's pale-wood Au garden seat is by Japanese designer Tomoko Azumi (Credit: Petr Krejci)Image copyrightPETR KREJCI
Image captionロンドンに拠点を置く安積朋子氏は、ロンドン・デザイン・フェスティバルの一環でガーデンチェア「Au」をデザインした

職人技と美学、日本と北欧をつなぐデザイン性にさらにもうひとつ加えるなら、それは地理的要因かもしれない。ロンドンのジャパン・ハウスでキュレーターを務めた加藤さえ子氏は、「どちらの文化も、人間が制御できない厳しい自然環境の中で育まれたと感じる」と話す。

「自然の中でどのように快適に過ごすか、それが共通点ではないか」

また、2つの地域では色使いも共通しているという。「灰色がかった青や緑が木の色と合わさると、静かで温かみのある上質さが生まれる」と加藤氏は指摘する。Heal’sのマノロ氏もこの意見には賛成で、「ブロステ・コペンハーゲン」のノルウェー海の色を反映した食器セットを指差した。

加藤氏はジャパンディの人気は、一部の消費者が地球環境への影響を気にし始めたことも一因ではないかとみている。

「世界中で環境問題への関心が高まっていると感じる。人々が日常をシンプルで持続可能なものにしたいと思っている」

ジャパンディ製品の中では、原研哉氏デザインの座椅子「畳座」ほどシンプルなものはないだろう。加藤氏は、原氏の「畳座」は「一筆書きを想起させる流れるようなデザイン」だと説明する。

The design of the Tatamiza legless floor chair (or 'zaisu') by Hara Kenya is simple and fluid (Credit: Japan House London)Image copyrightJAPAN HOUSE LONDON
Image caption原研哉氏デザインの座椅子「畳座」はシンプルな流線型が特徴だ

使い捨て文化の解毒剤

日本人の母親を持つタカギ氏も、ジャパンディには持続可能性に訴える面があると話す。

「一般的なトレンドはファストカジュアルで、ほとんど使い捨てのようなデザインに向きがちだ。スタイリッシュだが安普請でお粗末なこういうデザインを消費する傾向に対して、ジャパンディのトレンドがある種の哲学的な反応になってくれればいいと思う」

タカギ氏とフームスツヴェット氏の初期の共同制作は、ジャパンディの要素を満たしている。2015年にデンマークの「Le Klint」向けにデザインした照明器具「Lamella」は、20世紀中ごろのデザイン――イサム・ノグチ氏の「アカリ」と、アメリカ人デザイナー、ジョージ・ネルソン氏の「バブルランプ」――の特徴を兼ね備えつつ、現代的なシルエットを保っている。「Lamella」は、Le Klintの職人による手作りだ。

「新しいものと古いものの融合、イノベーティブなプロセスと手作りのあわせ技、そして日本の伝統的な提灯の形と、創業75年を迎えるデンマーク企業の職人技巧。どれもぴったりと合っていると思う」とタカギ氏は話した。

credit: Le KlintImage copyrightLE KLINT
Image captionヴァイエン氏の「Enso Lamp」には、製品を修理して長く使うという日本特有の美意識が組み込まれている

世界の多くの地域に現代的な使い捨て文化が広まる一方、日本では修理して使える製品があるという。「今日の問題の大部分は、多くの製品が自分の手で修理できない点にある」と、ヴァイエン氏は説明する。

「しかし日本では伝統的に、一度分解して、壊れた部品を交換している」

たとえば障子の紙を張り替えて使い続けられるように、ヴァイエン氏の「Enso Lamp」も修理しながら使い続けられるように設計されている。

しかし美学の共通性とは裏腹に、日本と北欧では国民性が大きく異なるという。何度も日本を訪れているトルストープ氏も、「私たちは文化的にはまったく違っている」と語る。

「日本にいると、自分がガラスケースの中のゾウになったように感じる。私は日本人と比べると、何でも率直に言いすぎるので」

(英語記事 The rise of ‘Japandi’ style

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