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2020/6/30(火)

“和蝋燭”の灯りを守りたい!必要不可欠と言えない『伝統工芸』の世界…今こそオンラインで情報発信

新型コロナウイルスの影響が伝統工芸の職人にも直撃しています。技術は一朝一夕に習得できるものではなく、廃業で途絶えてしまうと再興するのは困難です。伝統工芸を守りたい…ようやくその取り組みが始まりました。

法要で欠かせない“和蝋燭”の灯り

京都・右京区にある妙心寺塔頭養徳院。厳かな雰囲気の中、お経が響き渡ります。寺の本尊を微かに灯すやさしい炎は、こだわりの和蝋燭(わろうそく)でした。

「お寺の法要では蝋燭の灯りは欠かせないものですね。洋蝋燭も使うこともあるんですけど、和蝋燭の灯りは本当にあたたかい色だと私自身も思っておりまして、強い灯りというか、そういうところにも和蝋燭の魅力を使っている者として感じるものがありますね。」(妙心寺塔頭養徳院 横江一徳副住職)

この蝋燭を作っているのは、京都・伏見区にある1887年創業の「中村ローソク」。3人の職人らが工程ごとに分業して制作しています。作業の様子を見せて頂きました。
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「同じ蝋なんですけど、こちらがまだ熱いので黒っぽい色をしている。大きい蝋燭だともっと練って白くして、それを流し込む感じです。(Q適温は感覚で学ぶもの?)大体感覚ですね。」(中村ローソクの職人)
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櫨(ハゼ)の実などからできた蝋は、温度によって色が変わります。堅さなど仕上がりが美しいタイミングを色で判断して、特製の木型に流し込みます。

「(注ぐのが)早すぎたり遅すぎたりしたら、しわになったりするので。」(中村ローソクの職人)
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最後は表面にさらに蝋を重ね、白くコーティングします。

法事の自粛、インバウンドの消滅…注文激減の“和蝋燭”

絵付けしたものも人気で、神社仏閣や花街、またインバウンドの需要も高まっていました。

「海外の方はこの蝋燭を『エコキャンドル』と言って、SDGsの観点で凄く使ってもらえる。」(中村ローソク 田川広一社長・57歳)

例年、この時期はお盆の法要などに向けて注文が増え始める時期ですが、新型コロナウイルスの感染拡大により、法事などは自粛された上、インバウンドも消えたため、注文は激減していると言います。
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「売り上げで言えば、前年比で2月が半分、3月がそのまた半分、4月でまたその半分。自分は作る力を持っているのに、どうしようもないっていうことでしょ。」(中村ローソク 田川広一社長)

日常生活で必要不可欠と言えない「伝統工芸」 見過ごされる支援

新型コロナウイルスの影響は様々な分野に及んでいますが、伝統工芸ゆえの問題を指摘する声も聞かれます。兵庫・姫路市で漆を使った文化財の修復や蒔絵の制作などを手掛ける「江藤漆美術工芸」の江藤雄造さん(37)です。

「(伝統工芸品は)要らないものを作っているじゃないですか。プラスアルファで絶対必要かって言われたら、家にあるもので済むことなので。そしたら(生活の中で)一番省かれるところだと思う。そうなるとすごく厳しいなとは思う。」(江藤漆美術工芸 江藤雄造さん)

日常生活で必要不可欠とは言えないため、伝統工芸への支援は見過ごされがちだといいます。また職人はモノづくりに秀でていても、販売を支える人が身近にいないことが多く、廃業と隣り合わせなのです。

「伝統工芸品専門」のオンラインショップを立ち上げ

そんな状況を救おうという取り組みも始まりました。伝統工芸品のネット販売などを手がける「和える」です。

「職人さんたちはシャイであったり控えめであったり、『伝統工芸が大変だから何かしてほしい』と言うこと自体が申し訳ないという声も(職人から)あった。」(和える 矢島里佳社長・31歳)
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「和える」が全国の伝統工芸の事業者を対象に行ったアンケート調査では、需要がこのまま回復しなければ「年内の廃業を考えている」という回答が4割に上ったといいます。

そこで、今年4月に職人による伝統工芸品専門のオンラインショップ「aeru gallery」を立ち上げました。17の工房が伝統工芸で培った技術を活かし、食器やアクセサリーなどを販売しています。

「皆さんにひとつでも、この機会に日本の伝統をおうちに取り入れていただくことが、直接的に日本の伝統を次世代につなぐ職人さんたちの応援になる。」(和える 矢島里佳社長)
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漆職人の江藤さんも出品者の一人です。オンラインショップのため、漆を使って金魚のペイントを施したグラスを制作しています。

「(「和える」から)もともと個展とか展示会とかあった時に出すものを出してくださいとお声がけ頂いた。(在庫として)寝てしまうかもしれなかったものが、販売される、買って頂けるというのはプラスになった。」(江藤漆美術工芸 江藤雄造さん)

“今こそ”発信を

行政もようやく支援に動き始めました。京都市は6月3日、伝統産業のための補助制度「京都市伝統産業つくり手支援事業補助金」を創設しました(※申請期間は6月23日に終了しています)。新規販路の拡大などにかかる費用を最大9割助成するといいます。

「中村ローソク」の蝋燭職人・田川さんも、オンラインで工房での制作過程や蝋燭の使い方などを発信していこうと動き始めています。

「この時期で勉強になっているというか、今まではありがたいことに、じっとしていても注文が来て、ごはんが食べられて、『伝統工芸や』って言っていただいてやっていたけれども。いざ(需要が)動かないってなったら、あまりにも自分の動き方を知らんねんなってしみじみ思って。もっともっと発信していかんと、“今こそ”ね。」(中村ローソク 田川広一社長)

コロナというかつてない逆風に、伝統工芸の灯火は今なおゆらめいたままです。

(6月26日放送 MBSテレビ「Newsミント!」内『特集』より)

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